東方携帯獣   作:海老の尻尾

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番外編3 ウツロイド追跡隊vsレジアイス

「なんだ今のは!?」

 

 所変わって地霊殿の離れ。探すところの多い場所ということもあり、めぼしい手がかりは見つけられていないいなかった。そんなときに本館の方から大きな揺れを感じた。

 

「もしかして私のケンタロスのじしんかも……ちょっと行ってみましょうか。何かあったのかもしれないし」

「ああ……ん? これって……」

 

 バクガメスは棚の上に何かが置かれているのに気づいてそれを手にした。Zクリスタルは本館に全て置いていたので目当ての物ではないがそれに匹敵するお宝を見つけてしまった。

 

「どうしたの? 行くよ!」

「お、おう!」

 

 潤美に言いそびれてしまいその宝を胸の窪みに仕舞いこんだ。一段落着いたらさっきのレジスチルにでも話を聞いてみようと思った。

 

 

 全速力で入口に戻るとそこには銀色の巨人の代わりに水色の巨人がそびえ立っていた。おそらくさっき言っていたレジアイスという奴だろうと二人は思った。曰く凶暴らしいポケモンが今、八千慧とケンタロスに手を伸ばしていた。

 

「「危ない!!」」

 

 間に合わない、そう思った瞬間八千慧たち二人はニコッと笑った。

 

「へー、このクリスタル作ったのレジアイスなんだ」

「ソウソウ! ボクイガイトコウイウコマカイノツクルノトクイナンダ」

「さすが伝説のポケモン。じゃあこのZリングも?」

「イヤソレハレジロックダネ。デ、ナカニコメルソザイノチョウタツガスチルノヤクワリ。ボクタチサンキョウダイデコレヲツクッテイルンダヨ」

 

 殴りかかろうとしている風に見えたがただ和気藹々と話し込んでいるだけであった。潤美たちは減速して三人の会話をじっと聞いていた。

 

「それより……レジスチルについ攻撃してごめんなさい。大切な兄弟なのに」

「アヤマッテクレタカラベツニイイヨ。スチルモタダキゼツシテイルダケミタイダシスグオキルトオモウカラ」

 

 倒れているレジスチルを見ても激昂したりせず相手の話をしっかり聞いて穏便に過ごす様子を傍から見て聞いていた話と随分違うように思えた。いくらか話していると八千慧たちが潤美の方にようやく気が付いた。

 

「あ! 潤美、戻ってきたの。こっちはクリスタル全部見つけたよ」

「う、うん。それはすごいけど……」

「コノコタチハダレ?」

「そういや言ってなかったね。牛崎潤美とバクガメス、二人は私たちの仲間なんだ」

 

 氷の巨人に紹介する八千慧。軽く会釈をすると快く歓迎してくれた。目が点だけなので表情は分からないが仕草から喜んでいるように読み取れた。

 

「それより八千慧、なんでこんなに和やかなの?」

「最初は私も構えていたんだけど話す内に段々と打ち解けてきてね。思ったよりいいポケモンだよ」

「そうなのね……あ! そうだそうだ。ウツロイドのことよ!」

 

 ここに来た目的、それは大切な仲間の瓔花を攫ったウツロイドを探索するためであった。最後の頼みの綱が切れないことを願いながら聞いてみた。

 

「レジアイス、ここにクラゲみたいな透明でふよふよしたポケモン来なかった?」

「クラゲ……? ウーン、アオイロトアカイロノポケモンナラヨンタイホドミタケドトウメイナノハイナカッタナ」

 

 レジアイスが言っているのはおそらくメノクラゲ、ドククラゲ、プルリル、ブルンゲルのことだろう。確かにクラゲモチーフだろうが今回の目当てはそれではない。ここも外れ。次への手がかりを失ってしまい困惑する一同であった。

 

「じゃあどうする?」

「どうもこうも……手がかり無いから地上に戻るしかないよな。というかお前たちは次の試合もあるから早めに戻らないといけないだろ」

 

 夢中になって地下に来たが八千慧とバクガメスたちは勝利チームなのでいつまでも他の仲間たちとはぐれたままではいけない。すぐに出番はないから猶予は幾分かあると踏んではいるがずっとというわけにはいかなかった。

 

「ありがとうねレジアイス。私たちそろそろ地上に戻るわ。レジスチルが目覚めたら悪かったと伝えておいてくれる?」

「コッチコソスマナカッタナ……ア、ソウダ! キミタチマダZワザツカッタコトナイデショ? ボクガケイコツケテアゲルカラカカッテオイデ」

 

 帰ろうとした瞬間にレジアイスからバトルを申し込まれた。お互い顔を見合わせてどうしようかと考える潤美たちであったが謹んで受けることにした。何しろ相手は得体の知れないポケモン。万が一のことを考えてパワーアップをしておくことに越したことはないからだ。幸い今は体力に余裕があるし後に響くことはないだろうと考えていた。

 

「じゃあ……頼んでもいいかしら。折角手にしたZリング、使いこなせるようにならないと」

「イイヨー」

「あ、もう一ついいかなレジアイス」

「ドウシタノ?」

「さっき離れで俺もZリング見つけたんだが……使ってもいいか?」

 

 バクガメスは胸の窪みからさっき見つけたZリングを取り出してレジアイスに見せた。宝探しはZクリスタルが獲物だったのでこれはルール違反になるかもと思い黙っていた。

 

「ハナレニ? ウーン、ボクタチアソコニハイッタコトナイケド……マアイインジャナイカナ? キミタチモツカッテイイヨ」

「本当! よし、これで私たちも使えるね、バクガメス!」

 

 許しが出たところで二人は手首にリングを装着した。はめ込むクリスタルはバクガメスの方にホノオZ、ケンタロスの方にカクトウZであった。相手は弱点の多いこおりタイプ。こちら側はしっかりと弱点は付けるが決して油断はできない。なにしろバトルの実力はレジスチルお墨付きであるからだ。

 

「ジュンビハイイ?」

「ええ、いつでもいいわよ」

「ソレジャア……イクヨ!」

 

 戦いの合図が切られた瞬間であった。下手をすればこれで終了していたかも知れなかった。遠くにいたはずのレジアイスが俊足で間合いを詰めて眼前で縦向きにばかぢからをくりだした。間一髪で八千慧が右に避けろと命じたのでかわすことができたが、もし当たっていたらどうなっていたのかは大地に抉れた小さな底なしの穴が物語っていた。

 

「オ、ヨケタネ。スゴイ」

「怯まないで! ケンタロス、すてみタックル!」

 

 攻撃を向けられなかったケンタロスはすかさずすてみタックルをお見舞いした。レジアイスはそのままモロに喰らって吹き飛んだ。反動を受ける強力な技だったがレジアイスが地面に叩きつけられる音は辺り一帯に響いた。

 

「カイヒリョクニスピード。ズイブンイイパートナーニメグリアエタミタイダネ」

「……効いてないのか」

 

 砂煙の中からケロリと立ち上がった相手の体には目立った傷は見受けられなかった。伝説の異名は伊達ではなかった。普段はのんびりしているがバトルとなると別と言うことだ。

 

「デモヤラレッパナシモイヤダカラコンドハコッチガイクヨ!」

 

 先程と同様に直進してきた。だが今度はさっきよりも速くない。十分回避できると思った二匹だったが足が動かなかった。

 

「!? バクガメス、足元!」

「え?」

 

 硬直した右脚を見るといつの間にか足が凍っていたことに気が付かなかった。気を取られていると正面からのばかぢからがクリーンヒット。二匹とも地霊殿に向かって吹き飛ばされた。

 

「バクガメス!」

「ケンタロス!」

 

 トレーナー二人が二匹に駆けよった。すでにバクガメスもケンタロスも共に満身創痍の状態であった。

 

「ドウダイ? ボクノトクイワザノフブキ。キドウリョクタカイアイテニハユウコウナンダヨ」

 

 ふぶきは基本的には大技である。だが上手くコントロールすることで小技にも変えることができる。巨体の割にクリスタル作りが得意と言っていたのでこういう操作はお手の物だろう。

 

「バ、バクガメス……動ける、か?」

「俺は……なんとか」

 

 効果抜群の格闘技を受けたケンタロスにはほとんど体力が残っていなかった。だがギブアップをするつもりはさらさらなかった。この先対峙する相手がレジアイスよりも弱い保証はどこにもない。ここで負けたらこの先思いやられると改めて自分に喝を入れた。

 

「皆……これで決める」

「ああ。最後の全力、見せてやろうぜ」

 

 ケンタロスは足をプルプル震わせてなんとか立ち上がった。横からつついたらすぐにでも倒れそうなほどふらついている。だが倒れるわけにはいかない。前足を皆の前にかざした。

 

「力を……貸してくれ」

 

 思いに呼応するようにその上に手と手が重なり合った。二人と二匹が手を重ねたとき光に包まれた。

 

「オ、イキナリZワザツカエルナンテ。サスガキョウダイタチヲタオシタダケハアルネ」

 

 倒すことが目的ではないので技が発動するまでじっくりと待っていた。全力と全力のぶつかり合い、それこそがレジアイスの最も好むところであるのでワクワクしながら待機していた。

 

「ぶっつけ本番だけど……大丈夫かしら」

「やらなきゃ瓔花は守れないでしょう。息を合わせるわよ」

 

 八千慧と潤美は背中を合わせた。そして照準をレジアイスに固定。全てはこの一撃に込める。

 

「命の鼓動と熱き魂」

「宿る拳に思いを乗せて」

「焦がせ! 生きとし生けるものを!」

「貫け! 大いなる力をもって!」

「ダイナミックフルフレイム!!」

「全力無双激烈拳!!」

 

 バクガメスからは巨大な火球、ケンタロスからは拳のオーラのようなものが背後に見えた。勢いよく発射されたそれらは個々では倒すまでには至らないだろう。そう考えた二者は少し軌道を変えて拳に炎を纏わせて炎の拳という合体技として完成した。

 

「スゴイスゴイ! ハジメテデココマデデキルノハホントウニスゴイヨ! オレイニボクノイチバンノワザヲミセテアゲルヨ!」

 

 レジアイスは自分の何倍もの火拳に向かって電気の球を高速で発射した。でんじほうという高火力低命中率の技であるがこんなに大きければ外すわけがない。レジアイスも同様に本気で技をくり出した。

 

「いっけーー!!」

 

 炎と電気の高エネルギー同士がぶつかり合う。押したり引いたりで威力は互角である。衝撃が周りにまで影響して背後にある地霊殿がミシミシいっている。少しでも気を抜くと再び吹き飛ばされそうな両者であったが均衡はいつか崩れるものであった。

 

「ボクトココマデワタリアエルナンテホントウニスゴイネ。デモマダZワザイージーレベルダネ。スキガオオキイヨ」

 

 真正面からぶつかっていたでんじほうだったがレジアイスがS字になるように軌道を変えた。すると見る見るうちに拳が小さくなっていき、終いには相殺と言う形で二つの技が消滅した。

 

「う、嘘でしょ……」

「ま、負けた」

 

 もうこれ以上戦う力は残っていない。そして戦うつもりもない。完敗だ。

 

 

 

「イヤー、トテモタノシカッタヨ! ホラキズグスリ」

「あ、ありがとう」

 

 潤美たちはパートナーたちにすごいキズぐすりを与えて体力を全快させた。レジアイスも同じく回復した後口を開いた。口がどこか分からないが。

 

「キミタチスゴイツカイコナシテタネ。ソノZワザ。デモツカウコトニイシキシスギテコウゲキガタンチョウダッタカラソコキヲツケテネ」

「レジアイス……ありがとう優しいね」

「ドウイタシマシテ」

 

 講評を頂いて少し気持ちは楽になったが悔しさは残っていた。こんなので瓔花を守れるのか、と。もっともっと強くならないと。そのためにはもっと経験値を積まなければ。特にまだ試合の残っている八千慧たちはチャンスがあった。

 

「世話になったね。じゃあ私たちはそろそろ地上に戻るね」

「Zリングもありがとうな」

「レジスチルとレジロックにもよろしく」

「またな」

「ウン、ツヨクナッタラマタバトルシヨウネー」

 

 一行は地霊殿を後にして元来た大穴を通って地上に帰還した。結局ウツロイドに関する手がかりはゼロ。だが二組は確実な力を手にした。苦労と引き換えに手にしたこの力はきっと瓔花救出に一役買ってくれるだろう。ここで八千慧と潤美は別れた。八千慧は魔理沙の元の旧都チームに。潤美は再び人気のなさそうな土地に赴くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハタ迷惑なやつらだったな」

「浮いたときはびっくりしたわね」

「だが気付かれていないようでなによりだ。ところで……計画は順調か?」

「ええ。最終段階に入れたわ。それもこのいい触媒のおかげね。あとはあの方が来ればいつでも計画に移せるわ」

「よし、それじゃあそれまで耐え忍ぶとするか……」

 

 闇は刻一刻と浸潤してきていた……




 読んでいただきありがとうございます。何とか今年中に終えられて嬉しいです。これでひとまずレジシリーズは完結です。

番外編3 レジアイス こおりタイプ 
覚えているわざ ばかぢから ふぶき でんじほう だいばくはつ

 普段から温厚ですがバトルセンスが高すぎるレジアイスです。細かいことも得意な伝説らしいハイスペックです。ちなみに補足ですが、この戦いはあくまでバトルなのでポケモン同士で戦う決まりがあります。レジロックのときは唐突だったので潤美が一撃で沈めましたが本来は反則です。もしも潤美や八千慧が戦っていたら結果は変わっていたと思います。決してレジロックが弱いわけではないです。

 そして2020年も終了です。今年一年色々あったかと思いますが来年は来年で楽しいこと盛り沢山だと思います! 私もノロノロペースではありますが投稿を続けていきます。それではよいお年を~
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