東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第十五話 鳩鶏鴉駒

 永遠亭チームと妖怪の山チームの戦いも佳境に入った。舞台は華扇の別荘。この勝負に勝った方のチームが二回戦に行くことができる。対戦相手は庭渡久侘歌と驪駒早鬼。相棒ポケモンはピジョット、アーマーガアという鳥ポケモン同士であった。先の異変で仲良くなった二人であったので遠慮なく力をぶつけ合っていた。当然別荘は半壊状態であり、この空間でなければ大変なことになっていただろう。

 

「早鬼さんのアーマーガア強いですね!」

「お前のピジョットもな」

 

 半壊状態になってはいるが試合の流れはどちらにも傾いておらず膠着状態であった。なぜならばアーマーガアがどんな攻撃を仕掛けようともピジョットのかげぶんしんでかわされるからである。一方、ピジョットからの攻撃も空の王者、アーマーガアの鉄壁の鎧には傷一つ付けられないからである。実際にてっぺきも積んでいた。

 

「楽しいが……全然進展しないのも困りものだな」

「一発でも当たれば倒せるのによ」

 

 アーマーガアは早鬼とは反対にもどかしく思っていた。相手は自分よりも格下の一般ピジョット。そんな相手に手こずっている自分に嫌になっていた。プライドが高いのが短所になってしまっていた。

 

「俺に当てられるものなら当ててみな。タクシー野郎」

 

 ピジョットは挑発したつもりだったがアーマーガアには効かなかった。トレーナーの足になろうと思ったのは自分自身の意志でありそのことを恥じるつもりは毛頭なかった。自分に確固たる自信を持っているのが大きなプライドを持つことの長所でもあった。しかしピジョットの言うことも尤もであった。攻撃力・防御力と引き換えにピジョットは圧倒的素早さを有していた。かげぶんしんを使われていなくとも当てるのは至難の技であっただろう。

 

「ピジョット、このままじゃ埒が明かないからあの奥の手使うよ」

「……そうだな。ジリ貧になったら俺たちの負けになるからな」

 

 いくらかわし続けていると言っても一発でも当たればKOであった。それを軽んずるほど油断はしていなかった。こっちの攻撃に合わせて攻撃が飛んでくる、すなわちカウンターが飛んでくる可能性もあったからだ。

 

「ほう……来るか」

 

 早鬼は久侘歌たちが何か仕掛けてくると分かると、乗っていたアーマーガアから飛び降りた。何十メートル上空から飛び降りても平気な顔をしているのは比類なき脚力を持つ程度の能力のおかげだろうか。アーマーガアがよく分かっていない顔をしているところから作戦は伝わっていないのだろう。だが二人の信頼の上ではそんなことは些細なことだった。ただ真っ直ぐと対戦相手を見つめていた。

 

「行くよピジョット!」

「迎え撃つぞ! ブレイブバード!」

 

 突進してくるピジョットに真っ向から最大火力のブレイブバードをぶつけた。この一撃で全てを終わらせるつもりだろう。青いオーラを纏ったアーマーガアには競り負ける自信はなかった。

 

「……今よ! はねやすめ」

「何!?」

 

 久侘歌たちはそもそも競り勝つつもりはなかった。自分たちよりも格上の相手ならばいかに攻撃を当たらないかが肝要になってくる。そのために編み出したこのはねやすめで急降下することで確実にかわすことができた。しかしこれだけでは終わらない。

 

「続けてぼうふう!」

「ぐっ、こんなもの……ぬ、抜けられない!?」

 

 アーマーガアの真下に潜り込んだピジョットはそこからぼうふうを繰り出した。不意を突かれたアーマーガアは見事にかかってしまった。その渦から逃げようとスピードを出そうとするも一向に進んでいる気配がなかった。それもそのはず、アーマーガアの速力よりもピジョットのそれのほうが圧倒的に速いので逃げ出すことは不可能だった。

 

「徐々に徐々にダメージが蓄積していく恐ろしさを味わうことだな」

「ゴメンね。早鬼さん。私たち強くないからさ。こんな泥臭い戦い方しかできないんですよ」

 

 ジワジワとHPを削っていく陰湿な戦い方。早鬼と対峙するならばこういう方法しかないと考えた方法だったが見事上手くいった。囚われのアーマーガアを倒し切るには少し時間はかかるだろうが確実に倒せると思っていた。唯一不安点があるとしたら……

 

「ふむ、確かにお前らしい勝ちに貪欲な戦いだな。賞賛に値する」

 

 この一切動じていないトレーナーであった。ただ単に諦めているのかそれともきしかいせいの一手があるのかどうか久侘歌には見分けがつかなかった。ただ一つ言えることはまだ油断してはいけないということだ。

 

「だが……相手が私だったことが誤算だったな!」

 

 早鬼は飛び上がり渦の頭上から中の様子を見た。黒い物体が高速回転をしている様子しか見えなかった。ぼうふうには相手を混乱させる追加効果がある。おそらくアーマーガアも混乱しているのでこちらからの声は届かないだろう。だったらむしろやりやすい。早鬼は渦に飛び込んでいき右脚でアーマーガアを捕らえた。

 

「いっけええええええーーーー!!」

 

 黒いサッカーボールが渦の発生源に向かって貫入していった。ぼうふうがまるでないかのようにグングン突き進む。厚い風の壁を超えるとそこには粘り強い巨大鳩がいた。

 

「危ない!」

 

 先に気付いたのは久侘歌。ピジョットの羽をもって体を回転させて直撃は免れた。いや、むしろわざと当てなかったような……そう思った時には遅かった。

 

「あ、あれ? ここは……」

「混乱解けたな。アーマーガア! ボディープレスでトドメだ!」

「クッ! ピジョット逃げ……」

 

 だがはねやすめでしばらく飛べない状況になってしまっていたので、素早いピジョットとはいえその要望は無茶であった。防御力が高いほど威力の上がるボディープレス。てっぺきを積んでいる状態且つはねやすめでひこうタイプが抜けてノーマル単タイプになってしまったピジョットなど耐えられるはずもなかった。こうして鳥ポケモン同士の戦いはアーマーガアに軍配が上がり、驪駒早鬼のいる妖怪の山チームの勝利となった。

 

「あー、勝てなかったかー。やっぱり早鬼さんは強かったですね」

「ふっ、組長が易々と倒されるわけにはいかないからな」

 

 早鬼はそう言葉を言い残すとその場を後にした。アーマーガアをボールに戻した後飛び去ってしまった。だが久侘歌、およびピジョットのするどいめからは早鬼の優しい笑顔が見られた。強敵と戦い、そして勝利したときにしか見えないその顔はこの戦いの中で勝利よりも価値のあることかも知れない。

 

 

 

「さ、私たちも皆の元に戻りましょうか」

 

 ピジョットを元に戻して最初に集結していた場所に集合する。華扇の別荘は戦いが終了したら普通に出られるように華扇が設定してくれたので滞りなく戻れることができた。その場にはほとんどの人がおり、どうやら自分たちが一番長く戦っていたのだと久侘歌は理解した。

 

「あらら、私たちはここで終わりなのね。つまんないわね」

「まあ。しょうがないわよ。他の人の試合を観戦しましょ」

 

 二回戦は自分こそが出ようと思っていたパチュリー・ノーレッジは悲しそうな顔を浮かべていた。傍にいるムウマージも溜息を吐きつつ宥めていた。しばらく談笑していると背後から遅れてやって来た純狐が現れた。

 

「あれ? 皆さん、私のマフォクシー知らないですか?」

 

 一足先に戻ったはずの純狐のマフォクシーの姿がなかった。しばらく山中を探し回っていたが見つからなかったので誰よりも遅れて到着した。しかし皆知る者はいなかった。対戦したエースバーンたちもその後は見ていないという。

 

「どこにいったんだろう。先輩」

 

 純狐たちは勝利したチームであるがパートナーがいないというのは少々問題だ。早急に見つけてくる必要がある。

 

「だからうどんちゃんにエースバーンちゃん。一緒に探してくれない?」

「ええ? 私たちですか?」

「いいじゃない。どうせ暇でしょ」

 

 鈴仙チームはこれ以上何も対戦することがないので暇と言えば暇である。鈴仙はそれに何も反論できなかった。実際気がかりではある。隣にいるエースバーンも心配そうな顔をしていた。

 

「……仕方ないですね。分かりました付き合いますよ」

 

 純狐という不安分子はあるものの行かない理由もなかったのでその誘いに同意した。鈴仙たちは早速皆から離れて探索に向かった。特に当てはなかったのでまずはほのおタイプが好みそうな地獄にでも行こうとしていた。

 

「待ちなさい!」

「あれ? あなたは……」

 

 三人を追いかけていたのは動かない大図書館、パチュリーであった。ムウマージに担がれながらふよふよと漂っていた。

 

「なんだか楽しそうな感じじゃない。私も混ぜなさい」

 

 どれだけ暇人なのだろうか。パチュリーも仲間になった。




 読んでいただきありがとうございます。ようやく永遠亭チーム対妖怪の山チーム編が終了しました。エースバーンとマフォクシーに焦点を当てた結果こんなに長くなってしまいました。この二匹は今後重要な役割を担うのでぜひ注目してください。

No.11 庭渡 久侘歌 ひこうタイプ 相棒ポケモン ピジョット ノーマル・ひこうタイプ

 序盤鳥ポケは入れたかったです。ピジョットにやきとりってニックネームを付けた人は多いんじゃないでしょうか? ちなみにこのピジョットは劇中の技以外にオウム返しも覚えているのでトリッキーな戦いもできます。

 次回の予告ですが、少し番外編を挟みます。メインは逃げたウツロイドを追跡する潤美と八千慧たちです。お楽しみに!
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