東方携帯獣   作:海老の尻尾

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番外編2 ウツロイド追跡隊vsレジスチル

 レジロックから言われた通り地霊殿を目指す八千慧たち一行。レジロックの居た大穴から地霊殿まではそれほど遠くはなかったのですぐに到着した。地底にそびえる大きな館、地霊殿には今現在祭りが行われているため誰もいない。

 

「……あれだな」

 

 さて、レジロックの言う兄弟とはどこにいるのだろうか。そんな疑問は一切浮かばなかった。正門によく分からない銀色の物体が置かれていたからである。レジロック同様顔には点のようなものが付いており間違いなくあれが次の狙いである。

 

「ちょっといいですか? あなたがレジロックの関係者、というか兄弟ですよね?」

「…………」

「おい、聞いているのか?」

 

 潤美とバクガメスが問いかけるも黙ったままであった。ケンタロスがはがねタイプの匂いをすでにかぎとっていたので相性有利なバクガメスが前に出ていた。さっきは潤美にいいところを取られたので今度は頑張ろうと息巻いていた。

 

「……zzz」

「え?」

 

 よく見ると額の点がレジロックの時よりも発光していない。つまり立ったまま眠っていた。よく聞いたら寝息も聞こえるので優しく起こすことにした。

 

「すみません。起きて下さい!」

「……ハッ! ナニ、ドウシタノ?」

 

 点が光り動き始めた。いきなりだったのかその巨体の腕が潤美を襲った。

 

「危ない! ぐっ!」

「バクガメス!」

 

 潤美を庇ったバクガメスのみぞおちにクリーンヒットして体力が大分削られてしまった。もんどりうって苦しんでいた。

 

「だ、大丈夫だ……うっ」

 

 強がってはいるものの足はガクガクしていた。さすが伝説のポケモンは一味違う。今のこの状態では存分に戦えないと悟り冷や汗を流していた。

 

「ゴメンゴメン、ホラコレタベテ」

 

 鋼の巨人から渡されたのはオボンの実という体力を回復する木の実である。若干怪しかったが見覚えのある木の実であり嫌な予感はしなかったので頂くことにした。

 

「おっ、うん! いける」

 

 ただの普通の木の実であったことを確認し平らげるとバクガメスの体力は快復した。どうやらこの相手に悪意のようなものはなさそうである。

 

「ボクノナマエハレジスチル。キミタチノコトハレジロックカラキイテルヨ」

 

 レジスチルは誰もいない地底でのんびりと遊んでいたらしく、そこでレジロックから連絡を受けて八千慧たちを待っていた。その待っている途中に居眠りをしたという体に似つかわしくないのんびりやさんである。

 

「……なんだかさっきの奴とは随分雰囲気違うな」

「優しいポケモンなのかな?」

 

 皆の緊張が解れる。一切の敵意が見られなかったのでバクガメスたちは思いきって聞いてみた。

 

「俺達のことを知っているなら話は早い。お前に勝てばクリスタルを貰えるのか?」

 

 ここに来た目的、それは貰ったZリングにはめ込むZクリスタルを頂くことである。レジスチルを紹介してくれたということはこいつが持っていると考えて間違いないだろう。距離を詰めてにじりよる。

 

「ウーン、ボクアマリタタカウノトクイジャナイカラナ……ココハタカラサガシデドウカナ?」

「宝探し?」

「ソ、コノチレイデンノドコカニZクリスタル16コカクシタンダヨネ。ソレヲミツケラレタラキミタチノカチデイイヨ」

 

 てっきりバトルでも始まるのかと来る前にウォーミングアップを済ませていた二匹だったのでこれには肩すかしを喰らった。あくまでも相手は伝説ポケモン。戦って勝てる保証はどこにもないのでこの案に乗らない手はなかった。

 

「それでいいが……制限時間とかはどうするんだ? 無制限というわけにもいかないだろう」

「ソウダネ。ジャアダレカガカエッテクルマデニシヨウカ」

「もし見つけられなかったら罰とかはあるんですか?」

「バツ? ソンナノナイヨ~ デモコノアトクルレジアイストノバトルニクセンスルダロウケドネ」

「レジアイス?」

「ボクノキョウダイノヒトリダヨ。カンタンニイウトセントウキョウダネ」

「戦闘狂!? そんなに凶暴なのですか」

「キョウボウデハナイヨ。ジュンスイニタタカウコトガダイスキナダケ」

 

 もう一人の兄弟はレジアイスというらしい。名前的にこおりタイプだろう。こちらの相性的には有利だが戦闘狂というフレーズがひっかかる。Zわざなしで迎え撃つには心許ないのでここは是非とも見つけ出さねばならない。地上で行われている試合は今日一日で全て終わるとは思えない。ここの主人がいつ帰ってくるか分からないので早急に見つけなければならない。

 

「じゃあレジスチル、もう探してもいいか?」

「イイヨー」

 

 ケンタロスは文字通り猪突猛進で館に入って行き角を器用に使って扉を開けた。地霊殿も紅魔館同様広く探すのは一苦労しそうである。

 

「とりあえず手分けして探そうか。俺と八千慧がここ、バクガメスと潤美が離れで頼む」

「了解したわ」

 

 一階の方が広く機動力に優れる二人がここの担当、狭いがギミックの多そうな離れはパワー担当の二人が務めることになった。一刻の猶予もないのですぐさま取り掛かった。潤美たちは館の奥にある空中廊下を伝って離れの方に移動し、残された二人は片っ端から部屋を物色し始めた。

 

「中は割と片付いているな。これなら探索しやすそうだ」

 

 ここの当主、古明地さとりは几帳面な性格らしくどの部屋もきちんと整理整頓されている。おかげで思う存分調べることができる。ケンタロスは自慢の嗅覚を用いて匂いを調べていた。Zクリスタルを実際に見たわけではないのでタイプごとの匂いがあるかどうか分からないがしっかりとかぎ分けていた。

 

「ポケモンの匂いは……ないか。そりゃそうか」

 

 ポケモンがここ幻想郷にやってきて一週間経つとは言え屋敷内に入ったことはないようだ。しかもここ地霊殿は嫌われ者たちの巣窟。簡単に近寄る輩はいないだろう。しかしここまで匂いがないとなるとクリスタルの全てが離れにあるかそもそもクリスタルの匂いを封じているかのどちらかだと思われた。

 

「無いな……一体どこに隠したんだ?」

 

 重そうな机、棚などを軽々と持ち上げて小さな宝石を探す。やっていることは完全に盗賊だがそんなことを言っている場合ではない。一部屋一分と決めて次の部屋に移っていった。

 

「八千慧、どうだった?」

「ダメ、どこにもない」

 

 ケンタロスよりも多くの部屋を調べあげた八千慧も未だに一つも見つけられていない。すでに調べ上げたところに取りこぼしがあったかもしれないがもう一度周る余裕はない。もっと効率的にしなければ……

 

「……そうだ! あなた全体攻撃技何か使える?」

「全体攻撃? 一応じしんは覚えているが」

「地霊殿を壊さないように調整することはできる?」

「やったことはないが……勝算はあるのか?」

 

 もしも倒壊してしまえば紫や霊夢などが出ばってくること間違いなしだろう。やって来た時点でクリスタルのゲットチャンスはなくなる。だがそれでも今はケンタロスと自分を信じるしかなかった。

 

「私に、任せて!」

「よく言った! 俺もお前を信じるぞ」

 

 パートナーは違うが良い絆が築かれていた。ケンタロスは細心の注意を払ってじしんを本館と離れ、合わせてぶちかました。

 

「ううっ……!」

「ど、どうだ……?」

 

 地面がぐわんぐわんと揺れ、壁も床もミシミシ言っている。こんな風にして八千慧はこれから一体どうするつもりなのだろうか。

 

「はぁああああ! いっけーー!」

 

 八千慧はグラグラしている地面に手をかざした。すると地面に接している全てのものが上空に浮かび上がった。

 

「や、八千慧!! お前何を……」

「それより見て、ケンタロス」

 

 いきなりの奇行に驚いたケンタロスだったがそれ以上に驚くべき光景が広がっていた。

 

「何だ、これ……?」

 

 八千慧の指差す方向に頭を向けるとそこには何かが浮かび上がっていた。重力に逆らうはずの物体が例外的な反応を見せていた。正体は空のモンスターボールや回復の薬など紫たちが開発したものであった。

 

「私の『逆らう気力を失わせる程度の能力』を応用したのよ。重力に従うはずのものに能力を干渉させることでこうやって宙ぶらりんにすることができるのよ」

 

 先の異変で霊夢たちに討伐された後に自身のトレーニングに励んでいた八千慧。その甲斐あってか重力に逆らう、逆らわないのコントロールが可能になった。元々精神的な能力なので正邪ほど自在ではないが広範囲にまで力が及ぶようになっていた。

 

「それはすごいな……え? だったら最初からやれよ!」

「どうやら私の能力は幻想郷由来のものは浮かび上がらせないみたいなのよ」

 

 実際初めて浮かび上がらせられたのは幻想入りしたMDプレイヤーやルービックキューブなどであり、妖怪の山の滝などで試してみると一瞬は浮かび上がるがすぐに勢いが戻ってしまった。つまり、外から来た物だけに及ぶ能力であり、さとりが元々持っていた私物などは範囲外らしい。

 

「でもそのおかげで見つけられたわ。ほら」

 

 八千慧は辺りを見回すととある一つの例外的な挙動をしているものを発見した。それは入口に敷かれていたカーペットであった。カーペットはおそらく元々幻想郷にあったもののはずである。だが今何故か浮いてしまっている。それによく見ると中央が少し盛り上がっており隠されているものに持ち上げられている風になっていた。二人は確信をもって入口に近づきその敷物を引っぺがした。

 

「あ、あったーー!!」

 

 確信は見事に命中。空中に浮かび上がっていたのはZクリスタル。お宝の登場である。しかもよく見ると18種類という全クリスタルが塊となっていた。

 

「こ、こんなにあったのか……」

「あれ? これだけもらってもいいのかしら…… ちょっと聞いてみましょうか」

 

 盲点ともいうべき入口に配置した本人のレジスチルは外に待機してもらっている。勝手に貰うことは忍びないと思ったので入口の扉をガチャリと開いた。

 

「……え?」

 

 外にいるはずのレジスチル。しかし最初に会ったときとは違い地面に突っ伏していた。寝ていると思ったが体が傷だらけであった。一体誰の襲撃を受けたのか……

 

「あ、そういえばさっきのじしん……」

 

 広範囲に放たれた地面技。それに加えてレジスチルははがねタイプ。そこから導き出される答えは一つしかなかった。

 

「悪い、レジスチル。巻き込んでしまって」

 

 瀕死になったわけではなく気絶しているだけなのでおそらく大丈夫だとは思うがこのお宝をどう取り扱ってよいものか……

 

「ケンタロス、この子どうしようか?」

「ドウシヨウカ? キミタチ、ボクノキョウダイニナニスルツモリナノカナ?」

「な……!?」

 

 二人の背後から忍び寄る影。背中からはゾクゾクと悪寒を感じる。それもそのはず待ち構えていたのはひょうざんポケモンレジアイスだったからである。倒れている兄弟、その近くに居た見知らぬ者たち。レジアイスのとる行動は一つだった。ゆっくりとその巨大な氷の右腕を伸ばした。

 

「「う、うわぁーーーー!!」」




 読んでいただきありがとうございます。レジシリーズ第二弾は地霊殿が舞台で宝探しでした。バトルがそんなに得意でないポケモンもいてもいいかな、と。ですが覚えている技は強力です。

番外編2 レジスチル はがねタイプ 
覚えているわざ ばかぢから てっていこうせん でんじほう だいばくはつ

 伝説の中でも温和な性格の持ち主です。バトル以外で楽しむことが好きで二兄弟と仲良く過ごしています。力のコントロールがうまく出来ないのがコンプレックスのようです。

 さてついにレジアイスがやってきました。ケンタロスと八千慧は一体どうなってしまうのでしょうか!? 次回も番外編をお届けしますので少々お待ちくださいませ。
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