風紀委員長の弟にご用心   作:後生さん

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黒曜編
黒曜編突入


 

「どうも。はい、…失礼します」

 

「また病院から?」

 

 

 そう、と頷き携帯を閉じて溜息を吐いた。

 

 最近並盛生徒が襲われる事件が多発している。

 大抵は重症で、何故か歯が抜けているのだ。それも全部だったり数本だったりと。並盛病院に搬送される度に此方に連絡が来る様にさせているのだが、風紀委員だけじゃない一般生徒までも狙った犯行となると、流石に絞れずに僕も兄さんもピリピリとしていた。

 眉間に皺を寄せたまま兄さんは報告書を読む。

 

 

「不愉快だ。完璧に遊んでる」

 

 

 絶対に咬み殺すオーラが出てる兄さんには同感するけど僕はこれを仕組んだ奴が非常に気になってた。

 

 

「この歯の数。絶対に意味を込めてる気がするんだよね。相対して襲われてる被害者の抜き取られている歯の本数も少なくなっている訳だし」

 

 

 もしかしたら何かの数字、それも順番かもしれない。

 始めの被害者の歯が全部抜き取られている事から、彼等は何かの順位外、ランク外の可能性が高いと推測出来る。確定は出来ないけど、僕や兄さんも狙われる事も有り得る事態だ。無視出来ない。

 僕は思考を巡らせ出来うる限りの情報を兄さんに流す。そうすればきっと、兄さんは動けるはず。

 

 

「…犯人は、並盛には居ないんじゃない?今時になって並盛に住んでいる奴等が兄さんに楯突く方が可笑しいからね。しかも並盛生ばかり狙ってるって事は並盛中に何かの目的を持ってる奴かもしれない。もしかして、相手はその目的にきちんと目星を付けてないんじゃないの?だから予め、狙うターゲットの何かを決めて順番に襲っている…最新の被害者の歯は6本抜き取られていたよね?ならもし後数名でその目的を達成出来るとしたら──残り六人、相手は襲って来るはず。

…でもそれは取り敢えず置いておくよ。犯人の元にさえ行けば済む筈なんだから」

 

 

 僕は犯人の特徴を、頭に構築し、完成させる。

 

 

「恐らく実行犯とは別の黒幕が居る。実行犯はソイツにかなり従順だと思うね。ご丁寧に歯を抜くのは実行犯の趣味だろうけど、それはターゲットにヒントを与える為。残念ながら実行犯にそんな頭は持ち合わせてないから黒幕の命令だ。

その黒幕は、黒曜中の生徒、しかも最近転校してきたばかりの人間だ。なんで黒曜中かと言うと、そもそも近い中学校として黒曜中か緑中の二つが挙げられる。

けど緑中は規律正しいと有名だからね、喧嘩とは無縁だからそもそも論外。黒曜中は物騒な不良の溜まり場だ。可能性が高いのは此処。けど既に在住している黒曜生が並盛に突っ掛かってくる可能性はゼロに等しい。なんせ兄さんの存在をきちんと理解してるから。じゃあ誰かとなると……

……最近時期外れな転校生が三人入学したらしいんだよね。そして、彼等は瞬く間に黒曜中の頂点に立った。

彼等なら兄さんの存在は噂程度だろうし、喧嘩を吹っ掛ける動機は幾らでも出来る筈なんだ。それに調べてみたんだけど、──彼等には全く情報がなかった。可笑しいでしょ?ただの一般人の、家庭の事情すら出てこないなんて」

 

 

 僕は兄さんに、彼等の居場所をメモした紙を渡した。

 兄さんは受け取り、その内容を読み取る。

 

 

「当たってると良いんだけど。因みに、別に兄さんの邪魔はするつもりないけど僕も後から行くから」

 

「──理由は聞いてあげる」

 

 

ギラギラとした目付きに、僕は微笑んだ。

 

 

「駄目だとは言わせない。僕だってウズウズしてるんだ。漸く遊び相手が見つかりそうなのにいっつも兄さんに取られちゃうから必死に押し殺してるんだよ?大丈夫、見るだけだから。横取りは、しない」

 

 

僕の瞳に隠された爛々とした光に、兄さんは小さく目を見開かせて、はぁ、と息を吐いた。

 

 

「…なんで後からなの?」

 

「役員達が入院している間の書類を纏めてから病院に持ってくからだよ。入院してるから仕事が出来ないってのは風紀には通じないからね」

 

「そう。確かにそんな言い訳は僕には通じないね」

 

 

 兄さんが薄く笑い、僕も目を細め笑う。

 無事に兄さんの許しが出た事で、僕の内心はかなり昂っていた。だって久し振りなんだ。

 “ガラクタ”とは違う、ちゃんとした相手が現れるなんて。

 

 

(あぁ、違った。別に僕と争うんじゃなかった)

 

 

 あくまで兄さんが倒す。

 ──けれどそこに、僕が引く理由なんて、存在してないよね?

 

 

「それじゃあ兄さん、気をつけてね。もしかしたら常識が通用しない相手かもしれないからさ」

 

「裕弥が来る前に終わらせてくるよ。けど、手加減はしないから、裕弥はガッカリするかもね」

 

「兄さんの好きな様にしてよ。でも一応喋れる形には残して欲しいなぁ」

 

「覚えてたらね」

 

 

 トンファーをしっかり確認した後、兄さんはひらりと手を振り応接室から出て行った。

 

 

「やだなぁ。僕の意図には気付かなくて良いのに」

 

 

バレちゃった、と苦笑して、僕は早速病院に連絡して、書類を纏め抱えてから応接室を後にした。

 

 

 

 





兄は戦闘狂。弟は頭脳狂。
なかなかよい立ち位置でしょう?…そうでもない?

この話長ゼリフ多いので、興味ある方はじっくり読んでいただければなと思います。ではでは!
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