東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第三話 コミュニケーション

 アンノーンが霊夢のパートナーになったとき、博霊神社の周辺ではある二人が談笑していた。

 

「それでよ、私はアリスに怒られちまってな! あのときは死ぬかと思ったぜ」

「それは魔理沙さんが悪いですよ。土足で家に入っていくから」

「確かにな。次からは善処するぜ。おーい、霊夢いるか~?」

「また面倒なのが来たわね……あれ? あうんも一緒だったのね」

「はい、買い出しの途中に偶然出会いまして一緒に来ちゃいました」

 

 霊夢の前に現れたのは霧雨魔理沙。普通の魔法使いである。霊夢とともに異変解決に赴くプロフェッショナルであり時々神社に遊びに来る。そしてもう一人は高麗野あうんである。博霊神社の狛犬であり霊夢によく懐いている。自ら率先して手伝いを行うことが多く、先ほどまで人里へ行きお茶菓子を買いに行っていた。その愛くるしさから人里でもマスコット的人気であり、買い物に行くとほとんど毎回サービスでおまけをしてくれる。そのことに味を占めた霊夢は最近は専らあうんに買い物を任せている。

 

「ん? 紫と藍も一緒なのか。いやそれよりもその巨大な袋と見たことない妖怪たちは何なんだ?」

 

 魔理沙は大量のモンスターボールとオーベムとアンノーンを指差して尋ねていた。黒と茶のフワフワした未確認生物に釘づけであった。だが不気味がっているあうんとは対照的に魔理沙はわくわくしていた。好奇心の強い魔理沙にとって見たことのない事象は興奮の対象となりうる。それは元来の性質なのか魔法使いという職業病によるものなのかは分からないが徐々にそれらに歩を進めていた。

 

「丁度いいわ。アンタたちも聞きなさい」

 

 霊夢は魔理沙とあうんを呼び寄せた。そして二人は紫から同様の話を聞いてすぐに理解して参加を決意した。やはり血気盛んなものが多い。

 

「さて、じゃあ私は誰を選ぼうか、じゃなかった。誰に選ばれるんだろうな……」

 

 魔理沙がモンスターボールの入った袋を見るとそこには数多くのポケモンたちがすでに出ておりランランとした目をしていた。

 

「魔理沙! 俺とパートナーになってくれ!」

「いや、俺だ!」

「私よ!」

「儂が行こう」

「な、なんだなんだ!? ちょっと待ってくれ!」

 

 さっきまでビビリまくっていたポケモンたちが嘘のように積極的になっていた。こおりのようにクールな巫女とは違い、こっちは温かみを持ち、なおかつ同等の力を持っていることを感じていたので群がるのも無理はない。なおこの間キレていた鬼巫女と目を合わせたのはアンノーン以外一匹もいなかった。

 

「あらあら魔理沙モテモテね」

「何呑気なこと言ってんだ紫! おい助けてくれあうん!」

「え?」

 

 魔理沙があうんに助けを乞うた。しかしあうんは一匹のオレンジ色の犬っぽいポケモンをワサワサ撫でていた。

 

「すみません魔理沙さん。私ルガルガンとコンビ組むことになりました」

「よろしくなあうんよ」

「あ、はい!」

 

 あうんのヘルプがなくなってしまったので諦めて一匹ずつ見ていくことにした。面倒だがその分強いポケモンが来てくれるだろう。

 

「俺はグラードン。ホウエン地方の陸を創ったポケモンだ。ゲンシカイキもできるし俺と手を組めば優勝間違いなしだ」

「そんなでかいサンドじゃ到底無理よ。私ゼルネアスのように強いフェアリーがあなたには相応しいわ」

「儂ランドロスは別の世界では覇者として君臨しておる。お主には儂が必要じゃろう」

 

 様々なポケモンたちが我先にと自己PRをしていた。魔理沙を選ぶのは確かに英断ではあるがさっきまでビクついていた様子を見ていた霊夢にとっては滑稽にしか映らなかった。

 

「んー。どいつも確かに強そうだが私のフィーリングには合わないな…… あ! お前に決めた」

 

 魔理沙は並んでいたポケモンたちの波を押しのけ後ろにいたピンクのフォルムのポケモンの頭を撫でた。

 

「え、俺!?」

 

 伝説ポケモンたちがひしめき合う中でまさか自分が選ばれるとは思わなかったのだろう。モンスターボールによく似たきのこポケモン、モロバレルだった。いつも眠そうな目がシャキッと開いた。

 

「お前面白そうだし私と組もうぜ! な?」

「あ、ああもちろん嬉しいが」

 

 モロバレルにとってはとても好都合な話である。だが周りの目が恐ろしい。数ある伝説ポケモンたちを押しのけて選ばれたのだから嫉妬もひとしおである。特にあそこにいる空間を司るシンオウの伝説さんは嫉妬でずっとパルパルしていた。

 

 

「うむ。それでは皆決まったようだな。それでは明日くらいに祭りの詳細を話すからしっかり聞いておくように。私と紫様はオーベムと一緒に色々決めることがあるのでパートナーポケモンとコミュニケーションをとっておくように。それでは」

「じゃあね~ 楽しみにしてるわ」

 

 藍と紫、それからオーベムはスキマで帰ってしまった。神社に新たに三匹のポケモンが加わった。

 

「とりあえず歓迎するぜアンノーン、ルガルガン、それからモロバレル! 軽くだけど宴会しようぜ!」

「ちょっと何勝手に……」

「いいですね魔理沙さん! 親睦を深めるのは大事ですから」

 

 あうんも魔理沙側に付き二対一となってしまったのでこれ以上反論するのは止めた。

 

「はあ全く……じゃあアンタたちも手伝いなさいよ。当然アンノーンたちも」

「わ、分かりました!」

 

 いきなり連れて来られて宴会に参加、またその準備までもさせられた。アンノーンたちはポケモンの世界よりも苛烈な世界で生きなければならないことを覚悟した。

 

 

 宴会が始まっておよそ一時間。酒と食事を交わして三人と三匹はほとんど打ち解けたようである。あうんとルガルガンは同じ犬同士気が合うようで髪を撫でたり撫でられたりしていた。幸せそうな二匹を魔理沙は酒の肴にしていた。

 

「ハハ、あいつらもうどっちがポケモンか分かんねえくらいだな」

「そうだな。あ、魔理沙もう一杯飲むか?」

「おう、悪いな。それにしてもお前見た目通りキノコとかに詳しいんだな。今度魔法の森に珍しいキノコあったからちょっと見てくれよ」

「まあいいが俺の世界とここの世界のキノコが一緒かは分からんぞ?」

 

 魔理沙とモロバレルはキノコトークで盛り上がって距離も近づいている一方、もう一組は居間にいた。

 

「す、すみません。霊夢さん……」

「気にしなくていいわよ。むしろ無理矢理飲ませたこっちが悪いんだし」

 

 アンノーンが下戸であることを知らずに酒虫酒を飲ませた霊夢は倒れたアンノーンを介抱していた。どこが口か分からないが一口飲んだだけで体中が赤くなるのではなく、色違いのように青くなり目を×マークにしていた。

 

「僕は気にしないで宴会に戻って大丈夫ですよ……?」

「別に遠慮なんかしてないわよ。それにアンタとも少し話したかったし」

「え、僕に?」

「さっき紫から話聞いていたけど、どうしてアンタだけがこっちに紛れ込んできたかが分からないのよ。幻想入りする存在は多少いるから偶々と済ましてもいいんだけどね。こう、悪い予感がするのよね」

 

 博霊の勘の的中率はほぼ100%であり、様々な困難も勘で乗り越えた実績があった。それが気になった霊夢はアンノーンに漏らしていた。イレギュラーすぎてやや慎重になっているのかもしれない。

 

「まあどうせ紫絡みだろうし、何か起きたらとっちめればいいか。悪かったわね、余計なこと喋っちゃって」

「い、いえ」

 

 アンノーンはこの短い時間だが博霊霊夢の人間性が見えた気がした。強力で冷たい一面も確かに持っているが根が良い人だということだ。こうしてあったばかりの未知のポケモンという生物にも優しく自主的に看病をしてくれている。さっきまでの皆の会話でも霊夢がこの中心にあることは誰が見ても明らかであった。不安さはもちろんまだあるが信用できない人間ではないというのが分かった。

 

「霊夢さん」

「ん、何よ」

「僕頑張ります。絶対優勝しましょうね」

「……ええ、当然よ」

 

 霊夢とアンノーンはお互いにっこりと微笑み、こちらもしっかりとコミュニケーションをとることができた。

 

 

 

 翌日、紫、藍、オーベムは昨日十二分に考えたポケモンバトルのルールを見直していた。机一杯に広げた紙を端から端まで目を通していた。

 

「これでおそらく不平等にはならないかと思います」

「ええ、そうね。それじゃあ始めましょうか」

 

 オーベムと藍は紫にサイコエネルギーを送り幻想郷全土に届くほどの思念波を飛ばした。オーベムが来たことで今まで狭い範囲でしか効果がなかったのが広い範囲にまで届かせることができた。実際オーベムが居なくても複数回に分けて念波を飛ばせたが面倒くさいのでオーベムの力を借りたのである。

 紫は全住人にひっかかったことを確認してから話し始めた。

 

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