「俺様の出番ニャン!」
真っ先にリングに降り立ったのはヒールポケモンガオガエン。筋骨隆々なその肉体は今回の勝負にうってつけのポケ選だった。リングが舞台ということで誰よりも張り切っており、その中央で咆哮を上げていた。
「ガオガエン、アタイ応援しているから頑張れー!」
「頑張れー!」
「任せるニャン!」
パートナーはもちろんお燐。二人からエールを受けたガオガエンはサムズアップしてお燐とお空の方をチラリと向いた。自信満々のようだった。他の五体も続々とリングに上がりやる気は満々だった。
「それでは……」
「スタートです!」
咲夜とさとりの合図によってゴングが鳴った。まず動き出したのはガオガエン。先手必勝、真正面の相手に向かって突進していった。自慢の技で早速カタを付けるつもりだろう。
「ガオガエン! ノクタスに向かってDDラリアット!」
狙いを付けたのは丁礼田舞の相棒ポケモン、ノクタスだった。ガオガエンは自身の燃え盛る体を回転させて竜巻のようにノクタスに向かっていった。悪タイプの技とはいえ、ガオガエンの体温では草タイプのノクタスには致命傷だろう。しかしノクタス、及び舞は微動だにしなかった。舞は持っている竹をバトンのように巧みに操り、ブンと振り下ろした。
「ニードルガード!」
ただでさえトゲだらけのノクタスの体から無数の針が現れて全体を覆った。DDラリアットとニードルガードの接地面で火花が散っていた。確かに勢いのすさまじいラリアットだが完全防備形態のノクタスの方に軍配が挙がった。ガオガエンは吹き飛ばされて背中から叩きつけられた。
「大丈夫⁉」
「ああ、平気ニャン。イテテ……」
ニードルガードは相手の攻撃を防ぐだけでなく、攻撃してきた相手にダメージを与える効果もある。迂闊に近づくとこちらの体力が削られてしまうので注意しなければならなかった。
「僕たちは真っ向から君たちに勝てるなんて思ってないからね」
「できる限りHP、削らせてもらうぞ」
ノクタスは頭のハットのようなものに手をかざして右手をガオガエンに突き付けた。元々凄腕の仕事人であり、与えられた任務をそつなくこなしていた。任務によっては自身を犠牲にすることも厭わない性格の持ち主であり、隙のない相手だった。今回ではフィールドも相まって、おそらく一番厄介であろうガオガエンの足止めを買って出た。偶々ノクタスを狙ってくれたから都合がよかったが、もしも他の者を狙っていたら横槍を差すつもりだった。
「厄介ね……あ、そうだわいいこと思いついた! じごくづきよ」
「分かったニャン」
「「無駄だ(よ)」」
じごくづきをしに向かってくるガオガエンを舞たちは再びニードルガードで迎え撃つ。しかし狙いはダメージを与えることではなかった。
「今よ! 地面に叩きつけて!」
「ニャアァーン!」
じごくづきはノクタスの足元に突き付けられた。地面はトランポリンとなっているため押し付けられた衝撃は上方に向かって跳ね返された。ノクタスは防御していたためその場から動くことはできず高く跳ばされた。
「ノクタスー!」
舞は思わず叫んでしまったが、ノクタスに羽はなくリングの外に跳ねだされてしまった。ガオガエンの視界からノクタスは消え去り、2対3となった。
「これで何とかなったニャン」
「ちょっとガオガエン! 私のマホイップに何してくれているのよ!」
リングの外から文句を言ってきたのはサニーミルクだった。クリームポケモンのマホイップはサニーと組んでおり、ホウオウたちと比べると一際小さい。先程の衝撃はリング全体に広がっており味方もその影響を受けていた。体重の軽いマホイップは吹き飛ばされそうになるも、とけるでリングと一体化することで難を逃れていた。
「わ、悪かったニャン」
「あ、暑いわ……溶けちゃいそう」
実際にデロデロに溶けており、早々に決着を付けなければならなかった。今相手の残りは輝夜のルギアと目の前にいるタイレーツだった。赤蛮奇の相棒ポケモンであるタイレーツも先程のじごくづきに耐えていた。六匹で一体のポケモンであり、この相手さえ何とかすれば灼熱地獄チームの勝ちは濃厚だった。今もホウオウがルギアを食い止めてくれているからだ。
「やれやれ……君のノクタスが負けたから不利になったじゃないか」
「えっ……!?」
赤蛮奇は頭一つ動かさず目だけを下方に向けた後、隣の舞に目配せした。舞はびっくりした顔で赤蛮奇の方を向いたが赤蛮奇は無反応だった。一瞬考えた舞はハッと閃き、彼女の意図を感じ取った。
「う、うるさいよ! そこまで言うなら君はあの二匹に勝てるのかい?」
ニヤリとした赤蛮奇は鼻で笑い大きな声でこう言った。
「もちろんだとも。さあ行こうか、タイレーツ」
「はっ! 今ここに我々の力を示すとき!」
じんけいポケモンタイレーツはその名の通りいつも隊列を成して行動するポケモンである。先頭にいるヘイチョーと呼ばれるリーダーが全体を指揮し、一糸乱れぬ陣形をとる。格式ばった話し口調もヘイチョーならではである。
「二対一で俺たちに勝てるとでも⁉ ニャァアアアア!!」
「ウッ……」
「怯むな者ども! 我らの底力を見せつけてやるのだ!!」
「「「「「うぉおおおおお!!!!!」」」」」
ガオガエンがヒール役っぽく特性いかくを用いてタイレーツの士気と攻撃力を下げた。しかしこれがタイレーツには逆効果だったらしく一団のやる気は急上昇し、先程よりも力が増した。タイレーツの特性まけんきのおかげであった。
「ガオガエン、何威嚇してんのよ」
「つい、ついやってしまったニャン」
「まあいいからガオガエン、やっちゃいなさい!」
何故かサニーがガオガエンに指示していることは置いておいて、ガオガエンは早速突撃した。クロスチョップでタイレーツを吹き飛ばした。しかしその程度でリング外に飛び出るほどヤワではなく、各々が各々の頭と足を持ち、まるで細長いバネのようにびよんびよんとたわんでいた。また、その反動を利用しててっぺんのタイレーツが力を込めた。
「そのままインファイト」
重力と反動を付けたインファイトがガオガエンを襲った。かわすよりも受けて立つ方が好きなガオガエンはその一撃を両腕でガードした。あくタイプにかくとう技は効果抜群である上に、攻撃力アップしたタイレーツのインファイトはよく効いた。ムキムキであるとはいえ既にダメージを負っている身であるためそれほど長くは居られなかった。
「ふうん、やるじゃん」
「任せて。今度は私たちの番よ! マジカルシャイン!」
「こらえるよ」
「「「「「ふぉおおおおお!!!!!」」」」」
フェアリー技を受けては流石のタイレーツも耐えられそうにない。しかしこらえることによって体力ギリギリに保つことができる。これも団体が成せる技であった。
「我々は赤蛮奇殿の戦士。ここを退くわけにはいかぬのだ!」
「いいニャンね! 俺はお前たち気に入ったニャン!」
肩で息をしながらも統率された陣形を組み、相棒である赤蛮奇の勝利のため全力を振り絞る。それを見たガオガエンはますますヒートアップした。自分が燃えているからこそ燃え滾る勝負が大好物なのだ。
「……あ、ありがとう。じゃ、行くよ。インファ……」
ガオガエンに手痛い一撃を加えようと足に力を入れて向かおうとしたがグンと引っ張られた。動こうとしてもその場から動けずにいた。六匹が足元を確認してみると地面に何かがへばりついていた。
「へっへん! さっきの攻撃の間にクリームを撒いておいたのよ!」
サニーは自信満々にタイレーツの足元を指差した。マジカルシャインに紛れてマホイップは体からクリームを飛ばしており、粘着性のあるそれは相手の動きを封じる有用な攻撃手段だった。前から突撃してくるガオガエンに抵抗する術もなくまさに絶体絶命。動けないタイレーツは一つの賭けに出た。
「はいすいのじん」
「ニャ!?」
ここでまさかの受け身の態勢を取った。体力限界ギリギリにもかかわらず横一列に整列してガオガエンのDDラリアットを凌いだ。確かに動けなくなる代わりに能力がパワーアップする効果はあるがこの状態で行うのは無謀かに思えた。だがその無茶を通すのがタイレーツの底力だった。パワーが上がったことで足にへばりついたクリームも無理矢理引きちぎり移動可能になった。
「ああ! 私のクリームが⁉」
「マホイップ、小細工は通用しないニャン。ここからは正々堂々と……」
力を合わせて戦おう。そう言おうと後ろを振り向いた瞬間、マホイップの背後にここにいるはずのない緑色のポケモンが存在していた。
「正々堂々に興味はない」
「ニードルアーム」
鋭い目で放たれたパンチがマホイップの体を捉えた。そのまま吹き飛ばされたマホイップは炉の中に一直線に落下していった。
「マホイップー-!!!!」
「マホイップ脱落です」
本日初めての脱落者はマホイップとなった。
読んでいただきありがとうございます。ポケスロンのバトルはかなり時間がかかりますね。こういう戦いがまだあと二試合もあると考えると気が滅入りますね。書くのは楽しいんですけど単純に量が多いのが悩みです。あと今裏で別の小説書いているのでまたペース落ちます。気分転換にこちらを書くかもしれないので気長にお待ちいただけると嬉しいです。
No.30 丁礼田舞 エスパー・くさタイプ 相棒ポケモン ノクタス くさ・あくタイプ
使える技 ニードルガード ニードルアーム ねをはる どろかけ
さてまさかの不意打ちでマホイップを突き落としたノクタス。あくタイプらしい卑劣な手段でしたね。どうして生き延びれたのかは次回お話します。(ヒントは使える技)