風紀委員長の弟にご用心   作:後生さん

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原理を教えて

 

 

「俺は超一流の家庭教師だぞ?」

 

 

 やっと目的地に辿り着き、沢田綱吉達を視界に入れた時に見えたモノは大量の蛇だった。

 沢田綱吉の慌て様を見る限り普通の蛇じゃない、恐らく牙に毒を仕込んだ毒蛇だろうと推測していると、最初に動いたのは忠犬もとい獄寺隼人だった。

 

 

「10代目!伏せてください!!」

 

「!?ふ、伏せて!!」

 

 

 その声に反応した沢田綱吉がすぐに皆に指示を降した後、獄寺隼人が投げた爆弾によって毒蛇共は吹き飛び彼等の災難は去った。…いや、最大の凶悪はまだ居るけども反応するのは後でで良いかな。

 

 

「獄寺君!!」

 

「っ、遅く、なりました、!」

 

「やぁ小動物。意外と元気そうだね」

 

「雲雀さん!雲雀君も!無事で良かった…!!」

 

「…君に心配される憶えはなかったんだけど」

 

 

 思わず言い返せば、ですよねー…と苦笑する沢田綱吉。

 獄寺隼人から自然に離れ、そのまま骸を見据えると彼は少し驚いた表情をしてから肩を竦めた。

 

 

「わかったか?骸。俺はツナだけを育ててる訳じゃねぇんだぞ。若干一名は違うけどな」

 

 

 当然僕の事だろうね。

 兄さんは聞いてない振りをしつつ、肩を貸している獄寺隼人をぺしっと地面に落とした。

 

 

「借りは返したよ」

 

「!いてっ」

 

「(!?捨てた!あっさり!)」

 

 

 沢田綱吉の引いた表情を無視する兄さんと、僕を含めその他を見る骸の顔は何処までも余裕気だった。

 

 

「これはこれは外野がゾロゾロと。千種は何をしているんですかね?」

 

「へっ、眼鏡野郎ならアニマル野郎と下の階で仲良く伸びてるぜ?」

 

「なるほど」

 

「すっ、凄いよ獄寺君!」

 

「…いやまぁ、俺が倒したんじゃねぇんすけど…」

 

 

 気まずそうに正直に話す獄寺隼人に冷めた視線を向けそうになるのを止めた。彼処で見栄を張ってたら問答無用で意識を無くそうと思ってたのにね。

 何やら寒そうに震えた獄寺隼人から目を離し、骸を見据えトンファーを手にした兄さんを見つめる。

 

 

「覚悟はいいかい?」

 

「怖いですねぇ。だが今は僕とボンゴレの邪魔をしないでください。第一君は立っているのもやっとの筈だ。骨を何本も折りましたからね」

 

 

 その事実に沢田綱吉が動揺の色を見せる中、僕は冷静に兄さんを見据えていた。誰よりもその傷の状態を分かっている兄さんを、知っているから。

 

 

(確かに、兄さんは見た目よりも酷い重体を負っている。普通なら立つ事すらも出来ない程に…。

けど、兄さんにそんな常識は当て嵌らない)

 

「──遺言はそれだけかい?」

 

 

 どうやら気概だけではないと気付いた様だ。

 兄さんの視線に骸は面白そうに瞳を細ませる。

 

 

「思ったより面白い事を言う。仕方ない、君から片付けてしまいましょう。一瞬で終わらせますよ」

 

 

 ──その刹那、兄さんと骸がぶつかり合った。

 

 兄さんと互角の近接戦闘に、幻術師と聞いていたのに骸は体術も扱えるのかと目を見開く。

 僕でさえも集中しないと見切れそうになる素早い攻撃に、どちらとも引かず、トンファーと三又槍が連鎖する毎に激しい火花が散った。

 攻防の最中に兄さんは余裕気に口許を歪める。

 

 

「君の一瞬っていつまで?」

 

「クフフ…やはり君は興味深い男ですね」

 

 

 兄さんの余裕に沢田綱吉は一喜する。

 赤ん坊は実に上から目線で満足気に笑みを浮かべていた。

 

 

「やっぱり強い!流石雲雀さん!」

 

「こいつらを侮るなよ骸。お前が思っているよりずっと伸び盛りだぞ?」

 

「なるほど、その様ですね。彼が怪我をしていなかったら勝負は分からなかったかもしれない」

 

 

 その微笑みに僕も、沢田綱吉も反応する。

 言葉の通り、兄さんは立ち止まる。激しく動いたせいで塞がっていた筈の傷が開き血が滲み、痛みで動けなくなったんだ。骸はその様子に笑った。

 

 

「雲雀さん!」

 

「時間の無駄です。手っ取り早く済ませましょう」

 

「!」

 

 

 突如として美しい満開の桜が現れ、僕はその幻術の凄まじさに呆然となった。沢田綱吉は何が来るのかと身構えていたが、桜の登場に唖然となる。

 

 

「さ、桜…?」

 

「雲雀は桜を見ると動けなくなる桜クラ病だ。シャマルが前にトライデントモスキートを使ったんだ」

 

「(…ふぅん。それが原因なんだ)」

 

「!そんなっ!?じゃあ雲雀さんは…!」

 

「また膝まづいて貰いましょう」

 

「っ雲雀さん!」

 

 

 兄さんが治ったとは知らない骸と沢田綱吉とは違い、獄寺隼人と僕──恐らく赤ん坊もだろうけど──は澄ました顔をしていた。倒れた…と思わせた兄さんは隙をついて骸に一撃を食らわせる。

 

 

「がふっ…これは…」

 

 

 獄寺隼人がこれは得意気に鼻で笑った。

 

 

「甘かったな、シャマルから雲雀への薬を預かっていたのさ。……いや悪ぃって本当」

 

「君のドヤ顔程ムカつくモノはないよ」

 

「いやマジで悪かったって!」

 

 

 軽く睨みでお灸を据えた所で、兄さんが骸にトドメの二撃目を与えていた。吹っ飛ぶ骸に沢田綱吉は喜び、獄寺隼人はスカした表情を浮かべ、赤ん坊は薄い笑みを洩らす。僕は変わりに無表情だった。

 

 

「やった…!」

 

「ケッ、おいしい所全部持って行きやがって」

 

「遂にやったな。それにしてもお前、見事に骸戦で役に立たなかったな」

 

「ほっとけよ!」

 

 

 僕はそのまま兄さんに近づき、その様子に気付くと呆れたとばかりに肩を竦めた。

 

 

「…本当、意地っ張りだよね兄さんは」

 

 

 僕の一言に全員が気付き慌てて沢田綱吉が近寄る。

 ふらりと倒れ掛かった兄さんを受け止める僕に、慌てる沢田綱吉だがその様子に目を瞬かせた。

 

 

「雲雀さん!大丈夫ですか、って、寝てる…?」

 

「気絶だよ。当然の成り行きだよ」

 

「こいつ途中から無意識で戦ってたぞ?余程一度負けたのが悔しかったんだな」

 

「雲雀さん…すげぇ」

 

「…まぁ、兄さんだからね」

 

 

 兄さんを地面に横たわらせて呼吸の状態を確かめていると、沢田綱吉がまた慌てだした。

 

 

「そうだ!早く皆を病院に連れて行かなきゃ!」

 

「心配ねぇぞ?ボンゴレの優秀な医療チームがこっちに向かって──」

 

「──その医療チームは不要ですよ」

 

「ッ!?」

 

 

 ふらりと立ち上がった骸に全員が警戒する。

 僕は骸がまだ意識を保っていた事に幾らか安堵しつつも、その微笑みに違和感を募らせていた。

 

 

「てめぇ!」

 

 

 獄寺隼人が突っかかろうとした時、骸は徐に右手をあげる。その手の中には銃が握られており、まさかと思い僕は咄嗟に声を上げた。

 

 

「ッ骸!」

 

「──裕弥」

 

 

 ニッコリと笑う骸の姿に、僕は息を止めた。何故ならその瞳が、僕に安心をくれたから。

 

 

(…違う、んだ)

 

 

 僕が気付いたと知り、骸は引き金に指を当てる。

 

 

「また会いましょう。Arrivederci」

 

 

 バンッ!!という嫌な音と共に倒れ逝く骸に、全員が愕然となった。数秒後にハッと気付いて、沢田綱吉も獄寺隼人も後味が悪そうに顔を歪めた。

 

 

「やりやがった…」

 

「そんな、何でこんなこと…っ」

 

「捕まるくらいなら死んだ方がマシってやつか」

 

「(…なんだ?この感じ…)」

 

「生きたまま捕獲は出来なかったが仕方ねぇな」

 

 

 僕は骸がやはり思っていた通りの行動に出た事に動揺しつつも素知らぬ振りで無表情を貫いていたが、何処か微妙な表情をする沢田綱吉に目を向けた。

 

 

「なんだろう…?凄く嫌な感じがする」

 

 

 沢田綱吉の言葉と共に、一人の女が起き上がった。多分沢田綱吉の仲間だろう。僕には全く関係のない人間だったから地面に倒れていた事も忘れてた。

 

 

「ついに…骸を倒したのね…」

 

「姉貴…!」

 

「良かった!ビアンキが目を覚ました!」

 

「無理すんなよ」

 

 

 あれが獄寺隼人の姉なのか。

 内心つい思ってしまった事を振り払うと、獄寺隼人の姉は怪我を負った身体で獄寺隼人に言う。

 

 

「肩貸してくれない?隼人」

 

「…しょうがねぇな、今日だけだかんな!」

 

 

 普段から仲がやはり悪いのか、いや、この場合獄寺隼人が苦手にしてるって感じか。

 気恥しそうに姉に近付いていく獄寺隼人の足を止めようとしたのは、意外にも沢田綱吉だった。

 

 

「獄寺君!行っちゃダメだ!!」

 

「!」

 

 

 その台詞に全員が沢田綱吉を見る。

 お陰で獄寺隼人は止まったが不思議そうだ。

 

 

「…どうかしたの?ツナも肩を貸して?」

 

「え?…あっあれ、何言ってんだ?俺…」

 

「?良いっすよ、10代目は。これぐらいの怪我大丈夫っすから」

 

 

 怪我の事について言った訳じゃないだろうけど。

 沢田綱吉の様子に僕は引っ掛かり、じっと姉を観察すると、獄寺隼人が近付いた時に僅かにほくそ笑んだ口許を僕は見逃さなかった。

 

 

「すまないわね隼人…」

 

「ほら、手」

 

 

 はい、と姉が手を伸ばすが、その反対側の手から三又槍が飛び出した事により獄寺隼人は仰け反り尻もちをついた。

 僅かに切れた頬を抑え姉に叫ぶ。

 

 

「なっ、何しやがんだッ!!」

 

「まぁ、私ったら…!」

 

 

 惚けた驚き方をする姉に、下手な演技だと目を細める。そこで赤ん坊が飛び、姉の鼻を叩いた。

 

 

「何やってんだ、ビアンキ?しっかりしろ。刺したのはお前の弟だぞ」

 

「…私、なんて事を──したのかしら!」

 

「あっ!?」

 

「!リボーンさん!」

 

 

 続いて赤ん坊に三又槍の剣部分を突き刺そうとする姉から逃れ、赤ん坊はひょいっと飛んで後方に下がった。

 なんというか凄い軽やかなステップだ。

 

 

「…こいつは厄介だな」

 

「まさか、マインドコントロール…?」

 

「「いや違うな/ね」」

 

「!なんだ知ってるのか?雲雀弟」

 

「…知識が少し」

 

 

 図らずも被ってしまった事に後悔しながら、赤ん坊の質問に曖昧に答える。そうか、とだけ返した後に、赤ん坊は姉の様子について更に付け加えた。

 

「あれはマインドコントロールじゃない、そうだな…まるで何かに憑かれてるみてぇだ」

 

「!それって呪いっすか?」

 

「そんなことが…」

 

「だが、事実だ」

 

 赤ん坊の厳しい視線に沢田綱吉も獄寺隼人も固くなっていた。あまりの出来事に理解が追いついていないのだ。

 …対する僕も似た様なものだったけどね、常識とはかけ離れた事になると僕は動けなくなる。だからこそ、ざっくりとしか聞いていない。

 

 

「何言ってるの?あたしよ」

 

 

 姉の微笑みに、僕は少しだけ眉を顰めた。

 すると沢田綱吉が、まさかと気付き謎を解いた。

 

 

「っあ!六道、骸…!?」

 

「──また会えましたね」

 

「ぇ、!」

 

「で、出たー!?」

 

 

 驚きのあまり姉を凝視すると、姉は──いや、()は僕を見据えてニコリと笑った。

 それにより骸だと理解はしたが、その原理が全く分からない。これも幻術…?いやそれなんて魔法?

 …有り得ない事態に僕は珍しく困惑していた。

 

 

(ちょっと待って、どんなトリックなの?死んだ筈の骸が別の人間に取り憑いた…いや、幽霊でもないみたいだし、何らかの原理は働いてるはず…)

 

 

 祟りだなんだと慌てる獄寺隼人に、赤ん坊は「そんな馬鹿な事ある訳はねぇぞ?」と告げる。恐らくその通りなんだろうが、骸の本体を見る限りやはり死んでいる事には変わらない。沢田綱吉も確認して更に絶叫する中、不敵に骸はほくそ笑んだ。

 

 

「まだ僕にはやるべき事が有りましてね、地獄の底から舞い戻って来ました」

 

「や、やっぱり…」

 

「そ、そんなことが…」

 

 

 やるべき事と言えば、当然沢田綱吉を乗っ取る事だろう。僕には全く関係ないんだけど、どうせならその方法を聞く事くらいすれば良かった。

 惜しい事をしたなと考えていると、赤ん坊の雰囲気が不自然に強ばったのを感じ取る。

 

 

「後考えられるのは、まさかな」

 

「…」

 

「──さて、誰から片付けましょうか?」

 

 

 





オリ主は予想外の事に硬直してしまうタイプです。
マフィア……え?マフィアってなんだっけ。

感想・評価あると助かります。ではでは!
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