ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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かなり時間が空いてしまって申し訳ありません。ようやく頭痛も収まったので投稿頻度を上げられると思います。



化物(フリークス)と賢者の石 二十二

 

 

sideダニエル

 

 

 

騒動の種は幾つも存在しているが三頭犬との遭遇を境に目立った事件が起こることは無く、次々と経験の無い事態に見舞われていたホグワーツでの生活にも日常を感じられるようになった。僕の一日の行動もだんだんと決まったものになってきている。

 

朝起きて朝食をメルセデス達かハリー達と食べ、夕方まで授業を受ける。授業が終われば就寝時間までグリフィンドール寮で課題をこなしたりハリーやロンと談笑をしたりして過ごし、皆が寝静れば必要の部屋で魔法の研究に打ち込んでいく……といった生活を一月と少し続けていた。

 

メルセデスの生活にも変わったところは無い。強いて言うのならマルフォイがメルセデス達に近づく頻度が一日に二、三回から一日に零回になったことだろうか。

 

頭を押さえつけられた上で「どう殺して欲しい?」と尋ねられれば流石のマルフォイも近づきたく無くなるらしく明らかに避けられているのだそうだ。

 

シャロンはと言えば必要の部屋での訓練で目覚ましい成長を遂げている。開始当初はメルセデスに無理難題を吹っ掛けられてあわあわとしていたけど素質は高かったのだろう。目眩まし呪文や耳塞ぎ呪文といった僕らが常用している魔法は直ぐに修得し、更に盾の呪文のような防御の為の魔法に顕著な適性を示した。

 

今では盾の呪文の最高峰のプロテゴ・マキシマ(最大の防御)を範囲が狭いながらも発動することが出来るまでになっている上、閉心術も少なくとも僕を越える精度で扱える。

 

逆に直接相手を攻撃する魔法を不得意としているけど、生き残るという一点に限ればシャロンに勝る魔法使いはそうは居なくなったのではないだろうか。メルセデスでさえもいざというときにシャロンを殺すことが難しくなってしまったとぼやく程だ。

 

さて、現在の時刻はハロウィン当日の十月三十一日の十二時頃。空には満月が怪しく輝いている今日この日に、メルセデスはシャロンに自分達が進む道を行くということが何を意味するのかを話そうということになっている。

 

保身の為ならば何でもするように見える性格から最初は状況が変われば直ぐに裏切るのでは無いかと疑われていたシャロンだったが、閉心術の訓練で使った開心術によって心を覗いた結果メルセデスに彼女が裏切る可能性は低いと判断された。シャロンがメルセデスに抱いているのは少しの憧れと小さな畏怖、そして多大な感謝の念だったからだ。

 

しかし、メルセデスの進もうとしているのは死と闘争の足で踏み荒らされる修羅の道だ。常人ならば決して進路上には立とうとしない道。それを知ったシャロンは怖じ気づくのか?それとも知った上で尚、メルセデスと共に逝こうとするのか?その心の動きを見ることで彼女が化物の友人(狂人)と成るかが決まる。

 

「ダニー、そろそろ始めましょう。」

 

………今宵の訓練も一段落したようだ。さて、彼女はメルセデスの真の友人足り得るのかな?

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

sideシャロン

 

 

 

 

「シャロン、お話が有ります。こちらに来て下さい。」

 

必要の部屋の片隅で自分の周囲に張っていた盾の呪文を解除して一息付いていると、メルセデスが私を呼ぶ声がしました。振り向いて見れば、メルセデスが二人掛けのテーブルに座っていて、そのすぐ側ではダニエルがメルセデスに紅茶を淹れています。メルセデスの向こう側には空いている椅子が一つ置いてあって、どうやらそこに座れということのようです。

 

今までに無い真剣な雰囲気に、私はとうとうこの日が来たかと思いました。メルセデスが私を警戒していたことは知っています。訓練に参加させてはくれるものの、これが何の為の訓練なのか、何をしようとしているのかといった説明を一切してもらえていなかったことから彼女が私を信じきっていないことは察することが出来ましたから。

 

でも、それは仕方がないことだと考えています。心を見れる彼女はきっと初めて会った時も私の心を覗いて過去を見たことでしょう。もしそうなら私が義姉を殺そうとしたことも知られている筈です。精神的に追い詰められていたとはいえ、自分の為に他人を殺すことを選択出来る人間を信用しろと言われて出来る人間がいるならそいつは底抜けの馬鹿でしかありません。

 

しかし今、恐らくメルセデスは私を信用して自分達の秘密の一端を話してくれようとしています。勿論いくつかの保険は掛けていると思いますよ?私が秘密を洩らそうとするようなら忘却呪文を掛けたり、最悪殺すことまで想定しているでしょう。

 

それでも、メルセデスが一度私を信用しようとしてくれていることに変わりはありません。私は、その期待に応えたい。メルセデスのおかげで私の生活には六年間感じることの無かった安らぎを感じることが出来ています。小さいことだと思われるかもしれませんが私にとってはそれだけで人生を掛けて返したい恩になるんです。

 

テーブルに座るとダニエルが私にも紅茶を淹れてくれました。カップを手に取って口へ運ぶと心が落ち着くような香りがして、いつの間にか緊張していた心が解れていきます。メルセデスも紅茶を飲み始め、しばらく香りを楽しんだ後に口を開きました。

 

「さて…どうやら察しがついているようですが、呼び出したのは他でもありません。そろそろあなたにも私が何をしようとしているのかを話しておこうと思ったのです。しかし……これを聞くからにはもう後戻りはさせません。あなたが選べる選択肢は協力か死か、そのどちらかになります。それを踏まえた上であなたは話を聞きたいですか…?」

 

「ここまで来て話を聞かずにおめおめと逃げ帰るようなら最初からメルセデスと友達になろうとなんてしてません。只でさえメルセデスは私にとって破滅の象徴のようなものだったんですから。でも、今こうして私はメルセデスの友達になっています。それは私の勘が囁いたからです。メルセデスと友達になりなさいと。そして今!私の勘が囁いています!メルセデスの話を聞きなさいと!」

 

そう返すとメルセデスは優雅に微笑みました。本当、こうして笑っていると凄く綺麗なお人形さんにしか見えないのになぁ。

 

肩より少し下の辺りで切り揃えられた金髪は光の加減で本物の金塊のように見えますし、血のようだと揶揄される赤い瞳だって先入観を無くせばルビーかガーネットにしか見えません。それが白磁のような肌に映えるんですよ。同じ女の子として羨ましくてたまりませんよ全く。

 

「それならば遠慮は要りませんね?話すとしましょう……」

 

そこでメルセデスは再び紅茶を口に含むとダニエルに目を向けます。するとダニエルは角砂糖を差し出し、メルセデスはそれを紅茶に入れてスプーンでかき混ぜ始めました。メルセデスはスプーンを動かしながら話を進めます。

 

「私が望むもの……それは戦争です。」

 

「戦争…?」

 

紅茶を飲みながら何気なく言っていますが十一才の少女が望むものではありませんよ?分かりきったことではありますけどね。

 

「ええ、しかし、只の戦争ではありません。世界中の()()を巻き込んだ大戦争です。構図は……私と闇の魔法使い対それ以外。ですかね?」

 

駄目です。スケールが大きすぎて想像が出来ません。ウォルター家が戦争屋であったことを考えればメルセデスが戦争を望むことも分からなくはありませんが、目的が分かりません。ただただ戦争がしたいだけにしては規模が大きすぎませんか?

 

「それは…何の為に行う戦争なんですか?世界征服とか?」

 

「世界征服などに興味はありませんよ。私は只、人々に知らしめたくなったのです。私という化物(フリークス)がこの世に生まれてしまったことを。それならば一人で町に繰り出して暴れまわればいい、と思うかもしれませんがそれだけではつまらないのですよ。どうせやるなら盛大にやらなければ損というものです。」

 

まさかのまさかですよ。本当にそれだけのために世界を巻き込もうってんですかこの人。でも、化物が生まれたことを知らしめたいって部分にだけ、戦争を望むものとは違う感情が含まれていたような気が…何処か怒りのような焦りのようなものが…

 

「手始めにこの英国魔法界で再び大きな戦争を起こしたいと思っていますが、一から戦力を集めるのではさすがに時間が掛かります。ですので、私は今でも大勢の信者が復活を待ち望んでいる闇の魔法使い、ヴォルデモート卿のカリスマを利用したいと考えています。」

 

紅茶を飲みながらメルセデスの言葉から一瞬感じ取ったものの正体を考えていましたが、耳に飛び込んで来た名前に吹き出しそうになります。え?今ヴォルデモート卿って言いました?ヴォルデモート卿をどうするって言ったんです?

 

「しかし、ヴォルデモート卿と戦力を拡大していく上で最も邪魔になるのはダンブルドアでしょうね。ですので、私達の当面の目標はダンブルドアを殺すことが出来る力を手に入れることです。私はダンブルドアの首を持って英国魔法界への宣戦布告と出来たらと思っています。」

 

本気で闇の帝王を味方につける気のようですね…それにダンブルドアってあのダンブルドアですよね?我らが校長の。あれ以外のダンブルドアを知らないのでそうなんでしょうけどかなり厳しくありませんかね?決闘の逸話には事欠かない生ける伝説の首を取ることが当面の目標なんて気が遠くなりますよ…これって終わりがあるんですかね。

 

「それで…その戦争は何をもって終わるんですか?何がどうなれば終わるんですか?」

 

「首謀者たる私が死んだら終わりますかね?ヴォルデモート卿の思想は私には合わないので途中で死んでもらう予定ですし。ですが、私はそう簡単に打ち倒されるつもりはありませんよ?出来るだけ長く戦い続けていたいですからね。」

 

ヴォルデモート卿でさえも捨て駒のようにしか考えていないって言うんですかこの人は…!普通に考えて十一才の少女がするには無謀過ぎる考えの筈です。ですが何故でしょうか、メルセデスの言葉を信じてしまっている自分がいます。これも私の勘なのでしょうか?

 

「残念ですがシャロン。あなたが協力せざるを得なくなった化物には大した目的も大義も無いのですよ。あなたはただ、いつか私がもたらす鉄火に包まれて何の意味も無く死ぬことになります。」

 

そう叩きつけたメルセデスの目からは挑戦的な視線を感じました。これでも私に着いていきたいと思えるのか?という声無き声がよ~く聞こえます。ふっふっふ。甘いですね。メルセデス。私はとっくに覚悟を完了しているんですよ。

 

「実を言うとですね?メルセデスと会った時の私って人生に絶望してまして。もう終わらせちゃってもいいかな~なんて思ってたんですよ。だけどメルセデスと会って希望を見出だしたんです。だからここにいる。だから、私はメルセデスに会ってなかったら死んでたんです。もう死んでいるみたいなものなんです。」

 

そうです。私はメルセデスに会わなければ死んでいた。最近はちょっかいをかけてきませんが、メルセデスがいなければマルフォイ達は私をありとあらゆる手を使って追い詰めていたことでしょう。最大限見下している人物が同じ寮という絶好の隠れ簑にいるんですから当然です。そして私は生きるのに疲れて自殺するか逃げ出して何処かで野垂れ死んでいたに違いありません。

 

「なので、今さらあなたは何の意味も無く死にますって言われたってどうということはありません。どうせ何を選んだって意味も無く死んでたんですから。」

 

そう言って口を閉じた私の目を、メルセデスは視線を一切逸らすこと無く見つめていました。私の勘が心を読まれていると告げてきますが今の私には何も隠すことなど何もありません。

 

「シャロン、あなたの思いはよく分かりました……」

 

目を閉じて紅茶を飲み干すと、メルセデスは私に手を伸ばしてきます。そのメルセデスの手は握手を求める形をしていました。

 

「ようやくあなたを信頼することが出来るようになりました。今まで警戒をしていたことをお詫びします。改めて、この(化物)と友人になってくださいますか…?」

 

嬉しさに少し冷静では無くなった私は、咄嗟に差し出された手を引っ掴んで上下に振り回してしまいました。

 

「勿論ですよ!これからも宜しくお願いします。」

 

そうして私は本当の意味でメルセデスの友達になりました。きっとこれから何度も死にそうになるんでしょうし何度も死なせるんでしょうね。本当に死ぬこともあるでしょう。勘もそう言ってます。

 

それでも、もう私は勘に従って命を守ろうとはしません。なんたってもう死んでいるようなものなんですから。そう考えれば昔は自分を追い詰めていた悪い予感というものも大したものではないように感じます。

 

私は文字通りメルセデスの死兵として戦いましょう。メルセデスに従って死ぬなら兄夫婦やマルフォイが原因で死ぬことになるよりも遥かに気持ちが楽です。自分の意思で決めた死に方ですからね。

 

とはいえ、しばらくは穏やかな日常が続くでしょう。後何年、何ヵ月、何週間、もしかしたら何日かもしれませんが、残り短くなった安らぎの時間を噛み締めていきたいですね。あまり急がなくてもいいんですよ?メルセデス。

 

 

 

 

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