東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第二十二話 タイプ相性

「まずは弱点を突きます! ジャラランガ、ラスターカノン」

「こっちも行くよ! アブリボン、マジカルシャイン」

 

 はがねタイプとフェアリータイプの技が激突する。ハイスペックなジャラランガの方が火力自体は高いのだがフェアリー四倍弱点には逆らえずマジカルシャインがラスターカノンを押し返した。

 

「ぐおっ!」

「大丈夫ですか!?」

「へっ、こんなものなんでもねえ。俺様は耐久力が自慢のドラゴンだからな」

 

 しっかりとダメージは受けているはずなのにケロッとしていた。先のヌメルゴンは特殊防御に優れていたがジャラランガは両面しっかりと堅い。たとえフェアリー技を喰らっても容易く倒れるポケモンではない。

 

「全力でしたんだけどな~ さすがジャラランガ。腐っても600族だね」

「おい、誰が腐ってるんだこの野郎」

「え? アブリボン知り合いなの」

「地元が一緒でね。時々見たことあるんだ。でもあんなに強くなかったんだけどね」

 

 アブリボンもジャラランガもどちらもアローラ出身であり時々顔を合わせていた。お互い軽口を言える位の間柄であるがその頃はまだまだ耐久面は柔らかかった。フラエッテのようせいのかぜ一発で沈むレベルのはずの脆さでありよくネタにされていた。

 

「しっかり鍛えましたからね。ジャラランガの成長速度は目を見張るものがありましたよ」

 

 以前ジャラランガはパートナーを探しにふらりと紅魔館に立ち寄っていた。目的は当主であるレミリアとコンビを組んで優勝を目指すためであった。しかしまだクロバットと出会っていない頃であったが何となく嫌という理由でレミリアにばっさりと断られた。門外で落ち込んでいるところを美鈴に声をかけられたという出会いであった。それから修行を極めて耐久力にステータス極振りしたのである。美鈴と全く同じタイプであったことも功を奏したのだろう。

 

「美鈴さん、私のアブリボンだって負けてないよ!」

 

 その辺で適当にアブリボンを捕まえたラルバだったがしっかりと絆は築いてきたつもりだ。強力な技も携えてその練度も完全である。相性もよいので負けるつもりもなかった。

 

「ちょうのまいでパワーアップして!」

 

 アブリボンは自身の鱗粉を撒き散らして艶美に踊り始めた。一見隙だらけに見えるが纏っている鱗粉がシールドとなり攻撃をシャットアウトしている。もしもこの間に攻撃を仕掛けるとただ無償で積ませることになってしまう。それを一瞬で見抜いた美鈴はラスターカノンを撃ちそうになっているジャラランガを制止した。

 

「こっちもソウルビートで能力上げて下さい!」

「え? お、おう」

 

 発射寸前の光線を引っ込めて全身を震わせた。眠っているジャラランガの全力を引き起こすため体力は削れてしまうが大幅にパワーアップできる。短期決戦に持ち込むつもりだろう。お互いほぼ同時に積み終わり体中からオーラのようなものが溢れていた。

 

「仕切り直しだアブリボン。俺様の全力を喰らえ! スケイルノイズ!!」

「スケイルノイズ!? タイプ相性をご存じでない!?」

 

 先に仕掛けたのはジャラランガであり、放った技はドラゴン技のスケイルノイズ。フェアリータイプのアブリボンに効果はないはずであるため螺旋状の波状攻撃を避ける素振りすらしなかった。実際直撃しても痛みの一つもない。

 

「ほら見てみなさい! あなたはまずタイプ相性から見直して……」

「今ですジャラランガ!」

「おうよ!」

 

 美鈴の掛け声が出ると同時にさっきまで直線状だったはずのスケイルノイズが進路を変えた。広範囲に渡る攻撃が狭い範囲に絞られ、アブリボンの上空から降り注がれた。美鈴との特訓で自在にスケイルノイズの調整ができるようになったのである。先ほどよりも濃度の高い攻撃ではあるがタイプが変わるわけではないので依然ノーダメージである。しかし狙いはそこではなかった。

 

「ふふん、私のアブリボンがそんなゴリ押しに……ハッ! まずいわアブリボン、離れて!」

「えっ!?」

「遅いぜ! おらぁ!」

「きゃああーー!」

 

 ジャラランガのインファイトを受けたアブリボンはラルバに衝突して諸共吹っ飛ばされた。戦闘不能にはなっていないが大ダメージである。いきなりのことでアブリボンは何が何だか理解できなかったが遠くで見ていたラルバは全体の状況を俯瞰して見ていた。

 

「かくとう技は1/4ダメージのはずなのに何で……?」

「違うよ、いや違うとも言えないけど……」

 

 曖昧な返答にアブリボンの頭には疑問符が浮かんだ。実はあの攻撃はアブリボンにダメージを与えるためではなく地面を破壊するためであった。浮いている本人は意識していなかったがスケイルノイズが当たった箇所はひどくえぐれていた。今は咲夜が直してくれているが狙い目はそこであった。砕いたときの土煙に乗じて奇襲を仕掛けたのである。またそれだけではなく飛び散った大きめのコンクリートを手に持ちインファイトを繰り出した。普通はむし・フェアリータイプに半々減されてしまうがこうすることで疑似ストーンエッジを出せる。いわタイプはむしタイプに効果抜群となるのでアブリボンはふらふらしていた。

 

「見たか! 俺たちはタイプ相性だけで倒せるようなヤワな相手じゃねえんだよ」

「臨機応変に動けるようになりましたねお見事です」

 

 美鈴はレミリアに仕えている。それすなわちレミリアの話し相手にならなければならないということである。基本的に全ての能力が美鈴の上位互換である咲夜自身が唯一認めている部分、それは当主との会話である。コミュニケーション能力だけはずば抜けている美鈴なのでジャラランガ程度を上手くコントロールするくらい朝飯前である。今も調子に乗っているのか両手を内側に向けてドヤ顔をしている。当主の決めポーズを知らないはずだが全く同じであった。わがままな人はこのポーズをとりたがるのだろうか?

 

「さあ、最後まで油断しないで下さい」

「気にしすぎるなって! もう俺たちの勝ちは決まったもんだからよ」

「まだまだ負けないよ! むしのさざめきで足止めだ!」

 

 ラルバはむしのさざめきを指示した。むし技が通りにくいのは百も承知であったがアブリボンの一番自信のある技がこれであった。倒せるとは微塵も思っていなかったが少しでも隙を作りたかった。

 

「避けて下さい!」

「へっ、避けるまでもないぜ。何せ俺は天下のドラゴンジャラランガ様だぞ。特性もぼうおんでシャットアウト! こんな攻撃屁でも……」

 

 むし技はかくとうタイプにこうかいまひとつ。そうでなくても先ほどの全力のマジカルシャインを軽々といなした経験が堂々とした出で立ちを顕現させていた。まさか決着があっけなくついてしまうとは殆どの者が予想していなかった。

 

「え……な、ぜだ……?」

「だから言ったのに……」

 

 戦闘不能になったジャラランガをよそに美鈴は頭を押さえて溜め息を付いた。一方ラルバたちも目を丸くしていた。何故倒れたか分からないようである。

 

「あなた……特性ぼうおんじゃなくてぼうじんじゃないですか。昨日特性パッチで変えたの忘れてたんですか?」

「……あ、忘れてた。でもあんな攻撃でこの俺様が……」

「ソウルビートでHPを削った上にインファイトで耐久力ダウンしたの忘れてたんですか?」

「…………」

 

 ぐうの音も出なかった。大技を使うにはリスクがあることを失念していたとは何たる恥であろうか。ジャラランガはショックでそのまま倒れていた。

 

「これにて終幕です。ラルバたちの勝利ということでお嬢様率いる迷いの森チームの勝利です」

「……お、おおーー!? やったー! 私たちの勝利だー!」

 

 ワンテンポ遅れてリグルたちが歓喜の声を上げた。強力なドラゴン軍団を制して見事二回戦に歩を進めた。ラルバたちがとび跳ねていると三人がレミリアに近づいてきた。

 

「な、何よ皆して!?」

 

 レミリアは背中と脚を皆の両腕で支えられると宙に上がり胴上げされた。今回のMVPはまぎれもなく彼女だろう、その思いが一致していた皆は誰かに言われることなく一斉に集結していた。相棒ポケモンたちも勝手に飛び出してにこやかにレミリアを持ち上げている。普段ここまでされたことがないお嬢様は当惑しておりちらちらと従者の方を見ていた。しかし咲夜はそれを止めるつもりは毛頭ないように微笑んでいた。審判という立場上参加はできないが混ざりたかったからである。

 

「ふぅ……ま、まあありがたく思っておくわ。さて……」

 

 ひとしきり胴上げタイムが終了した後地上に降ろされたレミリアは皆を制止した。そのまま立ち去るのではなく相手の紅魔館チームの長、美鈴の元に向かった。

 

「お嬢様……?」

「ジャラランガと言ったわね。まずは美鈴と組んでくれてありがとう。私の目の届かない範囲でどこまでできるか気になっていたけど……あなたが居てくれたのね」

 

 ワガママだけれど部下思い。それがカリスマたる所以である。美鈴は傍で頬を掻きながら照れていた。

 

「へっ! お前が俺様と組んでいたら楽々勝っていたんだろうけどな」

「ダメよ。あなた弱いし」

 

 ジャラランガの(心の)きゅうしょにあたった! 悪気はないが真実をポンと言われて今度こそ完全にKOされた。美鈴は苦笑いしておりそのままハイパーボールに戻した。組みたかった本人に再びこう言われてはショックだろう。癒すために戻してあげた。

 

「ま、まあとりあえずおめでとうございます。次の試合も頑張ってくださいね」

「ありがとうね。美鈴」

 

 固い握手を交わして紅魔館チームと迷いの森チームの試合は終了した。全力を尽くしたため不満はないが一人だけ不服そうな者がいた。

 

「あーあ。アタイもっと戦いたかったのにな~」

 

 唯一勝利したのに次に進めないクラウンピースは口を尖らせていた。隣で磨弓がよしよししているがご立腹のようだ。

 

「チーム戦だから仕方ないわよ。見ていて面白くなかったかしら?」

「そんなことないけど……ってお前誰だ?」

 

 いきなり割って入ってきたのは磨弓や他のメンバーではなく突如現れた空間の中の者であった。

 

「あ、紫! どこにいたの。審判急に押し付けたりして!」

「ごめんなさいね少し野暮用で。ところでクラウンピース、ちょっと聞きたいことあるから来てくれないかしら?」

「アタイか? いいぞー! まだ暴れ足りないからな」

「別にバトルということではないのですが……」

 

 一緒にいた藍が一言入れようとしたその瞬間、紫が何かを思い付いたように表情を明るくした。

 

「! そうね、戦って貰いたいわね」

「え? 紫様!? 話が違っ……」

「じゃあ咲夜、そういう訳だからまた審判頼むわね~」

「えっ!? 待っ……」

 

 藍と咲夜の言うことを聞かずに紫はクラピとともにスキマに消えていった。後に残された咲夜だったがこの先どのチームが戦えば良いのか分からない。それにこれ以上続けるには少し日も沈んでしまっていた。咲夜は溜め息を付きながらハキハキとした声で喋り始めた。

 

「えー。皆さん聞こえていますでしょうか。主催者の八雲紫の代理、十六夜咲夜です。本日の試合はここまでとします。明日また本日と同じ場所に集まってください」

 

 紫はチームのメンバーの誰か一人にすでにタブレットのようなものを忍ばせていたらしいので全ての人間に咲夜の声は届いたと思われる。

 

 

 

 こうして幻想郷を舞台にしたポケモンバトル一日目の幕が閉じた。試合チームは四組だったがどの試合も濃密な物になっていた。すでにバトルを終えた者やまだの者など色々あるが熱気が冷めやらぬ様子であった。また明日、今日以上に白熱したものが見られるのだろう。そんな希望で満ち溢れていた。




 読んでいただきありがとうございます。 ……なっがい!! 今までで一番長いかもしれません。ジャラランガさんのキャラ付けに迷走しておりました。これにて一日目は終了です。次回は番外編その2ということでウツロイド探索隊の話です。お楽しみに

No.17 紅美鈴 ドラゴン・かくとうタイプ 相棒ポケモン ジャラランガ ドラゴン・かくとうタイプ 特性 ぼうじん

使える技 スケイルノイズ ソウルビート インファイト ラスターカノン

 天下の600族様をネタキャラにしてはいけません! でも書いていてすごい楽しかったです。今後もネタキャラは多少出すと思います。
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