ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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諸君、私はGが嫌いだ。

諸君、私はGが嫌いだ。

諸君、私はGが大嫌いだ。

――――以下、長すぎるので省略。

執筆中に換気していた窓からGが現れやがりました。ええ、叩き出しましたとも。三時間かけて。あのこちらを煽るような触角の動きといったらもう……80㎝列車砲(ドーラ)の4.8㌧榴爆弾で木っ端微塵に粉砕してやりたくなります。

投稿が予想以上に空いたのは八割私の執筆速度で二割がGのせいです。申し訳ありません。



化物(フリークス)と賢者の石 三十二

 

 

sideダニエル

 

 

 

今夜の必要の部屋は小規模な会議室のような内装をしていた。暖かな暖炉の側に備え付けられた円形のテーブルを囲む三つの椅子。入り口から見て一番奥側の椅子の後ろには黒板が配置されている。その奥側の席にメルセデスが座り、残り二つの席に僕とシャロンが座っていた。こうして集まったのは禁じられた廊下について話し合う為だ。

 

メルセデスへの連絡を終えた後によくよく考えてみたんだけど。僕らは驚く程あの廊下についての知識が不足している。分からない事以上に不足の事態を招く原因はない。だから、まずは情報収集をするべきだっていう意見を持ってここに座っている。

 

「さて……話し合いを始めましょうか。禁じられた廊下への侵入について。」

 

メルセデスが杖を振るうと黒板に議題が浮かび上がる。

 

「二人共、何か意見はありますか?」

 

彼女の問い掛けに僕は直ぐ様手を上げた。

 

「どうぞ、ダニー。」

 

「僕の意見としては、侵入はまだ早いと考えている。廊下に仕掛けられている物が三頭犬しか判明していない状況だ。守られている物が賢者の石であるという確証も無い。本物かどうかも。賢者の石があると匂わせて盗人を炙り出す魂胆の可能性がある。」

 

あの廊下については分からない事だらけだ。今まで大した興味を持ってこなかったツケだな……

 

「つまりダニエルが言いたいことは情報不足だから危険だって事ですよね?その情報はどこから手に入れるつもりなんですか?」

 

僕の意見を聞いてシャロンが口を開いた。なんだか少し焦っているように見える。何でだろう?とりあえず質問には答えるか。

 

「ハグリッドだ。森番の。彼は…その…単純でね。上手く誘導すればいくらでも情報を吐いてくれると思うんだ。ダンブルドアからも信頼されていて例の物の移動も彼に任されている。情報源としては申し分無い筈だ。」

 

現に、さっきもうっかり口を滑らせている。酒でも飲ませれば饒舌に情報を喋ってくれるのでは無いだろうか。

 

「森番さんとはあまり関わりがないのでダニエルの言っている事は分かりませんけど……そんな簡単に喋ってくれそうなんですか?メルセデスは知ってます?」

 

「私もそこまで関わりが深い訳ではないのですが……正直なところ、彼には何の秘密も打ち明ける気にはなれません。」

 

「なるほど……」

 

ハグリッド……悪い人では無いんだけどいかんせん隠し事が下手すぎる。校長はよくハグリッドにニコラス・フラメルの情報を渡したなと思う。

 

「では、ダニーの意見は情報不足で危険……と。シャロンはどうですか?」

 

杖を振るって僕の意見を黒板に追加するとメルセデスはシャロンに意見を求めた。

 

「えっと、私はですね。大体ダニエルと同じ意見でして……ちょっと違うのは、情報源をまだ思い付けていなかったところです……」

 

言葉を尻すぼみにさせながらシャロンは申し訳なさそうに肩を落とす。ああ、さっき焦っているように見えたのは同じ意見が先に出てしまったからか。被ったところで誰も責めはしないんだけどな……メルセデスだってシャロンの様子には大して気に止めずに顎に手を当てて何か考え事をしている。

 

「ふむ、二人共まずは情報収集をするべきだという意見のようですね……私もその意見には賛成です。しかし、私の意見としては情報収集と並行して二人に、というよりは主にダニーですね。して欲しい事があるのです。」

 

暫しの考え事の後、メルセデスは僕らに向かってそう言った。情報を集める傍らにできる事なんて限られていると思うんだけど、メルセデスは僕らに何をさせたいんだろう?

 

「大前提として、私の意見は賢者の石の存在とヴォルデモート卿の存在が確実なものとなった時に意味を持ちます。その前提を踏まえた上で聞いて欲しいのですが……ヴォルデモート卿が石を狙って動き出した時にハリー・ポッターが廊下の最深部まで侵入しようとするよう仕向けて欲しいのですよ。」

 

「ハリーを?」

 

何故ヴォルデモート卿がいると分かっているところに宿敵とも言えるハリーを?身柄を彼への手土産にでもする気なのだろうか?

 

「ヴォルデモート卿は恐らく賢者の石による復活を望んでいます。いずれ石を奪う為に最深部を目指すでしょう。それをハリーが知れば、彼も最深部へと向かおうとするのは今まで見てきた性格からして想像に難くありません。彼には石を守る確かな理由と、無謀な事にも臆さず向かって行ける勇気があります。」

 

メルセデスの言っている事は容易に想像できる。ヴォルデモート卿が復活すれば自分を殺しに来ることくらい、魔法界に来たばかりのハリーにだって予想できるだろう。そして、じっとしていて殺されるのを待つくらいなら危険を承知で石を守ろうとする。ハリーはそういう人間だ。

 

「私はそんなハリーの英雄的行動を隠れ蓑にしようと考えています。私達はハリーに便乗して石を守る為という体裁で廊下へ侵入し、機会があれば目標を奪取する。これが最もリスクが少なく、最も石に近づく事ができる方法であると私は確信しています。」

 

「なるほどね……」

 

確かに、廊下に侵入した事がばれても守る為だと言い張れば咎めだけで済むかもしれない。ハリーと共にならより信憑性も高くなるだろう。だけど、ヴォルデモート卿から石を守る……その為にはハリーが帝王と闘う事になるのは言うまでも無い。そんな状況になるように誘導しろと言うのなら……

 

「それはつまり……ハリーを死に導けってことでいいのかな?」

 

ハリーを死地に追いやる事になる。彼はかつて帝王を倒した英雄で、きっといつかは名声に相応しい魔法使いになるんだろう。でも、それは今じゃない。今のハリーは箒が得意な一生徒でしかないんだ。ヴォルデモート卿と闘う事になれば、彼は造作もなく死ぬ。死んで……しまうんだ。

 

そう思って問い掛けてみたんだけど、返ってきたのは僕の考えを否定する答えだった。

 

「恐らく、ハリーは死にません。十年前、ハリーを死から逃れさせた何かが今もまだ彼を守っている。ダンブルドアもそう睨んでいるでしょう。もし予想が外れてハリーが死にかけてもダンブルドアが手を打つ筈です。」

 

「ハリーが何かに守られているかもしれないのは分かる。でも、なんで校長がここで出てくるんだい?もしハリーが死にそうになったらって、死にそうにならなければ手を出さないというように聞こえるんだけど……?」

 

まるで校長がハリーとヴォルデモート卿が闘っているところを傍観しているように言うじゃないか。まさかそんな事があるわけ……

 

「その通りです。ダンブルドアはハリーが殺される寸前までは手を出そうとはしません。」

 

どういう事だ?それに何の意味がある?

 

「ダンブルドアはハリーとヴォルデモート卿に強固な因縁を持たせようとしています。自身の命を狙う敵の存在を強く印象付け、魔法界で生きる限り自分が彼と闘わなければならない運命にある事をハリーに自覚させる。それを持って、ハリーを暴君を打ち倒す英雄(兵器)に仕立て上げる第一歩としたいのでしょう。」

 

「それが事実なら……彼は教職にいるべきじゃない。それは教え子にしていいことじゃない。それはここ(ホグワーツ)でやっていいことじゃない……」

 

ホグワーツは、学校というものは、生徒が自分で生きる道を決める場所だ。教師は生徒の適性を見極めこそすれ、道を決めつけてしまうことだけはあってはならない。ましてや、その決めつけた道が生徒の命を危険に晒す物などと……!それが教師のやることかっ!

 

……いや、まて。なんで僕がハリーの事で怒りを感じてるんだ?僕は校長の事を悪く言えないだろう?僕だってハリーに友達面して近づいて、いつかは杖を向けようとしている裏切り者じゃないか。今だってハリーを死地に追いやろうとしているのは……僕だ。

 

頭を振って下らない考えを頭から追い出す。今は話し合いに集中しよう。

 

「ハリーが石を守ろうとするのに便乗して侵入するなら帝王様はどうするんですか?石を巡って対立することになりません?」

 

僕が頭を振っている間に、会話の成り行きを見て静かにしていたシャロンがメルセデスに質問していた。

 

「そこは事前に話をつけておく必要がありますね。彼に私と手を組んでもらう材料はいくつか用意してありますが……その為にはまずヴォルデモート卿を見つけなければいけません。」

 

「まあそうですよね。どうするんですか?」

 

「少々危険が伴いますが、夜中にクィレル教授の自室を張ろうかと思います。」

 

「今まで昼間のクィレル教授しか見てきませんでしたもんね。もしかしたら夜に出歩いてるかもしれません。」

 

シャロンがクィレル教授を怪しんで以来、僕らは度々教授に注意を払ってきた。だけど、夜中に彼が何をしているかを探った事は無い。まだ危険を省みない時期では無いと判断した為だ。でも、そろそろ次の段階に進むべきなのかもしれない。

 

「そう言えば、帝王様との交渉が決裂してあの人がさっさと石を手にいれちゃった時の事とかも考えてるんですか?」

 

「一応頭の片隅にはいれていますが……恐らく大丈夫でしょう。ヴォルデモート卿が単独で石を手に入れる事ができるとは思えません。」

 

「え?どうしてですか?」

 

シャロンは驚きの声を上げる。当然だろう。彼の行動に何の意味も無いと宣言しているに等しいのだから。

 

「ダンブルドアがわざわざ石を奪おうとする者に石を手に入れる機会を与えると思いますか?あの老人は最後の最後まで目の前に餌を吊り下げておき、獲物が後戻りできなくなったところで餌を取り上げるくらいはいくらでもする人間です。もし、ダンブルドア以外の者が石を手にする事があるとすれば……それは本気で石を守ろうとした結果なのでしょう。」

 

―――――――そこを狙うのですよ。私達は。

 

そう言ってメルセデスは笑った。楽しい悪戯を思い付きでもしたかのように。

 

「さて、私の意見をまとめましょう。情報収集は勿論します。主に廊下の事、例の物の事、クィレル教授及びヴォルデモート卿の事についてですね。そして、ハリーがいずれ廊下へと向かうように仕向ける。例の物が賢者の石でなくとも、ハリーと共に物を守ったという実績によってダンブルドアの警戒を下げる事ができるかもしれません。やる価値はあると考えています。如何でしょうか?」

 

「異論無しです。ぶっちゃけ後でいくらでも修正できそうですし。今はこれでいいと思います。」

 

「僕も異論は無い。ハリーの誘導は……任せてくれ。君の期待に応えて見せるよ。」

 

ハリーの誘導というところで胸に僅かな痛みが走った。一体僕はどうしてしまったんだろう。友達ごっこを本気にしてしまっているのか?馬鹿らしい。

 

「では、話し合いはここまでにします。行動の開始は明日から、今日は早めに休むとしましょう。」

 

メルセデスの言葉に僕らの雰囲気が緩む。別に改まった会議でも無いのだけど、今後の方向性を決めるという意味では大事な会議だったからそれなりに気を張っていたようだ。

 

「そう言えばダニー、先程考えておいて欲しいと言ったご褒美は決まりましたか?」

 

「ん?ああ、そうだ。ここでお願いしてもいいのかな?」

 

必要の部屋に集まる前、フラメル氏の情報を持ってきた褒美にメルセデスが何でも欲しいものを聞いてくれると言われていた。僕としてはメルセデスと過ごす時間以上に大切な物は無いから、それを望もうと思っている。

 

「あ、私は先に戻ってますね~。ごゆっくりどうぞ~」

 

僕がメルセデスに望みを伝えようとしたところでシャロンは早々に部屋から出ていってしまう。去り際に意味ありげな笑顔でこちらを見てきた。相変わらず察しが良いと言うかなんと言うか……

 

「ダニー?」

 

「ああ、何が欲しいかだね?そうだな……君とゆっくり過ごす時間が欲しい……お願いできるかい?」

 

「ふふ、そんな事で良いのですか?それなら私からお願いしたいくらいですよ。」

 

メルセデスが杖を振るうと暖炉の側に柔らかそうなソファーが現れた。メルセデスは僕の手を取ってソファーへと導くとそのままソファーに座った。僕もそれにつられてソファーに座る。

 

「一つだけ確認してもいいですか?」

 

僕がソファーに座るなり、メルセデスが口を開いた。

 

「なんだい?」

 

「ハリーが心配なようですね?ダニー。」

 

……一瞬息を詰まらせてしまった。メルセデスには何でもお見通しらしい。

 

「そう……だね。僕は、ハリーを心配してしまってる。」

 

「やはりそうなのですか……」

 

メルセデスの顔が不安げに歪む。やっぱり……メルセデス以外の人間に心を砕くべきではないんだ。彼女を不安にさせる事はしたくない。

 

「私が殺して欲しいと頼めば……殺してくれますか?ハリーを……友人達を殺せますか?」

 

「言うまでもない。君の頼みなら、僕は殺せる。」

 

僕の中でハリー達への情がどこまで大きくなろうともこれだけは変わらない。例え、向けた杖が震えようと、視界がぼやけようと、僕はメルセデスの望みを果たすだろう。だけど、メルセデスは僕の答えに不満があるようだった。

 

「ダニーが最後には私を望んでくれると分かっています。分かっていますが……それでも、あなたの心に私以外の人間が居るのは好ましくありません。」

 

メルセデスは僕の頬に手を添えて自分の方へ顔を向けさせると、白魚のような指先で僕の額に触れた。花を手折るにも苦労しそうな細く美しい指先。でも、その指先には人を壊すのに十分すぎる魔力が秘められている事を僕はよく知っている。

 

そんな指先を僕に触れさせたまま、彼女は僕の目を覗き込む。メルセデスの目は普段よりも血のような濁りを増しているように見えた。

 

「あなたの目から私以外の生き物の姿を消したい。あなたの耳から私以外の声を消したい。あなたの鼻から私以外の匂いを消したい……あなたが私以外を感じられなくなるようにしたい……何も無い場所に閉じ込めて、私の存在だけが人生の全てとなるようにしたい……」

 

もはや狂気の域に達した独占欲に溢れる囁きだった。清く正しく世を生きてきた人間が聞けば吐き気を催す程の。でも……そんな言葉で歓喜に心を震わせてしまっている僕もまた、どうしようもないところまで来てしまっているんだろう。

 

もう、メルセデスの望むままにされてしまってもいいかな……

 

そんな考えが頭を占める。頭の中に侵食してくるようなメルセデスの声に当てられて、頭が馬鹿になってしまっているようだ……僕は、彼女に身を任せるようにして目を閉じ、彼女が僕を壊すのを待った。

 

だけど、何も起きない。

 

「……それはもっと先までとっておきましょうか。」

 

僕の額に触れていた指が離れていくのを感じる。目を開けてみれば、目の前に妖しい笑みを浮かべたメルセデスの顔があった。

 

「そこまで駄目にしてしまえば、もう二度と今のダニーには会えなくなります。今の、ハリー達に友情を感じながらも私の望みを気にして申し訳なさそうにしているダニーに、二度と会えなくなります。それはとても惜しい。それに、すぐにあなたを壊してしまうよりも、いずれ大事な存在となった彼等が死んで、いよいよ私しか居なくなったダニーを私で満たす事の方がより心からあなたを駄目にできそうで……想像するだけで気をやってしまいそうになります。ですから……」

 

その赤い瞳を濁らせる狂気を更に深めながら、メルセデスは言葉を続ける。

 

「命令です。ダニー。私がハリーを、あなたの友人達を殺すと決めるその時まで、彼等を守り抜きなさい。」

 

その命令は彼女の嗜好を満たす為のものなのだろう。でも、他ならぬメルセデスによって僕がハリー達を心配する大義名分が与えられたのは事実。

 

「――了解。」

 

僕はその目に見えている罠に飛び付いた。きっと、その時が来れば僕は、メルセデスによって人と呼べない所まで堕とされる。だけど、僕はその未来に倒錯的な悦びを感じていた。全く……僕も、君も、救いようが無い拗らせ方をしてしまったものだ。

 

「ふふ……ダニー、愛していますよ。さて……後はあなたの望み通り、二人でゆっくりとしましょうか。」

 

それからはとても穏やかな時間が流れた。さっきまでの狂気と欲に満ちた雰囲気など欠片も感じる事は無い、穏やかな時間だった。

 

 

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