ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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化物(フリークス)と賢者の石 二十

 

 

 

sideシャロン

 

 

 

 

私の名前はシャロン・ガードナー。歴史だけならマルフォイ家にも劣らない魔法界の名家、ガードナー家の長女です。

 

家族構成は父と母に兄が一人、後は長女の私のみとシンプルな構成で、家族仲は悪くはない…というよりはお互いに感心が薄いから大したいざこざが起きないというような状況でした。

 

両親は政略結婚で有るのは義務感だけなので愛情はありませんし、私達兄妹は次期当主と政略結婚の駒としてしか接されることは無く純血貴族として恥をかくような行動さえしなければ放っておかれます。兄に関しても私が生まれた時には兄は既にホグワーツに通っていたので五歳になるまでは殆ど話したこともありませんでした。

 

それでも私は歴史も古くそれなりの権力を有している家の娘という事で付き従ってくれるお友達も居て、楽しく過ごせる順風満帆な幼少期を過ごしていた…のですが…

 

六年前、私の兄で次期当主だったニコラス・ガードナーがホグワーツを卒業すると同時にマグル生まれの女性を伴侶として家に連れてきたことで全てが崩壊していったんです。

 

他の名家の例に洩れず純血主義に染まりきっていた両親はもちろん憤慨。マグル生まれを嫁になど認めない!誇り高き我が家の敷地に穢れた者を連れ込むなどガードナー家への冒涜だ!と兄に罵声を浴びせました。しかし、兄は頑なに連れてきた女性―――名をアン・リードさんと言うのですが―――と結婚すると言い張り、リードさんもなかなか気の強い女性のようで純血主義なんて間違っていると言って退きません。

 

結局この言い合いは半日に渡って続いた後、兄のあまりにも頑なな態度に疲れた両親が決着を次の日に伸ばしたことで一旦終わります。兄はリードさんと一緒に別館に立て籠ってしまいました。

 

私はその言い争いを部屋の外から見ていました。私は家族を血が繋がっている他人ぐらいにしか思っていなかったので普段ならこの言い争いを気にも止めなかったんでしょうけど、当時の私はこの騒動に今後の人生を崩壊させる予感を感じていたんです。

 

私は幼い頃から凄く当たる勘を持っていました。その当たり様は未来予知か予言かと思うほどで、あの時も私は自分の勘を信じてどうにかこの騒動を収めなければならないと必死に考えを巡らせていました。

 

色々と考えた末、やはり一番手っ取り早いのは兄にリードさんを諦めさせることだと思い至ったので別館にこっそりと入り込みんで兄が一人になるタイミングを見計らっていたのですが、兄はリードさんと離れようとしません。

 

お風呂まで一緒に入る始末で全く隙がありませんし、二人が寝たときを狙って寝室に忍び込んで見れば兄はリードさんをきつく抱き締めて寝ていて全く起きる気配がありません。これは駄目だと思ってその日は諦めました。

 

そして次の日、昨日先送りにした決着が付くかと思いきやまたしても決着が付かず先送り。私が兄と接触しようにも昨日と同じく隙が無い。その繰り返しが一週間ほど続いたんです。

 

その間にも私の勘が訴えてくる悪い予感は消えぬばかりか日々増大していき、寝ても覚めても続く悪い予感に苛まれ、騒動を収めようにも打つ手が見つからない状況に私はだんだん精神が壊れていきました。

 

やがて私の考えは自分を苛ましている一番の原因であるリードさんを殺す事に移り変わり、悲鳴をあげさせずに一瞬で殺す方法や自分が殺した事を魔法省に嗅ぎ付けられない殺り方を日頃考えるようになります。

 

リードさんを殺すこと自体は簡単です。寝たら中々起きないことは忍び込んで来た時に判明していましたから。誰よりもリードさんを殺したいのは両親でしょうから両親にはバレても構いませんでした。むしろ嬉々として隠蔽をしてくれた筈です。

 

全ての準備が整い、リードさんの心臓を一突きにするためのナイフと口元を覆う布を持って兄とリードさんがいつもベッドに入ってしばらく経った時間に別館に侵入しました。いつもは二人がまだ起きている時間に侵入していたのですが、今日ばかりは侵入したことがバレてはいけなかったためギリギリまで自室で待機していたんです。

 

それがいけなかったんですかね。私が寝室に入って見るとベッドの上に二人は居ませんでした。見ていない間に何処かに出掛けたのかと肩透かしをくらいながら自室に戻り、過去最高に訴え続ける勘を無視しようとしながら朝を迎え、そして愕然とすることになります。

 

朝食の時間になっても両親が降りてこず、時間に厳しい両親には珍しい寝坊かと思って二人の寝室に様子を見に行くと、そこにあったのは二つの死体でした。言うまでもなく両親の死体でした。最初は死体だと気づかないほど綺麗で深く眠っているような顔をした死体でした。

 

その後魔法省の調査が入ったのですが、どこを探しても魔法の痕跡が無い原因不明の死亡だと片付けられました。闇の帝王が権勢を振るっていた時代に死喰い人(デスイーター)として活動し、帝王が墜ちると金にものを言わせて光の世界に戻った父は魔法省執行部からひどく嫌われていましたから、死んでくれたのは万々歳だったのでしょうか。ろくに捜査をされなかったことを良く覚えています。

 

突然の両親の死に頭が着いていけず混乱している間に兄は当主となり、両親の葬式が執り行われました。その時兄が言っていた言葉は六年経った今でも夢にでるほど頭に焼き付いています。

 

――――――ああ、両親はきっとアンを傷つけようとしていたから、僕らの愛を祝福してくれている愛の神が神罰を下してくれたんだよ。シャロン?君は僕のアンを傷つけようとしたりしないよね?

 

満面の笑みで放たれたその言葉に私は心の底からおぞけが走り、壊れた箒のようにガクガクと頷くことしか出来ませんでした。

 

葬式には付き合いのあった純血主義の貴族家も大勢参列していたのですが、兄はあろうことかリードさんと共に壇上に上がり、リードさんがマグル生まれだと明かした上で結婚を宣言したのです。

 

葬式という場で結婚を宣言するのも愚かなら、純血主義貴族の前でマグル生まれとの結婚を宣言するのも愚か過ぎて話になりません。勿論我が家は血の裏切りの烙印を押され親戚との付き合いも断絶。私のお友達の家からも全て絶縁を突き付けられ、ガードナー家は孤立の一途を辿っていきました。私の勘は当たってしまった訳です。

 

ウォルター家の事件が新聞に載ったのもこの頃からです。ウォルター家の当主夫妻が三十人以上のマグルを正当な理由も無く殺し、その報復を受けて殺されたと。夫妻の一人娘のメルセデス・ウォルターは報復から生き残ったがその為に五人のマグルを殺し、それを魔法の暴走によるものだとして罪に問われることを免れたと。

 

ウォルター家の記事を読んだ兄と義姉はとても憤慨し、マグルを不当に殺すなんて家だ!この娘はホグワーツでシャロンと同じ学年になるだろうが絶対に関わりを持つな!もし関わりを持つようなら勘当だ!と常々私に言っていました。だから、今私がメルセデスと友達になっていることはかなり危ない賭けなんです。

 

ホグワーツに入学するまでの生活はかなり苦痛なものでした。兄夫婦は常にイチャイチャし続け、没落したことによって収入源が無くなったにも関わらずろくに仕事もしない、屋敷妖精もやめてしまったのに家事もしないのです。

 

私が屋敷の調度品や貴重な魔導書を売り払って今後二十年は生活できる金を工面し、家事を全て引き受けることで何とか回して来ましたが、私がホグワーツに居る今屋敷がどうなっているのか想像もしたくありません。

 

何度二人を殺そうと悩んだか分かりませんが、その考えが浮かぶ度に葬式での兄の笑顔を思い出してしまい実行に移そうと出来なかったんです。

 

そんな生活を続けてきたのでホグワーツからの入学許可書はまさに救いに感じました。しかし、入学してから待っていたのは純血貴族家の子息達からの嘲りの視線です。

 

スリザリンに組分けされた時は悪い夢でも見ているんだ、いや、夢であって欲しい。そんな思いでいっぱいになり、歓迎の歓声の中に混じる嘲笑にホグワーツでの生活も苦痛に満ちているのだと絶望が私を襲いました。

 

その上さらに関わったら勘当と言われていたメルセデスに話しかけられたときは自殺すら考えた程です。しかし、メルセデスと話している内に勘が働きました。彼女に元に降れば今後の生活が保証されると。

 

メルセデスからは昔父から感じたような、否、父を遥かに越える闇の気配を感じましたが、裏切りさえしなければ殺されることは無い。そんな予感がしたのです。

 

先ほども言った通りかなり危ない賭けでした。メルセデスとの関わりが兄にバレれば勘当。メルセデスが私を殺す可能性も完全に無いとは言い切れません。しかし、私は私の意思に関係無く、いつだって正しかった私の勘を、今回も信じることに決めました。そうして私はメルセデスのお友達になったんです。

 

そんな私は今、頭に犬の耳を生やしているところをメルセデスに笑われています。

 

「ふふっ、可愛いですよシャロン。少し触って見てもいいですか?実は犬とふれ合ったことが無いのですよ。」

 

「いやっ、ちょっ、やめてくださいメルセデス!何か腰の当たりがぞわっとします!」

 

「やめてあげません。言ったでしょう?出来なければ辱しめを受けてもらうと。」

 

何故こんな状況になったかというと、メルセデスとその旦那のダニエルが夜中に行っている訓練に参加してみたらとても理不尽な難易度の課題を出されてしまい、それをクリア出来なかったことで罰ゲームを課されてしまったんです。

 

やっぱりメルセデスは理不尽です!ドSです!最初っから私が課題をクリア出来ないことを見越していたに決まっています!それでも……

 

メルセデスは私が兄夫婦や純血主義の連中にぼろぼろにされる未来を奪ってくれます。私がマルフォイ達に絡まれた時も見捨てずに共に闘ってくれます。これでも私はメルセデスにとても感謝しているんです。声に出そうとは思えませんけどね!

 

私を振り回してくれる困ったお友達(主人)ですが、私は末永く付き合っていきたいと思っていますよ。これからもずっとよろしくお願いします。メルセデス。

 

 

 

 

 

 

 

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