ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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化物(フリークス)と賢者の石 二十九

 

 

 

sideメルセデス

 

 

 

消灯時間になり、いつも通り必要の部屋で各々の時間を過ごしていく。訓練に一段落がついた為部屋の端に設けられた休憩スペースで水を飲んでいると同じく休憩にきたダニーが話かけてきた。

 

「少し君の耳に入れておきたい事があるんだ。スネイプ教授の事なんだけど……ハロウィンの日から彼は足を引きずっていただろう?」

 

確かにスネイプ教授はハロウィンの頃から足を怪我しているようだった。ハロウィンからそれなりの日数が経っているにも関わらず、未だ癒える様子が無いので傷は相当深いらしいと思っていたのだが……

 

「それがどうかしたのですか?」

 

「ハリーが言うには教授の足の傷の原因がどうも三頭犬らしいんだよ。確か……職員室でフィルチさんに手当てをしてもらいながら『三つの頭に同時に注意できるか?』って言ってたんだって。」

 

なるほど、三頭犬に咬まれたなら傷が深い事にも納得だ。ホグワーツで三つの頭をもつ生物は三頭犬ぐらいしかいないだろう。他にいるとはここが学校である事を思うと考えたくない。……個人的には少し闘って見たくはあるが。

 

「つまり……スネイプ教授が四階の廊下に入ろうとしていたということですか。」

 

「そういうことになるね。ハリーはトロールを誘いこんだのもスネイプ教授だと思っている。僕はトロールを最初に発見したクィレル教授が怪しいと考えているんだ。ハロウィンの夕食の時間、他の先生方もほとんど大広間に集まっていたあの時に地下室に居る理由なんてほぼ無いと思うんだけど君はどう思う?やっぱり確実に廊下に入ったであろうスネイプ教授の方が怪しいと思うかい?」

 

ふむ……スネイプ教授が廊下に入ったのは確かなのだろうが、わざわざトロールを用意して入ろうとした廊下の中にある(三頭犬)を対策しておかないという愚を彼が犯すだろうか。傷を負った事を隠していない事も気になる。

 

「疚しい事で負った傷ならばもう少し隠す努力をする筈です。常日頃から足を引きずっているなど何かあったと白状しているようなものですから。そう考えればスネイプ教授が廊下に向かった事は別段隠す事ではないのではないのかもしれません。今はあなたやシャロンが怪しいと断じているクィレル教授の方が観察を要するでしょう。」

 

「私がどうかしたんですか?」

 

シャロンも休憩をしに来ていたらしい。自分の名前が出た事が気になったのか会話に入ってきた。

 

「シャロンがいつも言っている通りクィレル教授が怪しいのでよく観察しておこうという話ですよ。」

 

「クィレル教授……あっ!」

 

クィレル教授の名前を聞いたシャロンは次第に申し訳なさそうな顔になった。……何をやらかしたのだろうか。些細な事であれば良いのだが。

 

「そうでしたそうでした。クィレル教授について言い忘れてた事があるんですよ。実は、最近あの人が何かに怯えているような気がするんです。」

 

「怯えている?」

 

怯えていると言えば普段から怯えたような振る舞いをしているが……シャロンが言いたい事はそういう事では無いのだろう。そもそも普段の様子を演技であると断じたのがシャロンなのだから。

 

「胡散臭さとか怪しさは変わってませんよ?相変わらず何かしらやらかすんだろうなって気がしますから。ただ……」

 

「ただ?」

 

「クィレル教授とは別の何か恐ろしい存在がこのホグワーツにいて、彼はその何かに怯えながらも従っている。そんな気がしてならないんですよ。」

 

シャロンは僅かに不安を滲ませていたが、私の胸には僅かな期待が渦巻き始めていた。シャロンの言う恐ろしい存在、暫定的にではあるが闇の魔法使いであるクィレル教授を怯えさせ、ダンブルドアが守る物を奪おうとする度胸と実力のある人物……闇の帝王なら当てはまりそうではないか?英雄が魔法界へと戻ったこの年に、暴君が玉座を取り戻そうと再起する。物語でありそうな展開だ。こじつけだと言われればそれまでだが可能性は零では無いと私は思う。

 

そうとなればより一層クィレル教授を観察しておかなければならない。彼がもし帝王の命令で動いているのならば帝王と接触する機会が巡って来る可能性がある。出来ればもう少し早くこの情報を持っていたかった。シャロンに次は無いようにしてもらわねば。

 

「シャロン、そういうことは早めに報告するように。今回は致命的という程でも無いので咎めは無しにしますが……次は犬耳ですよ。撫で倒してあげます。」

 

「しょ、承知しました…!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

sideシャロン

 

 

 

 

昨日は少しヒヤッとしました……まさかクィレル教授の変化を報告し忘れているとは。日頃感じていることってどうも当たり前になっちゃって他の人も同じように感じていると錯覚してしまうんですよね。違和感を感じた時点で報告をし忘れるとそのままにしてしまうのは大きな反省点です。取り敢えずメルセデスにお仕置きされなくて良かった…!

 

まあ、お仕置きされずにすんで良かったとは言いましたけど別に殺されたりする訳じゃありません。何かと物騒なメルセデスですけど失敗した時のお仕置きは物騒じゃないことが多いんです。どちらかと言うと辱しめを受けさせられます。犬耳とか。この前にも魔法薬学で思い切り調合を間違えて爆発させた罰と言って夜の間中撫でまわされましたし。恥ずかしい上にぞわっとするのであまりされたく無いんですけどね。

 

でもこれは私を真の仲間と思ってくれているからこの程度で済んでいるという可能性が……愛玩動物(ペット)がおいたをした位に思われてる気がするのは何故でしょう……いえ、取り敢えずこの話は置いておきましょうか。今から私にとって地獄のような時間が始まることですし。

 

現在の時刻は午前十一時頃。マダム・フーチのホイッスルが空高くなり響くと共に十五本の箒も空高く飛び上がりました。魂までお空に昇って逝く人が居ない事を祈っておきましょう。

 

さあいよいよ私の目の前でクィディッチとか言う命捨てにいってるとしか思えない競技が始まったわけです。場所は勿論ホグワーツの競技場。フィールドは楕円形でその周りをぐるりと観客席が囲んでいます。観客席には等間隔に尖塔が建っていて、空で飛び回る選手達をよく見たい人が座る席になっているんだそうです。実況席や先生方の席も尖塔にあるんだとか。

 

観客席は寮によって別れていまして、どこがどの寮なのかは群衆の色で分かるようになっているんです。おや?グリフィンドールの頭上に『ポッターを大統領に』と書かれた横断幕が派手に点滅しながらはためいています。流石は英国魔法界のスターですね……応援のされ方が違いますよ。

 

ちなみに私はメルセデスと一緒にスリザリン側にある尖塔の端に座っています。出来れば試合終了まで白目を向いていたいくらいなんですけどね!なんで特等席にいるんですかね!

 

後、意外な事にメルセデスの隣にダニエルがいません。まあ、ここはスリザリンの席なので当たり前と言えばそうなんですが……メルセデスならグリフィンドールに特攻しそうなものです。

 

「てっきりダニエル達と座るものだと思っていたんですけど違うんですね?」

 

と尋ねてみればとても不服そうな声で答えが返ってきました。

 

「クィディッチの観客席では普段より他の寮に対する敵愾心が高まります。特に試合相手の寮には。そんな状況で私達がグリフィンドールの席に座れば確実に面倒事が起きますよ。普段は私達への関心が薄い一部スリザリンの生徒からも敵意を持たれる可能性があるので今日ばかりはダニーの所には行けません。本当に、本当に不本意ですが。」

 

声に続いて顔も酷く不服そうですね……そんなにダニエルと一緒にいたいなら周囲を完全に無視してグリフィンドールの席に居座ればいいのに。でもそれをされると私にも結構大きい被害がきますからこれで良かったと思っておきましょう。……そもそもこの場に来たく無かったんですけどね。

 

「さあ、観戦しますよ。どうせ持ってきてないでしょうからこれを貸してあげます。」

 

といって渡されたのは何処にでもありそうな双眼鏡です。……これで試合を見ろという事でしょうか。あ、双眼鏡を差し出すメルセデスが一転していい笑顔をしています。完全に私で遊びだしましたねこの人。受け取らなかったら後でもっと遊ばれそうです。具体的に言うと犬耳が待っている気がします。

 

「……双眼鏡は覗いておきますけど目をつむっていてもいいですか?」

 

「駄目です。」

 

ですよね……まあ、こんな理不尽もたまにの事なのでメルセデスのお遊びに付き合ってあげていると思っておきましょう。

 

さて、視線をフィールド内に向けますと馬鹿みたいな乗り物に馬鹿みたいな速度で飛んでいる馬鹿がいます。見ているだけで吐き気がしてくるような気がしますがきっと気のせいですね。そんな馬鹿達の動きを拡声魔法で観客達に伝えてくれるのが実況席の人達で、リー・ジョーダンというグリフィンドールの三年生とマクゴナガル教授が務めているようです。

 

『さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました。なんて素晴らしいチェイサーでしょう。その上かなり魅力的であります。』

 

『ジョーダン!』

 

『失礼しました、先生。』

 

なかなかノリの良い実況ですね。クィディッチの戦略なんかは全く興味がないので試合がどんな状況なのかは実況に教えてもらいましょう。実を言うとルールも曖昧なんですよねぇ……三人のチェイサーが敵のキーパーが守る三つのゴールにクアッフル(大きめのボール)を入れる毎に十点。選手を叩き落とそうとするブラッジャー(暴れ球)をビーターが妨害する。金のスニッチ(羽虫のようなボール)をシーカーがとる事で試合終了と百五十点の加点……でしたっけ。よく分かりませんけどシーカーだけで十分じゃないですかね?

 

私がクィディッチのルールを思い出している間にも試合は目まぐるしく展開していっていました。今は丁度、グリフィンドールが先制点を獲得したところです。グリフィンドール側の席からは大歓声が聞こえ、私の周りからはグリフィンドールに対するブーイングと大きめため息が上がりました。

 

そういえば私がここに来る事になった元凶のハリーは何処にいるんでしょう?そもそもハリーを見にきたのはメルセデスですから彼女の視線の先にいるかもしれません。そう思ってメルセデスの双眼鏡の向きを確認しようとすると競技場が騒然としている事に気づきました。

 

実況を聞くところによれば、どうやらスニッチが現れたようです。フィールドを飛ぶ誰もが呆然とスニッチを眺める中を二本の流星が、ハリーとスリザリンのシーカーがスニッチに向かって急降下をしています。ですが、どう見ても赤色の流星が速いです。

 

これは早々に試合を終わらせてくれるかと思って期待たっぷりに成り行きを見守っていたのですが、そこに邪魔が入りました。スリザリンのキャプテン、マーカス・フリントがハリーにタックルをかましたんです。外しましたけど当たってたらハリーを殺してましたよ?やっぱりクィディッチの選手は頭がいかれているようです。というかせっかくこの場からおさらばできるチャンスだったのに何をしてくれてるんですかね……!

 

「エグいことしますね。流石はスリザリンのチーム……やることが汚い。死ねばいいのに……

 

「あくまでも勝ちに拘るのならば有効な手ではありますね。勝ちに貪欲な姿勢は嫌いではありませんよ。フリント自身は嫌いですが。しかし…まあ…他寮からスリザリンが嫌われている理由が良く現れている試合展開になってきました。」

 

フリントを避けて大きくコースを逸れたハリーはそのまま上空へと向かうとそこで静止しました。そうそう、そうやって大人しくしていた方が身のため……ってあれ?ハリーの箒が右に左に行ったり来たり、急降下したかと思ったら跳ね上がって……絶対まずいやつじゃないですか!

 

「ハリーの様子がおかしいです。箒に振り回されてますよ!」

 

ぶっちゃけるとハリーにそこまでの思い入れはありませんし、人が死ぬ姿を見るのが怖い訳じゃありません。朝起きたら両親が死んでた事よりはましですからね。でも、箒で死なれるのは勘弁して欲しいです。苦手意識が加速してしまいますよ。

 

「ああ……見てられません。飛行訓練の初日を思いだしてしまいますよ。それにしてもハリーの箒は一体どうしたんでしょうね?マルフォイ辺りに妨害されているとか……」

 

自分で言っててなんですけどマルフォイでは無いと勘が言ってます。あれにそんな度胸があるようにも見えませんし。しかしあれは尋常じゃない動き方ですよ。

 

「ハリーの使用している箒はニンバス2000。現時点での最先端の技術によって作られた箒です。勿論、魔法による妨害への耐性も並では無い。マルフォイ家の人間とはいえ、子供にどうにかできる代物ではありません。あれが何者かの魔法によって引き起こされている現象ならその下手人は……」

 

メルセデスは双眼鏡を観客席の中でも一際立派に設営されている尖塔へと向けています。私も追従して双眼鏡を彼女が見つめる先へ向けるとそこには……

 

「極めて単純に考えれば子供では無いという事になりますね。例えば、教師のような。」

 

メルセデスが見つめる先―――教師達の観客席には、ハリーを凝視して絶えず口を動かし続ける()()の教師の姿がありました。

 

 

 

 

 

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