東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第二十四話 vs二ツ岩マミゾウ

 前略。チルノのパートナー、ラプラスがぜったいれいど放って皆絶体絶命。

 

「ぬお! こりゃいかん。オオタチ、あなをほるでかわすんじゃ!」

「ミルタンク、ほのおのパンチでガードだ」

「ひゅい!? チルノのやつこっちにも撃ってきやがって。ハスブレロ、みずでっぽう!」

 

 迫り来るこおりの欠片を各々が手持ちのポケモンの技を駆使してガードして凌いだ。霧の湖は氷で覆われて周辺の地面は縮み上がってしまった。浮遊できるポケモン以外の者たちの機動力を削った。⑨だがその強力さは本物である。対応できたのは流石幻想郷の猛者と言ったところだが全てのポケモンたちが対処できたわけではなかった。

 

「な、何が起きた……の? ねえ、こころ?」

「チルノの方からだろう。先制攻撃とはずる賢い」

 

 最初の犠牲者は人里チームの秦こころとパンプジンのペアである。チルノの攻撃は複数の方向から飛んできており、反応が一瞬遅れたため被弾してしまっていた。こころはこんなポーカーフェイスをしている割にはかなりの脳筋であり攻撃特化かつ瞬間攻撃速度最大にして鍛えていた。だがその代わりスピードは犠牲にしていた。回避することが肝要となるこのルールには一番向いていない人物であった。もしもこころが先制攻撃していたとしたらどうなっていたかは分からないだろう。

 

「もしかして私の出番これで終わり? 折角頑張って練習したのに?」

「ええ、終わりです。こころ、パンプジンをボールに戻してこちらへ来てください」

「そうか……仕方ない」

 

 いつの間にか咲夜がこころの真後ろに控えており彼女たちの失格を告げた。ダメージを少しでも受けるとメイド長がすぐにでも飛んでくる。

 

「では負けた方はこちらでお待ち下さい」

「ここは……そうか紅魔館前か」

 

 先程まで森の中にいたはずなのにいつの間にか館の前まで移動していた。咲夜が能力でここまで運んでくれたのだろう。こころは用意されていたベンチに腰掛けた。隣には(一応)監視役を務めている美鈴とジャラランガがすでに座っていた。

 

「もう来たのか。早いなこころ」

「まあ仕方ないですよ。チルノさんの攻撃は唐突でしたから。気を落とさないで下さいね」

 

 美鈴がこころたちを宥めた。開始早々脱落は落ち込むかと思い気にかけていた。

 

「別に気にしていない」

 

 とは言いつつこころの能面の口角は下がり眉間に皺が寄っていた。最強を賭けて、と言っていたしもっと戦いたかったのが本音だろう。だがルールはルールであり、そこを違反するつもりはなさそうである。

 

「でも私たちが一番最初に負けたのは悔しいな……」

 

 パンプジンがそう言うと美鈴は目を逸らして指を向こう側に差した。その先にはチルノが高らかに笑っていた。

 

「あー、実は……パンプジンさんたちだけじゃないんですよね。チルノさんの被害者」

 

 湖は冷気ですでに凍り付いているがその中をよく凝視してみると二体の影があった。一方は白く、もう一方は青かった。ぜったいれいどのせいでその()()はカチカチになっていた。だが救助するために氷を溶かして中断するわけにも行かないので彼女たちにはオーベムの力を借りて脱落の宣言を告げた。

 

「チ、チルノちゃん……私たち味方だよ……?」

「というかラプラス……私たちのこと気付いていなかったのかしら」

 

 湖に潜んでいたのは淡水に棲む人魚、わかさぎ姫とその相棒ポケモンであるジュゴンたちであった。姫たちはチームで一番目立つであろうチルノをエサに近づいてきた敵に不意打ちを喰らわせる魂胆で湖に潜んでいた。しかしチルノたちがいきなりぜったいれいどを放ったおかげで身動きが取れない状況になってしまった。一応ルールとして味方側の攻撃はノーカウント扱いされるが実質退場である。

 

「あれ、わかさぎ姫? 何してるんだそんなところで」

「チルノちゃん……あなたの攻撃でやられちゃったのよ……」

「あー、私のぜったいれいどに巻き込まれちゃったらしいわね。ごめんなさいね」

 

 ようやく存在に気付いたチルノにわかさぎ姫が話しかけた。だが声は実際にチルノの耳に届いたわけではなく、ラプラスを介してである。ラプラスは微小な音を拾い上げる能力に長けており、わかさぎ姫の声をチルノに届けた。

 

「おー、それは悪かったな! アタイが勝ってみせるから安心するんだな」

「そんなことよりも溶かしてほしい……」

「天才のアタイでも難しいなそれは。アタイがほのおタイプだったらできたんだけどな」

「氷の妖精が何を言っているのよ……というかこんな無駄話していていいの?」

 

 チルノはチームのリーダーであるため、相手から格好の的になるのが道理である。外の様子が確認できないジュゴンはそれを懸念していた。だが彼女の心配はよそにチルノたちはのんきにお話をしていた。実際湖の周辺には脱落したこころたちを除けば誰もいなかった。真っ先に狙われると思われたがそうでもなかった。では他の者たちは一体どこにいるというのだろうか……

 

 

 

「ほっほ。儂の相手はお主というわけか」

「狙いはチルノさんでしょう。ならばここを通すわけにはいきませんね」

 

 ぜったいれいどの猛攻が静まった後に湖に真っ先に行こうとした者がいた。それがこの化け狸、二ツ岩マミゾウであった。だがそうなるとあらかじめ読んでいた者もいた。それがこの毘沙門天の代理、寅丸星であった。星は対戦相手が決まった瞬間からマミゾウには注意を払っていた。ぬえからマミゾウのことは知らされており、謀略に長けているとも聞いていた。チルノとの相性は最悪だろう。ここで何としても足止めしなくてはならないと星は鉾を構えた。

 

「まあまあ、そう焦りなさんな。ポケモンバトルで勝負を決めようではないか」

「ええ。チルノさんのところには行かせません! 行って下さい、ライコウ!」

 

 先程まで存在感を消していたが星に呼ばれると近くから突如発生した雷雲とともにいかずちポケモンライコウが現れた。鋭い目つきをしており一切の死角がない。全身からバチチと漏れ出ている電気はライコウ自信の戦意を表していた。

 

「強そうなライコウじゃの。儂は……このオオタチじゃ!」

 

 マミゾウが指をパチンと鳴らすと足元の地面からひょっこりとどうながポケモン、オオタチが現れた。マミゾウの体を伝い肩にちょこんと乗ったままじっとライコウの方を見据えていた。星から見て相手のオオタチが恐怖を感じているようには見えなかった。いや、本当は感じているのかもしれないが気持ちが落ち着いている。相当精神面を鍛えられている風に感じ取れた。

 

「無駄話してもしょうがないからの。オオタチ、まずは小手調べのハイパーボイスじゃ」

「ライコウ! かみなりで貫いて下さい!」

 

 オオタチの口から放射状に出る音の攻撃をライコウ自慢のかみなりでかき消していく。たかだか一般ポケモンと伝説のポケモン、その違いは多々あれど大きなところは火力である。相殺なんて甘いところには落ち着かず、オオタチの眼前に雷が迫って来ていた。だがそれを予想できなかったマミゾウではなかった。

 

「あなをほるで行くんじゃ!」

 

 轟音の中でもマミゾウの声をしっかり聞き取り地面に向かって穴を掘った。ライコウのかみなりは超強力ではあるが相手の姿が見えないほど広範囲の技であることが今回に限り不利に働いてしまった。ヒットしたと思っているライコウに近づくオオタチを当人は気づくことができなかった。

 

「ライコウ! 地面から……」

「遅い!」

 

 真下から浮かび上がってくるオオタチの体がライコウに当たった。効果抜群のあなをほるといえどHP的には10ダメージくらいしか効いていないほど伝説ポケモンの耐久力は伊達ではない。だが今回ばかりはオオタチとマミゾウに軍配が上がった。

 

「寅丸星、ライコウ。戦闘不能です」

 

 咲夜の声と同時に星とライコウの姿がマミゾウの前から消えた。こころたちと同様に紅魔館前まで移動させられたのだろう。

 

「ふぅ……怖かったよ~!!」

「よく頑張ったの」

 

 マミゾウはオオタチの頭をじっくりと撫でていた。オオタチも内心はビクビクしていたが想いに応えるために気持ちを落ち着けて冷静に対応することができた。その分後になって恐怖が押し寄せてきていた。オオタチの心臓がバクバクいっているのが聞こえるくらいの様子だった。オオタチの気持ちが再び落ち着くまでしばらく待つことにした。

 

「よし、そろそろ大丈夫かの? 早く大将を討ち取るとするぞ」

「うん! さっきと同じように地面から忍び寄るんだよね」

「そうじゃ、いいかくれぐれも音を立てないように……」

 

 ピチャッ!

 

「え?」

 

 オオタチの右頬が何かで濡れた。雨? いや降っていない。しかもこんな局所的に降るわけがない。飛んできた方向を見るとそこには大きな木……の上に誰かが居た。

 

「お、お前たち!」

「脱落です」

 

 マミゾウがその姿を視認できた瞬間、タイムキーパーによって強制送還されてしまった。今のは威力を弱めたみずでっぽうであり、不意打ちの攻撃であった。オオタチたちがチルノにやろうとしていた忍びの技をまんまとやられてしまった。

 

「あの化け狸は厄介だったからな。早めに潰せてよかったよ」

 

 木にそびえ立っているのは水平思考の河童、河城にとり。そしてようきポケモンハスブレロだった。実はにとりたちは最初から星たちの近くにおり、もしも星たちが負けたら油断していたところを狙い撃ちする予定だった。マミゾウを厄介視していたのは星だけではなかったということだ。

 

「なあ、お前もそう思わないか?」

 

 そしてにとりサイドの星を重要視していたのもマミゾウだけではなかった。にとりがどこかに向かって呼びかけると雪に覆われた大木の陰から対戦相手が愛用しているヴァイオリンとともに出てきた。

 

「……気付いてたのね」

「この望遠レンズのおかげでね」

 

 首にぶら下げていた双眼鏡で遠くから観察されていたことが筒抜けだったようだ。金髪をなびかせて相棒のロトムとともに騒霊ヴァイオリニスト、ルナサ・プリズムリバーが現れた。弓をにとりに差して鋭い眼を向けた。

 

「さあ、戦いましょう」

 

 ロトムは体中に電気を帯びており臨戦態勢である。レベル的にもハスブレロの方が下であるのは明白である。さらにでんきタイプは得意としない相手だ。まともに戦えば勝機は見えなかっただろう。

 

「いいけど……後ろは大丈夫かい?」

「ん? 後ろ……?」

 

 ニヤついたにとりの言葉にルナサとともにロトムが後ろを振り向いた。すると目の前には猪突猛進でポケモンが迫って来ていた。素早いロトムでもさすがにその速度に反応はできずにいた。




 読んでいただきありがとうございます。何とか二月中に投稿できてよかったです。毎回書くごとに文字数が増えていくこの頃です。三月中にチルノ編終わらすのが目標です。

No.19 二ツ岩マミゾウ はがねタイプ 相棒ポケモン オオタチ ノーマルタイプ 

使える技 あなをほる ハイパーボイス なげつける アイアンテール

 一度でも攻撃が当たれば終了するこのルールでは中々四つの技を紹介できないのがネックですね。マミゾウは普通のルールを想定していたのでいわ・はがね対策であなをほる。タイプ一致のハイパーボイスにゴースト対策のなげつける。そして接近戦に役立つアイアンテールというガチガチの構成でした。まさかこんな風になるとは思わなかったでしょうね~
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