FAIRY TAIL もう一人の滅竜魔導士「氷竜」 作:タイキック新
…リアルの方で色々とあったんです…えぇ…色々と
「400年前、ニルヴァーナを作ったのはこのワシじゃ」
「!?」
「うそ…」
「400年前!?」
ローバウルの衝撃の話しに、全員の考えが一瞬だけ止まってしまった。
400年前という長い年月、そしてニルヴァーナを作った張本人が目の前に居ると言うのだ。驚くなという方が無理な話しだろう。
「400年前、世界中に広がった戦争を止めようと、善悪反転の魔法、ニルヴァーナを作った。ニルヴァーナはわしらの国となり、平和の象徴として一時代を築いた」
ここまでの話しでは、特にニルヴァーナは悪い魔法という認識を持たせない、むしろ平和のために無くてはならないとさえ考えさせられる魔法だ。しかし、現実はそう甘くはない。
「しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる。闇を光に変えた分だけ、ニルヴァーナはその闇を纏っていた」
つまり、ニルヴァーナは光を闇に変えることが出来たというわけでなく、闇そのものをニルヴァーナが吸い取り光だけが残り、吸いとった闇をニルヴァーナそのものが溜め込んでしまっていたという考え方が正しいだろう。
バケツに水を入れ続けているように、いつかは限界が来て溢れだしてしまう。
「バランスをとっていたのだ。人間の人格を無限に変えることは出来なかった。闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる」
「そういえば確かに」
グレイはシェリーとリチャードの二人の変化を思い出し、今の話を理解する。
「人々から失われた闇は、我々ニルビット族にまとわりついた」
「そんな…」
「でも…それって…」
「地獄じゃ、わしらは共に殺し合い、そして全滅した」
そして、ローバウルから、信じられない一言が飛びだした。
「生き残ったのはワシ一人だけじゃ」
次々と明かされる衝撃の事実に、ウェンディとマーラの表情は少しずつだが険しくなって行く。自分達のいるギルドの話しなのだから当然だ。
「いや、今となってはその表現も少し違うな、我が肉体はとうの昔に滅び、今となっては思念体に近い存在。ワシはその罪を償う為…また、力なき亡霊の代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで400年見守ってきた」
「今、ようやく役目が終わった」
そういうローバウルの顔は、肩の荷が下りたかのような、清々しい笑顔をしていた。
「そ…そんな話し…」
「訊きたくないよ…」
そして、化猫の宿のメンバーがウェンディ、マーラ、シャルルを残して一人ずつ消えて行く。全てローバウルが作り出した魔法だったのだ。
「何これ!!マグナ!!ペペル!!」
「ユーダおじちゃん!!マキナお姉ちゃん!!」
「あんた達!!」
「どーなってるんだ!?人が消えていく!!」
「お願い!!待って!!……消えないでよ!!!」
「イヤよ!!!みんな…!!!消えちゃいや!!!」
「騙していてすまなかったな、ウェンディ…マーラ…ギルドのメンバーは皆…ワシが作った幻じゃ」
「何だとォ!!?」
「幻って…冗談じゃねぇぞ、どれだけの魔力がいると思ってんだよ…」
幻と訊いた連合軍のメンバーも、ウェンディとマーラ同様に驚いていた。人間の…しかもギルド一つを作り出せる程の人数を幻で作り出していたのだから当然驚きもするだろう。
「人格をもつ幻だと!!?」
「何という魔力なのだ!!」
「ワシは、ニルヴァーナを見守る為にこの廃村に一人で住んでいた。7年前、一人の少年がワシのところに来た。その少年のあまりにまっすぐな目にワシはつい承諾してしまった。そして、その2年後にウェンディが親に捨てられ路頭に迷っていたマーラを連れてきた。ワシはウェンディが決して一人になることがなるようにギルドに入れることを許可した」
「一人でいようと決めてたのにな」
「ウェンディの為に作られたギルド…」
「そんな話し聞きたくない!!!バスクもナオキも消えないで!!!」
「イヤだ…イヤだよぉ…お願いだから…アタシとウェンディを残して消えないでよぉ……皆がいたから…アタシは笑顔でいられたのに…」
「ウェンディ、マーラ、シャルル…もうおまえ達に偽りの仲間はいらない」
ローバウルは、ゆっくりとナツ達に向けて指を指してにこりと笑った。
「本当の仲間がいるではないか」
「おまえ達の未来は始まったばかりだ」
そして、ついにローバウルの姿も消え始めてきた。
「マスター!!!」「おじいちゃん!!!」
二人は慌ててローバウルの体を掴もうと手を伸ばすが、手が届くと同時にローバウルの姿は光となって消えてしまった。
(皆さん本当にありがとう、ウェンディとマーラ…そしてシャルルを頼みます)
「「マスターーーー!!!!」」
うわあああぁ!!!!
二人は、残された悲しみで大声で泣いた。残される者の気持ちが分かる二人には辛い話しだろう。
そして、泣いている二人の肩をエルザが優しく手を当てる。
「愛する者との別れの辛さは、仲間が埋めてくれる」
「来い、妖精の尻尾へ」
そして、ウェンディ、マーラ、シャルルの三人は妖精の尻尾へと加入することが決まった。
その後、港で各ギルドはそれぞれ帰ることとなった。
「さてと、じゃあ帰るか!」
リートは荷物を持って、皆が集まっている場所へと行く。
「おせぇぞリート」
「悪い、ちょっと支度に手間取ってな」
「丁度みんなで別れの挨拶をしていたところだ。お前も最後くらい顔を会わせておくといい」
「私は疲れたからここで待っていますわ」
「あぁそうするよ」
リートはまず、青い天馬の所へと向かった。
「今回はお疲れさまでした。一夜さん」
「うむ、リート君もまた会おう、次に会うときは我々のギルドに入ってくれると信じているよ」
「いや、信じないでください、妖精の尻尾がある限りあり得ませんから…」
「また会おうリート君」
「今回は君達が一番活躍したけど、次は僕たちが一番活躍するからね」
「いつから競いあったんだよ…まぁ、次に会えるのを楽しみにしておくよ」
「リート殿」
「!」
青い天馬と話しているリートの下に、ジュラがやって来た。
「ジュラさん!今回もありがとうございました」
「ハハハ、ワシは何も出来とらんよ、お主らの方がよっぽど成果をあげていたではないか」
「いえそんな、でも、あなたがいたからオレは安心して戦えたんです」
「その言葉はありがたく受け取っておこう、次はアクナ殿にも是非会ってみたいものだ」
リートはアクナの顔を思い浮かべるが、どうやってもロクなことにならないだろうと思った。
「いやぁ…あまりオススメはしませんよ…下手したら会った瞬間に拳が飛んで来かねませんから」
「ハッハッハ!!元気があるのは良いことではないか!!ますます会ってみたくなったというものだ」
「えぇー…まぁ、一応話しておきますね」
「あぁ、是非ともそうしてくれ」
(ずいぶんと物好きになったなぁこの人も…)
そして、帰りが船と聞いたリートとナツは、顔色を悪くしていた。
「なぁ…歩いて帰らねぇ?」
「ダメだ、一体何日かかると思っている。船の方が圧倒的に速い」
「いや…まぁそうだけどよぉ…」
「乗り物かぁ…」
「だったら二人ともウェンディのトロイアをかけてもらったら?」
マーラの提案に、二人の顔に血色が戻る。
「そうか!その手があった!!」
「もう乗り物に困る事ねぇんだ!!!」
「調子いいですわねお二人共…」
「あはは、じゃあウェンディ、可哀想だからトロイアかけてあげて」
「うん!」
そして、リート達は船に乗り込み意気揚々とギルドへと向かっていた。
「あぁ、船って潮風が気持ちがいいんだな」
「まったくだ、今までじゃあ絶対に味わえなかった感覚だな」
船に揺られても乗り物酔いにならないリートとナツは、二人して感極まって喜んでいた。
「乗り物っていいもんだなーオイーー!!」
「最高じゃねぇか!!」
「あ、そろそろトロイアが切れますよ」
「「おぶぅ…」」
トロイアの効果が切れると同時に、リートとナツのいつもの乗り物酔いが再発した。
「や…やべぇ…吐く…」
「も…もう一度…かけ…て」
「連続すると効果がうすれちゃうんですよ」
「二人とも残念だね、まぁあと一時間くらいで着くらしいからそれまで頑張って!」
「あと…」
「いちじ…かん…?」
「放っとけよ、そんな奴ら」
「あははははっ」
「本当にウェンディも、マーラも、シャルルも妖精の尻尾に来るんだね」
「うん!よろしくね、ハッピー」
「私は、二人が行くっていうからついてきただけよ」
「ツンデレですの?」
「違うわよ!!」
「楽しみです!!妖精の尻尾!!」
「そーいえばルーシィ、また新しい星霊を仲間にしたそうですわね」
「うん!六魔将軍のエンジェルってやつが持っていた星霊なんだけどね、アリエスとジェミニとスコーピオンが仲間になってくれたんだぁ」
「私、是非会ってみたいですわ」
「ははっ、機会があればね」
その後、リート達はウェンディ達を連れて、無事にギルドに到着し、ウェンディ達の事をきちんと紹介した。
「……というわけで、ウェンディとマーラとシャルルを妖精の尻尾へ招待した」
「異論はねぇな?つーか言わせねぇ」
「変な圧力かけるんじゃありませんわよ」
「よろしくお願いしまーす!!」
「よろしくお願いします」
オオオオオォォ!!!
ウェンディ達は、妖精の尻尾に快く受け入れられてホッと一安心できた。ずっと受け入れてもらえるかという不安が心のどこかあったのだ。
「つーかミラ!!かき氷作ってくれ」
「私にはお紅茶プリーズですわ」
「帰って来て早々にそれかい!!!」
「それよりも、オレの仕事中に闇ギルドと一戦交えたそうじゃねぇか!!何で誘ってくれなかったんだよ!!」
バンクはよほどついて行きたかったのか、半ばキレ気味に、今回の作戦に出ていったルーシィにつっかかる。
「遊びに行く友達かあんたは!!」
「くっそー!あの仕事もうちょい先伸ばしにしとくんだった!!」
「もう終わったんだからいいじゃない…」
「あー!ムシャクシャするなぁ~!リート!!ちょっとオレと喧嘩しろ!!」
バンクは、遠慮なしにかき氷を頬張るリートに飛びかかった。
「断る!!」
ドガァ!!
「へばぁ!!?」
かき氷タイムを邪魔されたくないリートは、一撃でバンクを殴り飛ばした。
「オレの数少ない楽しみを邪魔すんじゃねぇ」
(目がマジなんですけど…)
「リート、エルザ」
かき氷を食べるリートと、その近くで立っていたエルザにマカロフが声をかける。
「「マスター」」
「よくやった。これでこの辺りもしばらくは平和になるわい。もちろん、ウェンディとマーラとシャルルの三人も歓迎しよう」
「ありがとうございます。マスター」
新しい仲間が入ったことでギルドはお祭り騒ぎとなる。
がやがや
ワイワイ
「シャルルはたぶんハッピーやラリカと同じだろうけど、ウェンディとマーラはどんな魔法を使うの?」
ふと、ミラはウェンディ達にそんな質問をすると、ハッピー達と同じ扱いがよほど気に入らなかったのか、シャルルが怒りだす。
「本物のミラジェーンだよ、シャルル、マーラ」
「うわぁー、生ミラさんだ!!」
「ちょっと!!オスネコ達と同じ扱い!!?」
「あ、アタシは花火魔法を使うよ、よろしくね」
オオオオォォ
「あの…私は、天空魔法を使います。天空の滅竜魔導士です」
!!!
滅竜魔導士と言って静まり返った状況を見て、ウェンディは今の発言に後悔する。気を許しすぎてしまったのかと思ってしまったのだ。
「あ…」(信じてもらえないか…)
オオオオオォォ!!!
「スゲェ!!」
「ドラゴンスレイヤーだ!!!」
「リートやナツと同じか!!!」
「ガジルもいるし、このギルドに4人も滅竜魔導士が!!!」
「珍しい魔法なのにな!!」
受け入れてもらえたウェンディの表情は、また明るくなった。
「よかったねウェンディ」
「うん!」
ギルド内でざわつく中焦りを感じている者が一人だけいた。
「うっ…」
「お?どうした?ガジル」
リートに吹っ飛ばされて起き上がって来たバンクに声をかけられるが、ガジルはそれを軽く流す。
「何でもねぇよ、戦闘狂が」
「んだとコラァ!!」
「ネ…ネコ」
(同じ滅竜魔導士なのに…なぜオレだけネコがいねぇ…なぜなんだ)
ガジルは、自分がネコを連れていないことに不安を抱えながらトボトボと歩いていった。
「…んだ?アイツ、どーしちまったんだ?」
「今日は宴じゃーー!!ウェンディとマーラ、そしてシャルルの歓迎会じゃー!!!」
ワーーー!!!
「楽しいとこだね、マーラ、シャルル」
「うん!アタシこーいうの大好きだよ」
「私は別に」
どーしても小説の書き方が上手くなってないような…基本的な会話以外は○○が××したみたいな書き方になってしまう…もっと三人称の小説読むべきだなこりゃ
オリジナル読みたいのに投票オナシャス!
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