一度書き上げた話を全て消してやり直したので時間がかかりました。最近投稿が遅れぎみなので、読んで下さっている皆さまに本当に申し訳ないです。
sideメルセデス
『飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です。』
ホグワーツでの初めての休日があけた月曜日の朝に、飛行訓練の連絡が掲示板に貼り出されていた。寮の自室から眠そうに出てきた生徒達がその連絡を読んで盛り上がり始める。
「やっと箒に乗れるのか。随分とまたされたな。」
「でもグリフィンドールと合同なんですって。いやね、あんな騒がしい猿みたいな人達と合同なんて。」
「グリフィンドールには今まで一度も箒に乗った事がない奴だっているんだろ?僕達がマグル生まれより優れた存在だっていうことを奴らに知らしめるチャンスだ。」
盛り上がっている話の内容は大抵グリフィンドールと合同であることに対する反応か自分がいかに箒に乗るのが上手いかというものだった。掲示板の内容を見たマルフォイなどは一日に二度は周囲の取り巻きに話して見せる自慢話を空きもせずに語り始めた。
「僕は幼い時から父上に箒を与えられていてね。勿論その時代の最高の物さ。僕には最新の物以外は似合わなくてね。その最高の箒で僕はよく自分の家の敷地内にある森の上を飛んでいて――――――」
その光景を見ながらシャロンはうんざりとした顔をしていた。
「まーた同じ話をしてますよマルフォイの奴。あんなに同じ話を繰り返すなんて周りが自分の話を覚えていられない間抜けだとでも思っているんですかね?それとも逆にマルフォイ自身が自分が同じ話をしていることに気づけない間抜けなんですかね?全く....箒の何が良いのだか。箒で飛ぶのが苦手な私には良さなんて何にもわかりませんよー。メルセデスはどうですか?」
「飛んでいる時に感じる風は少し気分が良いものです。それは認めますが熱中出来るものではありませんね。」
「つまりは飛べるんですね...メルセデス...そうですか...そうですか...」
私とダニーはホグワーツに来る前、マッドアイに何度か箒の講義をしてもらったことがある。私は生まれつき良い身体能力を駆使して難なく飛ぶことが出来たのだが、ダニーがかなりてこずっていたことを良く覚えている。箒で地面に向かってまっ逆さまに突っ込んで行った時は肝が冷える思いをしたものだ。ただ、ダニーも回を重ねるごとに上手く飛べるようになっていたので飛行訓練には特に不安はない。
「――――――そうして僕は真正面から突撃してくるマグルのヘリコプターを華麗に避けて見せたのさ。あれが僕じゃなかったらきっと死んでいただろうね。」
「凄いわ!ドラコ!」
マルフォイの変わったものが接続詞くらいしかない自慢話が終わったようだ。取り巻きのパーキンソンの反応もも毎回変わらない。彼女の場合はあの反応が取り繕ったものではなく素の反応であるというから驚きだ。二人とも恐ろしいバリエーションの無さなので結婚すればある意味良い夫婦になるだろう。近づきたくは無いが。
ところで、マルフォイの話はいつもヘリコプターを避けたところで終わるのだが、マルフォイ家の敷地内にはマグル避けが施されている筈だ。ヘリコプターなど入ってこないと思うのだがどうなのだろうか?本当かどうかはかなり疑わしいと思う。
それに、真正面から突っ込んで来たヘリコプターには勿論マグルが乗っていた訳で。それをギリギリで避けたのなら箒で飛んでいる所をマグルに見られた可能性が高いはずだ。就学前の魔法使いがマグルに魔法を見られた場合その責任は保護者へと向かうので、ルシウス・マルフォイは自分の子供をきちんと監督出来ていない無能だということになる。話の真偽はともかく彼の恥になる話は是非とも広まって欲しいのでマルフォイにはその事に気づかないままどんどん他人に話していって欲しい。
「けっ、皆してたかが掃除道具に盛り上がっちゃって。箒で飛べなくても別に死にはしないですもん。飛行訓練なんか無くなれば良いのに......」
シャロンはぶつぶつと箒談義で盛り上がっている人々に向かって呪詛を呟いている。相当乗れないようだ。これから飛行訓練がある度にこうなられても困るので彼女には何とか乗れるようになってもらいたい。
「シャロン.......教えてあげましょうか?」
「.........お願いします。」
気づけば掲示板の前に集まっていた生徒も殆どが居なくなっていた。皆朝食を食べに大広間へ向かったのだろう。食事中にマルフォイ達に絡まれることを避ける為に寮で時間を潰してから私達も大広間へ向かった。
――――――――――――――――――――――――――――
その日の真夜中、私は月の光以外の光源が一切存在しないホグワーツを歩いていた。城内は静寂に包まれており、時折管理人のものだろう忌々しげさを感じられる足音が響いてくるのみだった。
私は寮の部屋を抜け出して来ているなのだが、こんなところを教師の誰かに見られれば勿論厳重に処罰されることは間違いない。
寮の得点が減ることは私にとってはどうでもいい。問題なのは私が夜中に出歩いていることを知られることだ。夜中に動きづらくなることはなるべく避けておきたい。その為、今の私にはこれでもかと言わんばかりの隠蔽の魔法が掛けられている。他人から姿が見えなくなる目眩まし呪文は勿論、周りが自分の発する音に気づけなくなる耳塞ぎ呪文、マッドアイがウォルター邸でよく使っていたような隠れているものを暴く魔法に抵抗する魔法等出来ることは全て行っている。
ここまで魔法を掛けた状態ならば教師達や管理人に気づかれるようなことは無いだろうが、廊下でばったりとダンブルドアに出会った際に気づかれないと言い切れないのがつらいところだ。
どんな魔法を使用してもダンブルドアに通用する気がしない。ダンブルドアにはそう感じさせる凄みがある。恐らく英国魔法界中の魔法使いが感じていることだろうが、それを感じている間はまだまだダンブルドアと渡り合えないということだ。当面の目標はダンブルドアの底を見えるようになることになるだろう。今私が夜中に出歩いているのもその為だ。
初日のダニーとの連絡会の時に確認したように私は魔法の訓練等の為に使うことの出来る部屋を探していた。今日までに私が二度、ダニーが一度ホグワーツ中を歩き回って探していたのだが中々条件に合致する部屋を見つけることが出来ていなかった。広い城なので授業でも使われていない空き部屋はそれなりに存在するのだが、夜中に使って気づかれないことを考えると全く役にたたない部屋ばかりだ。
早くも手詰まりになって頭を悩ませていたのだが、解決策は直ぐに見つかった。昔両親が私にしてくれたホグワーツでの思い出話の中に、とある部屋で夜中に魔法の訓練を一緒にしていたというものがあったことを思い出したのである。
四歳頃にされた話なので記憶は大分曖昧だったのだが、ホグワーツに飾られているバカのバーナバスと呼ばれる絵画が目印であることは覚えていた。なんでもトロールにバレエを教えようとしている人物の絵だということなので、昼の間にダニーに情報を集めてもらい何とか八階にあるということを突き止めたのだ。
そして今、私は八階のバーナバスの絵画の前に立っている....の....だけど.....
「.......石壁しかありませんね。」
そう。私の目の前には石壁しか無かった。絵画を捲ってみたり、石を押してみたり、暴露呪文を使ってみたりしているのだが何の反応もない。八階に辿り着いてからかれこれ二十分ほど経っているがここに部屋があるという確信を持てなかった。
「うーん.....バカのバーナバスという確かな目印があるんだから君の両親の情報に間違いがあったとは考えにくいと思うんだけどね...」
手に持った両面鏡からこちら側を見ていたダニーが怪訝そうに言った。
「何か部屋を開く為の魔法があるのかもしれないな。ウィーズリーの双子に聞いたんだけど、ホグワーツには特定の呪文を唱えることでしか開かない扉なんかも結構あるらしいんだ。」
「特別な呪文が必要ならここでぐたぐだしていることに意味はありませんね。教師に見つかるリスクが高まるだけです。とりあえず今日のところは引き上げましょうか....」
せっかく手にいれた手がかりがあまり役に立たなかったことに肩を落としながら寮に戻ろうと歩き出す。魔法の訓練や研究が....出来ればダニーの希望である魔法薬学や錬金術等を学ぶことが出来るような部屋が欲しい...そう考えながら石壁の前を横切ると、視界の端で何かが動いていることに気づいた。
「っ!―――――」
驚いて振り向くと、今までただの石壁だった場所から扉が滲み出てきていた。現れた扉は私を歓迎するかのように開いてその内装をさらけ出した。
部屋は大広間の半分程の広さがあり、壁からはかなりの衝撃を加えても崩れなさそうな頑丈さを感じる。魔法の的になりそうな人形、魔法薬学や錬金術等に用いられる器具、軽く百は本が入りそうな本棚が備え付けられており、見回しただけでも『魔法理論』『魔法薬のすすめ』『初級錬金術』といったタイトルが確認できた。
「これは....私の望みが反映されているのでしょうか?」
部屋の中にあるものはまるで私の頭の中を覗いていたかのように私の望み通りだった。
「そうだとしたら色々な問題が解決するんじゃないかな?他の望みでも部屋が出来るのかを確認した方がいい。部屋が開く条件も曖昧だ。色々と試してみよう。」
それから幾つかの実験を行った。まずは部屋の出現条件を確定することを優先し、部屋が現れる前までの行動を再現し、それを少しずつ変えていくことで何がトリガーになっているのかを調べていった。これにはかなりの時間を要したが何とか部屋が開く条件を見つけることが出来た。
部屋が開く条件は石壁の前で自分が必要としていることを強く思い浮かべながら三回行ったり来たりすること。正直バカのバーナバスという手がかりがなければ一生かかってもこの部屋を見つけられなかったと思う。両親はどのように部屋を見つけたのだろうか?
部屋の内装や道具等も自分が願う通りに変化してくれることがわかった。しかし、用意してくれるものには流石に限界があるようで、試しに賢者の石を望んで部屋を開いてみると部屋の中は殺風景で何も置いてない部屋に変化した。今日調べることが出来た限りでは、世界に幾つかしか無い手に入れることが不可能に近い貴重なもの、あまりに巨大なもの、生きているものは用意してくれないようだ。それでもかなり融通はきく。この部屋を利用すれば私達は更なる魔法力を得ることが出来るだろう。
「やりましたね、ダニー。これで一つ目の関門を突破することが出来ましたよ。」
「そうだね。でも、今日はこのくらいにしよう。流石にもう寝ないと明日.....いや、もう今日だね。今日の行動に響く。」
外へと目を向けると、既に空が白みをおび始めていた。もう朝といっても良い時間だ。部屋を調べることに夢中になりすぎたらしい。
「まさかこんなに時間が経っているとは思いませんでした.....私も少しは寝た方がいいですね。寮に戻ることにします。それではダニー。またホグワーツのどこかで。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
鏡からダニーの顔が消えたことを確認した私は切れかけていた魔法をかけ直しながら寮への道を歩く。今日はとても良い成果を得ることが出来た。明日からはこの部屋....必要としたものを用意してくれることから必要の部屋と呼ぶことにしたここで様々な準備をしていくことになるだろう。
誰にも気づかれずに寮の部屋へと戻り、ベッドに潜り込む。必要の部屋をどう利用するかを考えていると眠気が襲ってきたので、そのまま眠気に身を任せていった。