東方携帯獣   作:海老の尻尾

18 / 38
第十七話 エスパー対決

「まずは私から行きますよ! アクセルロックです」

 

 素早さの高いルガルガンが先制攻撃を仕掛けた。目にも止まらぬスピードで狙うはサーナイトである。それほど速くないサーナイトは防御姿勢に入る前にモロに喰らってしまった。

 

「キャア!」

「大丈夫ですか!?」

「平気です。それより指示を!」

「はい! ムーンフォースをゴチルゼルにお願いします!」

 

 素早く境内を駆けまわるルガルガンに攻撃しても命中させられる自信はなかった。それならばやり返すのではなく当てられる可能性のあるゴチルゼルを狙った方がよい。そう考えた早苗はアリス側を攻撃した。ピンク色の球体が天から舞い降り、勢いよく発射された。しかしゴチルゼルは眉一つ動かすことなくその攻撃を逸らした。ムーンフォースが空中で急転回したことからサイコキネシスで弾いたのである。

 

「サブウエポンのフェアリー技もまだまだね。このままじゃ私にかすり傷一つ付けられないわよ」

「くっ、そうですね……」

 

 ゴチルゼルの言葉は挑発ではなく事実であった。今までの二匹の勝負は大抵拮抗しているのだが戦闘においてはただの一度もゴチルゼルは負けたことがなかった。サーナイトが弱いわけではなくゴチルゼルのバトルセンスが光るだけである。

 

「……霊夢さん、ちょっといいですか?」

「ん? 何よ」

「アリスさんとの戦いに集中させてくれませんか? あうんさんは頼みます」

「うん? それじゃシングルバトルと変わらないわよ」

「戦い方は自由ですよ。私はこの子に戦わせたいんです」

 

 何か勝機があるわけではない。だがこの窮地をいかに克服するのかに挑むサーナイトを支えてあげたかったのである。サーナイトはゴチルゼルをじっと見つめ戦意を露わにしていた。

 

「アンタ……少し変わったわね」

「そうですか? 私はいつも通りですよ!」

「……分かったわ。でももし負けたら私がアリスのポケモン倒すからね」

 

 そう言うと霊夢はあうんを手招きしてアリスたちと距離をとった。タイマンバトルの邪魔をしないためだろう。

 

「……霊夢と一緒じゃなくていいの? 早苗」

「はい。私は勝敗云々よりもサーナイトの気持ちを優先させたいと思いますから」

「そう……意外ね」

 

 霊夢と似た反応のアリス。心境の変化というものは自分では気づかないものらしい。今まで誰かの情熱に寄り添ったことがあまりなかったからかと思った。

 

「それで? 私のゴチルゼルに本気で勝てると思っているのかしら?」

「もちろんです! 早苗さんの力もありますからそう簡単には……」

「10まんボルト」

 

 アリスによって放たれたゴチルゼルの10まんボルト。早苗とサーナイトの間を掠り手水を見事に破壊した。当てる気がなかったとはいえ二人は戦慄した。一発でも当たったら即終わりレベルの破壊力だ。火力では完全に劣っていることをまじまじと見せつけられた。ちなみに霊夢は離れたところで怒っていた。

 

「早苗、教えといてあげる。パートナーとポケモンのタイプが一致してないと威力は下がるのよ」

 

 ノーマル・みずタイプの早苗とエスパー・フェアリーのサーナイトは一致するのが一つもない。対戦には最悪の組み合わせである。一方、アリスとゴチルゼルはどちらもエスパー単タイプ。加えて似たような思考をしているので相性もバッチリ。いくら早苗たちが特訓したといっても壁は異様に高いものとなっている。

 

「ええ、知っていますよ。タイプが一致するペアがたくさん来ることも。だから私たちは一生懸命鍛えました。マスターとともに」

「奇跡を起こす程度の能力、その力をもってすれば勝つことも容易いものですよ!」

 

 サーナイトは再び構えて全霊を込めたサイコキネシスであるものを引き寄せた。それが動いてこちらに向かってくる地鳴りが遠くで聞こえた。

 

「ちょっと、何アレ?」

 

 アリスが指差した方向からは全長111メートル重さ2トンの物体が飛んできた。全身金属で覆われたそれは早苗にとっては馴染深いものであった。なにしろ外から来た人間にとってマシーンはロマンそのものだからだ。

 

「ふふふ、あなたたちにこのヒソウテンソクを防げますか!?」

 

 どこに放置されていたか分からない巨大なヒソウテンソクが飛んできた。こんなものを攻撃に使おうなんて普通は思わないがそこは早苗。常識に囚われないのが彼女の取り柄である。これにはさすがのアリスも驚いていた。

 

「ゴチルゼル、できる?」

「飛んできた方向からして……ええ。できるわ」

 

 ゴチルゼルは両手を体の前に突き出して体中にサイコパワーを凝集させた。集めすぎて体の外にも紫色のオーラが溢れていた。

 

「はぁっ! うっ、ぐぐっ……」

 

 頭から突っ込んでくるヒソウテンソクを受け止めた。いや正確にはぶつかる寸前でサイコキネシスでキャッチした。しかし重さ2トン、そう簡単に弾き返せない。引っ張ってくるよりも弾く方がよりパワーを使うのである。今までの最高重量はせいぜい1.5トン。さすがのゴチルゼルも脂汗をかいており少々押されていた。

 

「このままじゃ……あ、ゴチルゼル! 集中してひかりのかべよ!」

 

 特殊攻撃を半減させるひかりのかべを覚えていたので、すぐさま張れる分のひかりのかべを張った。表面積の小さい頭部から突っ込んできたのが幸いして何とか勢いを多少殺すことができた。どう考えても物理攻撃に見えるがサイコキネシスが由来なので特殊攻撃らしい。

 

「よし! あとは元の場所に戻すだけよ」

「ふぅ……はああぁっ!」

 

 最大出力のサイコキネシスがヒソウテンソクを捕らえ、巻き戻ししたかのようにヒソウテンソクは元の森の中に帰っていった。着地点でほとんど砂煙が上がらなかったことから上手に着陸させられたのだろう。

 

「破壊させたらもっと楽だったんだけどね。霊夢が許さないだろうし」

「どっちにしろ私のサイコキネシスでは勝てなかったというわけですか」

 

 サーナイトががっくりと肩を落とした。いい勝負をしていたと思っていたのはこちらだけであったらしい。勝手に期待して勝手に落胆してしまったが表情は隠せなかった。

 

「どう? まだやるかしら」

「もうそんな力残ってないですよ」

 

 さっきの攻撃で全力を使い果たした。抗う術などもう残っていない。ゆっくりと近付いてくるサーナイトは立ち上がろうともしない、というよりも立ち上がらせてくれない。足元にくろいまなざしが設置されてサーナイトを逃がそうとしないからだ。詰めの甘くないゴチルゼルはとどめまでしっかりしている。

 

「今回も私の勝ちだったねサーナイト。この後の霊夢たちもパパッと倒すとするわ」

「ええ。エスパー対決は私たちの負けですね。()()()()()()()

「何?」

「サーナイト! 伏せて下さい!」

 

 早苗の一声でサーナイトは勢いよく地面に伏せた。相手のくろいまなざしのおかげで重力が増しており背後から衝突してくるそれを紙一重でかわすことができた。サーナイトは。

 

「きゃあーー!」

 

 飛んできたのは霊夢の攻撃による流れ弾……ではなくオレンジ色をした物体。すなわちルガルガンであった。ゴチルゼルとともに遥か後方にまで吹き飛ばされた。砂煙が辺りを覆い何も見えなくなった。

 

「な、何が起きたの!?」

 

 アリスが砂煙の中をかき分けて二匹を探し出した。だが見つけ出した二匹は爆風の中から立ち上がることもなく戦闘不能になっていた。ゴチルゼルも随分体力を消費していたため耐えきることができなかった。

 

「ゴチルゼル、ルガルガンともに戦闘不能。よって博霊神社チームの勝利である!」

 

 藍の掛け声により勝者は霊夢と早苗たちになった。エスパー対決には勝ったがダブルバトルには敗北してしまった。サーナイトが言っていたのはこういうことであった。

 

「さすが幻想郷の守護者、霊夢さんですね」

 

 早苗は凛と立つ霊夢を羨望の眼差しで見つめていた。




 読んでいただきありがとうございます。途中ネタ入れてしまいましたが……怒られないかな? まあいいか。今回は試合に勝って勝負に負けたゴチルゼルを紹介したいと思います。

No.13 アリス・マーガトロイド エスパータイプ 相棒ポケモン ゴチルゼル エスパータイプ

使える技 サイコキネシス 10まんボルト ひかりのかべ くろいまなざし

 この世界ではゴチルゼルはサーナイトの上位互換の存在です。人気投票では別ですが。劇中でもありましたが二匹はとても仲良しです。お互いラルトスとゴチムの頃からの知り合いであり周りからよくモテるサーナイトに負けないように特訓したゴチルゼルは彼女に対して尊敬の念を抱いております。またそれはサーナイトも同様です。

 さて、次回は霊夢サイドのお話です。どうしてルガルガンは吹き飛ばされたのでしょうか? アンノーンの実力はいかに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。