東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第十八話 最弱のポケモンと最強のトレーナー

 サーナイトとゴチルゼルがエスパー対決をしている最中、こちら側は目をくるくるさせている者と目を三角にしている者がいた。

 

「相手の速さに追いつけない……どうしましょう、霊夢さん」

「折角の手水ぶっ壊して……後で覚えてなさいよねアリス」

 

 お互いが別々のことを考えていた。アンノーンは目の前のルガルガンの目にも止まらぬスピードに。霊夢は遠くの早苗たちの戦いで破壊しつくされた手水についてであった。自分との闘いに集中されていないあうんたちにとってはショックであった。

 

「霊夢さん! よそ見していていいんですか!? このままじゃアンノーンの体力持ちませんよ」

 

 アクセルロックで高速移動しながらアンノーンに攻撃を掠り続けているルガルガン。元々の低耐久もあってあと数発もすればダウンしてしまいそうな勢いであった。

 

「ああ、残念だったなアンノーン。折角幻想郷の中心人物に拾われたっていうのに俺なんかに負けちまって。まあ俺とあうんのコンビネーションだから無理もないがな」

「ルガルガン油断してはいけませんよ! 霊夢さんのことですから何か策があります」

 

 自分を下げているのか上げているのか分からない発言である。だが実際持ち前のスピード力を特化させようと言ったのはあうんである。それは主たる霊夢対策としてであり霊夢の性格上、機敏に動くなんてことはしないしさせないと思ったからである。コツコツダメージを与えるのではなく一点突破で撃破するのが彼女のスタイルであることはあうんがよく知っていた。いつも見てきたからこそこのまま終わるはずがないと考えていた。

 

「あー、そうね。アンノーン、そろそろアレやる?」

 

 やはり何かある、とあうんは考えて一旦距離を取るようにルガルガンに指示した。

 

「いいえ。まだです。霊夢さんに頼り切りでは一介のポケモンにはなれませんから!」

「……ふう、強情ね。誰に似たんだか。じゃあ一発相手に当てたらにしましょう。その後はちゃんと言うこと聞くのよ」

「分かりました」

 

 何の話かあうんたちにはさっぱり分からなかったが、要するに一発攻撃を喰らったらその後霊夢の力が加わってくるということだ。ならばその付加が来る前に倒せばいいだけのこと。確実に次の一撃で沈めるために全牙に力を集める。

 

「準備できましたか? 行きますよ、かみつく!」

 

 エスパータイプに効果抜群のあくタイプの技を喰らえば確実に仕留められる。いまのかみつくは通常のかみくだくの倍以上の威力になっているだろう。鋭い牙がアンノーンを襲う。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「え? アンタ技一個しか使えないの?」

「は、はい。残念ながら」

 

 アンノーンと特訓を始めた初日に告げられた事実。アンノーン一族はその膨大な知識を蓄えられる代わりに使える技が一つだけという呪いに掛けられている。めざめるパワーだけというタイプも威力も固定されている技であり実戦には不向きなポケモンである。最弱と言われる所以はこのレパートリーの少なさと攻撃力の低さである。

 

「ふーん、ちょっとその技見せて」

 

 アンノーンはみずのめざめるパワーを空中に向かって放った。青色の球体がひょろひょろと打ち出されてポンッ! と消滅した。確かにこれでは相手を吹き飛ばす程の威力は期待できそうにない。

 

「……僕の実力はこんなものです。霊夢さんに選んでいただいて光栄ですが勝てる見込みはないかと思います。今からでも変更……」

「はあ? 私の誘いを断るの? そうはさせないわよ。みっちり鍛えて優勝させてあげるから覚悟しなさい」

 

 元々バトルというものから縁遠い生涯を送ってきたアンノーン。バトルセンスがからっきしなので戦ったことが少ない上に今まで勝利を収めたことがない。そんな自分が優勝なんて夢のまた夢であった。だが負けっぱなしでいいとはこれっぽっちも思っていなかった。霊夢と一緒ならばその高みまで見ることができるかもしれない。ここで諦めてはいけないということを霊夢が教えてくれたのかもしれない。

 

「いえ! 何でもないです! よろしくお願いします」

「よし、いい返事ね。ところでやってみたかったことがあるんだけど……」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

(……ダメだ!)

 

 霊夢から教わった奥の手の方法。それを使えば一瞬でカタはつくだろう。しかしこのバトルは、自分自身が成長するための大切な一歩である。安易に頼らず確実に一太刀浴びせなければならない。

 

(集中しろ……)

 

 ルガルガンはジグザクとこちらに向かって突進してくる。あの速さで噛みつかれたら終わりである。だが相手が周期的にジグザクしていることは当事者は気づいていないだろう。一往復する時間と自分の所までの距離を考えると……

 

「……今だ!」

 

 アンノーンはその場でジャンプした。アンノーンの真下をルガルガンがすり抜けて威力160のかみつくは不発に終わった。

 

「何っ! ……ふぐっ!?」

 

 ジャンプしたアンノーンに首を向けていたせいでルガルガンは正面にあった何かにぶつかった。それはまるでトランポリンのように深く沈みこんだ後、大きく弾き返した。

 

「がはっ! これは……みずタイプの技か!?」

 

 真正面からぶつかりあったとしても勝ち目がないので罠で対抗した。今の一瞬でめざめるパワーを蜘蛛の巣状に張り巡らせて突っ込んできたところをカウンター攻撃する。これが今できるアンノーンなりの戦いであった。

 

「チャンスよアンノーン! めざめるパワー」

 

 霊夢の指示で吹き飛んでいるルガルガンに追い打ちを仕掛けた。以前より威力も弾道も強化されており真っ直ぐルガルガンを目指す。攻撃のチャンスは逃さない霊夢である。

 

「ルガルガン! 来てますよ。かみなりのキバ!」

 

 だが相手は一人ではない。あうんのコンビネーションはバッチリでみずタイプのめざめるパワーなどいとも簡単に噛み砕いてしまった。

 

「霊夢さん。私たちは霊夢さんを仮想相手として練習してきました。いつか憧れの霊夢さんと一緒に戦いたいと思っていました。さあ、奥の手とやらを見せて下さい。私たちは逃げも隠れもしません!」

 

 狛犬あうんは霊夢に心酔しており正々堂々としたところが大好きである。勝とうが負けようが攻撃を受けて見たかったのである。様々な霊夢の一面を見たいのである。

 

「対戦相手にそんなこと言われたら仕方ないわね。さ、アンノーン。こっちへいらっしゃい」

 

 言いつけ通り霊夢の元に戻ると霊夢の右手にピトッとくっついた。霊夢の右手が青く発光し始めた。

 

「え?」

「じゃあね」

 

 さっきまで遠くにいたはずの霊夢が何故かルガルガンの目の前に、というよりも拳がルガルガンの目の前に来ていた。そこから放たれた巨大な渦のようなものがルガルガンを貫いた。みずタイプの技なのでいわタイプには効果抜群であった。すでに体力の削れたルガルガンをKOさせるには十分だった。そして破壊力が強すぎて吹き飛んだルガルガンはゴチルゼルに衝突してしまい一石二鳥となった。

 

「ルガルガーン!」

 

 あうんの声もむなしく勝敗は喫してしまった。霊夢の様子を見たアリスは驚嘆して霊夢の方に近づいてきた。

 

「ちょっと霊夢! なんであなたが攻撃しているのよ! こんなのルール違反よ。ねえ紫、いるんでしょ」

 

 アリスが紫を呼ぶとしぶしぶとスキマの中から出てきた。欠伸をして眠そうな顔をしている。

 

「はいはい。クレーム来ると思ったわ。霊夢たちから申告あったのよね~ あまりにも弱すぎるから合体を許可してくれってね」

「そんなワガママいいの? そもそもパートナーがポケモンを攻撃しちゃダメなんじゃ……」

「私は攻撃してないわ。私にくっついたアンノーンが攻撃したのよ」

「屁理屈じゃないの。それにあの暴力巫女よ? 滅茶苦茶になるのは見えるでしょ」

 

 旧友だからこそズカズカと言えるアリス。だが正論であるので臆してはいない。

 

「そうね。だから後霊夢が出られるのは一回だけという制限を付けるわ。これでいいでしょ?」

「はあ……まあ私たちは負けたから別にいいけど。他のチームは知らないわよ」

 

 ため息とともに諦めたアリス。元々理不尽巫女相手に正論がまかり通るはずもなかった。倒れているゴチルゼルをボールに戻して永遠亭へと向かった。

 

「ルガルガン、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ……おい、アンノーン」

「な、何ですか?」

「色々悪かったな。失礼なこと言って」

「い、いえ! 僕が弱いのは事実ですし」

「だが……お前の気概、見せてもらった。そのパートナーをしっかり支えてやれ」

「……はい!!」

 

 対戦相手だからこそ感じたアンノーンの本気。最弱のポケモンが心まで最弱とは限らなかった。




 読んでいただきありがとうございました。某リ○ーストでもあったポケモンと人間の融合を入れたかったので満足です。

No.14 高麗野あうん いわタイプ 相棒ポケモン ルガルガン いわタイプ

使える技 アクセルロック かみつく かみなりのキバ すなかけ

一日二本投稿は大変でした
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