やはり沢田綱吉が事の元凶だと確実になり、更にあの軟弱さで、有名所のマフィアファミリーの次期首領候補者だという事実に僕は内心耳を疑った。
確かにあのガラクタ…駄犬は10代目と頻りに彼を呼んでいたが、まさかつるんでいる彼等全員がファミリーの一員な事にも驚く。世間とは意外にも身近で知るモノなんだと溜息を吐きながら、僕は南国果実…いや、骸に教えられた場所へと足を進ませていた。
実は先程、沢田一行が黒曜ランドへと乗り込んで来たと骸の部下から報告があった。当然だけど、その前に僕に警戒心を抱いた部下を制して、骸は愉しげに偵察にだと、僕から見ればがっつりと沢田綱吉に会いに行くと言って、部下を連れていく去り際に兄さんの場所を教えてくれたのだ。
元々その目的で来たのだから有難かったけど、どうせならもう少し話していたかったな。
「…と、此処かな」
目的地に辿り着き、閉められている扉を開けた。
するとそこには骸の言う通り、かなりの傷を負った兄さんが壁に寄り掛かりながら座っていて…それは勿論分かっていたんだけど、もう一つ、何故か肩には小さな小鳥が並盛中の校歌を下手くそに歌う姿がある。
想定もしていなかった光景に、僕は呆然としていて、暫くその様子を眺めてしまっていた。
「──裕弥。随分と遅かったね」
「!…あぁ、色々とね。…その鳥はなに?」
兄さんの声に一瞬遅れ、肩を竦めながら近付くと、ああこれ?と小鳥を横目で兄さんは見つめる。
「勝手に引っ付いて来たんだ。仕方が無いから飼う事にしたんだよ。名前はまだ決めてないけど」
「その仕方が無い要素が分からないんだけど……もう一つ聞いておくんだけど、それ何科の鳥なの?」
「さぁ?喋れるみたいだから言葉を教えるつもり」
「言葉より先に校歌教えようとしてるよね」
この時々よく分からないテンションになってる兄さんに未だに慣れないんだけど、僕は悪くないよね。
取り敢えず、兄さんの傷を確認だな。血もだいぶ流してるから普通貧血とか色々なってる筈なのに、兄さんのタフさは異常だからね。本人の気合でどうにかなる身体ってどんだけだよとしか言えない。
「兄さん、ちゃんと意識あるみたいだけど、実の所傷の具合はどうなの」
「大した事ないよ」
「──僕が知らないとでも思ってるの?」
ジトリと目を細めると兄さんは片眉を上げる。僕の態度に、僕が骸と会った事が分かったみたいだ。
「…横取りしたわけ」
「話しただけだよ。今もピンピンしてる」
どうやら治療される気はないようで、仕方が無いからこの事件が終結したら真っ先に病院に送り付けてやろうと思う。そして嫌味を言いまくる事に決めた。
「教えてあげようか?あの人の戦闘スタイル」
「要らない。僕が自分で片をつけるから。…それにしても、随分と仲が良さそうに聞こえるんだけど」
複雑そうな、それでいて珍しいと言う様な視線に、僕は薄く微笑んだ。
「なかなか有意義な時間を過ごせたかもね。どうせなら普通に出会いたかった」
黒曜中…は、結局兄さんの管轄外だから会う機会なんて訪れなさそうだったから良しとするけど。
今頃沢田綱吉の性格諸々に驚いてるだろう骸を思う僕に、兄さんは目を見開いて驚いていた。
「…裕弥の相手が務まる人間だとはね」
「その言い方だと、僕が手に負えない人間みたいなんだけど。言っとくけど、兄さんに言えた義理じゃないから。僕と似た様な感じでしょ」
「裕弥が認めた、ね……尚更噛み殺しがいがある」
「出たよ兄さんワールド。あとスルーしないで」
ギラギラと猛る目付きに、僕は溜息を吐いた。
相手が幻術師である以上、再戦しても苦戦を強いられるのは確実。それに、今の兄さんには弱点がある。それをどうにかしないと一撃も当てられない事を分かっているのか。
僕はまた半目で見つめた。
「…兄さんは何で倒されたの?同じ二の舞いを喰らうつもり?その対策は突破だけじゃ通じないよ」
「…僕に意見を言うのなんて裕弥くらいだよ」
「当然でしょ。僕が何も言えない人間だったら、兄さんは迷い無く切り捨てる事を分かってるからね」
そう肩を竦めれば、兄さんは目を細めた。
その様子に見つめ返せば、ふぅ、と目を瞑る。
「…彼の前に立った時に考えるよ。取り敢えず一撃は入れないと気が済まない」
「…そう。僕にもこれといった対策は思いつかないしね。兄さんがそうしたいなら聞くよ」
立ち上がった兄さんに合わせて僕も動く。そうすると、肩に居た小鳥がパタパタと扉の方へと飛んで行く。兄さんも同様に扉に向かい、僕もその背を追いながらも、少しだけ気になっていた。
(…何を言おうとしてたんだろう)
さっきの兄さんの変な様子には疑問が浮かんだ。
もしかして、僕の言った事が引っ掛かった?…いや、まさかね。兄さんは、そんな人間じゃない。
部屋から出ると、小鳥は並盛中の校歌を歌いながら何処かに飛んでいく。対して気にせず突き進んでいくと、廃墟内が軽く揺れる程の爆発音が響いた。
「さっきから爆発音が響いて煩いんだけど」
「あぁ…多分沢田綱吉達だろうね。兄さんが寝てる間に色々と起きたから。鉢合うかもよ」
「小動物が?…ふぅん。度胸はあるみたいだ」
会話を交わしながら骸の元へ向かっていると、そう時間の経たない内に、小鳥が地味に上手くなった校歌を歌いながら爆発音の元凶を連れ現れた。
「ミードリタナービクーナーミーモーリーノー」
「──っハァッ!ハッ…!っテメェ等…っ!!」
「──……君か」
「雲雀、ッぐ、此処に居たのかよ…ッは、!」
想像はしてたけど。よりにもよってガラクタ…面倒だと感じたけど少し様子が可笑しい事に気付いた。
恐らく敵から与えられた傷とは別の辛そうな表情に、まさか体調でも崩してるのかと目を瞬かせる。
「獄寺隼人、随分と痛めつけられたみたいだね」
「っ、ハッ…これは、違ぇよ…!」
「どうでもいいけど、まさか僕等を探してたの?」
「!…ぁあ、」
僕の視線に素直に頷く。
驚いた、どうやら僕と出会った前回の出来事が少しは効いた様だ。そうでなくとも、プライドを翳すつもりはないらしい。兄さんもどうやら変化に気付いた様で、驚きながらもその目は獄寺隼人の背後にある。
どうやら骸と殺り合うよりも先に、アレ等を相手にしたいらしい。それに気付き、僕は肩を竦め獄寺隼人に聞いた。
「敵に手こずってる様なら兄さんに分けてあげてくれない?君にとって悪い話じゃないでしょ?」
「、…ケ、頼む必要がなくて、安心したぜ…、」
「へぇ…君、本当に獄寺隼人?」
「んだよ…っ!嫌味言ってんのか、ッ!」
ギッと睨んでくる瞳に、薄く笑みを浮かべた。
僕は感情的な馬鹿は大嫌いだけど、理性ある馬鹿は嫌いじゃない。反抗心多性な所を見てこれは獄寺隼人だと確信し、追い掛けてくる二つの気配に視線を向けた。
そいつ等は僕等を見ると目を瞬かせる。
素直に骸を褒める弟に、お兄ちゃんムムム。
獄寺は一歩進歩したもよう。
果たして現れたのは……?
ではでは!