クレしん小説です。
思い付いたから作ってみました。
よろしけば読んでください。

1 / 1
今回は二人称の視点で書いてみました。



ひろしの夢

『いってきます。』

『いってらっしゃい、父ちゃん。』

『たいたい。』

『いってらっしゃい、貴方。』

いつもの日常。

みさえ、しんのすけ、ひまわりの挨拶を受け俺は家を後にする。

今日も家族の為に頑張ることを決意し、仕事に向かった。

 

『いってきます。…みさえ。』

いつもの日常。

誰もいない、家に挨拶をした俺は家を後にする。 

食べていくために頑張ることを決意し、仕事に向かった。

 

双葉商事に着いた俺は、思考を仕事モードに切り替える。

今の俺は係長の野原ひろしだ。

役職をもった社員として、下の社員を引っ張っていかなければならない。

給料はみさえから安いと言われるが、それでも家族を養うには十分な金額だ。

家族を守るため今日も頑張らなくてはな。

 

双葉工場に着いた俺は、思考を仕事モードに切り替える。

今の俺は工員の野原ひろしだ。

工場に勤める工員として、社会の歯車にならなければならない。

給料は安い。みさえが給与明細を見たらなんというのだろうか?

それでも食べて行くために今日も頑張らなくてはな。

 

仕事が終わり今日もクタクタだった。電車に乗り、最寄り駅に向かう。

毎日のことだが、いまだに満員電車は慣れない。

そうしてるうちに最寄り駅に降りた俺は、家へと歩を進める。

夜闇に包まれた道を歩く距離は、朝よりも遠く感じて、正直とても辛い。

疲れた体に鞭を打ちながら、ようやく着いた我が家の扉をあける。

『ただいま。』

『おかえりなさい、貴方。』

『おかえり、父ちゃん。』

『たーい。』

この瞬間はいつも心地よく感じる。

家族に迎えられた俺は、家へと入っていった。

 

仕事が終わり今日もクタクタだった。電車に乗り、最寄り駅に向かう。

人の少ない時間に乗り、座席に座るのはもう慣れたものである。

夕日を受けた道を歩く距離は、最初は辛く感じたものだが、今は何も感じない。

いつものように帰り、我が家の扉をあける。

『ただいま。』

この瞬間はいつも虚しさを覚える。

誰もいない家にただいまを言った俺は、家へと入っていった。

 

しんのすけとひまわりを風呂に入れるのは俺の役目だった。

いくら子供と言えど3人も入れば狭く感じるものだが苦痛に思ったことはない。

むしろ、毎日の楽しみになっており、一人で入るよりも心が癒されるのだ。

風呂に入ったあとは、みさえの作った料理を家族で食べる。

とても暖かく感じて、ついついビールがすすんでしまう。

ああ、幸せだなぁ…

 

湯を貯めたあと、俺は風呂に入った。

一人が足を伸ばせるくらいの大きさなのに何故か広く感じて…

久々に浴槽に浸かったのだが、面倒だっただけだった。

いつも通り、シャワーにするべきだった。

風呂を出た俺は、コンビニ弁当をチンして食べる。

温めたはずの弁当は冷たく感じて、せっかく買ったビールも手が伸びなかった。

嗚呼、虚しいな。

 

食事が終わり少し経った後、俺はみさえに悩みを打ち明けることに決めた。

言ったところでどうにかなるものではないのだが、溜め込んでいても苦しくなるのだ。

『みさえ、話があるんだ。』

俺はみさえに声を掛けた。

 

食事が終わり少し経った後、俺はみさえに最近の出来事を打ち明けることに決めた。

言ったところでどうにかなるものではないのだが、どうしても伝えたかったのだ。

『みさえ、話があるんだ。』

俺はみさえの遺影に声を掛けた。

 

『最近、同じ夢を見るんだ。とても悲しい夢だった。夢の中の俺は、双葉工場で工員として働いていて、みさえは赤ちゃんができてまもなく交通事故で亡くなってて、俺はアパートに住んでいて、一人生きていくのがとても辛くて、地獄のような日々だったよ。』

みさえは黙って俺の話を聞いてくれた。

話終わり少し経った後、みさえは口を開いた。

『貴方。貴方には私がいる。しんのすけがいる。ひまわりがいる。貴方は一人なんかじゃない。』

みさえの言葉に俺は不覚にも泣きそうになってしまった。

『ああ、そうだよな。ごめん、心配を掛けた。』

俺には、俺を支えてくれる妻がいる。

子供がいる。

俺には幸せな家庭があるのだから。

 

『最近、同じ夢を見るんだ。とても嬉しい夢だった。夢の中の俺は、昔働いていた双葉商事に係長として働いていて、みさえのほかに息子のしんのすけと娘のひまわりがいて、俺は、みさえと話していたマイホームに、俺とみさえとしんのすけとひまわりと4人で住んでいて、家族と生きる時間はとても幸せで、毎日が輝いて見えたよ。』

みさえは何も答えてはくれない。

何故ならこの世にはもういないのだから。

話終えた俺は泣き崩れ、しばらくそのままだった。

 

就寝の時間になった。

俺は今日も同じ夢を見るのだろう。

夢の中の俺の人生は、とても辛くて苦しいものだけど、現実の俺には家族がいる。

一家の大黒柱だ。

いつまでも夢に怯えるわけにはいかない。

夢は、夢でしかないのだから。

 

就寝の時間になった。

俺は今日も同じ夢を見るのだろう。

夢の中の俺の人生は、とても幸せで明るい未来が待っているけど、現実の俺にはなにもない…

いつまでも、夢の中で生きていたい。

こんな現実なんて嫌だ!

なぁ…神様…頼むよ…!

夢の中の俺が現実で…俺の存在は、野原ひろしの見た夢であってくれ…!!




これで今回の話は終わりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。