古代より人という生き物は誰しもが空を見上げた。
――空
――宙
――ソラ
無限に広がる黒い闇に、光り輝く星々の輝き。
その中でも星と星を線でつなぎ形作られたものがある。
現代においては13星座と呼ばれるそれ。
それはギリシャ神話においては神々が様々なものを宙に上げ、生み出したものだともいわれている。
ほかにも星や空に関する伝承や物語は世界中に存在し、思うことは皆同じであったのだ。
星々は神秘を秘める灯。
人類に残された無限のフロンティア。
人と星は、切っても切れない縁に結ばれている。
「抑止の輪より来たれ! 天秤の守りてよ!」
彷徨海。
旧カルデアと同じ召喚陣が敷かれた部屋でカルデアのマスター藤丸立香は言霊を紡ぎ、いつものように縁を結んだサーヴァントを召喚していた。
召喚に必要な魔力は十分、三本の光の輪が召喚陣の上で収束し霊基が確立される。
召喚の際に発される光が晴れ、召喚陣の中心を見るとそこには小柄な少年の姿があった。
少年は己が召喚者を見つけると、とてとてと歩み寄り立夏の瞳を見上げ、覗き込みながらこう言った。
「あー、ゆー、わーじー、おぶ、びーいんぐ、まい、ますたー?」
いつもとは少し違う契約の言葉。
その言葉に立香はうなずき手を差し伸べた。
「そうだよ、私が君のマスター! よろしく!」
言葉を言い終えると同時に、立香はパスがつながるのを感じた。
「よし! ええと……じゃあまず君の真名を教えてくれる?」
立香はそう聞くと、少年はこう答えた。
――ボイジャーと
カルデアの医務室には、何人かのサーヴァントが存在する
クリミアの天使と呼ばれたバーサーカー、フローレンス・ナイチンゲール。
コルキスの魔女と呼ばれる前の姿のキャスター、メディアリリィ
そして、不老不死の霊薬を生み出したとされる医神、アスクレピオス
主にこの三人が医務室に立っている。
そして現在、大柄で筋肉の塊のような英霊超人オリオンがアスクレピオスの下にやってきていた。
「これでいいだろう……はぁ、次はもっと変わった傷を持ってくるんだな、毎回痴話喧嘩でできた傷を見せられる僕の身にもなるんだな」
「おう、ありがとよ! 次はばれない用にやる」
「懲りるということを知らないのか愚患者が!」
まったく堪えた様子がないオリオンが医務室を出ていくのを見送ると、アスクレピオスは一息をついた。
「まったく……ここにいれば珍しい症状を見ることができるとはいえ、いうことを聞かない愚患者が多すぎる」
思い起こされるは先ほどのオリオン、トレーニングルームで訓練という名の喧嘩をする不良系サーヴァント。
その他にも引きこもりたいと言って医務室のベットを占領していたことのある刑部姫など、トラブルを持ってくるものが多かった。
「マスターかキリエライトあたりに行っておくか……ん?」
この後の予定を考えていたアスクレピオスの視界に、入るものがあった。
見ると、何時やってきたのか金色の髪の少年、ボイジャーがそこに立っていた。
少年はじっとアスクレピオス見つめていた。
「……患者か?」
そう聞くと、少年はフルフルと首を振った。
「そうか、ならこれをやるからさっさとここから出ていけ」
そう言って、机の中からライムグリーンの包み紙に包まれた飴玉を渡すと、ボイジャーを置いて医務室を出ていった。
「……」
残されたボイジャーはもらった飴玉の包みをとって口の中に放り込んだ。
ころりころりという音が医務室の中に響いた。
「ああ、いた! 施設の紹介中に急にどっか行っちゃうからびっくりしたよ」
そこに息を切らした立香がやってきた。
「あれ? アスクれピオスはいないのか……ちょうどいいから紹介しようと思ったのに。 まぁいいか、それじゃあほかのところに行こうか!」
そう言ってボイジャーの手を引いて医務室を出ていった。
「ふたご おりおん かりゅうど とりとん たこ にゅるにゅる たいよう……へび」
彼は宙を
尽きることのない世界を見たものである。
そんな彼が、カルデアで何を見ることになるのか、まだわからない。