東方携帯獣   作:海老の尻尾

32 / 38
第二十九話 カウンター

 屠自古と芳香の戦いが引き分けで終わってしまったため、急遽延長戦として咲夜とルーミアが戦うことになった。お互い既にスーパーボールを手に持っており戦う準備は万端だった。

 

「それでは皆さんこれが最後のバトルです。大いに全力を出してください」

 

 神子の声で場の雰囲気が引き締まった。先程までは各地でバトルが行われていたため注意が分散されていたが、今はこの場でしか戦いがないので皆の目が集まっている。もちろんそんなものを気にする二人ではないのだが妙な緊張感が漂う。これで勝敗が喫するのだから。

 

「じゃあ私から行くのかー、ソーナンスなのかー!」

「ソーナンスゥ!」

 

 ルーミアの相棒ポケモンはがまんポケモンソーナンス。声高らかに叫びながらルーミアと同じ両手を伸ばしたポーズをとっていた。><←このような目をどちらもしており、仲良さそうなのが目に見えた。

 

「私たちも行きましょうか」

「ああ」

 

 打って変わって咲夜サイド。ソーナンスとは真逆の鋭い目を有しているのはとうじんポケモンキリキザン。咲夜の相棒ポケモンであり、様々な咲夜のサポートを手がけてきた。正体を明かせば不利を取られると考えていたので今の今までボールの中にいた。キリキザンは小声で相手に聞こえないように咲夜に囁いた。

 

「咲夜、アイツはどういうポケモンなのだ?」

「ソーナンスっていうエスパータイプのポケモンよ。カウンター攻撃が得意で向こうから攻撃を仕掛けてくることはないわ」

「なるほど、道理で全然攻撃を仕掛けてこないわけだ」

 

 ソーナンスはまともな攻撃技を覚えないのが特徴である。物理技を返すカウンター、特殊技を返すミラーコートしか覚えておらず、自分から攻撃を仕掛けられない。しかしその代わりに三倍のダメージを与えられるほどの特訓が施されていた。

 

「じゃあ少し仕掛けるか」

「そうね、あくのはどうで」

 

 キリキザンは両腕を構えて早速攻撃を繰り出した。冷たくて鋭い波動は真っすぐにソーナンスに向かって発射された。エスパータイプのソーナンスにあく技はこうかばつぐんであるが、ソーナンスは一切避けようとしなかった。

 

「頑張れー、それを弾き返すのだー!」

「ソーーナンスッ!!」

 

 軽く放ったはずのあくのはどうだったがはかいこうせんレベルのものになって返ってきた。

 

「うおっ!」

 

 思わず避けてしまったキリキザンだったが、避けてしまったため神霊廟の地面がゴリゴリに削れてしまった。まともに喰らったら消し炭になると思ったが実際相手の攻撃は自体は喰らうはずがなかった。

 

「キリキザン、あれミラーコートよ」

「え、ああ。そうか」

 

 あくのはどうは特殊技であり、ソーナンスの放った技はミラーコート。それはエスパータイプの技でありあくタイプを持つキリキザンにはこうかはないようだ……つまりこのままあくのはどうで攻めればいいわけだが相手のソーナンスには傷一つ付いていない。与えるダメージは微々たるものである上に逆に帰ってきた衝撃波でダメージを与えられる可能性が高い。技自体に効果なくても衝撃波は効果はある。また物理技も同様にカウンターが返ってくるだろう。

 

「だがこのままでは有効打がないな。どうするか……」

 

 キリキザンの今の覚えている技はあくのはどう、アイアンヘッド、つるぎのまい、そしてきんぞくおんである。相手が物理型でも特殊型でも対応できるようにこのような技構成にしたがこの相手には通用しなさそうだ。

 

「! そうだわキリキザン、あの技を今から覚えることってできるかしら?」

「あの技? ……ああ、確かにあれなら打開できるにはできるが……」

 

 咲夜たちはこの戦いに向けて様々な場合を想定して技を磨いてきた。その中でどうしても覚えたかったが間に合わなかった技があった。それを習得すれば戦況が一気にひっくり返る。そんなこと今さら言っても後の祭り……とは二人とも思っていないようである。この土壇場の本番で新たに覚えようとしていた。

 

「大丈夫よ。私を信じて」

 

 咲夜がキリキザンの目をじっと見つめる。出会ってまだ数日しか経っていないがその目からは信頼に足る雰囲気が感じ取れた。元々この鋭い目つきに加えてストイックに修行する性格からあまり周りにはポケモンがいなかった。紅魔館に立ち寄ったとき咲夜にスカウトされて以来さらに磨きがかかった。

 

「……分かった。どうすればいい?」

 

 キリキザンは咲夜に指示を仰ぎ、何かを呟くと目を丸くした。予想外の答えが返ってきたのだろう。だがそれを到底無理なことだとは思わずに従順に遂行し始める構えを取った。

 

「お、向こうが何かし始めるようだぞー」

「ソーナンス!」

 

 作戦会議中隙だらけだったが攻撃技を持っていないためじっと咲夜たちを待っていた。ソーナンスの頭にルーミアは顔を乗せてリラックスしていたが空気が変わったため顔を上げた。ソーナンスもやる気十分である。

 

「じゃあまずはアイアンヘッド!」

 

 キリキザンの鋭い切っ先と素早い速度がソーナンスの懐に入った。急所に入ったには入ったが痛手にはなっていない。ソーナンスはキリキザンの体を掴み、逃げられなくした。

 

「カウンターなのかー!」

 

 ソーナンスのゼロ距離カウンターがキリキザンの眼前で放たれたがこれをあえて浴びることにした。みるみる内にHPが減っていき、体力の限界近くにまで来てしまった。しかしこれは咲夜たちの目論見通りだった。

 

「キリキザン!」

「大丈夫だ! 咲夜。次、どうすればいい?」

 

 だが自分の作戦に無理があったかと負傷しているキリキザンに咄嗟に叫んでしまった咲夜。だが自分のことは気にするなと手を伸ばしていた。この短期間で十分なほどの信頼を得ていた。

 十六夜咲夜は悪魔の住む館、紅魔館の完全で瀟洒な従者である。それは周りの者も当然のことながら館内の従者たちもそう思っていた。美鈴や妖精メイドの管理をしながら主であるレミリア・スカーレットとその妹様、フランドール・スカーレットに仕えている。下からは尊敬され、上からは誇りに思われる。それ自体には何の不満もないし、業務も上手くこなせている。しかしその立場は一席だけ、つまり咲夜には同じ立場で話せる相手がいなかったのである。そんな折現れたキリキザンは見事に咲夜と調和した。元々似たもの同士の性格だったのである。

 

「……そうね。今度はあくのはどう! 至近距離で」

「ソーナンス、ミラーコートの準備だー」

 

 ソーナンスの反射技は特殊で、攻撃技を自身に浴びることなく跳ね返す正に攻防一体のチート能力持ちである。下手に取り扱うとバランスが崩壊しかねないということで藍は言葉を覚えさせるのを止めたのである。また幸運だったのは頭の良くないバカルテットの一人のルーミアの相棒になったことだった。幽々子や神奈子など頭の切れる者と組みそうになったのならば強制送還させる腹積もりであった。ミラーコートの準備を整えてフィニッシュといくつもりだった。

 

「喰らえ!」

 

 両腕をクロスさせてソーナンスに突っ込んでいった。しかしその弾丸はソーナンスの脇を通り過ぎ、裏拳が炸裂した。流石に背中は覆っておらずクリーンヒットした。こうかはばつぐんだがやはり大したダメージは得られなかった。ヒットアンドアウェイで距離を取り、咲夜に微笑んだ。

 

「もしかして……」

「ああ。終わらせる」

 

 今の一撃で何かを掴んだようである。キリキザンは呼吸を整え刃を研いだ。外せば終わる、そのくらいの気概で目を据わらせた。無駄な力を抜いて極限まで一撃の威力を高めた。それはルーミアたちも気付いたようである。

 

「よーし! 来い! 咲夜とキリキザン」

「ソーーーーーッナンス!!」

 

 全力を賭した一撃に備えてた。どんな攻撃が来ようとも必ず跳ね返してやる。そんな考えこそがソーナンスをソーナンスたらしめており、ルーミアたちの自慢かつ誇りである。

 

「終わりだぁ!!」

 

 軌道は二個前の攻撃と同じくド直球であり、ソーナンスも体を大きく開いて受け止めた。先程よりも大きな白い火花がバチバチとぶつかり合った。全力と全力のぶつかり合い。だがさっきのようにすぐには反射しなかった。

 

「ソ、ソーナンス⁉」

 

 技に触れた瞬間、ソーナンスは違和感を覚えた。普通の攻撃と何かが違う、それと同時に味わったことのある感覚だった。跳ね返そうにも跳ね返せないあの感じは技こそ違えどバカルテットの一人と遊びで戦ったときと同じであった。

 

「いっっけーー!」

 

 メイドという肩書を外し、キリキザンの相棒十六夜咲夜としてのフルパワーを乗せて刃が堅牢なソーナンスの体を十字に切り裂いた。ソーナンスはカウンターを発動することなく頭から倒れこんで決着が付いた。

 

「そこまでです。勝者は十六夜咲夜、キリキザンたち。すなわち無縁塚チームの勝利です」

 

 神子の声で延長戦が終結した。それと同時に瀕死のキリキザンも倒れこんでしまった。限界の先まで戦っていたから仕方のないことだった。咲夜は傍に近寄り優しく囁いた。

 

「ありがとうね……私のパートナー」

 

 気を失って聞こえていないキリキザンを労わってボールに戻した。戦いが終わり、至る所がボロボロになった神霊廟の修復作業をしていると後ろから声が聞こえた。

 

「なー、咲夜。もしかして最後の技って一撃必殺なのかー?」

「よく分かったわね。そうよ、ハサミギロチンを何とか覚えたのよ。中々覚えられなかったからね」

 

 一撃必殺ハサミギロチン、これを喰らった者はどんなに耐久力が高かろうとも一撃で相手を仕留めることができる。だがその代わり動きが鈍くなるというデメリットとそもそも習得するのがハイレベルすぎるという条件がある。今回咲夜は窮地に追い込まれることで強引に覚えるというものだった。もちろん一か八かだったがそうでもしないと勝てないほどの強敵であった。

 

「チルノがそれっぽいの使っていたから分かったのだー」

「あの氷精がおかしいのよ」

 

 一撃必殺しか覚えていないチルノは馬鹿であるがある意味天才である。もしも普通の技を覚えていたとすると……咲夜はゾッとした。

 




 読んでいただきありがとうございます。昨日某ライブでモチベーション爆上がりして速攻で書き上げました。自分にできること、やりたいことを続けるのって本当に大事なんだと改めて思いました。

No.24 ルーミア あくタイプ 相棒ポケモン ソーナンス エスパータイプ

使える技 カウンター ミラーコート

 このソーナンス、完全にアニポケのロケット団のソーナンスですね。そーなのかー→ソーナンスという安直な考えで相棒にしたんですが直前まで喋らせるかどうか迷いました。でもソーナンスってポケモン不思議のダンジョンでも頑なに喋らなかったんですよね。だからおそらく現時点で唯一の喋らないキャラですね。また出てくるかもですが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。