感想、評価、誤字報告。いつもありがとうございます。
いつも誤字があってすみません。これからも防げないと思われます。
秋といえば何を浮かべるか。運動の秋。食欲の秋。勉強の秋。秋さえつけとけば風情がある気がしてくるのは日本語の魔力か。日本語ってここまで単純だっただろうか。「漢字は力強く、ひらがなは柔らかい印象を与える」とされているように、文字には力があると言えるのだろう。
漢字はともかくとして、秋に対する印象は何か。春ならば出会いと別れの季節。夏は開放的で、冬は幻想的か。それでは秋はどうなのか。秋は葉の色が移りゆく季節。真っ赤に染まる紅葉や黄金色のイチョウ。どこか儚げな印象がある。
というよりも、秋ほど自然環境に目が移りやすいのではないだろうか。紅葉やイチョウもそうだが、山の幸は秋に実る。地上だけでなく空でも、秋となれば中秋の名月こと十五夜だ。十五夜に月見をする人も多い。この時ばかりは月に代わってお仕置きする例のあの人も団子食べてる。名前を言ってはいけないあの人も喉に詰まらせる。
さて、生徒会長こと白銀御行は大の天体好き少年である。将来は天文学の博士になりたいと思っていたぐらい
「月見するぞー!!」
だから理性が弾き飛び、『生徒会長白銀御行』から『夢見る少年白銀御行』にジョブチェンジぐらいする。その変わりように四宮も藤原も戸惑うものの、石上は月見に賛成だった。
「生徒会の任期ももう終わりますからね。無茶できるのも、思い出作れるのもこれが最後でしょうし」
「そう……ですね」
「そういうことなら、私も賛成です! 楽しそうですし! 月見団子も用意しましょう!」
「藤原先輩。太りますよ」
「なんでそんな事言うの!?」
お団子を軽く食べるぐらいなら大丈夫。いや、夜食自体がよくない。そんなやり取りを横目に、四宮は会長席へと目を向ける。こんなに子供っぽい御行を見るのは初めてだ。微笑ましく思える。
「っていない! 会長はどこへ!?」
「あれ? 本当だ、いないですね~。お手洗いでしょうか?」
「その可能性も考えられますが、許可取りに行ってるんじゃないですか? 準備はされてますけど、許可を貰ったとは言ってなかったですし」
「そうですね。許可は降りるでしょうけど、私も一応校長室に行ってみます。2人はここで待っていてください」
「分かりました~。会長が先に戻ってきたら電話しますね」
「ええ。お願いします」
生徒会室から校長室へと向かった四宮だったが、ここに1つ盲点があった。「あの校長が校長室でじっとしてるわけがない」ということである。校内を散策してポケモンを集めている校長だ。授業中でも特に仕事がなければ歩き回っている。
そんなわけで、四宮は無人の校長室を目指しているわけである。
では御行はどこへ行ったのか。これは石上の推測が当たっている。月見をするために、夜間でも学校に出入りできるように許可申請を出しに行っているのだ。問題はその相手。学校の最高責任者は基本的に校長である。幼稚舎から大学まで、それぞれの敷地はそれぞれの長が管轄する。その上に学園全体を纏める学園長がおり、さらにその上に、学園の運営を担う理事会を纏める理事長がいるわけだ。
「月見をしたい。許可をくれ」
「友達に立場を利用される日が来るとは思ってなかった」
御行は光上に連絡を取り、校内に残っていることが判明すると早速その場に訪れていた。もちろん月見をするために。
探しにくい校長より、連絡が取りやすい理事長の息子に許可を求めるほうが楽だ。しかもあの校長と光上は親族。手早く許可を取りたかったら光上に頼む方が断然気が楽であり、あっさりと許可を取れる。
「今夜はきれいに晴れるようでな! 月はもちろんのことだが天体観測も同時にできそうなんだ! これはもうやるしかないだろ!」
「わかったから落ち着け」
「むっ、すまない。ここまで条件のいい日は近年なかったのでな」
「曇ることが多いからな」
いくら光上が理事長の息子とはいえ、許可証類を持ち歩いているわけもない。それらは職員室だったり、校長室だったり、はたまた事務室に置いてあったりする。現在地は図書室の近くで、ここから近いのは職員室だ。だが、いちいち説明するのも面倒があったりする。理事長の息子だろうと、立場を乱用できないようになっているわけで。結局教師に申請しないといけない。
これをショートカットできるのが、校長への電話である。
『モシモシ。どうされましたボーイ』
「生徒会が今夜月見するらしいから、許可証出しといて」
『ホウ。それは実に美シイ事で。青春とはかくあるべきデスな。これぞまさしくワンナイトラブ』
「使い方間違ってるぞ」
わざとなのか天然なのかイマイチ読めない。ひとまず間違ってることだけを指摘しておいて、校長室に戻るようにも言って通話を切った。
「校長室行って許可証貰ってこい」
「すまない。助かった」
「これぐらい構わんけど。夜間の校内は気をつけろよ」
「どういうことだ?」
「正門と生徒会室と屋上の間での最短ルートはセキュリティ外させるけど、それ以外は稼働するから。間違ってそこを通ったら捕まるぞ」
「……肝に銘じておく」
仮に間違えたとして、その後パニックに陥ったら最悪だ。その勢いでセキュリティに引っかかり続けると、ミンチコースになりかねない。それは言っては楽しみに水を差してしまうし、セキュリティのレベルも下げさせる予定だ。
不安なのは藤原だが、そこは御行たちに制御されることを願うしかない。一応自分からも言っておくかと考え、メッセージを入れるのだった。
「そうだったんですか。兄がご迷惑をかけてすみません」
「あはは、迷惑とは思ってないよ。来年はこうもいかないだろうし」
「……そうですね」
御行から月見をすると聞いた圭は、その旨を父親にもそのまま伝える。晩御飯をどうするかとか、些細なことでも重要だったりするのだ。しかし仕事から早く帰ってきていた父。既に3人分の準備をしてしまっていた。御行の分が余ってしまう。
そこで白羽の矢が立ったのが光上だ。ちゃっかり連絡先を交換していた父に圭は驚愕し、パニックになっている間に話が進む。せっかくのお誘いだからと光上が承諾して晩御飯を食べに来ていた。
「うちの御行とは仲良くしてくれているんだってね」
「そうですね。クラスは違いますけど」
「ふむ。同じクラスだったら御行の様子も聞けたんだがな……」
「生徒会で書記をしている子なら同じクラスですよ」
「あー。圭が千花姉ぇって呼んでる巨乳の子ね」
「パパ他人の娘をなんて覚え方してるの!」
圭の肩パンが父親を襲う。食事中ではあったが、実の親の口からあんな発言が出たのだ。これは不可抗力である。原因はどう考えても父親にあるのだから。
「そちらさんにも一度はご挨拶しておきたいところだが……」
「しなくていいから!」
「しかしだな。娘が何度も泊まりに行ってるんだ。一言ぐらい挨拶をするのが常識だろう」
「よくその口で常識を語れたね!」
「ところで圭。彼の前だがいいのか?」
「ふあっ……! ぅぅっ……!!」
父親に完全にペースを崩された。家の中というのも要因だ。いつも気を抜いている家で、ボロを出さずにい続けろという方が無理な話。せめて2人とかなら耐えられたが、
白銀兄妹は、いっそ父親という存在自体誰にも知られたくないとすら思っているのだが。光上にはもう知られてる。それなら、極力変なことを言わせないように立ち回るしかない。しかし家での自分の様子を見せるのは恥ずかしい。
その恥ずかしい姿を、たった今完全に光上に晒してしまった。
羞恥に震える彼女は、今すぐにでも部屋に閉じこもりたかった。しかし食事中であることと、光上が来客していることもありそれはできない。目尻に涙を溜めながら必死に堪えていた。
「俺はむしろ、違った一面を知れてよかったと思ってるよ」
「……そう言われても……」
「親子で自然に接せられるのは良いことだと思うから。仲がいい証だよ」
「ぁっ……」
光上の両親はフランスにいる。それは彼が初等部に入学する年からそうだった。夏休みはフランスに滞在するものの、こうした何気ない日常での親子関係は尊く見える。彼は父子家庭であっても、白銀家が純粋に良い家族だと思った。
「ハッ! それなら俺をパパと呼ぶか」
「名案思いついたみたいな調子で何言ってるの!?」
「パパはちょっと……。せめてお義父さんですかね」
「光上さん乗らないでください! この人を調子に乗らせないで!」
「気が合いそうだな晶くん。せっかくだ、圭の指のサイズを教えておこう」
「何を教えようとしてるの!? というかなんで知ってるの! キモいし!!」
「あははは、楽しい家族だね」
「もー! 私は疲れますよ……」
ぷくっと頬を膨らませ、光上からも父親からも視線を逸した。圭はこれ以上振り回されたくないとして、黙々と食事を取り始める。今は口煩い兄もいない。晩御飯と一緒にジュースを飲んでも文句を言われない。
箸を進めながらチラッと光上の様子を見る。今も父親との会話を続けているが、さっきまでのようなおかしな会話はない。なんなら漫画の話をしていて、すっかり打ち解けていた。光上がここにいることへの違和感があまり仕事をしない。あっさりとこの場に溶け込んでいる。
圭はそれに安心した。もし居心地を悪く感じられたらと、嫌な想像もしていたから。
本当は、この状態がある意味怖いものだというのに。
「今頃御行は月見を楽しんでいるか。その程度の息抜きは必要だな」
「あれが骨の髄にまで染み込んでたら……、社会人になった時が心配ですね」
「そうかな? 御行は愚かなことはしない。必要だから全力でやる。そこを分けられる見識は持っているさ」
「……意外と見てらっしゃる」
「さては失礼な認識をしていたな?」
「いえいえ」
愉快な父親だと思いはするも、残念な父親だとは思っていなかった。単純に、聞いている限りでは、子への理解をどこまで持っているか推測できていなかっただけだ。おそらく、実の子である御行にも、この場にいる圭にも、想像できないほどの理解をこの父親は持っている。
不思議と感銘を受けた晩御飯の後。せっかくの名月なのだからと光上と圭は外に出ていた。外と言っても家から近い公園。2人はそこにあるベンチに並んで腰掛けていた。
周囲の街明かりこそあるが、月を見る程度なら申し分ない。星も有名な星座あたりならすぐに発見できる程度に見えている。4等星あたりから怪しそうだ。
「見ようと思えば案外見られるものですね」
「星座の星は明るいものばかりだからね」
「夜空いっぱいの星は、都会から離れないと駄目ですよね」
「うん。でも、見てみたいね。北極圏だとオーロラとか見られるし」
「オーロラですか。光上さんはしっかり防寒対策しないと駄目ですよ?」
「はは、それもそうだ」
星空を眺め、あまり詳しくない天体の知識をお互いに出しながら星座を見つけていく。お互いに
光上はそれに気づかず宇宙を見つめ。先に気づいた圭は、早まる鼓動を感じながら意を決した。
「白銀さん?」
「こ、こうしたら……温かい……ですよね?」
光上の右腕を絡める。両手で抱きしめるように絡め、自ずと体同士もぴたっとくっつく。顔から火が出るほど熱い。段々と秋も深まっていっているものの、この夜風では冷めることもなさそうだ。
「そう、だね」
なんとか言葉を紡いだ。圭が大胆なことをするとは思っていなかったため、思考が止まりかけていた。
右腕はピクリとも動かせない。それでも、手は動かせる。
そっと彼女の左手と絡めた。これには彼女も目を丸める。
「こうしたら、もう少し温まるかな?」
「……はい」
せっかくの名月だったのだが、お互いにそれを見る余裕をなくした。
それから10分は経過した頃。圭は光上にお願いがあったことを思い出した。彼女にとっては大事なお願い。
いくら光上でも、それを受けてくれるかは怪しいお願い。
彼女は、照れて逸らしそうになる視線をなんとか堪えながら、光上の目を真っ直ぐ見つめる。
「生徒会……終わりますよね」
「うん。中等部も同じ時期だったね」
「はい。……それで……、私は内部進学なので、来期も生徒会に入ります」
「そっか。決めてるんだ?」
「お誘いを頂いてて……。内申にも加点されますから」
「いい判断だと思うよ」
悪くない判断だ。秀知院学園での生徒会経験は、他の学校とは全く異なる。はっきり言って箔が付く。中等部であれ、2期連続ともなればそれは確かな実力の裏付けだ。圭はその能力だけでなく、人気もあって候補者たちから声をかけられている。
要は、誰が生徒会長になろうと、圭が生徒会に入るのは確定だ。ちなみに、「生徒会長になったらデート権確保」という、圭本人が知らない案件もあったりする。
それはさておき、この話は圭のお願いのための前置きだ。
圭の淡い期待は、今であろうと消えてはいない。
「光上さんも、来期の生徒会に入ってください……!」
「え……。ごめん、それは──」
「私の我儘なのはわかってます! 光上さんのポリシーにそぐわないことも! ですが……それでも……! わたしは……光上さんともっと一緒にいたい……!」
「白銀さん……」
「お互いに生徒会に入ったら……、放課後も会えるから……だから……!」
ドキドキなお月見からも日が経ったある日。
光上は放課後に校舎内に残っていた。それは例のごとく早坂の仕事関係……ではなく、定期的な図書館での調べ物でもない。
彼は部活に属さない。委員会にも属さない。任期が終わった生徒会にも属していなかった。
彼は常に宙ぶらりんの状態で。だからこそ全方面に均等に目が行き届く。
しかし、これによって去年のこの時期は身動きが取れなかった。
裏の攻防がある
御行の大立ち回りは何も問題ない。本人の苦労がやたらと大変そうだっただけだ。問題はその裏。御行すら知らない裏工作。それを光上は見逃すしかなかった。
なにせこの期間は特別。
もしくは──選挙管理委員会である。
管理委員会もまた「それを潰せるかは管理委員会の実力次第」とされる。つまり、ここの影響力が弱いほど、裏での攻防がエスカレートするわけだ。
「君が来てくれたことに感謝するよ。光上くん」
「いえ。今回は見逃せないだけですから」
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