ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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お盆休みの方が平時よりも忙しかったような気がします……
クリスマス休暇を一話に収めようとしたのですが、執筆中に一万文字を優に越える事が判明しましたので結局分割しました。明日には続きを投稿できるかと。


化物(フリークス)と賢者の石 三十三

 

 

sideメルセデス

 

 

 

また一月と少しが経ち、十二月も半ばを過ぎる頃になった。いよいよ降りだした雪は外の景色の全てを白く染め上げ、その白に生命の騒々しさを閉じ込めている。雪の積もる日の朝ほど日々の生活の中で静けさを感じる時はない。そんな冬の静けさというものは人でなしの猛りすら鎮めるらしく、時折聞こえる森の怪物共の咆哮も近頃は鳴りを潜めていた。

 

近頃の生徒達の頭を占めている事があるとすれば、それは直前まで迫ったクリスマス休暇だろう。休暇中は帰省が許されており、殆どの生徒がホグワーツから姿を消す事になる。クリスマスを家族と過ごす為だ。休暇中に帰省しない生徒が居るなら、それは家族と折り合いが悪いか何らかの理由で帰省出来なくなったか、後はそもそも迎えてくれる家族が居ないかである。

 

私とダニーはホグワーツに残る数少ない生徒の一部だ。特に私はスリザリン内で唯一の居残り組とあって、さぞ寂しいクリスマスを送るのだろうとバーキンソンが嘲笑いに来た。気にした素振りを見せずにダニーと共にクリスマスを過ごす事を伝えると詰まらなそうに帰っていったが。ちなみにホグワーツに残る事を決めたのは私達が居ない間にクィレル教授が行動を起こす事を嫌った為だ。

 

クィレル教授と言えばだが、以前話し合いで決めた通り自室への張り込みを決行した。ほぼ徹夜での監視を一日交代で三週間に渡って実施したのだが、この期間にクィレル教授が何らかの動きを見せる事はなかった……と言うよりは部屋から出る姿を見ることすらなかった。意味がわからない仕掛けが多いホグワーツなのだ、目に見える扉以外の出入口があるかもしれないと色々探ってみても鼠一匹這い出る隙間も無い。結局、クィレル教授は夜中でも自室に籠ったままであると結論づけた。

 

しかし、何の成果も得られなかった訳では無い。我々は確かに聞いたのだ。部屋の中から響く……何者かに許しを乞うクィレル教授の泣き声を。あれが自分の陰口を叩く生徒を思い出して一人泣いている声でなければ、間違いなくあの部屋には教授を跪かせる者が居る。よって私は、休暇中にホグワーツに残った全ての人間が大広間へと集うクリスマスパーティーの日にクィレル教授の自室に侵入する事にした。長々と数ヶ月間も引きずってきた問題をいい加減に終わらせたくなったのである。

 

そうして一つの問題を終わらせようとしているのだが、その前に解決しなければならない問題が私を大いに悩ませていた……ダニーに贈るクリスマスプレゼントが決まらないのだ。

 

「ふむ……」

 

「なにやらお悩みのようですね~?ダニエルへのクリスマスプレゼントですか?」

 

寮の自室でダニーへの贈り物について思案していると、からかうようなにやけ面を晒したシャロンが話しかけてきた。首を突っ込みたそうにしている。顔が気に入らないが悩んでいるのは事実であるし、一人で悩んでいても仕方がない。頼ってみるとしようか。私よりは経験が豊富な筈のシャロンなら何かを良いアドバイスをしてくれるだろう。

 

「そうなのですよ。今年は例年通りにはいかないのでどうしようかと思いまして……」

 

「いつもはどうしていたんですか?」

 

「ダイアゴン横丁に二人で出掛けて、二人の目に付いた物を贈り合っていましたね。菓子が主でした。」

 

私とダニーが産まれた村に住んでいた頃もお互いに菓子を贈り合っていたのだが、世間一般では何を贈り合っているのだろうか?参考までにシャロンの事も聞いておこう。

 

「シャロンはどのように?」

 

「ああ~、私にそれ聞きます?聞いちゃいます?」

 

質問した途端、シャロンは口を尖らせて非難がましい声を出した。口では質問した事を責めているようだが、目は何かを期待するかのようにチラチラとこちらを見てくる。なんと言うか……あれだ。うざい。聞かれたく無いのか聞かれたいのか、どちらなのか。

 

「答えたくないなら無理に……」

 

「いえ!お答えしましょう!兄夫婦が我が家を掌握して以来、貰った事もあげたこともありません!」

 

「…………」

 

結局答えるのか……しかし、そうか。勝手に経験が豊富そうだと思っていたが、そう言えばシャロンの家庭環境は私よりも酷いのだった。兄夫婦からは半ば邪魔者のような扱いを受けているにもかかわらず、資金繰りや家事を一手に引き受けていたと聞く。交友関係も断絶していたと言うし、シャロンにはプレゼントを贈り合えるような存在など居なかったのだろう。

 

「あれ?思ってた反応と違う……そ、そんな可哀想なものを見るような目をしないでください……もっと笑い飛ばしてくれればいいんですよ?」

 

「シャロン。」

 

シャロンの肩に手を置き、なるべく優しく見えるように笑顔を向けてやる。

 

「大丈夫です。あなたにもプレゼントを贈りますよ。」

 

「はうっ!」

 

奇妙な呻き声を上げながらシャロンは大袈裟にベッドへ倒れた。その表情は恍惚としてだらしなく緩んでいる。

 

「うぅ……メルセデスがたまに見せる優しさが胸に刺さるぅ……」

 

プレゼントを贈ると言ったくらいで優しいと感じるのか?シャロンは世に言うチョロいという人種なのかもしれない。

 

しばらくシャロンが気味悪く身をよじっている姿を眺めていると、ベッドの隅に広げられたトランクが目についた。中には休暇中の課題や衣類が乱雑に詰め込まれている。恐らく、先程まで帰省の準備をしていたのだろう。

 

「そう言えば、シャロンは休暇中にガードナー邸へ戻るのでしたね?」

 

「そうなんですよ!兄から帰って来いとの手紙が届きまして……普段は私を居ないものとして扱ってた人が私にわざわざ帰って来いだなんて、ろくな用事じゃないに決まっています!」

 

シャロンは休暇中に帰省する事になっていた。入学の際、キングズ・クロスでの見送りどころか館の玄関にすら見送りに来なかったらしい人間からの帰還命令……現ガードナー当主夫妻に会った事もない私ですらきな臭さを覚えるのだ、シャロンが感じる危機感は相当なものだろう。

 

「何かあれば全力で逃げに徹するように。こと逃走に関してあなたは私をも越える逸材ですからそうそう捕まる事は無いでしょう。連絡さえしてくれれば私が対処します。」

 

「あはは……逃げるような状況にならないのが一番なんですけどね……間違いなく何かはあるんですけど。あ、メルセデスだって危ない橋渡ろうとしてるんですから気をつけて下さいね?」

 

「言われるまでもありませんよ。ですが、心配してくれる気持ちは受け取っておきます。」

 

クィレル教授の自室に侵入して、仮にヴォルデモート卿と遭遇したのだとしても切り抜けるだけの準備はしている。だが、今は力を失っているとはいえ相手は一つの時代を築いた魔法使いだ。油断という言葉すら頭に思い浮かべる気はない。

 

とはいえ、気を張りすぎても視野を狭くしてしまうだろう。物事を上手く回すには、何時如何なる状況でも愛する人の腕の中に居るような落ち着きを持つことが重要だと私は思う。

 

「はぁ……それにしても、ダニーへ何を贈りましょうか……」

 

「ありきたりですけど、何か常に身に付けられる物を魔法で作って贈ったらどうですか?ダニエルはメルセデスから貰った物を常に身に付けられて嬉しい、メルセデスはダニエルが自分が作った物を身に付けてくれて嬉しい、お互いがハッピーになれますよ?材料なら必要の部屋から取ってくれば済みますし。」

 

メルセデスなら余裕ですよね?とシャロンは言う。確かに私なら余裕だ。変身術もこの数ヶ月で随分と応用を利かせられるようになった。再生者(リジェネレーター)の研究に必要だった生命の石を錬成する為にかじった錬金術も使えばなかなかの物が出来上がるだろう。

 

いっそのこと生命の石を使った何かを贈ろうか。生命の石は作成方さえ知っていれば以外と簡単に作れるのだ。必要の部屋がある以上入手は容易。そうだ、贈り物に使う分ともう一つ作っておこう。ダニーが魔法薬学の傍らに挑戦している錬金術の良い指標にもなる。

 

何より、シャロンの言う通り私が作った物をダニーが常に身に付けていてくれれば……それはとても素晴らしい事だ。私が贈った物だけを身に付けているダニーを見れば、私の決壊しかけている独占欲も少しは収まるだろう。先日、独占欲の堰が切れてダニーを本気で壊そうと考えてしまった事がある。出来る限り抑えておかねば。

 

「シャロン。その案、頂きます。」

 

そうと決まれば早速、図案を書き起こそう。ダニーに贈る物は全身全霊を持って作り上げなければならない。必ず身に付けてもらえるようにしなければ意味がないのだから。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

sideダニエル

 

 

 

グリフィンドールの談話室の片隅で、机に向かって世話しなく手を動かしている僕に話しかけてくる奴らがいた。

 

「最近それにばっかり集中してるみたいだけど、一体何を作ってるの?」

 

「図書館でフラメルを探している間も他の事を考えているみたいだし、ダニエルにとってはとっても重要なものなんでしょうね。例えば、誰かさんへのクリスマスプレゼントとか。」

 

「わかったぞ。さてはウォルターへのプレゼントだな?」

 

上からハリー、ハーマイオニー、ロンの順番である。何の順番かって?メルセデスへのプレゼントを作っている僕をからかいに来た順番だよ!

 

クリスマスを目前にした僕には一つ、大きな悩みがあった。メルセデスへのクリスマスプレゼントが決まらなかったんだ。普段は菓子を作ったり買ったりして贈っていたんだけど、今年は何か身に付けていてくれるような物を贈りたかった。それも自分の手作りで。だけど、メルセデスは装飾品の類いはあまり好まないし、服を仕立てるほどの技術を僕は持っていなかったから、実用的な小物を作ることにした。そんなこんなで、他の事を多少おざなりにして贈り物の製作に集中していたら、メルセデスへのプレゼントであると見抜いた三人に度々からかわれるようになったんだ。最近では僕が何かに集中していると大体メルセデスが関係しているというジンクスが三人の間にまかり通っているらしい。ほぼ間違いでは無いのが悔しいな。

 

さて、僕がメルセデスへのプレゼントに作っている物の説明をしよう。簡単に言うと、ワンドホルダーとポーチが付いたアームカバーだ。メルセデスの杖腕である左腕には、杖を抜くという意思を持って腕を振れば杖を手元に飛ばすようになっているワンドホルダーをベルトで固定して、右腕には検知不可能拡大呪文をかけた縦長のポーチをベルトでくくりつけた。右腕のポーチも装着者の意思で開閉する事ができる。

 

アームカバー本体にも拘った。表には耐刃性の高い生物の革を使ったから、よほど鋭い刃物でなければ腕で受けても問題無い。裏地には一般の蛇とは違って周りの気温が下がれば体温が上がり、気温が上がれば体温が下がるという体質を持った不思議な蛇から取れる革を使った。これによってどこに着けていっても不快になる事は無い筈だ。

 

……我ながら色々と盛り込み過ぎたような気がしないでもない。

 

「あら、手が止まったわね。それで完成なの?」

 

「ああ、完成だ。」

 

作成に二週間近くかかった大仕事だったがようやく完成した。

 

「よくわからないけど、なんだか凄そうだよな。こんな力が入ったプレゼントを渡すのはウォルターだけなのかい?」

 

「愛する人へのプレゼントに全力を出すのは当然だろう?すまないが、君たちへのプレゼントに同等のクオリティは期待しないでくれ。」

 

僕がそう言うと三人は口々に最初からここまでは期待していないと返してきた。それはそれで少し寂しいな……

 

まあいい、一番大事なのはメルセデスが喜んでくれるかどうかだ。

 




ダニエルが作っていた物の見た目は、なんとなく進撃の対人立体機動装置の腕の部分を想像しています。
右腕のポーチに関しては、「袖から無数の銃剣(バヨネット)」を実現できる道具だと思ってください。
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