東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第四話 ルール説明

 幻想郷には霧で覆われた湖があり、その先には血よりも紅い館、紅魔館がそびえ立っている。幻想郷の一大勢力の一角であるその館の主人、レミリア・スカーレットは今日も暇を持て余していた。

 

「ふぅ。今日も退屈ね。ねえ咲夜、ちょっと異変でも起こさない?」

「そんな軽々しく起こさないで下さい。また霊夢たちが出しゃばってきますよ」

 

 紅魔館の瀟洒なメイド、十六夜咲夜は今日も主人の相手をしていた。幻想郷の大物は隙あらばすぐ異変を起こそうとする。もちろん本当に起こしてしまえば返り討ちに遭うのは目に見えてはいるのだが。それくらい暇なのである。

 

「はあ~何か面白いことが……ん?」

 

 レミリアは背中の羽で何かを感じ取った。念波のようなものであり、それは当然傍にいた咲夜も感じていた。送り主は確認しなくても分かっていた。胡散臭さが桁違いだったからだ。

 

 

『はぁ~い。皆聞こえてる? 皆のアイドル八雲紫ちゃんですよ~ 今日は皆に面白いことやってもらおうと思っているのよね~』

 

「……何言ってるのかしらこのババア」

 

 レミリアがぼそりと呟く。しかし暇つぶしになるのならば聞いてやらんでもない。そう考えたレミリア及び咲夜は耳を傾けた。

 

 

 

『ポケモンっていう生き物がこの幻想郷にやって来たのよ。彼らは元の世界ではとても強くてそれでいて人間たちと手を取り合って暮らしてきたわ』

 

「あら。人と手を取り合うなんて素晴らしいですね。私たちも見習いたいくらいです」

「聖の理想ですものね」

 

 命蓮寺と呼ばれる寺の中で一人の坊さんが聞こえてきた声に感心していた。彼女の名は聖白蓮。人と妖怪がともに暮らす生活を夢見ている。その様子を見ていた毘沙門天の代理、寅丸星はにこやかにほほ笑んでいた。彼女もまたポケモンというものに興味を持っていた。

 

『一週間後、皆にはこのポケモンたちと一緒にバトルをしてもらうわ。参加はもちろん自由よ。興味なくてもとりあえず今からルール説明するわね』

 

「バトル……ですか。あまり戦うのは得意ではありませんね……」

「心綺楼とか深秘録で獅子奮迅の振る舞いをしていたのはどこの誰ですか?」

 

 自身はそう言っているが聖の格闘センスは相当のものである。隣で見ていたからこそお前が言うな状態である。だが一緒に戦うとなると別問題かも知れない。相手のことを考えながらだからいつもと勝手が違うかもしれないと星は考えていた。その後も紫はポケモンにまつわる基本的なことを享受していた。

 

 

 

『以上で説明は終わりよ。この説明が終わったら幻想郷中にポケモンたちを放つわ。ポケモンたちがこの人だと決めたと思ったパートナーは捕まえるかどうか考えることができるわ。あくまでも勝手に捕まえたりしないでね。あ、暴れたりするポケモンはスキマ送りにするから安心してね』

 

 紫の一言で多くの住人が安心した。それは主に妖怪たちではなく人里に住む人間たちにとってである。幻想郷では数々の異変が起き、いつ巻き込まれるかヒヤヒヤしている。しかし、霊夢や紫などの「大丈夫」の一言で皆安心する。それほど絶大な信頼を勝ち得ているのだ。

 

「ふむ。どうやら人里はそんなにパニックにはなっていないようだな」

「そうね。私たちが出る必要はなさそうね」

 

 人里を闊歩して平穏が保たれていることを確認する歴史喰いの半獣、上白沢慧音。そして不老不死の蓬莱人、藤原妹紅。二人とも口には出さないがウズウズしている。よっぽど闘いたいのだろう。それほど今の幻想郷は娯楽に枯渇している。

 

『一人一匹だけだからね。あと優勝者には豪華景品があるから楽しみにしていてねー』

 

「ほう、景品か。賞与ならばぜひ寺子屋の改築を頼みたいものだな」

「あー、やんちゃな子が多いもんね。というか慧音がその子たちに頭突きかましたときの衝撃で壊れるんだけど」

「それは仕方ない。しつけだからな」

 

 慧音は寺子屋に通う言うことの聞かない子どもたち相手に勉強を教えている。その際によく破壊してしまうのである。体罰と言えばその通りなのだが幻想郷にはまだその考えが浸透していない。

 

「まあ私は景品とか興味はないけどその、ポケモン? とやらにも会ってみたいわね」

「だが今しがた放ったところだ。そんなにすぐは来まい」

 

 幻想郷は狭いようで広い。いきなり人里のど真ん中には来ないだろうと二人は高を括っていたが二つの大きな影によってその甘い考えはかき消された。その大きな黒い影は妹紅と慧音目がけて猛スピードでとっしんしてきた。

 

「な、何よいきなり!?」

 

 土煙が晴れるとその中からは二匹の鳥が現れた。一方は七色の羽を持つ優雅なにじいろポケモン、ホウオウ。またもう一方はシンプルな白と青の二色だけで構成されたせんすいポケモン、ルギアだった。二匹は羽を折りたたむとじっと二人を見つめていた。

 

「そこの……赤い服を着た者よ。我はホウオウ。我と契約を交わしともに優勝の頂を目指さぬか? お主からは膨大な力を感じる。我も全霊をかけて尽力しよう」

「ったく、お前は相変わらず面倒な喋り方だなあ! おい、そこのもんぺ。俺様はルギア。お前俺のパートナーになれ!」

 

 堅い口調のホウオウに対しオラオラ口調のルギア。真反対の二匹だがどちらもジョウト地方の伝説ポケモンである。その二匹から同時に申し込まれているこの状況に妹紅はアタフタしている。

 

「おー、どっちも強そうだな。おい妹紅、私はあっちでポケモンを探してくるせいぜい頑張るんだなー」

「え、ちょ、ちょっと待ってよ慧音ー!」

 

 妹紅のすがるような目などお構いなしに慧音はほくそ笑みながら去って行った。妹紅をからかうのが楽しみの一つになっている慧音は助けることはしなかった。慧音の助けがなくなった妹紅はどちらかを選ばなくてはならなくなった。しかし会ったばかりの二匹のことなど何も知らない。妹紅は色々聞いてみることにした。

 

「え、ええっと。二匹はどうしてそんなにバトルに参加したいの?」

「あ? そんなの決まっている。俺とこいつのどちらが強いかはっきりさせるためだ」

「我ら二匹ははるか昔から競い合ってきた。純粋な技比べからトレーナーを交えた戦い。飛行速度やその他諸々である。正直我は競う必要はないと言っているのだがどうしてもこやつがうるさくてな」

「それはそうだろ。上下関係ははっきりさせておきたいのが俺の性分だからな」

「へ、へぇー……」

 

 昔から競い合う関係。それは自分とよく似ていると妹紅は感じていた。その相手はもちろん永遠亭にいる月のお姫様である。自分と同じ蓬莱人であり、ことあるごとに妹紅に喧嘩をふっかけてきていた。ホウオウたちとは違い妹紅の方からも仕掛けることはあるが妙な親近感を抱いていた。

 

「あら。面白そうな子たち。じゃあ私はそこの白い方をパートナーにしようかしら」

「げっ! 輝夜。あなたいつからここにいたのよ」

「うふ、そんなことに気付かないなんてまだまだ未熟ね」

「な、何よ!」

 

 妹紅の背後から気配もなく出現したのは蓬莱山輝夜。妹紅の永遠のライバルである彼女はいつも通り挑発していた。しかし妹紅が気が付かないのも無理はない。普段はてゐや鈴仙、永琳などと行動を共にしているが今は単独でこの人里にいる。姫という立場で単独行動するのは余程のことなのである。

 

「おいおい、なんだそこの嬢ちゃん。勝手に横に入ってきやがって」

「あら悪いわねルギア。でもあなたにとっても悪い話ではないと思うわよ。私と手を組めばホウオウを倒せるわよ?」

「……お前は強いのか?」

「妹紅より下だとは思っていないわ」

「……なるほどその話に乗ろう。輝夜? だったか」

「蓬莱山輝夜よ。気軽に輝夜と呼んでちょうだい」

「フッ、輝夜よ早速作戦会議だ。じゃあなホウオウ! 一週間後を楽しみにしておけ!」

 

 ルギアは背中に輝夜を乗せ永遠亭の方角に向けて飛び立った。人里に残されたのは妹紅とホウオウ。お互いチラチラと見ていた。いきなり宣戦布告されて去られてしまったのだがそもそもまだホウオウを相棒ポケモンにすると決まったわけではない。

 

「……じゃあホウオウ。手伝ってくれる?」

「よ、よいのか?」

「私も戦うのは嫌いじゃないし。それにあの子が関わってくると面倒なことになりそうなのよね」

 

 妹紅は長年の経験からあのルギアと輝夜が似たタイプであると予感していた。競う相手がいるとどんどんパワーアップしそうな感じがそっくりだったのである。いいコンビになると思っていた。

 

「だからホウオウ、私たちも作戦を練るわよ。敵は妹紅たちだけじゃない。色々な相手と戦えるようにするわよ!」

「……うむ。これから楽しくなりそうであるな。よろしくな妹紅」

 

 妹紅もホウオウに乗り人里から飛び去った。その場に残ったのはすでに仲間のポケモンを見つけた慧音だけであった。

 

「なんだもう行ってしまったのか。つまらないな。なあ、ミルタンク?」

「ええ、そうね。でもあの二匹を手懐けるなんて中々の力の持ち主ねあの二人」

 

 同郷のミルタンクはホウオウとルギアを仲間にした二人の力量を測っていた。

 

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