東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第十九話 むしタイプ統一パーティ

「流石私の霊夢ねー。戦い向きじゃないポケモンをあんなに鮮やかに活かすなんてね」

「まあ霊夢ならそれくらいしそうだしね。それで次はどのチームか決めているの?」

 

 永遠亭でバトルの様子をモニターしていた賢者たちは次の患者たちが来るまでゆっくりと寛いでいた。回復はすぐに終わるしバトルの時間は長いので暇な時間は結構できる。

 

「そろそろあのお嬢様の限界が来てそうだからそこするわ。場所は……紅魔館でいいかしら」

「あら、初めての屋内ね。確実に木端微塵になるだろうけど大丈夫なの? 流石に建築は私の専門外よ」

「うふふ。その道のスペシャリストを用意したからね。抜かりはないわよ」

「どうせ強制的にスキマで連行するんでしょう」

 

 あらかじめそんなことを画策するはずがない。無理矢理その場所にスキマで送って後から伝える腹積もりだろう。これが妖怪の賢者である。選ばれたその二チームは紅魔館へと飛ばされた。

 

 

 

「あー、次私たちか。あれ? ここって……」

「ついに来たわ! しかも私のホームグラウンド。やっと戦えるのね!」

 

 ここで戦うは永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレットである。紅霧異変を起こした張本人であり実力は折り紙つきである。ポケモンバトルの腕前は未知数だがそのカリスマ性で注目を集めている。

 

「相手……強そうだね」

「あれ? 向こう人数多くない?」

「ちょっと! なんでそんなにいるの! おかしくない?」

「いえ……というよりなぜそちらは四人だけなのですか? お嬢様」

「そんなのこっちが聞きたいくらいよ。紫どういうこと?」

 

 レミリアがリーダーとなっているこちらのチームは何故か四人だけである。レミリア・スカーレット、リグル・ナイトバグ、黒谷ヤマメ、そしてエタニティ・ラルバとなっている。他のチームは最低でも五人はいたのにここだけイレギュラーである。そして一番気に入らないのが当主であるにも関わらず紅魔館チームではなく迷いの竹林チームとなっていることである。リグルが近くに住んでいるからだろうか? そして紅魔館チームに門番の美鈴がいる。本来の立場を奪われたようで憤慨していた。開きかけのスキマに手を伸ばして引きずり出した。しかし出てきたのは紫ではなくレミリアのよく知る顔であった。

 

「あれ? 咲夜じゃないの。どうしたの、こんなところで」

「スキマ妖怪から色々言伝を頼まれまして。今回は私が代わりに審判を務めさせていただきます」

「あいつらはどうしたのかしら?」

「少し用事があるとかなんとか。全く、勝手ですね。ですがお嬢様のこととあらばいついかなるときでも手助けさせていただきます」

 

 瀟洒な従者、十六夜咲夜は引きずり出されたときの衣服の乱れを正すと凛とその場に立ち流暢に話しだした。有能な人が一人いるだけで話はスムーズに進む。

 

「紫からの伝言です。『あえてレミリアには紅魔館のメンバーと離したわ。だってむしタイプで統一した方が面白いじゃない!』とのことです」

 

 この四人の共通点はむしタイプであるということである。ラルバはむし・フェアリー、キスメはむし・どく、リグルはむし単タイプ。そしてレミリアはむし・あくタイプである。百人以上参加しているこの祭りだがむしタイプはこの四人しかいない。人数の制限がある上にタイプの偏りがあるため不利だと言える。それに数あるタイプの中で最弱と言われるむしタイプ。吸血鬼だからそう分類されたらしいがレミリアはどうにも不服そうだ。

 

「この高貴なる私が虫ケラ扱いとは感心しないわ!」

 

 お嬢様は高貴な身分であり他の者のことをあまり考えない。彼女のその発言がチームメイトを軽く傷つけたことに気付きすらしていない。気の強くない三人はどんよりとした顔をしている。

 

「じゃあフランは? フランはどうなの」

「妹様はあく・ほのおタイプで別のチームです」

「姉妹なのにおかしくない? 私も炎くらい使えるわよ、ほら!」

 

 紅符『不夜城レッド』を体に纏わせアピールするレミリア。力んでしまったのか館の時計塔まで弾幕を伸ばし破壊してしまった。崩れ落ちた長針が二チームの丁度境目に降ってきて両チームに緊張感が走った。

 

「あっ、ついやってしま……」

「大丈夫ですお嬢様。先ほど直しておきましたので」

 

 時計塔の方向を見ると砕けていたはずの建物がものの見事に修繕されており長針も正確に時を刻んでいた。咲夜の時間を操る程度の能力、これで壊れた物体も自由自在に復元することができたのである。彼女さえいれば屋内でどれだけ暴れようとも支障はないということだ。もちろん咲夜への負担は大きいだろうが。

 

「流石咲夜。それでこそ私の従者ね」

「お褒めにあずかり光栄です。もちろんこの子にも手伝って頂きましたが」

 

 咲夜は持っていたタイマーボールを手のひらに乗せてレミリアに見せた。簡単に手の内を明かさないところも抜け目がない。だが咲夜の技術に付いていけるポケモンということでレミリアと美鈴は決して軽んじることはなかった。

 

「お嬢様、そろそろ始めませんか? 対戦相手を決めたいのですが……」

「あら美鈴。そっちのリーダーはあなたなのね。てっきり後ろの妖精がやりたいって言うと思っていたわ」

 

 レミリアが指差した美鈴の後ろには清蘭と磨弓に頭を撫でられている地獄の妖精がいた。

 

「そうだよー! アタイがやりたかったのにさー」

「仕方ないじゃない。チームが紅魔館、なんだからさ」

「ここは美鈴さんにお任せしましょう。それにリーダーは一番やることが多くて大変なんですよ。一番強いから就いているわけではないんですよ」

「そうなの? じゃあアタイが一番強い?」

「ええ、おそらく」

 

 クラウンピースは磨弓の説得に素直に応じてリーダーの役割を美鈴に譲った。保護者のヘカーティアがいなくてどうなることかと思ったが上手にあしらってくれた。磨弓も袿姫に仕えておりどうすれば上手く動いてくれるかを心得ている。従者力は咲夜と同等かと紅魔館チーム最後のメンバー、秋穣子は遠巻きに思っていた。

 

「じゃあ最初はアタイが行くよ! イッーツ! バトルナティックターイム!」

 

 クラピの謎の掛け声とともにドリームボールから出てきたのは最強のドラゴン、ボーマンダ。咆哮が館中に轟き暗雲が立ち込めた。その鈍色が敵チームを絶望のどん底に着き落とした。

 

「何よそのドラゴン! 反則じゃない!」

「ふっふーん! 反則なんかじゃないもん。ちゃんとアタイが一から特訓したもんねー」

「ああ、お陰でタツベイから一気にボーマンダまで進化することができた。クラピには感謝しかねえぜ」

 

 パートナーになってから試合が始まるまでの期間はたったの一週間。ほとんどの人はポケモンの進化というものを目撃できてはいない。それもそのはず、本来進化というものはそんなにホイホイできるものではない。度重なる特訓によってようやくできるものであるからだ。しかもしっかりパートナーの言うことを聞いている。勝つという望みは薄かった。

 

「さあさあ! このボーマンダの相手になる子はいるのか!?」

 

 クラピもマンダも同じ挑発のポーズをとっていた。傲慢は良くないがついついしてしまう程の屈強っぷりである。これは間違いなくこのチームの中で一番強いだろう。ほとんどの者が萎縮してしまっている。このままでは勝負にならないかもしれない。

 

「……私が相手になるわ」

「レミリアね! 私たちを楽しませてちょうだい!」

「ええいいわ。その代わりに、咲夜?」

「はい、いかがなさいましたか?」

「この三試合、全てここでやることにするわ」

「承知しました」

 

 本来は館の中で三試合同時に行う予定であったが急遽変更した。一試合ずつここ、広大な庭でバトルの開催である。ルール変更の許可については咲夜に一任されており、その咲夜もレミリアの味方なので意見が通らない訳がなかった。変更の内容がそれほど不公平でなかったため許可をしたのはもちろんである。

 

「ねえ、レミリアちゃん。本当に大丈夫なの?」

「相手強そうだし本当に勝てるかな……」

「不戦敗って手もあるけど」

 

 他のメンバーが不安そうな顔をしている。確かにリグルの言うとおり今からでもメンバーチェンジしてクラピに弱い相手を当てて不戦敗ということにすれば、強者であるレミリアを残すことができて勝率も上がる。だがレミリアにはそんな考えは微塵も無かった。

 

「ふっ、安心しなさい皆。このカリスマ溢れる私たちにかかれば楽勝よ!」

 

 ハイパーボールを高く放り投げて現れたるは巨大な翼を持つ紫色の蝙蝠だった。ボールから出てくると同時にレミリアはその背中に飛び乗った。

 

「さあ、クラウンピース、ボーマンダ! このレミリア・スカーレットと相棒クロバットが相手になってあげるわ!」




読んで頂きありがとうございます。今日紅楼夢の日(10/11)なので楽しんで来ます! 今回はポケモン紹介はお休みさせて頂きます、あまり進まなかったので。

紅楼夢から帰ってきたらまた続きを書きたいと思います!
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