茶色い愛情   作:ホシボシ

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はい、まあ随分と遅くなってしまいましたが、バレンタインネタの短編でございます。
作品は現在放送中のガンダムビルドファイターズとなってます。
今ハマっているので、ちょっと作ってみました。

最初の注意としてはタグにあるカップリングが苦手な人や、恋愛描写自体に抵抗ある方は申し訳ありませんがバックをお願いします。

短時間でつくった作品故に短めですが、暇つぶしにでも楽しんでいってください。


茶色い愛情

「ば、バレン……? なんだそりゃ?」

 

「何だよレイジ、お前バレンタイン知らないのか?」

 

 

早朝の喫茶店、そこでレイジは朝食にハンバーグを食べながらフェリーニの話を聞いていた。

今日は2月13日、世間で言えばバレンタインデーとなる。そう言えば最近になってあちこちでその文字を見かけるようになったとレイジは思い出した。

 

 

「バレンタインデーは簡単に言うと女の人が好きな人にチョコをあげる日なんだ」

 

 

レイジの隣では少しそわそわした様にセイがオレンジジュースを飲んでいる。

ニヤリと笑うフェリーニ、もらえるアテがあるのか? からかった様に笑う。

とはいえ、彼の隣を見ればまだ朝だと言うのに紙袋に入った大量のチョコが見えた。さすがはイタリアの伊達男と言った所か。

 

 

「へっ! あ、いやそんな……! あはは!」

 

「ふーん、チョコレートねぇ」

 

 

レイジは残りのハンバーグとライスを一気に口の中に詰め込むと、それをスープで流し込む。

そう言えば周りを見てみるとセイだけでなく他の男達もどこか落ち着きが無いと言うかキョロキョロとしている様な。

まあ一年で一回のイベントに加えて、男の価値が露骨に出てくるもの。誰もが何かを期待しているのだろう。

 

 

「まあ義理っていう、形だけ渡す人もいるけどな」

 

「義理?」

 

「そう、好きじゃないけど社交辞令で渡すって事さ」

 

「何か面倒なイベントだな」

 

 

レイジは呆れた様に椅子にもたれかかる。

しかしやはりセイはどこか落ち着きがないと言った様子だ。

 

 

「お前ももしかしたらもらえるかもな」

 

「はっ、興味ねーよ」

 

 

などと会話を行う二人だが――

 

 

「ええですね……余裕がある人は」

 

「「うわ!」」

 

 

後ろの席では何やらどんよりとした闇に覆われているマオが。

彼は両手と両足をダランとさせて倒れる様に椅子に座っていた。

いつの間にいたのか、それとも最初からいたのか、なんにせよ今の彼は負のオーラで満ち満ちている。

 

 

「ど、どうしたのマオくん」

 

「昨日……ミサキちゃんにチョコが欲しいって言ったんです」

 

「う、うん」

 

 

そしたらミサキは笑顔でうなずいたと言う。なんなら少し頬を赤くしていたと言ってもいい。

なんだ、それなら落ち込む必要なんて無いじゃないか。セイもフェリーニに首を傾げるが――

 

 

「その後、ありがとうの気持ちを込めて、チューしようとしたら――」

 

『ま、また焦って! もう知らない!!』

 

「って言われたんですぅうううううううううううう!!」

 

「「………」」

 

 

ど、どうしよう。何もかもマオが悪かった。

セイとフェリーニはどんな言葉を掛けていいか分からずに汗を浮かべて笑みを浮かべるだけだ。

よりよって前日に喧嘩するなんて、ついていないと言うか何と言うか。

 

 

「っていうか何でチューなんだよ、馬鹿か」

 

「愛情表現ですやん! あぁぁぁあミザギぢゃぁぁぁあん!」

 

「きったねぇな! くっつくなよ!!」

 

 

鼻水と涙でぐちゃぐちゃになりながらマオはレイジにしがみつく。

するとカランカランと音を立てて喫茶店の扉が開いた。一同が視線を移動させると、そこにはよく見知った顔が。

 

 

「はぁい、皆」

 

「ミホシさん!」

 

 

一同の目の前にやってきたのは紙袋を持ったミホシ。

その中には無数のチョコが入っており、レイジはさっそくこれが義理チョコとやらなのかと思ってみる。

 

 

「ほら、私が注目されたのは貴方達のおかげでもあるから、これはお礼よ」

 

 

いつもより少し声を高くして、どちらかと言えばキララ口調で彼女はチョコをセイ達に渡していく。

綺麗にラッピングされたチョコは、たとえそれが量産された物だと知っていても嬉しいものだ。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「サンキュー」

 

 

レイジは受け取ったそばからチョコをあけて口に放り込んでいる。

なるほど、タダで食べ物がもらえる日と思えば中々良いイベントかもしれない。

ロマンよりも食い気なのだろうか、セイはなんともいえない表情で笑みを浮かべた。

 

 

「マオくんに、フェリーニも」

 

「……どうも」

 

「グラッツェ!」

 

 

そこでふと視線を何度も移動させるマオ。

何だ? セイ達はそんな彼の様子に気づいて同じく視線を移動させる。

 

 

「なんか、フェリーニさんのだけデカないですか?」

 

「あ、そう言われてみれば。それに包装も僕たちよりもちゃんとして――」

 

「えっ! あ、そ、それは!!」

 

 

ミホシは少し頬を上気させて慌て始める。

 

 

「はーん……! おいおい、そういう事かよ」

 

「ち、違うわよ! フェリーニは皆より体が大きいから!」

 

 

そ、そういう訳だから! ミホシはそう言って逃げる様に店を出て行く。

ニヤニヤ笑いながらジュースを飲むレイジ、いいですねと暗い様子で連呼するマオ。

 

 

「よかったですね、フェリーニさん」

 

 

当然セイも意味を理解して彼に笑顔で話しかけ――

 

 

「ぐふふふ! これでもう30個目だぜぇ!

 いやぁカオリちゃんのから食べ様か、それともマキちゃんの――……いやいや、アマンダのから頂こうか!」

 

「「「………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻滅やわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バレンタインのチョコ?」

 

「そうです、一緒に作りませんか?」

 

 

一方、街では二人の少女が並んで歩いていた。

チナとミサキ、どうやら彼女達も話はバレンタインの事についてらしい。

 

 

「今日、あそこのお菓子屋さんでイベントやってるんですよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 

チョコレートを売るスイーツショップが開催したイベント。それは手作りチョコを作ってみませんかと言うものだ。

広い厨房と、スタッフ、材料や道具を用意してくれて誰でも簡単に手作りチョコレートを作る事ができると言うものだった。

街の女の子達はこれをつかって、彼氏や気になる異性に手作りのソレをプレゼントするのだろう。

 

 

「イオリくんに?」

 

「あ……は、はい。でもレイジくん達にも」

 

「そっか」

 

 

ミサキとしても昨日マオに少し声を荒げてしまった事を思い出す。

 

 

「ん、そうね。じゃあ一緒につくろっか」

 

「は、はい!」

 

 

二人はそう決めるとスイーツショップへ向かう事に。

するとそこに一台の車が止まる。なんだろう、二人が呆気に取られるとドアが開いてそこから高笑いが聞こえてきた。

 

 

「オーッホホホ! ここで会ったが百年目かしらチナっさん!」

 

「あ、キャロちゃん」

 

 

無駄に長いリムジンから登場したのはキャロライン。

彼女はすぐに顔を真っ赤にしてチナに掴みかかる勢いだった。

 

 

「だからキャロちゃんって呼ばないでって何回もッ!!」

 

「キャロちゃんはキャロちゃんだよ。キョロちゃんもチョコを作りにきたの?」

 

「今一瞬モロ言いましたわね!? 鳥のヤツの名前が出ちゃってましたわね!!」

 

 

ここでハッとするキャロライン。またこのペースに乗せられてしまった! なんて恐ろしい!

すぐに彼女は話題を変えようと高笑いである。そう、彼女もココには当然チョコ目当てでやって来た。

バレンタインは男にとっても女にとっても特別な日、彼女も例外ではない。

 

 

「そうですわ、この店で一番高いチョコを買いにきたんですわよ! 一般庶民の方たちじゃ変えないようなチョコを!!」

 

「あれ? 作りに来たんじゃないの?」

 

「当たり前でしょう。作る事に何のメリットがありますの?」

 

「手作りのほうが喜んで貰えるかも……だから」

 

「っ?」

 

 

目を丸くするキャロライン。

彼女は二、三回目をパチクリとさせてミサキを見る。

 

 

「そう言うモノですの?」

 

「うーん。私は男の子じゃないからハッキリとは言えないけど、やっぱり心の篭った手作りの方が嬉しいかな」

 

 

もちろん高いチョコでも嬉しいけど、ミサキはそう言って笑う。

しかしやはり作ってくれたと言う点に置いて嬉しさは手作りの方が上なのではないだろうか? そんな事を話すと少しキャロラインの声が小さくなる。

 

 

「あの……その…不味くても?」

 

 

太目の眉毛を八の字にしてモゴモゴと彼女は言う。

どうやらあまり手作りに自信は無いようだ、しかしチナは笑顔で彼女の手をとった。

 

 

「助け合いながら、一緒に作ろう?」

 

「え、ええ……。そ、そうですわね! チナさんがそこまで言うのなら!」

 

 

すっかり元の調子に戻った彼女を連れて三人はいざ入店を。

そこには自分達以外にも多くの女性の姿が見える。流石にバレンタインと言う事か、チョコを買う人や作ろうとはしゃいでいる人達と様々だ。

そんな中に、そのどちらにも属さない人が。

 

 

「あぁぁあ! これ美味しそう! あ、これも素敵ぃ」

 

「アイラさん!」

 

「え? ああ、貴女は――」

 

 

両手に買い物籠を持って立っていたのはアイラだ。

二つの籠には既に溢れかえらんとばかりにチョコの山が目立つ。

 

 

「あら、義理なのにお高いのを選びますのね」

 

「義理用のチョコなら他のコーナーに売ってますよ」

 

「え? え? あ……」

 

 

言えない、全部自分に買ったなんて。

アイラは少し引きつった笑みを浮かべながらチョコを棚に戻していく。

バレンタインと言う時期、さらに夢見る乙女達の群れの中、まさか自分で食べるチョコを買いに来たなんて誰が思うだろうか。アイラとしても冷静に考えて自分が異常だと悟ったか、特に真実を告げる訳も無く流されていく。

 

 

「アイラさんもチョコを作りに?」

 

「え? チョコ作りって?」

 

「知らないんですか? 実は――」

 

 

ミサキは一連の流れを彼女に説明する。どうやら彼女は何も知らずにココにやってきた様だ。

本当に本当のただ自分で食べるチョコを買いに来た客である。とは言え全ての事を聞いた後も、しばらく彼女はポカンとしていたが。

 

 

「レイジ君に作ってあげないんですか?」

 

「な! なんでアイツなんかに!!」

 

「え、てっきりそうだと思ったのに」

 

 

アイラは慌てたように首を振る。

 

 

「冗談! アイツになんか絶対に嫌!」

 

「そ、そうですか? 喜ぶと思うけど」

 

 

その言葉を聞いて少し沈黙するアイラ。

レイジが喜んでいる姿でも想像しているのだろうか、何か遠くを見て押し黙る。

せっかくなんだ、チナはもう少し彼女を押してみる事に。

 

 

「ね? せっかくだから作ろう?」

 

「え? あ……」

 

「きっとレイジくんも喜んでくれるから!」

 

「そ、そうね。仕方ないわね! アイツ誰からも貰えなさそうだし!」

 

 

そう言って了解するアイラ。

典型的なツンデレですわね、そんなキャロラインの言葉はギリギリ彼女には届かなかったようだ。

しかし似たような事を先ほど貴女は仰った訳だが――。

 

 

「ここは材料も、道具も、設備もそろってるからいろんな物が作れるわね」

 

 

厨房に案内された四人。

そこには色々なチョコレート、湯銭につかう道具一式、包丁やまな板、型やケーキのスポンジまでそろっている。

普通のチョコを溶かして固めただけでなく追加料金でチョコケーキやクッキー、トリュフ入りまで。

 

 

「じゃあ皆はじめよっか」

 

 

チナの言葉にうなずく三人。

とりあえずマニュアルもおいてある事だし、余程凝ったモノを作らない限りは何とかなるだろうと。

適当に話をしながら作業を続ける四人、皆それぞれ違うものを作っていく様だ。

 

 

「キャロちゃんは何をつくるの? チョコボール?」

 

「チナさん……確信犯でしょ?」

 

「?」

 

 

悪気が無いと言った目でキャロラインを見るチナ。その隣には材料のチョコをジッと見つめるアイラが。

 

 

「………」

 

 

彼女は何を思ったのか、それをムンズと掴み上げると匂いをかぎ始める。

あれ? 気のせいだろうか? 涎が――ッ!

 

 

「……ッ」

 

 

理性を抑える様に震え始めるアイラ。駄目だ、何を考えているんだ!

ここにはチョコを作りに来たのに。彼女は汗を浮かべてしばらくプルプルと震えた結果。

 

 

「あむっ! むむっ! あむむむっ!!」

 

「ちょっと貴女! 工場の流れ作業みたいにチョコを食べるのは止めなさい!!」

 

 

口の周りをチョコだらけにしてアイラは驚愕の表情を浮かべる。

何? 何で私が間違った事を言ってるみたいになってるの? キャロラインは彼女の視線にいぶかしげな視線を送る。

 

 

「貴女、目の上にたくあんが……」

 

「お黙り!!」

 

「おいしそう……!」

 

「「「え?」」」

 

 

何言ってんのこの人。

三人は純粋なアイラの視線に一抹の恐怖を感じたのだった。

 

 

 

 

さて、集中していると時間と言うのは早く過ぎるモノで四人が作業を始めてから二時間程度が経過したくらいだろうか?

各々の作ったチョコレートは無事に完成を向かえた。それぞれ思うところがあるのか、それとも渡す事を想像しているのか、何故か嬉しそうと言う表情ではない。

達成感がある訳でもなく、多くの不安がそこにある様に思えた。

 

しかしせっかく作ったチョコ、このまま渡さないと言う訳にもいかないだろう。

ミサキの携帯を借りて、それぞれは渡す相手を呼び出した。皆それぞれ固まっていた事もあってか、それほど時間がたたずに全員が集合する事に。

 

 

「なんだなんだこんな所に呼び出して。お、うまそう」

 

「こ、この店って……」

 

 

適当に辺りを見回すレイジと、目を輝かせてソワソワとセイ。

この日にココで呼び出しを受けると言う事の意味を彼も分からない訳ではない。

少し遅れて入ってきたマオとニルスも知った顔を見て意味を理解する。唯一レイジだけはよく分かっていない様ではあるが。

 

 

「あん? 何でお前がココにいるんだよ」

 

「べ、別にアタシがどこにいたってアンタには関係ないでしょ!」

 

 

そんな事を言い合っていると渡し辛くなると言うモノ。チナやミサキが目で合図して話を切り出そうと試みる。

こういうのは早さが大切だ、気恥ずかしくなってしまう前に渡してしまおう。

 

 

『お知らせがあります』

 

「!」

 

 

しかし丁度その時に会場にアナウンスが入る。なんだろう?

一同が耳を済ませると、この店の店長からもう一つのイベント案内が入る。

どうやらチョコ作りだけでなく、もう一つバレンタインの催し物があった様。

 

 

『男女ペア限定のガンプラバトルを開催します。参加の意思がある方は、近くのスタッフにもうしつけください』

 

「………」

 

 

お菓子の店でもガンプラなのか、ミサキとキャロラインは引きつった表情でアナウンスを聞いていた。

しかし対照的に水を得た魚のように跳ね上がるレイジ、彼は目を輝かせてアイラに視線を送る。

 

 

「な、なによ!」

 

「成程、こういう事だったんだな!」

 

「は、はぁ?」

 

「だから、このバトルに出たかったんだろ! でも男女ペアじゃないと駄目だもんなぁ!」

 

「いや違――ッ!」

 

「いいから遠慮すんなって! ガンプラも持って来てんだろ?」

 

 

そんなまさか、ミサキは汗を浮かべてアイラを見る。

いくらなんでもスイーツショップにガンプラを持ってきてる訳が――

 

 

「まあ、持ってるけど――」

 

(嘘――……)

 

 

改めて世界の常識に疑問を抱くミサキ。しかしなんともレイジは楽しそうである。

彼にとってはバレンタインよりもガンプラで遊ぶ方が興味をそそるものなのだろう。

 

 

「セイも来いよ! せっかくだし別々で戦おうぜ!」

 

「え? ちょ、ちょっとレイジ!?」

 

 

セイは困ったように頭をかきながらレイジとチナを交互に見る。

チナも始めこそは困ったようにしていたが、すぐに笑みを浮かべた。セイもきっとバトルがしたい筈、だから彼女は一緒に出てみないかと持ちかけた。

 

 

「イオリ君もガンプラ持ってきてるんだよね?」

 

「え!? う、うん。でも僕操縦は下手だし――……」

 

「大丈夫だよ、一緒に頑張ろう!」

 

「だ、だけど男女ペアって……その、カップルと間違えられるかも! ぼ、ぼぼくはいいけど委員長が嫌なんじゃないかって――その!」

 

「……あ」

 

 

お互いに赤くなる二人。

 

 

「わ、私は大丈夫だから……ね?」

 

「そ、そう? じゃあ行こうか……あはは」

 

 

そう言って二人は受付に。そしてそれをジットリと見ていたキャロライン。

彼女はニヤリと笑ってニルスの手を握る。いや、握ると言うよりは掴むと言った方が妥当か。その力強さにニルスもぎょっとしてしまう。

 

 

「み、ミス・キャロライン? 何を……」

 

「私達も出ますわよ!」

 

「えぇ!?」

 

 

いつぞやのリベンジだとキャロラインは気合を入れる。

対して大きく動揺して慌て始めるニルス。当然だ、彼はココにガンプラを持って来ていないのだから。

 

 

「安心なさい、私が持ってきてます」

 

 

そう言って彼女は自分のガンプラと、何故かニルスのガンプラを取り出してニンマリと笑った。

 

 

「嘘ォッッ!! なんで貴女が僕のガンプラを持って――」

 

「当然です。彼女ですもの! オーッホホ!!」

 

「こ、答えになってな――」

 

「男ならごちゃごちゃ言わない! さ、行きますわよ!」

 

 

そのままズルズル引きづられていくニルス。

 

 

「凄いね皆……」

 

「当然です。皆ガンプラが好きなんですもん」

 

 

マオは帽子を上げて笑っていた。

そこで少し表情を暗くするミサキ、それならばきっと彼だって参加したいはずだ。

 

 

「ごめんねマオ君。私ガンプラ持って無くて」

 

「い、いや! そんな――ッ!」

 

 

そこでピンと閃いたマオ。彼はミサキに一緒に出てみないかと告げる。

別にこのバトルは男女がそれぞれガンプラを持っていなくてもいい。普段のレイジとセイの様に、二人で一つのガンプラで参加してもいいのだ。

 

 

「でも私、足をひっぱちゃうかも」

 

「ええですよ。ミサキちゃんと一緒に出られるってだけでワイは幸せです」

 

 

それともワイとじゃ嫌ですか? マオは少ししょんぼりした様子で聞いた。

それが年上のミサキの母性を少し刺激して、彼女は思わず顔を赤くする。

 

 

「う、ううん。じゃあ行こっか!」

 

「はい!」

 

 

結局彼らはどこへ行ってもコレが似合っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

『はい、と言う訳で場所は変わってバトルシステムがある二階へとやってきました』

 

 

お菓子店の二回にはやはりバトルシステム。こんな所にいるか? コレ。

等と言う突っ込みは野暮ってモノだ。そしてそこには割りと多くの参加者が集まっていた。

ルールは全員が一勢にフィールドへ入り、最後まで残っていたペアの勝利となる。

二機で参戦する場合は、一機よりも有利に思えるが、ペアのどちらかが破壊された時点で負けとなるデメリットも存在していた。

 

 

『司会はしがないバイトが勤めさせていただきまーす』

 

 

そう行ってアルバイトの女性はギャラリーに向かってお辞儀を行った。

さらにその隣には解説役の人間がいる。

 

 

『えー、解説にはそこら辺を歩いていた素敵なおじ様をお招きしてまーす!』

 

『いやいや、素敵などとはそんな。ですがこのラル、精一杯解説を努めさせて頂きます』

 

 

本当どこにでもいるんだなあの人、などと思いつつそれぞれは戦いに向けての配置についた。

小さく笑うレイジ、やはりこの時の高揚感と緊張感はたまらない。隣にいるアイラは不満げにしてるものの、ちゃんとガンプラを取り出して置く辺り適応はしているのだろう。

 

 

「………」

 

 

そして一方のセイ。

レイジは気を使ってくれたのだろうが、いざ一人で操縦となると緊張感の方が強いと言うものだ。

しかしチナに情けない所を見せる訳にはいかない、彼もまた決意の面持ちでガンプラを取り出す。

 

 

『Please set your GP Base』

 

 

電子音が告げる戦いの合図、それぞれGPベースをバトルシステムの機械にセットしていく。

 

 

『Beginning plavsky particle dispersal』

 

 

バトルシステムを中心にプラフスキー粒子が発生、なんの変哲も無いお菓子店の空間を全く違う異次元へと変化させていく。

ゴクリと喉を鳴らすセイ、せめて情けない死に方は避けたい。

 

 

「大丈夫だよ、イオリ君。せっかくだから思い切り楽しもう!」

 

「う、うん。そうだね!」

 

 

笑いあうセイとチナ。二人は同時にガンプラを持ち場へとセットする。

 

 

『Please set your GUNPLA.』

 

 

「イオリ・セイ。スタービルドストライクガンダム!」

 

「コウサカ・チナ! ベアッガイIII」

 

 

光と共に二人のガンプラの目が光る。そしてそれぞれのライバル達も自分のガンプラをセットしていく。

もうこうなってしまえば皆の意識はバレンタインよりもバトルの方に向いている様だ。

 

 

「ニルス・ニールセン。戦国アストレイ頑駄無」

 

「ヤジマ・キャロライン。騎士ガンダム」

 

「ヤサカ・マオ。ガンダムX魔王!」

 

 

次々にセットされていく機体。

周りにいたギャラリーも沸き始める。そして最後の一組が名乗りを上げた。

 

 

「レイジ! ビギニングガンダム!!」

 

「アイラ……コマンドガンダム」

 

 

『Field 213, sweets』

 

 

それぞれは、それぞれの掛け声を上げてフィールドへと飛び出していく!

 

 

『BATTELE START』

 

 

 

今回のフィールドは巨大なお菓子で埋め尽くされたファンシーなモノだった。

色とりどりの巨大な巨大なマカロン。綿菓子でできた雲、なんともファンタジーな。

スタービルドストライクとベアッガイは、クッキーでできた丘の上に降り立って状況を確認した。

敵の数はそこそこ多い、それほど広くないステージでは隠れている事は確実に不可能だろう。

他の参加者は早速動き出して敵を狙っていく。まあこう言うのは彼氏が格好をつけたいところ、張り切るのも無理は無い。

 

 

『さあ! 彼氏の皆さんはしっかりと彼女さんにアピールチャンスですよ!』

 

『同時に彼女は彼氏をしっかりサポートしてやらんとな。ああ、ケツが痒い!』

 

 

現にそういって盛り上げる司会。まあお祭りだ、皆楽しんで――

 

 

「い、イオリ君!」

 

「え? って!!」

 

 

マズイ! スタービルドストライクはベアッガイを掴むとブーストを全開にして空へ舞い上がる。

なんだ? 一部の参加者はその奇行に疑問を抱く。マカロンに溢れた大地は自分の姿を隠すに丁度いい場所だ、わざわざ空に逃げて自分の姿をさらす必要がどこに――?

 

と、思っていた者達が次々に消し飛んでいく。

マカロンの影に身を隠していた者達が炭となっていく。

な、なんだ!? 多くの参加者が訳も分からぬままに退場していった。

 

 

『おーっと! なんなんだアレはぁぁああ!!』

 

 

司会が興奮気味に叫び声をあげた。

しかしその時点でもう参加者は半分以上が脱落していると言う結果になっている。

分かったのは巨大な光の本流が巻き起こったかと思うと、周りの景色が消し飛んでいったと言う事。

巨大なビームが文字通り全てを消し飛ばしていく。さらになんとか生き残った者達もその隙をアイラのコマンドが突いて破壊していく。

まさに一瞬、この短時間で残りの参加者は全員セイの顔見知りだけとなってしまった。

 

 

「あらら、ちょっとやりすぎてもうたかな?」

 

 

挑発的に笑うマオ。魔王の開幕サテライトキャノンがフィールドを大幅に破壊しつつ参加者を激減させた。

たとえ小さなバトル大会でも本気で行くのがガンプラファイターの流儀、魔王はすかさず二発目を放つため砲身を移動させる。

逃げ延びた参加者を狙ったコマンドは中々だが、逆にその行動がコマンドの居場所を魔王に晒す事となる。

向こうからコチラを狙うには少し距離があった。かと言ってアブソーバーシールドやRGシステムも無し。状況はコチラが有利だと魔王は二発めを放とうと――ッ!

 

 

「……っ」

 

 

そこでふとマオは一瞬、ほんの一瞬だけミサキに視線を移した。

本当に状況を確認する為のものであって、それほど深い意味は全く無い。

しかしそこで彼は見てしまう。そもそもこの店のバトルシステムは操縦者が台に上がって戦うという方式のため、今現在ミサキはサポーターとしてマオより一段低い場所に立っている。年齢ゆえにミサキより身長が低かったマオとしては、彼女を見下ろすと言うのは中々新鮮な光景であったろう。しかし問題はそこではない、今ミサキは興奮しているのか身を乗り出してフィールドを見ている。

それ故に、その――

 

 

(み、見え……見え――ッ! 見え……み――)

 

 

ミサキの胸元を凝視するマオ。もう本当に際どいと言うか何と言うか――ッ!

 

 

「マオ君! 頑張って!」

 

「!!」

 

 

身を乗り出すミサキ。ちょっと下着が見え――

 

 

「胸チラぁあああああああああああああああ!!」

 

「!?」

 

 

突如鼻血を噴出しながら倒れるマオ。

ミサキが彼を抱きかかえると、マオは非常に幸せそうな表情で気絶していた。

そして連動していた魔王もまたフワフワとどこかへ落下していく。

 

 

「「………」」

 

 

な、なんだあれ。セイとチナは複雑な表情でフェードアウトしていく魔王を見ていた。

しかしそれをジックリと見ている余裕は無い、すぐに高笑いが聞こえて来て二人は戦闘態勢に入る!

 

 

「オーッホホホ! 前回の屈辱、今晴らさせてもらいますわ!」

 

 

マントを翻して飛んできたのはナイトガンダム。彼女は早速ベアッガイ目掛けて槍を振るった。

 

 

「させない!」

 

「あら!」

 

 

しかしベアッガイの前に割り込むのはスタービルドストライク。

彼はビームライフルでナイトの槍を弾くと蹴りで彼女を弾き飛ばす。

しかしナイトも蹴りはしっかりと盾でガードしており、すぐにまた連続突きを繰り出していく。

 

 

「うわわ!」

 

 

後退してソレを回避しようとするがバランスを崩して尻餅をついてしまうスタービルドストライク。

もらった! ナイトは地面を踏み込んで渾身の突きを繰り出そうと体をひねる。

 

 

「さ、させないから!」

 

 

しかしそれはそれチーム戦だ。

スタービルドストライクに守れた事で余裕のできたベアッガイはナイトの横に移動しており、パートナーを守るために腕部のビーム砲を発射した。

 

 

「ちぃい! ちょこざいな!」

 

 

ナイトは仕方なく攻撃を中断すると地面を蹴って跳ぶ。

マントを風になびかせてビーム砲を避ける彼女だが、セイはそこで違和感を覚える。

何故彼女は一人で戦っているのか!?

 

 

「まずい! 委員長、後ろだ!」

 

「え?」

 

 

ベアッガイが振り向くと今まで死角だった場所から戦国アストレイが飛び出してきたではないか!

日本刀を二刀に構えて彼はすり足でベアッガイを狙う戦国アストレイ。

ナイトと言う囮に気を取られていたセイ達は、突然の奇襲にパニックになるだけ。

 

 

「行ってニルス! 私のために!!」

 

「うぐっ! ぁ……ん、んん――っ」

 

「ニ・ル・ス?」

 

「は、はい! 覚悟、ベアッガイ!!」

 

 

半ば強引なやりとりの様にも思えるが、戦国アストレイの刃がベアッガイに振り下ろされる。

これはチーム戦、いくらスタービルドストライクが無傷だろうとも、ベアッガイが破壊された時点で彼の負けが確定する。

 

 

「き、きゃあ!!」

 

 

慌ててジタバタともがくベアッガイ。

一見すればコミカルな動きだが、逆にそれがラッキーだったのかアストレイの剣閃から逃れる事に。

しかし掠っただけで片腕が切断されてしまった。追撃をすれば確実に仕留められると言う所。

しかし戦国アストレイは地面を蹴って一旦彼女と距離をとる事に。何故? 試合を見ていた司会は首をかしげる。あそこは確実に仕留められた場所ではないか。

 

 

『ふむ、おそらく前回の二の舞になる事を懸念しての事だろう』

 

『と、言いますと?』

 

 

ラルも聞いた話ではあるが、前回ナイトガンダムはベアッガイを後一歩と追い詰めたところで負けてしまった。

今回もまた前回同様ギミックを怪しんでの行動らしい。

 

 

「いいですわよニルス!」

 

「クッ!」

 

 

スタービルドストライクは何とかしてベアッガイを助けられないかともがく。

しかしそれをさせないのが騎士の使命と言うモノ、ナイトはしっかりとスタービルドストライクの妨害を遂行していた。

そうしている間にも刀を構える戦国アストレイ、大丈夫だ、綿が来ても切り裂けると彼は神経を集中させ――

 

 

「「!?」」

 

 

予想通りベアッガイの腕部からギミックが飛び出してくる。

しかしそのギミックはニルスとキャロラインが思っていたモノとは全く違っていたモノだったが。

 

 

「な、なんですのアレ!」

 

「え、液体!?」

 

 

そう、ベアッガイの腕部からは綿ではなくドロリとした液体が流れ出てきた。

血? ホラー? キャロラインはゾッとして目を覆い隠してしまった。しかしニルスは違う、よく見ればあの液体は茶色い。

と言う事は、だ。

 

 

「ま、まさかチョコ!?」

 

「え、えへへ。食べ物で遊ぶのはちょっとどうかと思ったけど……」

 

 

カシャッ! とベアッガイの口が開くと、そこから勢いよく液体のチョコレートが噴射される。

 

 

『おおおおおおおっとぉお!! まさかのまさか! コウサカ選手、ガンプラの中にチョコレートを仕込んでいたぁぁああああ!! 一体どういう事なんだぁぁ? 良い子はマネしちゃ駄目だぞぉおおお!!』

 

 

興奮気味に叫ぶ司会。どうやらチナはベアッガイにもチョコレートを食べて欲しかったようだ。

内部の綿を抜き、そこに小パックに詰めた液体チョコを仕込んでいた。そして前回同様、それを口から発射したのだ。

ガンプラにチョコ? 全く意味が分からないぞ! ニルスはその発想に気を取られつつ、迫ってきたチョコをしっかりと切り裂いて防御を行う。

 

しかし同じく気を取られていたキャロラインは目を覆うと言う戦闘中に最もやってはいけない事をしてしまった。

おかげでフリーになったスタービルドストライクは、ビームライフルで戦国アストレイを横から狙う。

 

 

「チィイッ!」

 

 

二対一でできた事だろう。戦国アストレイはチョコを防ぐよりもビームを切る方を選んだ。

おかげでチョコまみれとなる戦国アストレイ、しかし考えてもみてほしい。チョコを受けただけで何が変わると言うのか、コチラにダメージはないし、全く問題は無い。

 

 

「えいっ!」

 

「はわわわわわ!」

 

 

同じくチョコを受けたナイト。するとそこでステージが変動を始める。

このスイーツと言うステージは文字通りお菓子を模したもの、そしてそのお菓子の種類が時間と共に変化していくのだ。

今まではマカロン、そして次は――

 

 

『おーっと、ココでステージが変化しました』

 

『なるほど、アイスクリームと言うことか』

 

 

そう、次のお菓子はアイスクリーム。

至るところにカラフルなアイスが出現し、同時にフィールドの気温が一気に変化する。

床は凍りに覆われ、マイナスの温度が参加者達に襲い掛かった!

 

 

「こ、これは! 前が見えない!!」

 

「う、動けませんわーッ!!」

 

 

戦国アストレイとナイトについていたチョコレートが一気に固まり、それが重石となって動きを鈍らせる。

さらにカメラ部分にもチョコがついていた為、さらに動きがおかしな事に。

ニルスからは確認できるが、ガンプラからしてみればと言う連動システムの為にだろう。

 

 

「す、凄いよ委員長! まさかこうなる事を見越して!?」

 

「あ、あはは」(適当だったんだけど、ラッキーだった……)

 

 

またこんな意味不明な技でやられるのか!

キャロラインが吼えるがセイ達が止めを刺す前にスタービルドストライクの足元に火花が散る!

 

 

「きゃ! な、何ッ!?」

 

「委員長、レイジだ!」

 

 

ベアッガイを抱えて後ろに跳ぶスタービルドストライク。

彼の視線の先にはビームバルカンを構えて飛行しているビギニングが見えた。

気づかれては仕方ない、ビギニングはバルカンを捨てるとビームサーベルを三本爪の様にして構える。

 

 

「行くぜアイラ!」

 

「………」

 

「?」

 

 

レイジはアイラからの返事が無いと隣を見た。すると彼女は深刻な表情で一転を見つめている。

どうした? 彼が声をかけても彼女は心ここに在らずといった様子で反応を見せない。

 

 

『おっとどうした事でしょうアイラ選手のコマンドガンダムが巨大アイスの前で動きません』

 

 

ジッとアイスを見つめるコマンドガンダム。

何を? レイジが少し身を乗り出してアイラの顔を見る。

すると、そこには涎をたらしながら目を輝かせている彼女が。

 

 

「………」

 

 

コッチの話なんざ聞いちゃいねぇ。レイジは彼女の協力を諦めると、単機で二体の元へと突っ込んでいく。

スタービルドストライクのアブソーブシールドがある限りビーム兵器は撃てない。

となれば頼りになるのは接近戦だ、ビギニングは縦横無尽に飛び回りながらサーベルを振るっていく。

 

どうする? 焦るセイ、機体性能はともかくとして彼の技術についていけるのか?

ベアッガイはビーム砲を連射するが、ビギニングはそれを華麗に回避して確実にコチラに向かってくる。

 

 

(考えてても仕方ないか)

 

 

小細工はレイジには通用しない、セイもまたビームサーベルを構えて彼と一騎打ちを試みる。

だがその時だった。なにやらフィールドに揺れが発生したのは。

 

 

『むお、何なんでしょうかコレは?』

 

 

揺れは現実では起こっていない。つまりフィールドに何かしらの異変が起きたと言う事だ。

しかしスイーツ変化まではまだ時間がかかる。では一体これはなんの地響きなんだろう?

すると、その時、巨大なアイスの一つが轟音を立てて崩れ落ちる。何なんださっきから、一同が戦いを中断して其方を見るとそこから巨大な何かが姿を見せた。

 

 

「な、なんだありゃあ!」

 

「ザク!? でもあれって!!」

 

 

姿を見せたのはザクはザクでも何とも巨大なモノだった。

おそらく大会で妨害に出てきたモノと同サイズだろう。しかも気になるのは何やら普通のザクではない様に思える。

背中にはバックパックなのか、何かを背負っており、そこから伸びるチューブに繋がれたバズーカを手にしていた。

 

 

『おおおおおおおおおお!? 何だ、何なんだアレはぁぁ!!』

 

 

司会の女性も驚きに吼える。しかしここで疑問の一声をあげるのはラルさん。

あれは大会側が用意したものではないのか? 参加者の一覧を見てもどこにもザクで参加した者はいないが……?

 

 

『た、確かに。ではアレは一体誰が操縦しているのでしょうか!?』

 

「私だ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 

突如名乗りをあげたビルダー。それは――

 

 

『て、店長!?』

 

 

このお菓子店の店長。

彼は憎悪に満ちた表情で一同を睨む。なんだ? 一体何故大会を主催した店長が乱入してくるんだ?

訳も分からず立ちすくむセイ達、当然試合に水を差されたレイジは不満げだ。

 

 

「なんだよオッサン。今いいところなんだから邪魔すんなよな!」

 

「フッ、邪魔? むしろ私はこの時を待っていたのだよ」

 

「?」

 

 

そもそも何の為にこの大会を開いたと思っているのか。

よく考えてみて欲しいと店長は吼える。何か一人だけテンションが違う男、それが店長!

 

 

「私はもう何年も何年も何年もバレンタインのチョコをもらってないんだ!!」

 

「「「………」」」

 

「それなのにお前らは毎年毎年浮かれやがって!」

 

「どうせ他のやつ等はこの後、"ねぇ僕のビームサーベルがトランザムだよ"、とか言っちゃうんだろ!? いい加減にしろ!」

 

「「「………」」」

 

「許せないんだよ私はそんな連中が! だからせめてこの大会でお前らのガンプラを破壊してやる! それが私の戦いだ!!」

 

「「「………」」」

 

 

な、何言ってんだ。そんなギャラリーと参加者達の視線を撥ね退けて店長はザクを発信させる。

つまり彼はバレンタインで浮かれているカップルが許せないらしい、せめてもの憂さ晴らしにガンプラを破壊しようと試みた……?

 

 

「これは私の復讐のための戦いだ!!」

 

『な、なんて小さ――じゃなくてなんて執念に満ち溢れた男でしょーか!

 いいんですよ皆さんご自分のガンプラが破壊される前に戦いを中断しても。すいません何かうちの店が!』

 

 

バイトが店長の代わりに謝罪すると言う意味不明な展開の中で首を振るレイジ。

逃げる? 冗談じゃない、売られた喧嘩は買うのが流儀。ましてそんな理由で他人のガンプラを傷つけようとする男を許す訳にはいかないのだ!

 

 

「レイジ、ココは協力して何とかしよう」

 

「ま、しかたねぇな!」

 

 

一勢にビームを発射していく三体。

しかしザクは避けようともせずそれを受けた。そして何の事も無く足を進めていく。

 

 

「ライフルが効かない!?」

 

 

それを見ていた解説のラル。彼はもう一つのザクの変化に気づいた。

なにやらカラーリングが随分と茶色いと思っていたが、まさかアレは――

 

 

『なんて事だ、ザクの体の回りにチョコレートを塗っているのか!』

 

「フハハハ! その通り、私のザクは通常の三倍のチョコレートを塗り固め、鎧としているのだ!」

 

 

お前もかーい! そんな司会の声が響く。

だいたいなにを通常として、どう三倍にしたのか全くもって意味不明である。

しかしとにかく分厚いチョコレートでコーティングされたザクはビームをも寄せ付けない防御を手に入れた。

 

 

「さあ食らえ!!」

 

 

そしてバズーカをビギニングに向けるザク。

彼が引き金を引くとポンプチューブを経由してバックパックから茶色いものが流れ込んでくる。

そして放たれるのは巨大なチョコの塊、ドロドロのそれは一撃でも受けてしまえばチョコの山に飲まれて動きを封じられてしまうだろう。

その状態であの巨体に踏み潰されてしまえば、レイジ達が作ったガンプラは粉々に。

 

 

『えー、くれぐれもギャラリーの皆様はチョコレートで遊ばない様にしてください』

 

 

バイトの冷静な注意が会場に行き渡る中、バトルシステムの中はそう冷静でもいられない。

チョコの塊は脅威そのものであり、かと言って自分達の攻撃は分厚いチョコに防がれてしまう。

意外と詰んでいるのではないか、セイ達は汗を浮かべて回避に徹するしかなかった。

何かきっかけがあれば、きっかけが――ッ!

 

 

「きゃ!」

 

 

そんな中で凍っている足場故なのか、ベアッガイが転んでしまった。

まずい! セイ達はすぐに援護に向かおうとするが、既にザクはバズーカをベアッガイに向けている所だった。

 

 

「もらった!!」

 

「委員長!」

 

 

間に合わないか!? セイが叫ぶ!

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

その時だ、どこからかビームが飛んで来てザクのバズーカに命中したのは。

おかげでバズーカは大きくブレて狙いをはずし、チョコの塊はベアッガイに命中する事は無かった。

なんだ? 誰が撃った? セイでもレイジでも、ましてアイラでもないその一撃を。

 

 

「私だ!」

 

「「「!」」」

 

 

空の彼方から姿を見せたのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンプファーアメイジング!!

 

 

『おおおおおおお! またも、またも乱入者だぁあああああ!!』

 

 

司会が吼える中でフッと笑みを漏らすのはメイジン・カワグチ。

何なんだ? 誰なんだー? 一体何ユウキタツヤなんだーっ!? 司会は興奮しながらメイジンを凝視した。

ってかちょっとフリーダムすぎないか? 誰が参加を許したんだ? そんな一抹の疑問こそ残るが、ケンプファーは己の武器をふるってセイ達を援護していく。

ザク・ギブミーチョコも突如現れたケンプファーに混乱している様だ。その動きに翻弄され、何もできない!

 

 

『しかしいいのだろうか? いくら何でも男女の大会に男一人で参加など』

 

 

ラルさんの言葉に吼えるメイジン、それなら問題ないと。

 

 

「私のガンプラを愛する心は、男女のソレをも上回るだろう。だから問題ない」

 

『何が問題ないのかイマイチ分からないですがぁあ! イケメンだから許しまーす!!』

 

 

司会も所詮は女性と言う所か。彼女の一声でメイジンの乱入は良しとなった。

そして店長もまたそれがどうしたと吼える。ケンプファーが一体増えたところで、この厚いチョコの装甲をはがす事はできない!

 

 

「さあ立ち上がれファイター達よ! 熱い心で私に続け!!」

 

「「「―――ッッ!」」」

 

 

その言葉にカッと目を開く一同。さらにここでフィールドがアイスから和菓子に変化していく。

だがもう遅い! フィールドが変わろうが、何体増えようが、この私には勝てないと店長は告げる。

しかしそんな彼の意見を否定するように、眩いXの輝きがフィールドを埋める!

 

 

「ッ!」

 

「悪いけど、コッチもミサキちゃんの前でヘタれる訳にはいかんのや!!」

 

 

大きな月見団子の上に立ち、同じく巨大な月をバックに背負うのは魔王。

すっかり元通りになった彼、そして月明かりが照らし出す彼の機体の影は、まさに魔を統べる王の姿その物だった。

 

 

「ブチ抜けやぁあああああああああああああ!!」

 

「くっ! くそ!!」

 

 

チョコの噴射量、勢いを最大にして放つザク。対してサテライトキャノンを放つ魔王。

ぶつかり合う両者のエネルギー、司会は一瞬どちらが勝つのかと思ってしまったが、どうやらその答えは考えるまでも無く明白なモノだった。

 

 

『おおおおおおおお! マオ選手のサテライトキャノンが何の障害もないようにチョコを貫いたぁぁあ!!』

 

 

さらにサテライトキャノンはザクのバズーカを打ち抜き、バックパックを誘爆させるに至った。

本体は何とか攻撃を避けたが、武器を奪ったのはでかい! だが店長はまだ冷静だ。

武器を失ったのは確かに痛いが、まだ自分にはこの厚く塗り固めたチョコの鎧が存在している。これを打ち砕くなど――

 

 

「!」

 

 

そこで衝撃。ザクが上を見ればケンタウロスモードになったナイトガンダムが立っていた。

どうやらフィールドが変わった事でチョコの拘束を抜け出した様だ、彼女は盾から剣を引き抜くとそれをザクの脳天へと突き入れる。

 

 

「チナさんを倒すのはこの私! 邪魔は許しませんわ!!」

 

 

そう言って跳びたつナイト。

これくらいの攻撃なんの意味があるというのか、確かに剣はチョコの装甲をある程度貫き刺し入れられているが、まだまだどうと言う事は。

 

 

「ぐっ!」

 

 

そこでまた衝撃、見れば今度はナイトの変わりに戦国アストレイが。

 

 

「行きなさいニルス! 彼女のために!!」

 

「な、何を言って……! ち、ちぃ!」

 

 

その時、戦国アストレイの背中にある鬼の目が光を放つ。

そして彼はそのままナイトの剣に掌底を打ち込む。この程度の攻撃、何の意味も無いと店長は踏んでいたが――

 

 

「粒子発勁ッッ!!」

 

「ッッ!?!?」

 

 

物凄い衝撃波が発生したかと思えば、脳天を中心にしてザクのチョココーティングが次々に剥がれていくではないか!

何だコレは、一体どういう事なんだ!? 訳も分からぬままうめき声をあげる店長、その隙にレイジ達は頷き会う。

 

 

「セイ!」

 

「イオリ君!」

 

 

ビギニングとベアッガイはビームをスタービルドストライクに向けて放つ。

一見すれば仲間に攻撃している様に思えるが、スタービルドストライクはしっかりとアブソーブシールドを構えていた。

吸収されていくエネルギー、彼はシールドをライフルに連結させてディスチャージを開始する!

 

 

「う、うおおおおおおおおおおお!! 認めんぞォオオオオオオオ!!」

 

 

走り出すザク。せめて体当たりで破壊してやる! しかしそこでまたも命中していくミサイルやビーム。

なんだよ、なんなんだよ、店長は半ばやけくそで辺りを確認する。するとそこにはコマンドガンダムが。

 

 

「よくも私のアイスをぉおおおおおおおお!!」

 

 

しらねーよ! 絶対それ俺のせいじゃねーだろうが!!

そんな店長の叫びを無視しながらコマンドは一勢射撃をザクに打ち込んでいく。

そうしている間にチャージは終了。スタービルドストライクの前方にパワーゲートが展開し、彼はそこにエネルギーを全力で撃ち入れる!!

 

 

「いっけえええええええええええ!!」

 

「う、うわあああああああああああ!!」

 

 

赤い散弾がザクに襲い掛かり、彼は何の抵抗もできずに爆散した。

 

 

『BATTLE END』

 

 

電子音が告げる終了。

ギャラリー達は一勢に歓声をあげ、燃え尽きた店長とホッと息をはくセイ達がそこにはあった。

 

 

「………」

 

 

ユウキ先輩、何しに来たんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、マオ君。少し遅くなっちゃったけど」

 

 

戦いが終わった後の帰り、ミサキはマオにその包みを渡した。

それを理解して表情をパッと明るくさせるマオ、しかし彼はすぐに不安げなモノへと。

 

 

「え、ええんですか? ワイで……」

 

「うん、マオ君じゃないと駄目。ごめんね、昨日は」

 

「そ、そんな! 食べてええですか!」

 

「うん!」

 

 

一口ミサキのチョコを口に入れるマオ。

本当は跳んで抱きつきたかったが、それをすればまた悲惨な事になりかねない。

彼はなんとか冷静さを取り戻し、自制心を前面に。

 

 

「おいしいです、ほんまに……」

 

「………!」

 

 

開眼して笑うマオ。いつもとは違う彼の表情にミサキはドキッとしてしまう。

自分よりもいくらか年下なのに色気と言うかなんと言うか。

 

 

「ずるい、マオ君」

 

「?」

 

「う、ううん。なんでもない」

 

 

笑顔でミサキはマオの手を取り微笑む。

 

 

「み、みみみミサキちゃん!?」

 

「ふふ、いこっ!」

 

 

そう言って歩いていく二人。そして一方のキャロライン達。

 

 

「どうですニルス!」

 

「………」

 

 

重い、文字通りの意味で。ニルスは両手を広げてギリギリもてる大きさの箱を抱えて苦笑いを浮かべる。

中を見れば巨大なチョコケーキが見え、さらに自分とキャロラインの人形が並んでいるのが確認できる。

凄い、呆気に取られるニルスだが、それはそれだけ彼女の想いがあると言う事でもある。

 

 

「ありがとうございます。ミス・キャロライン」

 

「当然ですわ。彼女……ですもの」

 

 

微笑む二人。

 

 

「でもこの大きさは僕一人じゃ大きすぎます。よければ一緒にどうですか?」

 

「そうですわね、紅茶の用意は貴方がしてくれるかしら」

 

「もちろん、喜んで」

 

 

キャロラインはニルスの隣に立って箱を持つ手伝いを行う。並んで歩く二人。

 

 

「そうだ! これ食べさせてあげますわ! おーっほほほ!」

 

「そ、それは結構……!」

 

 

しかしまんざらでもないニルス。なんだかんだ嬉しいのだろう。

 

 

 

 

 

「おい、何してんだよ」

 

「!」

 

 

先ほどから自分に背を向けてもぞもぞとしているアイラをレイジは気づいていた。

何を? 溜まらず話しかけると彼女は、チョコレートを食べているではないか。

おかしくないか? それ、おかしくないか? レイジの視線を感じたのか彼女は赤くなって食べかけを突き出す。

 

 

「こ、これ! アンタのために作ってやったんだから感謝しなさいよ!」

 

「ちょっと待て! だったら何で食いかけなんだよ!!」

 

「あ、味が……気になったのよ!!」

 

 

不味くないか、とか。それをアイラが言う事は無かったが。

 

 

「気になったって、半分以上ガッツリ行ってるだろーが!」

 

「そ、それは……!」

 

 

ますます赤くなってモジモジと怯むアイラ。それは渡す直前で形が気になったからだ。

どうしてあんな形の、ハートの型しかなかったのだろうか。仕方ないとハート型のチョコを作ったアイラだが、渡す直前で恥ずかしくなってしまったのだ。

まあそれも彼女はレイジに言う事は無かったが。

 

 

「と、とにかく受け取りなさいよ! 本当にアンタの為に作ったんだから」

 

「ふぅん」

 

 

そっか、レイジは彼女からチョコを受け取ると一変、笑顔に変わる。

 

 

「ありがとな、アイラ」

 

「う、うん」

 

 

アイラはそこで今日初めて彼に笑顔を見せた。

渡せてよかった、彼女は心の中でそっとそう思う。

 

 

「はい、イオリ君」

 

「ありがとう! 委員長!」

 

 

チナからのチョコを受け取って目を輝かせるセイ。

他の義理チョコを100個受け取ろうが、彼女からの一個には勝てない。しかし当のチナは少し引っ掛かる表情をしていた。

 

 

「あ、あのねイオリ君」

 

「なに?」

 

「きょ、今日は……今日くらいは名前で……」

 

「あ――」

 

 

赤くなって目を反らす二人。いざ意識すると中々恥ずかしいものである。

しかしセイだって男だ、ファイターだ、ここまでしてもらったのだからと思う所がある。

 

 

「あ、あの……」

 

「う、うん」

 

「ありがとう。ち……チナちゃん」

 

「―――っ」

 

 

ボッと真っ赤になる二人。

それから二人はチラチラと目をそらしつつ、時に見つめあいながら戻る事になる。

でも恥ずかしくなって笑ってしまう。なんとも青春である。

 

 

 

 

 

 

そしてそんな若者達を見つめるのは――

 

 

 

 

 

「ああああああ! ケツが、ケツが痒いッッ!!」

 

「フッ!」

 

 

もだえるラルさん。

その隣にはニヒルに笑うメイジンが。

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつら、何しにあそこにいたんだろう?

 

 

 




はじまりはバレンタインに何かライダーの方で番外編でもしようかと思い。
けど何にしようか思い浮かばず、前に記載していたバレンタインの話もお話の進み上できずにダラダラとしていた所、なんだかんだビルドファイターズになりました。

本当にこの作品は面白いよねw
僕はガンダム結構にわかですが、それでも面白くて毎週楽しみにしてます。

ガンダムシリーズはXが一番好きなんで、マオくんが一番好きでございます。
ニルスとかキャロちゃんもいいよね好きです。戦国アストレイかっこよすぎるだろ。

はい、そう言う訳でちょっと長々となってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
ではでは。


ちなみにメイジンって家に長身巨乳のメガネメイドさんがいるらしいね。
誰も相手がいないからガチホモとか思うのは止めましょう。


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