東方携帯獣   作:海老の尻尾

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第九話 幻想郷のジョーイさん

結界を十分に張っていたはずなのに旧都全体に甚大な被害が及んでいた。もちろん戦っていたポケモンたちは相応のダメージを受けていたので一か所に集めて治療する予定らしい。紫は前もって医者役を呼んでいた。

 

「じゃあ頼むわね永琳」

「ええ、大丈夫よ。異世界の生物の治療位」

 

 この世界のジョーイさんは永遠亭の薬師、八意永琳である。バトルするときに必ず出る負傷者問題は彼女の一手で解決するほどの腕前である。見たことも聞いたこともない生物ですら完璧に治してしまうのは彼女の技量が人間離れしているおかげである。彼女もバトルに参加したかったらしいが説得して裏方に回ってもらった。彼女がいなければ二回戦ができないからである。その代わりに彼女にもポケモンをプレゼントした。

 

「行くわよ、ベトベトン」

「う~い」

 

 治療できるポケモンはたくさんいた。ラッキーにハピナスにタブンネなどを選ぶかと思いきや永琳が選んだのはまさかのベトベトン。治療するのはポケモンではなく永琳であり、ポケモンはそのサポート役なのでぶっちゃけ誰でもいいのだがぶよぶよした紫色のポケモンを真っ先にチョイスするのは月人のセンスはぶっ飛んでいるなと紫は思っていた。

 永琳はベトベトンを引き連れて、もうすぐ終わるであろう旧都に向かった。

 

 

 

「うう……負けるなんて妬ましい。ねえ、あのときどうやって避けたのか教えなさいよ」

「あのとき? ああ、あれはただ……」

 

 旧都の北西部ではパルスィが悔しそうにしていた。まさか伝説ポケモンを使ったのに一般ポケモンに負けるとは思わなかったのだろう。そしてはかいこうせんをどうやって避けたのかを問い詰めていた。

 

「……やっぱり秘密だ! ほら、戻ろうぜ」

「なっ……私には教えてくれないのね。妬ましい」

 

 魔理沙はつい喋ろうとしたが口を噤んだ。今までのこのバトルの模様がスキマとかを通じて他の人たちに見られている可能性が大いにあったからである。ここで安易に話すと今後不利になると思ったからである。

 ちなみにその予想は的中しており、他のチームは二チームのバトルの様子を観覧することができている。それを見ているかどうか別問題だが(話し合ったりバトったりしている)。

 二人は皆が待つ旧都中心に向かった。

 

 

 

 旧都の南東部では八千慧がバクガメスをボールに戻した。その瞬間糸が切れたように向こう側にいた瓔花が前のめりに倒れた。

 

「瓔花!? 大丈夫!?」

 

 瓔花の元にすぐさま駆け寄った。頭を起こし首筋に手を当てて確認するとしっかりと脈打っていたので一安心だった。可愛い顔して眠っているようであり自力では起きそうにないのでお姫様抱っこをして運ぶことにした。面倒だがこのまま放置というわけにもいかない。

 

「この子すごい軽いわね。ちゃんと食べてるか心配ね」

 

 水子の霊という種族のせいか重さを全く感じない。普段はふよふよ浮いているのだろうか。そんなことを考えていると、あることを忘れていたことに気付いた。

 

「あ、ウツロイドの回収……」

 

 バクガメスにプレスされて乾物になっていたウツロイドは、まだモンスターボールに戻されていなかったのでじしんの震源地を覗いてみる。

 

「あれ? いない?」

 

 べっきょべっきょになって一歩も動けないはずなのに跡形もなかった。流石に死ぬことはないのでどこかに逃げたのだろうが……奇妙である。トレーナーを置いてどこかに行くなんてことはないので不気味であるが今は一旦置いておくしかない。

 

「まあ今はこの子を連れて行くのが先ね」

 

 瓔花が快復したら探そうと思い、中心に向かう。

 

「あの子、潤美っていったかしら。ほっとけない理由もなんとなく分かるわね」

 

 瓔花の傍にくっついていた潤美のことを思い出していた。ずっと一緒にいるらしいが危なっかしい子の面倒をみたくなる彼女に同意していた。

 

 

 

 そんな二組は割と早く到着した。戦闘時間はほぼ同じ時間で、戦闘地も中心部からほぼ等距離だったので同時に到着した。そんな彼女たちを真っ先に向かい入れたのは牛崎潤美だった。

 

「あ、来た! 瓔花大丈夫……あれ? 八千慧さん?」

 

 お姫様抱っこされている瓔花を見てびっくりする潤美であった。しかもそれが対戦相手の吉弔八千慧だったからなおのことだった。

 

「潤美。この子ちょっと頼むわよ」

 

 ガラスを扱うように瓔花を手渡した。渡し方で八千慧がこの子を全く無碍に扱っていないことが感じ取れた。戦っている最中に通じ合ったのかもしれないと潤美はほっこりした。

 

「え? 八千慧さんはどうするんですか?」

「ちょっと相談したい人がいるからね。いいかしら、紫、というか藍」

 

 八千慧が呼びかけるとスキマが開き、その中から三人の賢者が現れた。

 

「あら珍しいわね。あなたが呼ぶなんて。まあ丁度いいタイミングだったからいいわどうしたの?」

「あ、そうね。私の話は後でいいから手当てしてあげて永琳」

「もちろん、そのために来たのだから。さあ渡してちょうだい」

 

 八千慧と魔理沙とパルスィは手持ちのモンスターボールを永琳に渡した。永琳は受け取ると後ろに置いていた何だかよく分からない装置にそれらを置いた。幻想郷住民にはピンと来ないがポケモンにとってはお馴染みもお馴染みのものだった。こんな異世界にポケモンセンターの回復装置があるのだから。

 永琳はパートナーのベトベトンから聞いた情報だけでその装置を完全再現してしまったのである。しかも本家は最大六匹までしか回復できないのだが、この装置は最大百匹まで回復できる。ベトベトンの情報が超詳細だったというわけではなく、本当に普通の会話から作り出したのだから天才としか言えない。

 

「はい、これで大丈夫よ」

 

 各々のトレーナーにモンスターボールを返した。こんな一瞬に本当に回復したのか怪しむ皆は一応モンスターボールを開いてパートナーを見た。

 

「お、本当に俺様快復してやがるな! 流石だなそこの嬢ちゃん」

「あら嬉しいこと言ってくれるじゃない♪」

 

 王様気質のパルキアが見た目は若い億年薬師、永琳を嬢ちゃん呼ばわりするのはポケモンにとってはおかしくはない。だが幻想郷住人は事情を知っているので永琳の後ろにいた紫は爆笑していた。

 

「じょ、嬢ちゃんって……アッハッハ!」

「ベトベトン、はかいこうせん」

 

 パルキアよりも高火力と見られるはかいこうせんが人に向かって放たれた。某ドラゴン使いの人よりも無慈悲かつ至近距離で放たれたが紫はサラリとかわした。その様子を見ていたパルキアは唖然としていた。

 

「そういえばシザリガー、ゴロンダ。あなたたちのパートナーたちは?」

「アネゴと大アネゴたちは追いかけっこしてるっすよ」

「もうすぐだと思うが……」

 

 紫の放送は届いているはずのでもうそろそろ来てもおかしくはない。そう考えていると向こう側から緑色の人につながれた赤色の人が現れた。縄でぐるぐる巻きにされた小町にうんざりした映姫が引っ張って来ていた。その様子を舎弟のシザリガーは苦笑して見守っていた。

 

 

 

「はい、これで皆大丈夫ね」

「大丈夫かな、瓔花……」

「外傷はないからもうすぐ目覚めるはずよ。心配しないでいいわ」

 

 全員が永琳の治療を受けたものの瓔花はまだ起きていなかった。すぐに起きさせる薬くらい作れるが副作用が怖い上、体がそんなに強くないので潤美は断った。幸い時間経過で起きるものらしいのでそれほど心配する必要もないようである。完全に保護者となっていた潤美である。

 

「そういえば紫、次はどこのチームが戦うんだ?」

「そうねぇ……どうしようかしら?」

「考えてないのかよ」

「正直最初のこのバトルも適当に選んだだけだしね。あ、じゃあ永琳決めてよ」

「あら、いいの? じゃあ純狐と優曇華のいるところのチームが見てみたいわ。その二人は固定で」

「あなたの弟子発狂しそうね。面白そうだしいいわよ」

 

 いじめているのか愛でているのか分からないが次の対戦チームが決定した。しかも指定ありで。優曇華は純狐に目をつけられており、ストーカー紛いのことをされているので対峙させるのは優曇華の精神的ストレスが大きいだろう。だからするのだが。

 

「確か純狐のところは妖怪の山チームで優曇華のところは永遠亭チームね。自分の家壊されたくないし妖怪の山でやって頂戴」

「分かったわ。じゃあ伝えるわね」

 

 紫はスキマに入り次のバトルについての連絡をした。発表したその瞬間、永遠亭チームがワープをして妖怪の山まで飛ばされた。

 

「なるほど、こうやって他のチームの様子を見られるんだな」

 

 魔理沙は紫から渡されたタブレットのようなものを手に取り、妖怪の山チームと永遠亭チームのバトルの様子をしっかりと勉強していた。根が努力家の魔理沙は敵の動向をよく観察していた。

 

「なあ、皆はもし鈴仙と戦うならどうする?」

 

 他のメンツに聞いてみて意見交換をしようと振り向いていた。だが皆していることはバラバラだった。映姫はまだ小町に説教しており、勇儀は相棒ポケモンと組手をしており、八千慧は藍と何か話しており、雷鼓にいたっては手持ちポケモンと酒を飲み交わしていた。どいつもこいつもまともに見ていなかった。もしかして他のチームもそうなのかもしれない。

 

「……鈴仙はパートナーとのコミュニケーションが取れているからそこを狙えばできるかも?」

「モロバレル……」

 

 さすが魔理沙のパートナー。真面目な人には真面目なポケモンが集まってくるのである。ちなみに今パルキアはぬえのパートナーポケモンであるイベルタルと戦っていた。

 

 

 

「藍、ちょっといいかしら?」

「どうしたんだ八千慧」

 

 各々が好きなことをしている最中、八千慧は藍を呼びとめてとあることを話していた。それはもちろん先ほど戦った瓔花についてである。

 

「瓔花の手持ちポケモンのウツロイドがどこかに消えたことなんだけど……」

「ああ、分かっている。スキマを駆使して探してはみたが見つからなくてな」

 

 藍も当然瓔花とウツロイドの様子を監視していた。不自然な動向に注意を払っていたが、その後姿を発見できずにいた。まるでバレないように隠れているようだった。

 

「裏で何かが動いているみたいなんだけど……何か知らないかしら?」

「……私は何も知らない」

 

 八千慧が紫ではなく藍を招集したのはこれである。はっきり言って八千慧は紫を疑っており、本人に聞いてみてもはぐらかされてしまうのは目に見えていたのだから藍に聞いてみた。

 

「そうか……じゃあ私もウツロイド探しに加担させてくれ」

「いいのか? こっちも助かるが」

「モヤモヤするのが嫌なだけよ」

 

 瓔花はまだ目覚めない。彼女が目覚めるまでに解決したいという思いを聞いていた潤美は八千慧と行動をともにすることになった。




明日から六月になりますね。梅雨はジメジメしますが体を動かしてスッキリしましょう! そう言っている私自身もモチベーション下がらないように気を付けたいです。

No.5 八意永琳 無所属 どくタイプ 相棒ポケモン ベトベトン どくタイプ

使える技 はかいこうせん ヘドロばくだん ちいさくなる だいもんじ

自分の中では永琳はプレイヤーにしたらバランスブレイカ―になる人物の一人だったのでジョーイさんポジションにしました。ジュンサーさんはいなくても大丈夫だと思いましたがジョーイさんはいないとまずいと思ったのでこの役割に回ってもらいました。
なお、戦う場面は見られないと思うので技を上記しました。
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