病院に着き、風紀委員の病室を訪ね各々の仕事を渡し終わった後に、僕はすぐにでも黒曜センター…黒幕のアジトに向かおうとして、ふと足を止めた。
(アレは…確か兄さんが目をつけてる奴がいる馬鹿集団、じゃなかった。沢田綱吉一行か)
何故か力んでいる様子の沢田綱吉に、不良児獄寺隼人、野球部山本武、その他色々がなんか言ってる。
当然僕には関係のない奴等だけど、そういえば、とある時面白そうに話した兄さんの言葉を思い出す。
《彼等って大抵厄介事の渦中に居るよね》
もしかして、と僕は奴等に近付き声を掛けた。
「ねぇ。そこで何してるの」
「!!、ぇっ!?雲雀さん!?」
「なんで野郎がこんな所に…!!」
「ん?雲雀…?」
あ、これは兄さんと出会ったな。
恐らく僕と話した後に会って…彼等は3年の笹川了平と仲が良い筈だから、ソレが病院送りにされた事でも兄さんから教えられて此処に揃ってるって感じか。
結構気に掛けてる存在に兄さんって甘いよね。
まぁそんな事は置いといて、僕は淡々と教える。
「残念だけど、兄さんじゃないよ。僕は君達と同じ学年の雲雀裕弥。それで、何してるの?」
「うぇっ!?雲雀さんじゃない!?でも雲雀って…ま、待って、もしかして、弟さんとか…?」
のろのろと…こういうの嫌いな人種だ。
「兄さんって言ってる時点で気付くべきでしょ。そもそも格好からして違う点なんて幾つも解る事なのにいちいち指摘されても迷惑。それで。僕は何してるのって聞いてるんだけどいい加減答えてくれる」
「ッはっはいぃいいっ!!」
「長い」
「っあ、ご、ごめ」
「そんなの要らない。わざとやってるの?」
「ぁあ、ぃやっ、」
「要点」
「うっ」
駄目だ、僕には全く理解出来ない。
兄さんはこういうのを小動物なんて例えるけど、僕にはただのガラクタにしか見えない。まぁ、兄さんと僕の観点は違うから比べるのもあれだけど。
それでももはや興味も失くしたモノに改めて情報を得たいとは思えず、僕はオロオロとする沢田綱吉をただ冷めた瞳で見つめていた。
すると案の定不良児獄寺隼人が突っ掛かってくる。
「おいテメェ!10代目に何突っ掛かってきてんだ!テメェ等は兄弟揃って嫌味しか言えねぇのか!」
「ご、獄寺君!良いって!その、あんまり…」
「いいえ10代目!こんなヤツ俺にはなんてこと無いっすよ!!今すぐぶちのめして──」
僕はその言葉に殺気を放った。
「ぶちのめす?──この僕を?」
「「「「!!!!」」」」
固まる“ガラクタ”共に、僕は無表情のまま目を細めて、グッと拳を握った手を見せる。
「きゃんきゃん吠える事しか能がない忠犬は黙ってくれる?僕に、その安いプライドで勝てるとでも思ってるの?兄さんにさえ軽く沈んだガラクタ風情が僕に何か言う権限はないよ。僕は言った、何してるのかを。ガラクタはただ素直に僕の言葉に返事すればいいの。それとも、まだ僕に何か言えるほど、ガラクタは意志を保っているわけ?」
解剖された物体は、いずれ物言わぬガラクタとなる。そのガラクタは新たに組み立ててもらわないと可動する事も出来ずに、そのまま沈黙を貫くだけ。
でも可哀想とも思わない。だってそれは価値なんか無くて、元あった存在さえ壊された、無意味なモノだから。例え必要だと言われてもそれは、使い捨ての材料に、又は寄り集めの物に使われるだけ。
“ガラクタ”は、拾われなければただの“屑”だ。
ガラクタ…駄犬は言葉一つ出せないらしく、仕方が無いから僕は殺気を仕舞い、拳を降ろした。
「君等のせいで大幅に時間が遅れたよ。もう適当でもいいからさ、答えて。そこで何してるの?」
「っこ、黒曜ランドに行くかを話してたんだ…!」
「──さっさと言ってよソレを」
本当に無駄な時間を過ごした。
僕は心底疲れたと肩を竦めて、投げやりで伝える。
「そこ、僕も行く予定なんだよね」
「え!?ど、どうして?」
「並盛生襲撃事件の犯人の居所だと推測してるから。確定はしてないけどほぼ確信に近い。僕は風紀委員として向かうつもりだけど、君等はなんで?」
これは素朴な疑問。本当はかなり推測は出来てるんだけど、一応本人達から聞いておかないとね。
「あ、あーと…、待ってる人が居るから、かな?」
「待ち人?黒曜ランドは既に廃墟と化している所なのに、君等ってだいぶ物好きなんだね」
「えーと、あははは…」
褒めてないんだけど。
まぁ、本音を教える気が無いのは十分に承知した訳だし、そろそろ兄さんの後を追わないと。
「そ。僕には関係ないけど、もう兄さんが暴れてる頃だから来るなら注意しなよ。僕は先に行くから」
「!あ、待って!」
「なに」
迷惑オーラ全開にして振り返ると、沢田綱吉はビクビクしながら困り顔で恐る恐る僕に告げる。
「あの、良かったら俺達と行かない…ですか?」
「…なんで?後何その口調。変な敬語使わないで」
「ご、ごめん。…その、ほら!どうせ同じ場所に行くなら、頼りになりそうな雲雀、君に居て貰った方が俺としては心強いかなぁ〜…って…」
段々萎んでいく言葉に僕はじっと見詰める。
…嘘って訳では無い。けど本音でもない、か。
僕からしたらツッコミ所はあり過ぎるんだけど、何より一番言いたい事は、
「一応これが初会話なのに、図々しいよね君って」
「うっ」
彼って一応、此奴等の中でのリーダーになってるんじゃないの?存在が小さ過ぎるでしょ。
「そもそも、なんで僕が頼りになる存在にならないといけないの?僕は一人で充分だよ。兄さんの様子だって見ないといけないのに君等と更にちんたらしてたら日が暮れるじゃない。それに、見るからに頭の悪そうな奴と居ると僕にまで影響してきそうで我慢ならない。
──まさかソレを狙ってるわけ?」
獄寺隼人の事を安直に指せば、沢田綱吉は青ざめ、慌てて首が取れそうなくらいにブンブン振った。
「とっとんでもない!!引き留めてごめん!」
「本当にね。僕はもう行くから」
「あっ、うん!」
くるりと身を翻して、僕はやっと彼等から離れる事が出来た。話が長くなったのは僕のせいでもあるけど、安易に彼等が馬鹿だったのが痛い。深く溜息をつきながら、もういいか、とチラリと彼等──の近くに居た赤ん坊を覗き見た。
(わぁ、ガッツリ目が合っちゃった)
さっさと視線を外せば、赤ん坊がニヤリと笑った気がした。それに自然と口許が引き攣る。
…あー、流石は兄さんが認めただけあるよ、あの赤ん坊。全く隙がないし、何より僕の心を読もうとしてた。それを防ぐのがあまりに面倒だったから、お陰で余計に沢田綱吉への当たりが強くなってしまったけど。
まぁ、途中ムッとしてたから恐らく読心術は使えなかったんだろうね。我慢は報われた。
何故かワイルドな赤ん坊が何気なく彼等の輪に居た時、僕は兄さんの獲物にちょっかいを掛けるなとは言われてないから反応しても良かったんだけど…何だか厄介事に巻き込まれそうな予感がしたから、話し掛ける事も殺気をぶつける事も僕はしてない。
(それに、兄さんの方が僕よりも強いからね。きっとあの赤ん坊は、僕に切り替えることは、ない)
取り敢えず、彼等に先を越されない様に、兄さんに黒幕を倒されない様に、僕は早足を意識した。
なんだコイツ。と思ったそこのあなた。
私も現実に居たら絶対に関わりたくないと思いますね。
綱吉視点を入れるととても長いので、次回に回します。
ではでは!