ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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化物(フリークス)と賢者の石 三十

 

 

 

sideダニエル

 

 

 

僕は今、ロンを始めとしたルームメイト達とハーマイオニー、ハグリッドと共にハリーの初陣を観戦している。しかし、試合も佳境を迎えるというところでハリーの挙動に異変が起きていることに気づいた。箒に振り回されているのだ。飛行訓練初日のネビルでさえあそこまで箒に振り回されてはいなかったと言える程酷い荒ぶりようで、いつ地面に叩きつけられてもおかしくはない。

 

「一体ハリーの箒はどうなっとるんだ?あれがハリーじゃなけりゃ箒のコントロールを失ったんじゃないかと思うが……ハリーに限ってそんなこたぁ……」

 

ハグリッドに同感だった。今まで何度かハリーのクィディッチの訓練の様子を見せてもらった事があるけど、ハリーは箒のコントロールに関してまさに天才と言うべき才能をしている。

 

「ハリーがコントロールを失うとは思えないな。何か箒に異常が起きているんだ。」

 

「フリントがぶつかってきた時にどうかしちゃったのかな?」

 

「箒ってのは意外と厳重に魔法で守られてるんだよ。高いやつなら尚更ね。授業で使うような古びた箒ならともかく、ハリーのニンバス2000はぶつかられたところでどうにかなる代物じゃない。」

 

シェーマスの呟きに、それは無いとはっきり言えた。箒としては馬鹿げた金額をするニンバス2000があの程度でいかれてしまうようなら学校所有の流れ星(シューティング・スター)は新種の魔法生物として教科書に載るレベルでいかれていただろう。

 

「その通りだ。箒に悪さしようとするにゃ強力な闇の魔術でも使わねぇと話にならん。」

 

ハグリッドの言葉を聞いた瞬間、ハーマイオニーがハグリッドの双眼鏡を奪い取って観客席を見渡し始めた。そしてある一点を見つめたかと思えば僕らに苦虫でも噛み潰したような表情を向ける。何を見つけたんだ?

 

「見てごらんなさい。スネイプだわ、ハリーの箒に魔法をかけてる。」

 

「なんだって?」

 

教員席に双眼鏡を向ければ確かにスネイプ教授がハリーに魔法をかけているように見える。ハリーを凝視して口を動かし続けているんだ、ほぼ確定だろう。しかし、彼がどうしてハリーを狙う?あれは悪ふざけでは済まない、確実に殺しにいっている呪いだ。彼がハリーを何故か憎んでいるらしいというのは聞いているが殺したいと願うほどなのだろうか。

 

そうだ、あの人はどうしている?ふと思い当たる事があって双眼鏡をずらしてみればやはり居た。スネイプ教授のようにハリーを凝視して口を動かす人物―――クィレル教授だ。ならば話は変わってくる。彼が呪いを掛けているとしたらスネイプ教授は………

 

「僕達、どうすりゃいいんだ?」

 

「私に任せて。」

 

僕がクィレル教授に注目している間にハーマイオニーは蒼白になって慌てふためいているロンに双眼鏡を押し付け、何か言い返す暇もなく走り出していた。

 

「ハーマイオニー!何を!?」

 

「スネイプの邪魔をするのよ!」

 

駄目だ……スネイプ教授を妨害すればハリーが危険に晒される。ニンバス2000がいくら優れた箒だとはいえ、二人の教授から呪いをかけられればすぐにでもハリーを地面に叩きつけていた筈だ。そうなっていないという事は二人のどちらかが呪いをかけ、どちらかが反対呪文をかけているという事。スネイプ教授が呪いを掛けている可能性も無いとは言えないが、反対呪文を掛けている可能性の方が高い。しかし、あくまで可能性でしかない以上、邪魔をするならどう転んでもいいように二人同時にだ……!

 

既に走り去ってしまっていたハーマイオニーを追いかけ、観客を掻き分けて教員席がある尖塔へと走る。

 

「くそっ、意外と速いな!ハーマイオニー!」

 

僕よりは小柄だからなのかハーマイオニーは観客の隙間を器用にすり抜けていき、そのまま群衆の中に消えてしまった。このままでは彼女に追い付く前にスネイプ教授の元にたどり着いてしまうか?ならば仕方ない……かなり遠いが尖塔の下からクィレル教授を狙おう。上手くいくかは賭けになるな……

 

尖塔の下の観客席からなんとかスネイプ教授とクィレル教授を視界に入れておける場所に陣取る。教員席に杖を向けているところを見られれば要らぬ面倒を引き寄せるかな。目眩ましも掛けておこう。さて、ハーマイオニーが行動を起こせばスネイプ教授に何か変化がある筈だ。

 

目を反らすな。彼女が何をしでかすか分からない。些細な変化も見逃すな…………ん?教授のローブに火が付いた!今だ!

 

ヴェンタス(風よ)!」

 

魔法を唱えると同時に吹いた強風によってクィレル教授は後ろにひっくり返った。塔の下から塔の上を狙って魔法を使ったのは初めてだったけど上手くいったようだね。……でもぶっつけ本番はするもんじゃない。凄く気疲れする。

 

それにしてもハーマイオニーは随分と大胆な事をしたな……教授のローブに火を付けるなんてバレたら罰則で済むかも怪しいところだ。死ぬことよりも退学を恐れていた以前の彼女は何処に行ったんだろうね?

 

『ハリー・ポッターがスニッチを取りました!百七十対六十でグリフィンドールの勝利です!』

 

興奮したリー・ジョーダンの声と大歓声が競技場内に響き渡った。邪魔が無くなったハリーは上手くやれたらしい。今回の騒動も無事に終わったようだ。

 

メルセデスはこの騒動を見ていたかな……見ていたならきっと笑っていることだろう。クィレル教授の凶行もそうだけど、ハーマイオニーの豹変も彼女が好きそうなシチュエーションだからね。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

sideシャロン

 

 

 

「あははっ!見ましたかシャロン?あのハーマイオニーが……つい先日まで周囲の人間が規則を遵守しないと嘆いていたあのハーマイオニー・グレンジャーが教師のローブを燃やすなどという規則どころか倫理すらも犯した行いをする様を!」

 

グリフィンドールの大歓声とスリザリンのブーイングが競技場を震わせる中、双眼鏡を覗き込みながらメルセデスが無邪気にはしゃいでいます。楽しそう……というよりは嬉しそう?楽しいならなんとなく分かりますけど嬉しいって……何が嬉しいんですかね?

 

「彼女のような人間も友の為なら自分の生き方を曲げられるようになるのですね。価値観や育った環境の違いから反目し合っていた者達も第三者による些細な影響によって無二の友と成りうる……素晴らしい……!彼女のような存在が私に夢を見させてくれるのですよ。」

 

そう呟きながらメルセデスは陶酔したような、恍惚としているような表情でハーマイオニーを見つめています。……どうしましょう。彼女の言っている事がよく分かりません。メルセデスは一体ハーマイオニーに何を見いだしているんでしょう。

 

怪訝そうな目になっている私に気づいたのか、メルセデスは我に返ったような仕草をした後一つ咳払いを挟みました。

 

「……気にしないでください。ただのくだらない戯言です。」

 

戯言にしておくには随分と感情が込められていましたけど……メルセデスが気にしないでいて欲しいと言うならそうしておきましょう。

 

「しかし、クィレル教授がハリーを狙うとは……私の与太話もいよいよ現実味を帯びてきましたね。」

 

「例のあの人がホグワーツにいるかもしれないって話ですか?」

 

メルセデスは以前からホグワーツに例のあの人が現れるかもしれないと言っていました。昨日私が伝えた予感と今回彼がハリーを狙った事でほぼ確信を持ったようですね。

 

「ええ、ハリーを殺したがるのは彼の信望者か彼本人くらいのものでしょうからね。他に居ないと確実に言うことはできませんが、別の目的を持ってダンブルドアが守るホグワーツに潜入しているという時にわざわざハリーを狙おうとする者はその二者ぐらいでしょう。」

 

そう言われると確かに……はぁ、例のあの人ですか……お父様の元ご主人様なんですよね。彼が姿を隠した後真っ先に光側へ寝返ったお父様はきっと恨まれてるんだろうなぁ。あまり関わりたく無いんですけど仕方がありません。メルセデス(私のご主人様)がなんとかしてくれます。きっと。

 

「試合の興奮から覚めて他の生徒達が大移動を始める前に寮に戻りましょうか。人混みは嫌いですからね。」

 

「大賛成です。さっさとこんな場所からおさらばしましょう。」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

sideダニエル

 

 

 

試合の後、ハリーやハーマイオニーと共にロンと合流した僕はハグリッドの家で紅茶を頂いていた。紅茶はかなり濃いめだった。個人的には嫌いじゃないけどメルセデスは苦手だろうな……

 

僕が純粋に紅茶を楽しんでいる間に、ロンは先程の箒の異変についてハリーに説明している。

 

「スネイプだったんだよ。ハーマイオニーも僕も、ダニエルも見たんだ。君の箒にブツブツ呪いをかけていた。ずっと君から目を離さずにね。」

 

「バカな、なんでスネイプがそんな事をする必要があるんだ?」

 

ロンの説明にハグリッドが割り込む。自分のすぐ隣であれほどスネイプがどうこう騒いでいたのに全く聞いていなかったらしい。まあ、それだけハリーが心配で目が離せなかったってことだろう。

 

「僕、スネイプについて知っている事があるんだ。あいつ、ハロウィンの日、三頭犬の裏をかこうとして咬まれたんだよ。何か知らないけどあの犬が守ってる物をスネイプが盗もうとしたんじゃないかと思うんだ。」

 

ハリーの話の三頭犬という部分に反応してハグリッドは手に持ったティーポットを落とすなんていう分かりやすい動揺をした。

 

「なんでフラッフィーを知ってるんだ?」

 

「フラッフィー?」

 

あの犬に名前がついているのか?ということはハグリッドがあの犬の飼い主なのか……魔法生物が好きらしいとは聞いていたがあんなものに手を出す程だとは。正直、ハグリッドの正気を疑わずにはいられないな……

 

「そう、あいつの名前だ。去年パブで会ったギリシャ人から買ったんだ。俺がダンブルドアに貸した。守るため……」

 

「何を?」

 

ハリーがぐいぐいと質問していくもハグリッドは首を振ってこれ以上の返答を嫌がった。

 

「もう、これ以上聞かんでくれ。重大秘密なんだこれは。」

 

「だけど、スネイプが盗もうとしたんだよ。」

 

尚も食い下がるハリーの言葉にも聞く耳を持たない。

 

「バカな、スネイプはホグワーツの教師だ。そんなことするわけなかろうが。」

 

「ならどうしてハリーを殺そうとしたの?」

 

ハーマイオニーは半ば叫ぶようにしてハグリッドに詰め寄った。つい昨日迄はスネイプ教授が物を盗もうとしている事に半信半疑だった彼女も先程の件で完全にクロと認識してしまったようだ。……そうでもなきゃローブに火を付けようなんて考えないか。

 

「ハグリッド。私、呪いをかけているかどうか一目で分かるわ。たくさんの本を読んだんだから!じーっと目を反らさずに見続けるの。スネイプは瞬き一つしなかったわ。この目で見たんだから!」

 

「お前さんは間違っとる!俺が断言する!」

 

ハグリッドの頑固さに埒が開かないと判断したロンは僕にも賛成を求めてきた。

 

「なあダニエル、君からも言ってくれよ。君だって見ただろう?スネイプがハリーから目を反らさずに呪文を唱え続けてたところを。」

 

「ああ……僕もスネイプ教授が何らかの魔法を掛けていたところは見たよ。だけど、それがハリーを殺す呪いだったと決めつける事は出来ない。同じように、スネイプ教授が廊下に侵入した事も盗む為だったとは限らないだろう?物が無事かを確認する為だったかもしれないじゃないか。」

 

先程はなし崩し的に邪魔をしてしまったが、これからメルセデスが闇側の存在として接触するかもしれないのでクィレル教授の名は出さないでおくが、一応スネイプ教授がシロかもしれない事は仄めかしておこう。

 

「君!スネイプの肩を持つのか!」

 

ロンが噛みついてきた。全く……自分がこうと信じた事を否定される度に突っかかろうとするのはロンの一番直すべきところだと思う。

 

「君達がスネイプ教授に偏見を持ちすぎなんだよ。いいかい?人ってのは見た目や日頃の行いでは図りきれないんだ。目に見える事だけに気を取られていればいつか、痛い目を見る。」

 

クィレル教授など正にそれだ。一体誰が上部だけを見て臆病者でおどおどしているクィレル教授を疑おうとするんだ?あんな人間もこの世には存在するという事を知らなきゃならない。只でさえ僕のような潜在的な敵を抱えてるってのに……

 

「じゃあなんだい?君はスネイプが実は聖人だったんだとでも言いたいのかい?」

 

「そうは言ってないだろう!」

 

なんだってロンはこう極端に人の言葉を捉えるんだ!そんなだから――――――――――

 

「喧嘩はよさんか!」

 

ハグリッドがその大きな腕で言い争う僕らの間に割り込んで来た。それでも尚、ロンはじっと僕を睨んでいる。困ったな……今度は僕がロンに敵視される番になったらしい。

 

「ハリーの箒がなんであんな動きをしたんか、俺にはわからん。だがスネイプは生徒を殺そうとしたりはせん。」

 

ハグリッドは僕らの目の前に立って腕を組み、一人一人と目を合わせながら真剣な面持ちで言い聞かせようとしている。

 

「四人ともよく聞け。お前さんたちは関係のない事に首を突っ込んどる。危険だ。あの犬の事も犬が守っている物の事も忘れるんだ。あれはダンブルドア先生とニコラス・フラメルの……」

 

ニコラス……フラメル?

 

「あっ!ニコラス・フラメルっていう人が関係しているんだね?」

 

ハリーがハグリッドを追及する声も、ハグリッドが自分の失態に憤る声も、僕の耳には入って来なかった。それほどまでにハグリッドの口から飛び出した名前が衝撃的だったんだ。

 

「ニコラス・フラメルだって……?」

 

ニコラス・フラメル、記憶に間違いがなければ世界的に有名な錬金術師の名だ。そして、生物に永遠の命を与える事ができる賢者の石を世界で唯一所持している人物。

 

「ダニエル、あなたニコラス・フラメルっていう人がどこの誰だか知っているの?」

 

ハーマイオニーは僕がフラメルの名を聞いてあからさまに動揺してしまった事に勘づいたようだ。とりあえず惚けておこう。

 

「いや……そうだな、聞き覚えはある気がするんだけど、どうだったかな……」

 

この情報は安易に伝える訳にはいかない。もし……あの廊下の先にある物が賢者の石であるのならメルセデスは絶対に石の奪取を目指す筈だ。彼女の研究は石が手に入らないからこそ停滞しているのだから。賢者の石の話を聞いてこの三人がどう動くのか全く分からない。メルセデスの邪魔になる可能性が塵芥ほども存在する以上、余計な知恵を彼らにつけさせる訳にはいかなかった。

 

これは一刻も早くメルセデスに知らせないとな…

 

そう考えながら、僕は紅茶の残りを飲み干した。

 

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