東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第六話 四季映姫vs小野塚小町

 ドカーーン!! 

 

 紫の合図とともに火柱が立った。待ちきれなかったチームが一組あったのだろう。閻魔と死神のところである。映姫からの初撃を小町が防いでいたのであった。

 

「へぇ。よく判断できたわね」

「映姫様の考えそうなことですからね。一発目に特大の攻撃が来るって」

 

 小町の予想通り最大火力のインファイトがまもるによって弾かれた。性格は理解されているので一筋縄ではいかないようだ。

 

「それにしてもなんだか意外ですね。映姫様がそんな悪そうなポケモンを使うなんて。やっぱり白黒なのが気に入ったんですか?」

 

 小町は映姫の手持ちポケモンに目配せをした。そのポケモンはゴロンダであり、あくタイプであることとその悪そうな見た目から多くのトレーナーから怖がられてきた。だからこそ閻魔という厳格な立場の者と一緒にいるのが不釣り合いに見えたのである。

 

「ふぅ。人並びにポケモンを見た目で判断するとは小町もまだまだですね。この子は真面目で頼んでもいないのに私の仕事を手伝ってくれるのですよ。それに努力家で毎日技の訓練をしているのを私は知っているのですからね!」

「……照れる」

 

 映姫が言ったことは事実であり、以前パートナーにしたトレーナーからはゴロンダが最高のパートナーだという評価をもらうほどしっかりしたポケモンである。だが無口なので誤解されることもよくあるのだとか。

 

「へー、随分信頼しているようですね。でもアタイだってこのバトルに関してはサボっていないですからね。な、シザリガー?」

「あたぼうよ。小町のアネゴに恥はかかせられねえからな!」

 

 ならずものポケモンのシザリガーが小町の手持ちであり、今は小町の舎弟になりたいといって相棒となっている。小町がいつも通りサボって昼寝しているところにちょっかいをかけたシザリガーはいきなり起こされた不機嫌な小町によってボコボコにされたのが二人の出会いである。子分気質のシザリガーはそれ以来小町をアネゴと慕いトレーニングしてきた。

 あくタイプ同士の対面となったが相性としては映姫の方に分があった。かくとうタイプを持つゴロンダにはバツグンが取れるからである。

 

「じゃあ行きますよ! シザリガー、アクアブレイク!」

「こっちはインファイトです」

 

 てきおうりょくシザリガーのアクアブレイクとゴロンダのインファイトの激しい火力がぶつかり合い、先ほどよりも遥かに大きい火花が上がった。二匹の殴り合いは息もつかせぬほどの速く、それでいて重い一撃の連続だった。だが押しているのはシザリガーの方だった。

 

「ぐっ……」

「オラオラどうした? そんなもんか?」

 

 攻撃力が高くバツグンをついているはずだが全然効いている様子がない。シザリガーのてきおうりょくが威力をブーストさせているのである。自分と同じタイプの技の威力が倍になるという特性のおかげでゴロンダの力を優に凌いでいる。

 

「3……2……1……オッラァ!!」

 

 カウントされて遠くに跳ね飛ばされた。136kgもある巨体がいともたやすく宙を舞い、HPが大きく削られてしまった。

 

「ゴロンダ! 大丈夫ですか!?」

「ああ……大丈夫だ」

 

 心配かけまいと強がってはいるがフラフラしている。耐久面も鍛えてきたはずであるがそれを貫くほどのアクアブレイクの威力であった。

 

「ふふ、映姫様でもポケモンバトルはイマイチだったようですね。それじゃあトドメをさして終わらしましょうか。さあ、アクアジェットだ!」

「じゃあなゴロンダ。楽しかったぜ。終わりだ!」

 

 相手よりも先に攻撃の出せる先制技。しかもタイプ一致水技のアクアジェットは残り少ないHPのゴロンダを倒すには十分であった。もはやここまで……そうゴロンダは正直考えていた。

 

「まだです! ゴロンダ、こらえる!」

 

 映姫の声が届いたゴロンダは両手を胸の前にかざしてこらえる体勢に入った。そこにシザリガーのアクアジェットが抉りこまれる。意識を失いそうになるが瀕死にならないのがこらえるの効力であった。

 

「そのまま頭の星を掴んで下さい!」

「!? シザリガー、逃げて」

 

 小町の判断は正しかった。しかし少し遅かった。ゴロンダはシザリガーの額の星を片手でガシッと掴み、空中にプランと浮かばせた。リーチの長いゴロンダにシザリガーの技は一つも届かなかった。

 

「……ふっ、完敗だ。思いっきりやってくれ」

「お前は強かった」

 

 無口なゴロンダは武士の情けとでも言うように渾身のインファイトをぶつけた。攻撃特化にしていたシザリガーは守りに関しては脆弱であり、みるみるうちにHPが減っていき勝負は決した。シザリガーの目がグルグル模様になったのがその合図である。

 

「あーやっぱり映姫様に勝てなかったかー。勝てると思ったんだけどな」

「いえ、あなたもよく頑張りましたよ。特に私のゴロンダをここまで追い込めるなんて並大抵の努力ではなかったのでしょう。シザリガーもよく小町を支えてくれましたね。感謝します」

「……大アネゴって呼んでいいっすか!?」

「やめて下さい」

 

 面倒な部下は小町一人で十分である。映姫はそう考えていた。すぐさまゴロンダの手当てに移った。

 

「よく頑張りましたね」

「……正直俺は途中で諦めてしまった。勝てたのはお前のおかげだ」

「実際に戦ったのはあなたです。それに私たちはチームですから二人の勝利ですよ」

「……ありがとう」

 

 恥ずかしいのか目を合わせずに感謝の言葉を述べた。体に隠していた枝葉を口にくわえて一服し、その場に座り込んだ。

 

「さあ皆のところに戻りますよ。まだ勝負は終わってないですからね」

 

 映姫が手を差し出すとゴロンダはその手を掴み立ち上がった。なお握力はゴロンダよりも映姫の方が強い。

 

「あ、そうそう小町?」

「はい? 何ですか」

「あなたね……」

 

 最初から言いたかったことを映姫はぶちまけた。

 

「バトルで本気になれるなら普段の仕事もサボらずちゃんとやりなさーーい!!」

「ひぃ!? に、逃げろ!」

「逃がしませんよ!」

 

 二人が鬼ごっこを始めてしまったのでゴロンダは一人皆のところに戻ることになった。

 

『全く、あの二人は……とりあえずそこまで! シザリガー戦闘不能。よって旧都チームの一勝とする!』

 

 頭の中に八雲藍の声が聞こえてきた。勝敗結果も教えてくれるらしく旧都チームは勝利に喜んでいた。

 

「へー、あの小さい子よく頑張ったじゃん。あと一勝だな」

「あらら小町負けちゃったか。あと二人頑張れー」

 

 雷鼓と鈴瑚は勝敗結果に反応している一方、潤美は他の戦いに意識を向けていた。

 

「瓔花大丈夫かな……怪我してないといいけど」

 

 

 八千慧と瓔花の戦いは旧都の南東部で行われていた。八千慧の手持ちはほのお・ドラゴンタイプのバクガメス。一方、瓔花はいわ・どくタイプのウツロイド。ウルトラビーストと呼ばれる異世界から来たポケモンである。タイプ上ではウツロイドの方が有利であるがバクガメスにはじしんを搭載しているので一概には有利とは言えなかった。

 

「さて、そろそろ聞いてもいいかしら? どうしてあなたは私と戦いたかったの?」

「…………」

「どうしたの? 聞こえなかったのかしら」

 

 最初から俯いてばかりの瓔花に近づこうとしたその瞬間。隣から奇妙な声が聞こえた。

 

「グッ!?」

「ど、どうしたのバクガメス!?」

 

 急激にバクガメスの顔色が悪くなり紫色に変色してしまった。

 

「私の勝ち……よ」

 

 ボソリと呟いた瓔花には二重の意味で生気がなく、後ろのウツロイドがゆらゆらと揺らめいていた。

 




読んでいただきありがとうございます。ポケモンのキャラなんか濃いですね。スミマセン。今回も紹介をば。

No.2 小野塚小町 みず・あくタイプ 三途の川チーム 相棒ポケモン シザリガー みず・あくタイプ


サボリ魔小町と子分気質のシザリガーという異色の組み合わせでした。なお、この場合のようにトレーナーとポケモンが完全一致のとき、ものすごい威力が出ます。一体何組がかは言えませんが結構多いです。脳筋だらけですね(笑)
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