東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第十話 エースバーンvsマフォクシー 前編

 永遠亭チームは鈴仙・優曇華院・イナバ、パチュリー・ノーレッジ、古明地こいし、霍青娥、庭渡久侘歌という濃すぎるメンバーであり、代表(にさせられた)の鈴仙はまとめるのに胃をキリキリさせていた。一方、妖怪の山チームはリーダーの射命丸文、姫海棠はたて、純狐、依神紫苑、茨木華扇、驪駒早鬼とこれまたずいぶん文が苦労するように思える。しかしこのチームにはあの説教仙人華扇がいるのでまとめ役には最適である。しかしナワバリが妖怪の山と言う理由だけで文が代表となった。ちなみに華扇はそんなこと気にしていないようである。

 永遠亭チームがテレポートさせられ、すぐに対戦相手は誰がするかの話し合いになった。

 

「さて、こっちは誰か戦いたい人いますか?」

「私は別にいいわ。正直取材の方行きたいし」

 

 文のライバルはたては自前の携帯をいじりながら答えた。本人はあまりバトルに興味はなさそうだが相棒ポケモンが戦いたいようなので半ば無理矢理強制させられた。だが対戦相手を選ぶのはトレーナーなのであしからず。

 

「私も……自信ないし、遠慮しておく」

 

 貧乏神の紫苑は戦うこと自体にやや抵抗があるようでこのように積極的に参加することはない。だが弱いわけではなく、かなりの実力者らしい。

 そういうわけでこっちのチームはすでに決められていた純狐、華扇、早鬼の三人にスムーズに決まった。なお、文は自分が戦うよりも周りの人たちが戦った方が勝てそうだと予想していたので譲っていた。

 

「え、ええっと……あと二人誰がする?」

「私早鬼さんと戦いたいです!」

「私も誰でもいいけど戦いたーい!」

「私のムウマージだったら誰でも倒せるわよ?」

「ふふ。あの仙人さんにちょっかいかけたいわね~」

 

 自我が強すぎてまとまりがなさすぎた。誰も彼も戦いたくてウズウズしておりリーダーの鈴仙はしどろもどろになった。このままでは収拾がつかなくなると思ったのでくじびきにすることにした。その結果青娥には華扇が、久侘歌には早鬼が当てられた。

 

「やったー! 早鬼さんとバトれるなんて嬉しい!」

「さて、どんな風におちょくろうかしら……?」

「仕方ないわね、ムウマージこっちで見ておきましょうか」

 

 戦いに不参加のパチュリーとムウマージは観客席の方に移動した。なおこいしはいつの間にか消えていた。無意識を操る程度の能力なので消えていたことにすら途中気付かなかった。

 

「あ、文さん。こっちは決まりました」

「じゃあ場所どりを決めましょうか」

 

 リーダー同士のコンタクトは問題なく進む。味方を制御するのが一番の難関である鈴仙であった。

 

 どちらにも不平等にならないよう戦闘場所を決めあった。鈴仙のところは玄武の沢付近。青娥のところは天狗のすみか辺り。そして久侘歌のところは華扇の助力で華扇の家付近にしてもらった。本来は何重もの結界が仕込まれているが解除してくれた。早鬼が大暴れして山が消えると予想したので特別に場所を貸してくれた。ちなみに華扇の空間はどういうわけかスキマで行けない。途中経過は分からないブラックボックスなので華扇の戦いが終わらないと結果が分からない。

 

「ふふ、華扇さん。仙人同士お手柔らかにお願いしますね」

「……嫌な予感がするんだけど」

「早鬼さん! よろしくお願いします!」

「ふっ、どーんと来い! ちなみに華扇よ、家ぶっ壊れるかもしれないがいいか?」

「いいわけないでしょ」

 

 まとめ役はツッコミの立ち位置になることが多いのであっちはあっちで苦労しているのだなと鈴仙は華扇に同情していた。だが鈴仙自身同情している余裕がある相手ではない。何しろ相手は鈴仙の天敵なのだから。

 

「ふふふふふふ。うどんちゃん、仲良くやりましょうね……」

「は、はは……」

 

 鈴仙には乾いた笑いしか出てこなかった。先の異変を解決した鈴仙であったが、そのときの異変の首謀者純狐に妙に懐かれることになり、現在は若干ストーカー状態になっている。そういう意味での天敵であり、この戦いだけ固定されていることをひどく恨んでいた。

 

 

 各人が対戦相手を確認したところで前述した場所へ赴いた。清らかな川のせせらぎが聞こえるこの玄武の沢周辺ではストーカー被害者と加害者のバトルが始まろうとしていた。なおルールは一回戦のときと同様二勝した方のチームの勝ちとなる。紫の合図とともにバトルが早速始まった。

 

「あらあらもう始めるのね。もっとうどんちゃんとお話ししておきたいのに」

「いいですからもう始めましょう! さあおいでエースバーン!」

 

 モンスターボールから現れたのはストライカーポケモン、エースバーン。うさぎっぽい見た目をしており鈴仙とは息ピッタリで相性もいい。元々鈴仙もエースバーンも真面目であり努力家なのでコンビネーションに関しては文句のつけどころがないほどみっちり鍛えてきた。

 

「さすがうどんちゃんによく似たポケモンね。センスがいいわ。私はこの子よ」

 

 純狐の方のモンスターボールからはまるで純狐のようにモフモフしたポケモンが現れた。奇しくもその出会いは運命的なものであった。

 

「……え? 先輩!?」

「うん? あ! エースバーン君……」

「先輩って……あのマフォクシーが?」

 

 エースバーンと相手ポケモンのマフォクシーは実は同じ故郷出身であり、とある出来事があって以来先輩後輩の関係なのである。当時マフォクシーはエースバーンとよく対戦をしていたがエースバーンに白星がついたことはほとんどなかった。

 

「久しぶりね。一年ぶりくらいかな? あのときはまだラビフットだったわね」

「お陰様で強くなれました」

 

 エースバーンはラビフットの進化系であり、進化するとパワーもスピードも格段に跳ね上がる。たくましく育ったのを見て顔を綻ばしていた。

 

「じゃあ試合始めましょうか。マフォクシー、マジカルフレイム」

「ニトロチャージでかわして!」

 

 らせんを描きながら放たれるマジカルフレイムだが難なく回避するエースバーン。しかもこの技のおかげでどんどんスピードが上昇するのでただでさえ速い動きがどんどん加速していく。

 

「見違えたわね。あのときよりもずっと速いわね」

「俺も先輩に負けないよう頑張ってきましたから!」

「あら、それは嬉しいわね。でも……」

 

 エースバーンはマフォクシーの死角をとり、スピードを乗せた一撃を決めるつもりで突進した。

 

「まだ甘いわ」

 

 マフォクシーは体を左に逸らしてヒラリとかわした。だがそれだけではなく右足を伸ばして足払いをした。下段なんて意識していなかったエースバーンは頭から豪快にこけてしまった。

 

「エースバーン! 大丈夫!?」

「あ、ああ大丈夫……」

 

 頭を起こしたと思ったそのとき、眼前にはマフォクシーが何か技をかける寸前だった。

 

「さいみんじゅつ」

 

 持っている木の枝をゆらゆらと不規則に動かすとエースバーンの目がトロンとした。さいみんじゅつは本来命中しにくいはずの技だが至近距離で浴びてしまったためエースバーンは眠ってしまった。

 

「いいわよ~マフォクシー。今のうちにみらいよちお願い」

「ええ。そのつもりよ」

 

 純狐たちはこの隙に攻撃を仕掛けるのではなくみらいよちを仕掛けた。マフォクシーのサイコパワーが宙に浮かびどこかへ消えた。忘れた頃にやってくる強大な技であり、当たったらひとたまりもないだろう。しかし作るのに時間を要するようで完成したときにはエースバーンは目覚めてしまった。

 

「ん……? あれ?」

「エースバーン、みらいよち作られちゃったから気を付けて!」

「み、みらいよち……か」

 

 みらいよちはマフォクシーの十八番とも言える技である。エースバーンが見てきた中で過去今までこの技を喰らって立っていた者はいないほどの強力な技である。その壮絶な破壊力を傍で見てきたので単語を聞くだけで身震いしていた。

 

「だ、大丈夫?」

「……鈴仙。みらいよちが来る前に決めるぞ!」

「! ええ。分かったわ。じゃあ行くわよ、シャドーボール!」

 

 接近戦になるといつさいみんじゅつを撃たれるか分からないので遠距離から攻撃を仕掛けることにした。

 

「へえ、初めて見る技ね。本当に成長したのね」

「こっちもシャドーボールよ」

 

 シャドーボール同士が激しくぶつかり合い黒い衝撃波が発生していた。押したり押されたりしているがパワーで上回ったのはエースバーンの方だった。シャドーボールがマフォクシーに迫り、これは弾き返すことなくそのまま体を大きく動かしギリギリ回避した。エスパータイプも含むマフォクシーにはゴースト技はこうかはばつぐんになってしまうのである。

 

「私のシャドーボールを打ち破るなんてずいぶん鍛えたのね」

「いつか先輩と戦うときが来たときに十分にやりあえるようにと思って」

「……う、嬉しいわね」

 

 マフォクシーは照れていたがエースバーンは脂汗を浮かべていた。渾身の力を放ったシャドーボールが通用しなかったのである。みらいよちが来ては終わりなのでこの一撃にかけていたはずなのに上手い具合にいなされてしまった。また鈴仙もエースバーンの意図が読めていたのでほのお技ではなくあえてのゴースト技を選択したのであった。二人には実質戦う手段が残されていない。脂汗は滴るばかりだった。

 

「あら、もう打つ手がないのかしら? うどんちゃん?」

「まっ、まだまだこれからです!」

 

 なるべく表情を崩さないように気を付けていた鈴仙だったが不安感を少しばかり顔に出してしまった。それを見抜くことのできた純狐は化け物の類か何かだろうか。ストーカーはやはりおそろしい。

 

「じゃあそろそろ終わりにしましょうか」

「シャドーボール!」

 

 純狐からの命令でマフォクシーはシャドーボールを連発した。ニトロチャージを積んでいたそれらをかわすのは容易であった。しかしそれが逆に不気味であった。あの先輩がこんな避けられる攻撃をしてくれるのはどこかに誘導されているのではないかと。とは言うものの避ける以外の選択肢がなかったので避け続けていた。

 

「あ! エースバーン、足元」

「え?」

 

 鈴仙の呼びかけが一足遅かったのか何かに躓いてしまった。くさむすびかと思いきや足元に絡みついていたのはメラメラ燃えている炎であった。技スペースが埋まっているのでマジカルフレイムをくさむすびに応用したのだろう。再び頭からズッコケたエースバーンはすぐさま足元の炎の蔦を引きはがそうとしたががっしりと結びついて中々離れない。

 

「……そろそろね」

 

 そろそろ。もうすぐやってくるものの主語は言わなくても鈴仙たちは分かっていた。特にエースバーンは実際にその威力を目の当たりにしていたのでこの動けない状態では恐怖でしかなかった。

 

「エースバーン、まだまだだったわね」

 

 マフォクシーが木の枝を相手に向けると先ほど消えたみらいよちが再び現れてエースバーンに襲いかかった。

 

「うわああああああ!!!!」




読んでいただきありがとうございます。最近暑くなってきて頭痛がするのがきついです。この東方携帯獣シリーズが終わるのに何年かかるか分からないですが絶対に失踪しないのでよろしくです! 

No.6 純狐 ドラゴン・ゴーストタイプ 妖怪の山チーム 相棒ポケモン マフォクシー ほのお・エスパータイプ

ここの純狐さんはシリアスにならず優曇華を狙う変質者みたいなポジションです。ですがヘカーティアやクラピには慕われています。今後絡みも出てくるかもしれません。最初はタイプつながりでギラティナにしようかと思いましたがパルキア出たからいいかなーって。それで狐つながりでマフォクシーにしました。そういうわけでディアルガも出ません。ディアルガファンの人すみません。
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