ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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化物(フリークス)と賢者の石 十六

 

 

 

 

sideダニエル

 

 

 

 

メルセデスが必要の部屋を見つけてから数日が経った。自由にやりたいことが出来る環境を手にいれた僕らは夜な夜な寮を抜け出しては部屋に集まり、自分が伸ばしたい分野の研究を行っている。

 

今日も僕らは必要の部屋で自分の研究に精を出していた。部屋の内装は魔法の訓練場を中心として、四方に薬学や錬金術等のスペースが配置されたものになっている。

 

メルセデスは荒事に使う魔法の修練に注力しているようで、今は訓練場で魔法の早撃ちをしている。使用しているのは切り裂き呪文、セーヴァ(切り裂け)だ。メルセデスの先祖が作った魔法で、唱えると金属のような質感の閃光が対象へと突き進んでそれを切断する。ただの紙から、極めれば金属すら容易に切断できる汎用性の高い魔法で、メルセデスは人相手だけでなくペーパーナイフがわりにするくらいによく使っている。彼女が最も早く無言で撃てるようになった得意魔法だ。

 

切り裂き呪文をいかに早く、鋭く、連続で撃てるように出来るかが課題だと言っていた。訓練場に無数に並んでいる人型の的達が瞬きをする間に首を飛ばされていくのが見える。

 

僕から見ると十分早く撃てていると思うのだが、メルセデスからしたらまだまだのようだ。複数の闇払いに囲まれても魔法を使う暇なく首を飛ばせるくらいにはなりたいとのこと。

 

僕は何をしているかというと、魔法薬学のスペースで薬の調合をしている。今作っているのはウィゲンウェルド薬、治療薬だ。最近の僕は杖を使った魔法よりも魔法薬や錬金術といった分野に重点を置いていた。魔法に関わり出してから今までの六年間で杖魔法に関してはメルセデスに敵わないことをはっきりと自覚した為、杖魔法以外の何かで彼女の役に立とうと考えたからだ。いつまでもメルセデスの下位互換のままでいることは彼女と対等でありたいと思う身としても、一人の男としてもいただけないことだった。勿論杖魔法の練習もしているのだが、比率は魔法薬等の杖を用いない魔法に偏り始めている。

 

調合は教科書を広げながら行っているのだけど、その教科書の内容には幾つもの訂正が書き込んである。これらの訂正は全て僕の手によるものだ。

 

つい先日までは教科書をよく読み込んでその通りに調合をしていたのだが、どれだけ教科書通りにしても薬の効能が完璧とは言えないものに仕上がってしまっていた。最初は自分が気づかない内に何らかのミスをしてしまっていると考えていたのだが、どれだけ試行を繰り返しても目指した効能には近づけず、何度かメルセデスに監視してもらいながら調合をしても教科書の手順からは離れていないという事でようやく教科書そのものが間違っている可能性に気づいた。

 

それからは教科書を手本としつつも材料の刻み方や量、火に掛ける時の時間や火の勢い等、疑える所は全て疑って試行を重ねて一番効能のいい方法を探すようになった。

 

言うまでもないことだけどこれには時間がかかる。しかし、この作業を通じて材料のどんな作用がどんな混ざり方をして薬を形成していくのかを把握していくことが出来ている。このままありとあらゆる材料の作用を知ることが出来れば全く新しい薬を作り出すことも可能なのではないかと思う。これは普通に魔法薬の調合を学ぶだけでは一生身につけることが出来ない筈だ。

 

不可解なのは何故間違いだらけの、否、最適ではない記述ばかりの本がホグワーツ指定の教科書になっているのかだ。魔法薬学の最初の授業であれだけの大演説をしたスネイプ教授が教科書のミスに気づいていないとは考えたくない。いずれ聞いてみるべきだろうか。あなたはこの教科書を素晴らしいとお考えですか...?と。

 

「ダニー、その調合はもうすぐ終わりますか?」

 

魔法薬学の教科書についてあれこれと考えていると後ろからメルセデスの声が聞こえる。早撃ちの練習が終わったのかと訓練場の方を見ると軽く百はあった人形が全て首が無い状態で訓練場に山積みされているのが見えた。あれが人であったなら史上類を見ない凄惨な事件として歴史に残るような惨状だろう。よくもまぁ、あんなに魔力がもつものだ。

 

「ダニー?」

 

訓練場の光景に感心するやら呆れるやらしている内にメルセデスがすぐ隣にまで近づいていた。彼女は僕の隣に座って大鍋を覗きこんでいる。まだ返事をしていなかったことを思い出して直ぐに口を開いた。

 

「もうしばらく火に掛けておけば終わるよ。何かあったのかい?」

 

「大したことではないのですよ。私達は箒に乗ったことがあるとはいえ、明日は初めての飛行訓練なので早めに切り上げた方がいいかと思っただけです。」

 

そういえば明日は飛行訓練だったかと寮の掲示板に貼られた知らせを思い出す。ハリー達がスリザリンとの合同だと知った時はひどいものだった。ハリーは露骨に絶望しだすしロンは周囲のグリフィンドール生とスリザリンへの愚痴を垂れ流しついた。スリザリンについては僕は何も言えないので巻き込まれないように目眩まし呪文をかけてさっさと退散したものだ。

 

グリフィンドール内での僕の扱いは現状微妙なものになっている。二日目の朝食の時のメルセデスの突貫によって僕が彼女と親しいことは白日の下に晒された。その後のグリフィンドール生による大量の質問責めに答えていった所、僕への態度は大きく二つに別れていった。

 

一つはウォルターと親しくても僕自身はいい奴そうだから特に気にしないという態度。もう一つはウォルターと親しいからこいつもヤバイんじゃないかと警戒している態度だ。どちらにしてもメルセデスへの悪印象が解けていないのは問題なので、前者の人達から徐々に切り崩して行こうと思っている。

 

「訓練の内容もどんなものか分からないし、早めに寝て体調を万全にしておいた方がいいかもね。分かった。この調合で今日は終わるよ。」

 

「はい。」

 

それからはお互い無言で煮えていく大鍋を見つめていた。周囲には薪が燃える音と二人の息づかいしか聞こえず、久しく感じていなかった穏やかさが僕らを包んでいる。僕が、メルセデスが向かう道の性質上、穏やかな時間を過ごせる機会はそう多くは無いだろう。薬が出来上がるまでの短い間、この貴重な穏やかさを噛み締めよう.....そう思っていると肩に重みを感じた。

 

「メルセデス?」

 

隣を見れば、メルセデスが僕により掛かって寝息を立てていた。昔から夜遅くまで起きていることが多かったメルセデスは眠気をある程度制御する術を持っている。だけど、ウォルター邸からホグワーツへと環境が変わって流石に無理が祟ったのだろうか、メルセデスの眠りは随分と深いようだ。

 

とりあえず着ていたローブをメルセデスが起きないように脱いで床に敷き、その上にメルセデスをゆっくりと移動させる。

 

ウィゲンウェルド薬が出来上がるころだったので火を消しておき、さてメルセデスをどうしようかと考える。出来れば彼女を起こしたくは無い。周りに僕しか居ないとはいえ、思わず寝てしまうくらいには疲れがたまっているのだろうからゆっくりと寝させたい。

 

スリザリン寮の部屋に戻すことも考えたが直ぐに却下した。合言葉は知っているのでスリザリン寮には入れるが、女子寮には男子の侵入を阻む魔法が掛けられている。突破できないこともないとは思うがリスクが高い。談話室に寝かせておくのも他のスリザリン生に何をされるか分からないから駄目だ。

 

グリフィンドールなどもっての他だ。スリザリン生がグリフィンドール寮に侵入しているなどと知られれば寝起きの凶暴な連中に総攻撃をされかねない。

 

しばらくあれこれと考えた末に必要の部屋にベッドを用意してもらって寝かせることにした。朝にメルセデスが居ないことにシャロンが気づくだろうが、そろそろシャロンにも夜出歩いていることくらいは伝えようかとメルセデスが言っていたことだし丁度いいきっかけになるだろう。朝食にもメルセデス達はいつも時間を遅らせて向かっている。時間的な問題は少ない筈だ。朝からメルセデスに八階から地下まで走らせることになるのは忍びないが仕方がない。

 

薬の始末をした後、寝ているメルセデスを抱き上げて必要の部屋から一度出る。扉が消えたことを確認すると石壁の前でよく眠れる部屋を望みながら三往復した。

 

現れた扉から部屋に入ると、中にはキングサイズのベッドが一つ設置されており、床には安心感を覚える仄かな光を放つ照明、暑くも寒くもなく適度に乾燥した環境、朝に日が射し込んで来るだろう方角には小さめの丸型の窓がはめられていてレースのカーテンが掛かっていた。よく眠れることは間違いないだろう。

 

ベッドもより良い眠りを提供してくれることは疑いようがなかった。メルセデスを寝かせて見るとベッドはメルセデスの身体に沿って沈んだ。呼吸がしやすいのだろうか、メルセデスの寝息がより深いものへと変わっていく。布団も凄い、今まで見たことが無いほどふっくらとしているがとても軽い。ダウンの配合がかなり多い羽毛布団だと思われる。

 

ここまで至れり尽くせりだとメルセデスが明後日まで寝てしまうのではないかと心配になるくらいだったがその心配も内容だった。部屋に置いてあったベッドの説明によるとこのベッドには魔法が掛けられていて、あらかじめ何か音声を録音しておくことで設定した時間になると使用者の耳元に音声を流してくれるのだそう。とりあえず僕の声を入れておくことにする。大きな音を入れてもいいが、それをすると折角の快適な眠りの余韻を吹き飛ばしてしまいそうだ。ついでにメルセデスの機嫌も悪い方へ飛ばしそうなので絶体に止めた方がいい。

 

起きたら知らない部屋にいることでメルセデスが少なからず混乱するだろうから状況を説明する内容を書いた紙を枕元に置いておく。メルセデスの寝顔はとても安らかで美しく、朝まで眺めていたい衝動に駆られるけどこれを何とか押さえつける。僕がベッドに居ないことがハリー達にバレることはなるべく避けたい。彼らに夜出歩いていることを知られればその好奇心の赴くままに僕を追及してくることは火を見るよりも明らかだ。

 

「お休み、いい夢を。」

 

メルセデスの目に掛かっていた髪を払うと僕は必要の部屋を後にする。明日は色々と大変な一日になりそうだと考えながら僕はグリフィンドール寮への道を歩いていった。

 

 

 

 





セーヴァ(切り裂け) 適当に考えた呪文名です。恐らく今後呪文名で出てくることはないでしょう。出番は多いと思いますが。
効果はだいたい某プリンスのお得意な魔法と同じです。
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