東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第五話 バトル、開始

 紫からの祭りの催しが発表されてから一週間が経過した。血気盛んな人妖たちとポケモンたちは瞬く間にコンビを組み、各々技の特訓に励んでいた。火力を追い求める者、スピードを極める者、はたまた防御力に特化したものなどポケモンやトレーナーの性格によってさまざまであった。そして迎えた午前八時、再び紫とオーベムの念波が全住人に届いたのである。

 

『は~い。皆あれから元気にしていたかしら? 今から第一回幻想郷ポケモンバトル大会を始めるわよー!』

 

 紫の声を聴き参加者たちの多くは心の中で叫んでいた。何しろ平和で暇すぎたのだから戦えるこの日を楽しみにしていたのである。また豪華賞品が目当ての者もおり、思惑は様々だが皆耳を傾けていた。

 

『それでは今日のルールを私八雲藍が説明する。まず、一番大事なことだがトレーナーが弾幕で応戦するのはなしだ。トレーナーはあくまで指示するだけだ。そうしないと鬼とかが圧勝してしまうからな』

 

「ちっ、だめなのか。折角鍛えたのによ」

 

 旧都で舌打ちをする鬼の四天王の一人、星熊勇儀は隣にいた水橋パルスィに悔しそうに呟いた。

 

「そりゃそうでしょ。あくまでゲームなんだからリアルファイトは禁止よ」

「でもよ。戦うんなら生身が一番だぞ?」

「相変わらずの脳筋ね。それに私たちのポケモンどっちも伝説でしょ? 強さは申し分ないんじゃないの?」

「いや勝負は何があるか分からないからな。油断はしないに越したことはない」

 

 語られる怪力乱神でも決して驕ることなく物事に挑む。以前手合せした普通の魔法使いに敗れてからハチマキを締め直した勇儀であった。

 

 

『次にトレーナーのタイプ相性を今から配る。それと自分たちのポケモンたちが合致しているかどうか確かめてくれ』

 

 ポケモンたちだけでなく幻想郷の住人達にも当然タイプというものがある。たとえば藍ならばエスパー・はがね。紫ならばあく・エスパーといった具合である。藍の手持ちはもちろんキュウコンでありほのおタイプなので別段変化はなし。しかし紫の手持ちはエスパータイプのオーベムなので力は1.5倍になる。もしもカラマネロだったとしたらその力は2倍になっていたということである。ポケモンとの出会いの運もここで関わってくる。もちろんたとえ2倍でも元々の自力があるほうが有利なことに変わりはないが。皆頭の中に浮かんでくる自身のタイプを知った。ポケモンと照らし合わせて一致した者、不一致だった者様々であった。

 

 

『次にこの戦いはチーム戦で行う。チーム分けはこちらであらかじめ決めておいた。今から一分後それぞれの陣地に転送させる。私からの説明は以上だ』

『それじゃあ頑張ってね~』

 

 紫たちからの連絡が終了すると多くの者は動揺していた。何しろサシで戦うものだと皆思っていたからである。チームで一緒に戦いたいと思っていた者もいるが自由に選ばせてはくれないようである。そんなことを考えていると参加者たち全員の足元が光りどこかに転送されてしまった。

 

 

「ん……? ここは旧都か。私たちはここで戦うってことか?」

 

 旧都に転送されたのは魔理沙とモロバレル。二人は旧都チームとして戦うことになる。もちろんここに送られたのは魔理沙たちだけではない。

 

「なんだい私は魔理沙と同じ仲間ってわけかい」

 

 魔理沙が後ろを振り向くとそこには一本角がそびえ立つ鬼が居た。

 

「おー、勇儀と一緒か。異変以来か? よろしくな!」

「ああ、こちらこそな」

 

 二人が固い握手を交わすと前後横方向から人が近づいてきた。

 

「へー、珍しい組み合わせじゃないか」

「……あまり見たことない人ばかりね」

「祭りと言えどモラルに反しないよう目を光らせておく必要がありそうですね」

 

 夢幻のパーカッショニスト、堀川雷鼓。鬼傑組組長、吉弔八千慧。そして白黒つける裁判長、四季映姫・ヤマザナドゥが今回のチームの組み合わせのようだ。およそ五人一組のチームであるようだが皆同じことを考えていた。あまり関わり合いがないというか共通点がないと。以前からの知り合いという関係では魔理沙と勇儀くらいで他は特にない。全員金髪かと思いきや閻魔様は緑色である。

 

「面白そうなメンツだな! じゃあ皆よろしくな」

 

 その異変解決件数は伊達ではない。その中で培ってきたコミュニケーションスキルでリーダー役に率先してなろうとした。もう一人の主人公の力は絶大であり皆魔理沙の方をしっかりと向いていた。

 

「で、そこにいるのがアンタのパートナーってわけかい」

 

 雷鼓は魔理沙の隣にいるモロバレルを指差した。よく見ると魔理沙以外は皆ポケモンをモンスターボールに戻していた。

 

「ああそうだ。モロバレルっていうんだ。仲良くしてやってくれよ。残念ながらタイプ不一致だったけどな」

 

 魔理沙はノーマル・エスパーでありモロバレルはくさ・どくタイプであるためこの戦いにおいて恩恵は得られない。

 

「タイプ一致じゃなくて大丈夫なの?」

「ああ! 火力に特化してきたからな!」

「俺耐久の方が自信あるって言ったんだけどな……」

 

 八千慧が心配そうに聞いてきたが魔理沙にとっては些細なことらしい。C特化にしたらしいがモロバレルの意志は考慮されなかったようだ。

 

「諦めなさいモロバレル。魔理沙を説得させるのは私でも骨が折れる所業です」

「お前も大変だな」

「あ、ありがとうな」

 

 モロバレルは他のメンツたちからの同情を買った。実際この一週間は特訓漬けの毎日だった。元々覚えている技をより高火力のものに変えたり回避力を上げたりと大変だった。もちろん魔理沙も同様の特訓をしていたので二人の信頼関係は絶大のものとなっていたので同情される必要はないとモロバレルは思っていた。

 

「そういえば皆のポケモンも見せてくれよ」

「そうだな、私のポケモンは……」

 

 勇儀がタイマーボールを手にし、放ろうとしたその瞬間頭の中に声が流れてきた。

 

『皆集合した頃かしら? じゃあ第一試合を始めるわよ。First Round第一試合は……旧都チームと三途の川チームよ。場所は旧都でするから準備していてね』

 

「旧都チームって、私たちのことか? それに三途の川チームって誰だ?」

 

 三途の川はこの世とあの世の境。来そうなのは小町かと予想していた。四季映姫が先ほどから落ち着かない様子なのは小町が来ると考えているからだろう。だがそれ以外は見当がつかない。

 

 約五分後、道のど真ん中にいる旧都チームは道の奥側からやってくる集団を目にした。だがその面々は予想に反していた。数は六人でこちらよりも一人多く、その中にはつい先ほどまでここにいた人物の姿があった。

 

「そもそも私旧都チームじゃないのね……このチームで一体勝てるかしら」

「アタイは大丈夫だと思うけどな。面白そうだし」

「陽気すぎるわね……妬ましいわ」

 

 赤い服と鎌を持った死神、小野塚小町。そして金髪に茶色の髪を持った緑眼の怪物、水橋パルスィたちが先陣を切って歩いてきた。

 

「おいおい私たちを置いていくなよ。お、魔理沙たちだ!」

「へー、私はあまり見ない面ばっかりだな。あむっ」

「ほぅ、向こうには組長もいるみたいだぞ。瓔花」

「……そうなんだ」

 

 二人についていく四人がいた。黒ニーソの妖怪(違う)、封獣ぬえ。今日も今日とて団子を食べている鈴瑚。そして怯えている戎瓔花を抱き寄せているオカン、牛崎潤美の四人であった。計六人が魔理沙サイド五人と対峙したとき張りつめた空気が漂った。気付いていないのはぬえと魔理沙だけであった。

 

「さて来ましたね。それじゃあ詳しいこと聞きましょうか。紫」

 

 映姫が横を向いて紫に来るよう催促した。すると二組の間に大きなスキマが現れた。紫は突然なことにびっくりした様子だった。

 

「えっ!? どうしたの?」

「どうしたのじゃないですよ。どういう試合形式なんですか? そのあたりの説明なしで投げっぱなしは混乱の元になりますよ。ですからもう少し丁寧にお願いしたいところです」

「あら~ついうっかりしてたわ。今から言うわね」

 

 わざとなのか本当なのか。紫の態度は辺りの雰囲気を気持ち程度緩めた。

 

「とりあえず三戦して勝ち数が多い方が二回戦に進めるっていうことにするわ。戦う相手は……自分たちで決めて。面倒だし」

「おいおい、そんな適当でいいのか?」

「そんなにきっちり決めて皆守るかしら?」

「まあ、確かにそうだが……」

 

 魔理沙がもっともな意見を言うが紫はさらにもっともな意見を返してきた。やはり誰も彼も我が強い。

 

「じゃあパルスィ、私と戦るか?」

 

 勇儀がパルスィに対してバトルを挑んできた。やはり知り合いの方が手の内や性格を把握しやすいので同じ旧都仲間のパルスィを誘うのは当然であった。

 

「悪いけど今回はパスするわ。代わりに……魔理沙。いいかしら?」

「えっ!? 私か? 別にいいけど……」

 

 意外にも指名したのは百戦錬磨の魔理沙の方だった。どんな戦いでも戦いのコツというものがあり、自機組はできるだけ避けたい相手であるはずだ。チルノのような目立ちたがりのような奴はありえるがパルスィはそういうタイプでもなかった。

 

「なんだ。じゃあ私は今回は棄権しよう。パルスィがいないとつまらないからな」

 

 勇儀の言葉は三途の川チームを挑発していた。次もあるということは負けるつもりはないということであるからだ。

 

「では映姫様。アタイたちもやりません? 折角ですし!」

「……ストレス発散目的ですか?」

「そ、そそそそそんなことないですよ!」

 

 嘘を吐くのが下手である。だが上下関係なしに戦えるのはポケモンバトルのいいところである。それによくいる間柄ならば癖も把握している。小町の判断は間違いと言うわけではない。

 

「じゃあ最後は……」

「……八千慧さんと戦いたい」

「えっ!?」

 

 最後の戦いを申し出たのはまさかの瓔花であった。しかも組長に対してである。傍で聞いていた潤美はとても驚いていた。怯えているような様子はなさそうだったからだ。特に断る理由もなかった八千慧は承諾した。

 

「決まったようね。じゃあ旧都が壊れないように結界張るから思いっきりやっちゃって」

 

 スキマが閉じると三組が移動して戦闘準備に入った。なお戦いに参戦しない残りの人たちは巻き込まれないところに避難していた。スキマに帰った紫からの念波が再び届いた。

 

『じゃあこれから幻想郷とポケモンを掛け合わせたバトル、開始よ!』




読んでいただきありがとうございます。今回から人物に関する情報をまとめていきたいと思います。できるだけネタバレにならないようにしたいとは思います。


No.1 霧雨魔理沙 ノーマル・エスパータイプ 旧都チーム 相棒ポケモン モロバレル くさ・どくタイプ


キノコが好きでモロバレルに興味を持つことになる。弾幕は火力だぜ! の信条の下、火力を追い求めることになる。しかしモロバレルは防御の方が自身あるようである。
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