風紀委員長の弟にご用心   作:後生さん

7 / 11
六道骸視点

 

骸 side

 

 

 僕は非常にこの男に興味を持っていた。

 並盛の秩序である最強と謳われる雲雀恭弥の実の弟であり、数多の噂が絶えない謎の人物でもあるこの男に。

 

 …実際に目にした時は驚きました。

 殆ど変わる事のない無表情。兄と違う義務的な淡々とした口調。己を押し付けない小さなプライド。好戦的ではないかと思えば拳スタイルの構えを見せる始末。

 

 兄とは正反対かと思えば似ている部分が有り過ぎるこの不思議な男に、僕は呑み込まれそうになった。

 

 

「つまり、貴方は雲雀恭弥ですら利用していると」

 

「利用なんて出来る訳ないじゃない。成り行きだよ。僕が兄さんと同じになってしまったら、困るのは僕だ。だからこそ兄さんに先頭を切って貰うわけ」

 

 

 淡々と喋る雲雀裕弥を見て、僕は笑む。

 …貴方は何処までも理屈を捏ね回す人間の様だ。

 

 

「ですが結果論として、貴方は雲雀恭弥を転がしてしまっている。貴方は貴方自身の望みを叶える為に、見事に言霊を使って雲雀恭弥を動かしていた。雲雀恭弥が此処に辿り着いた末に敗れる事は、分かっていたのでしょう?貴方の異常なまでの冷静さは、僕が普通では無い事を察していたからこそではないですか?

──雲雀裕弥。貴方は誰よりも自分の為だけに行動する人間だ。僕が、保証しましょう」

 

 

 立ち上がり、微笑みながら雲雀裕弥に近付いていく。

 彼は僅かに眉を顰めると、構えていた拳を降ろした。どうやら僕と戦う気は無くなったようだ。

 

 

「兄の代行はしなくても良いんですか?」

 

「…あんたに戦う気がないんだから仕方ないじゃない。それに、兄さんはまだ生きてるみたいだからね。僕はあんたとの会話に気を遣う事にするよ」

 

 

 雲雀恭弥が生きている。

 まさか、アレが雲雀恭弥の幻覚だと言う事に気付いたのか。僕は驚きながら、首を傾げて問うた。

 

 

「雲雀恭弥は虫の息ですよ?」

 

「そうみたいだね」

 

「放って置いても構わないと?」

 

「構わない。だって彼処に転がっているのは──完璧なまでに死にかけの風紀委員長でしかないから」

 

 

 違う?と首を傾げて見せる雲雀裕弥に、僕は今度こそわかり易く目を瞬かせて驚いた。

 

 

「…本当に貴方は…そのずば抜けた洞察力に愕然としますよ。えぇ、アレは幻術です。雲雀恭弥を模した幻覚。本物の雲雀恭弥は別の部屋に居ますよ」

 

 

そう言って雲雀恭弥の幻術を解くと、雲雀裕弥は何も無くなった空間に驚いた様に目を見開いた。

 

 

「幻覚…?意図的に相手に見せる事が可能なの?」

 

「僕は幻術師なのですよ。高度な幻術であればある程、現実味が増し泥沼の様に抜け出せなくなる。貴方には奇しくも通じませんでしたが。因みに、雲雀恭弥を倒した際にも幻覚を用いて瞬殺しましたよ」

 

「幻術師……」

 

 

 雲雀恭弥の事は無視ですか。

 …いや、納得した上で思考を置き換えてますね。それ程に、幻術という存在を知り得ていなかった様だ。裏社会に居そうな人物なのに、本当にただの一般人なのは驚きだ。

 

 

「話なら座ってしませんか?不思議だ、貴方となら分かり合えそうな気がします」

 

「否定はしない」

 

 

 雲雀恭弥を幼くした容姿だと言うのに、こうも人格が違うと馴れ合えるんですね。

 薄く笑いながら雲雀裕弥をソファーに座らせる。そして僕も隣に座ってから、ふいに思い出した。

 

 

「そういえば自己紹介をしていませんでした。僕は、六道骸と言います。因みにさっきの子供は、フゥ太。裏社会では有名な情報屋ですよ」

 

「情報屋、ね。確かに便利だよね、彼の能力。利用しているのは分かったけど、どうやったの?」

 

「質問に対して少し抵抗されたので、マインドコントロールで操っています。今は乗っ取ってはいないので、幾らか自我は残っていますね」

 

 

 人を操るという方法を軽く話していると言うのに、彼に感情の乱れはない。それどころか、僕の方法を当然だと受け止めている様だった。

 …末恐ろしいと感じる僕に、不信気に彼は見詰めてくる。

 

 

「ふぅん。少し?」

 

「クフフ。えぇ、少し」

 

 

 疑っているというか、まぁ嘘を吐いたと察しられた様だ。

 それ以上追及されずに、彼と会話を続ける。

 

 

「それで、特に争う理由も無くなった訳ですが…隠す必要もないですし僕の目的をお話しましょうか」

 

「正直言って興味ないんだけど。でもあんたがここまでの行動を起こす理由は知りたい」

 

 

 耳を傾けてくれる様子に微笑んだ。

 知り合って間もないと言うのに彼は身元不明な僕にかなりの好奇心を抱いてくれたようだ。恐らく、彼の性格や理想に、僕が当て嵌っているのだと思う。兄である雲雀恭弥が嫌う僕を、弟である雲雀裕弥は全面的に馴れ合いたいと近寄ってくる。もし雲雀裕弥が雲雀恭弥を真っ直ぐに見習っていたなら、僕は個人に目を向ける事すら無かったでしょうね。

 

 だから…そうですね。この男、雲雀裕弥にだけは、僕は少しだけ、本音で語る事にしたのです。

 

 

「──僕はこの世界において、何よりもどんなモノよりも、“マフィア”という存在を憎んでいます。己のファミリーの為ならば他は犠牲となっても厭わないという、何処までも執念深く卑しく欲深い冷酷な人間共が集う腐ったマフィアが、酷く醜く穢らわしい愚の塊にしか見え無い程に、黒く渦巻く強い憎悪が僕の中に根付いているんです。血みどろに染まった人生で、僕は誓いました。腐り落ちたマフィアの殲滅を。そして、マフィアによって穢れてしまった世界に終焉を。僕は、世界に争いの種を蒔くと決めたのです。

…その為の手段として、僕はある人物に狙いを定めました。雲雀裕弥、解りますか?」

 

 

 長い話にも雲雀裕弥は欠伸をする事も無く頷く。

 

 

「──沢田綱吉。…もう情報は入ってるの?」

 

「クフフ、部下のお蔭でね。実際に会った事はありませんが、沢田綱吉、彼は不幸にもボンゴレX世候補者として選ばれていたのですよ。悪気は全くありませんが、マフィア界において1、2を争うボンゴレファミリーの次期首領を乗っ取れば、簡単に世界を混沌に陥れる事が出来ると踏まえたのです。…貴方から見ればくだらなく思えるでしょう?僕の目的は、何処までも私的に計画したモノですから」

 

 

 微笑み、さてどう返してくるのかと思っていれば、彼は意外な反応を見してくれた。

 

 

「くだらないも何も、僕はあんたの想像する未来が訪れた時でしか言える事は何もないよ。…それに、僕はあんたの思考の末の行動に、疑問点は一つも浮かばないんだ。どう捉えるかは任せるけど、この世界で、私的理由で行動してない奴は、居ない」

 

「………貴方は…」

 

 

 僕の瞳をじっと見詰める雲雀裕弥に、僕は小さく息を呑んだ。それは、その言葉は、僕の存在意義を肯定しているのだと、自ら認めた様なモノだからだ。

 …僕は少し戸惑った表情になり、思わずさっと彼から視線を背けるとわかり易く肩を竦めた。

 

 

「貴方って、本当に勿体無い人間性してますよね」

 

「ちょっとそれどういう意味?」

 

「…まぁ、貴方が僕の意見で変わる事はないでしょうし、僕はそのままでも構わないんですけどね」

 

「自問自答しないでくれる」

 

 

 不機嫌そうな声を出す雲雀裕弥に、僕は苦笑で流した。

 きっと自分で気付く事はないでしょうね、貴方が認めた者に対しては甘い対応を下している事に。そして、それを知る人間も少ないでしょうね。貴方の認める者の判断基準は、とんでもなく高いですから。

 それが本当に、勿体無いと感じたんです。

 

 

「雲雀裕弥。僕は貴方を好きになったみたいです」

 

「ふぅん…」

 

「距離を取ろうとしないで下さい。交友関係として、貴方とは馴れ合えると言ってるんです」

 

 

 そう告げれば、少し驚いた後に肩を竦められた。

 

 

「…南国果実が。つくづく誤解されそうな言い回しばかりしてるってちゃんと自覚してる?」

 

「何ですか南国果実って。あと大丈夫か此奴みたいな視線辞めてください。自覚はしてますよ」

 

「自覚済みのパイナップル(南国果実)とか草」

 

「無表情で草生やさないでください。というか可笑しいですね、僕にはパイナップルとしか聞こえないんですけどちゃんと漢字使ってます?」

 

「日本人なんだから当然でしょ、パイナップル(南国果実)はハワイにでも住んでたの?」

 

「故郷はイタリアですよ。それと、やはり副声音にパイナップルが聞こえるんですが?」

 

「疲れてるんだよパイナポー」

 

「今馴れ馴れしくはっきりと確実に言われたんですが。…貴方、僕で遊びだしましたね」

 

 

 半目で雲雀裕弥に目を向けると、彼はニッコリと笑った。

 なるほど。こういう時にも笑顔を浮かばすんですね。彼を知るにはやはり時間が掛かる様だ。

 

 僕の方が歳上であるのに弄ばれてる感がして、全くと溜息を吐いた。見ると彼はもう無表情になっていて、早速また飽きる事無く会話を続け出した。

 

 

 




気の所為だよパイナポー。
パイナポーとオリ主は気が合ったようだ。兄ェ…。

如何でしたか?ここ何気に凝ってるんですよ。
骸の心情を頑張って解析してた時期が私にもありました。

感想・評価・ツッコミありましたら助かります。
ではでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。