全てはコイツのせいです
──彼奴には何かがある、と俺は思った。
この血に宿る超直感を信じて疑わなかった俺は、街ですれ違ったその日から目をつけていた。
調べてみれば、有名な一流大学に通う、将来を約束された優秀な男だった。周りの期待も厚く、教授達からは信頼され、それは一目置かれる存在。
一般的にこれを知れば、それは遠い存在に思えるだろうし、何より羨望さえ抱く対象にもなるだろう。
だが俺は、それは上辺だけだと、感じた。
何故気になったのかは分からない。
別に大した理由さえもない。
ただ、何かがあると、思ったのだ。
そして、思った通り、その男は違った。
その頭脳の優秀さを認められ褒められ、あちこちの企業から勧誘されている時も。
自らの実力を以て数々の賞を授与された時も。
見事首席で大学を卒業する際に、壇上で言葉を発する時すらもそうだ。
男は“何も”見ていなかった。
人も物も世界すらも。野望など無いのだと言わんばかりに、濁りすらもなくまるで硝子玉の様に淡々と眼前を映していた。その眼は、さも当然の如く敷かれたレールを淀みなく歩く様に固定されていた。
──崩してみたい。
それは俺にしては珍しい、加虐心だった。
俺は其奴に接触してみた。その好奇心に沿って。
今では其奴は、俺の手足となり働いていた。
エリートの道からは大きく外れて、暗殺を生業とする職についたのにも関わらず男は従った。
流石に表情はある程度豊かではあったが、口を挟む事もなく、従順な犬としての役割を演じていた。
──そう。本心を、まだ曝け出していない。
周囲の人間も気付いている筈だ。この男は、違う。
今でさえ、残酷などと言われ、部隊の一つを任せられている程の猛者と化しているが、中身は違う。
未だに男は、“何も”見ていない。
その虚空を眺める視界には、一体何が在るのか。
「レヴィ」
「は」
「今日はテメェが前に出ろ」
「はっ」
巨体の背中を眺めながら、俺は口角を上げた。
──────
3つ程、俺は後悔している事がある。
1つ、原作に気付くのが遅かった事。
2つ、人を殺めてしまっている事。
何よりの3つ――
──レヴィ・ア・タンに成った事。
…………なんでだぁあああああ!!?!?
何故よりにもよってムッツリキャラ!?!、と。
俺は絶望した。そう、現実逃避するくらいに。
まさかレヴィとは思わんだろ、幾らなんでも。
そう、レヴィって名前は在り来りだったし。そもそもREBORNのレヴィをよく知らんかったし。周囲からの反応でキモイキャラなんだなぁ…とかいう認識だったし。
てかレヴィの生い立ち知らんし。てかREBORNの世界だと気付ける要素が無いし。判ったのはヴァリアー入ってからですけど何か?(歯軋り)。
なんかいきなり「お前付き合え」とかイケメンに言われて、え?まさかのホモォ…??とか馬鹿な事考えながらどうせ言葉が足りないだけで探しもんだろって付いてったらなんかデカい基地でそのイケメンが後にザンザスだって知ってアハハそっくりさんだぁ〜とか巫山戯てみたけど壁に頭ぶつけてみたらクソ痛くてリアルだって分かって本当に絶望した。
なんか俺の顔誰かに似てるなぁとか、APPクソザコナメクジだって呑気に自嘲してたのはマジモンのフラグだった。
本当にあの頃の俺は馬鹿だった。
ああ、俺の企業界乗っ取る作戦をたてていた頃が懐かしい……何より、なんて平和だったんだ……。
前世の俺の事は何故かよく覚えてないけども、今世の頭の良さは紛うことなきレヴィの能力なんだろうなぁ。なんでそっちは評価されなかったんだろうか。ムッツリとか顔に注目行きすぎだろ!あれ?もしや今世の俺もそんな評価されてるんだろうか…?
………………まぁ…………しょうがねぇな。うん。この顔だもん。俺、自覚してる不細工だから。あ、これじゃレヴィを罵ってる事になるな……てか自覚済みの不細工ってある意味ふっきれてるよね。
……………うるせーー!!!結局世の中顔なんだよ!!!俺だって彼女が欲しいわっっ!!
まぁ人殺しの俺にそんな資格は無い事は分かってるから、こう、ノリだけどね!自重しまっす。
ん──…ああ、そう、俺人殺してんだわ。今更だけどな。
まぁそれが仕事になっちまったし、慣れたと言われればそうでもないけど。最初は吐きそうになったし。実際は吐かなかったけど。手に残った感触は今でも気持ち悪くて、夜は殆ど眠れない。
家庭教師ヒットマンREBORNは、物語よりもキャラ達の個性が好きだった。ヴァリアーはザンザスとかスクアーロが特に好きだった。ボンゴレファミリーだったら雲雀さんとか骸とか、強者なのに癖が強いって所も面白いし、何より過去があって今がある感じの奴等がめっちゃ好きだったな。まぁ、俺は前世どんな奴だったのか知んないから、実際なんでとかわかんないけど。とにかくREBORNには結構憧れてたんだよな。少年ジャンプではあるあるだろ?
でもさ、こうして物語に入って、しかもこうして血に染まった俺自身を見ると……何なんだろうな。
憧れも強さも、なんにも手に掴めない。
ただ言われるがままに従って、更に汚く染まるだけだ。
原作のレヴィはザンザス、ボスに対してとてつもない忠義心があったんだろうが…俺からすればただの暴君に、殺されない事に安心するも忠義心なんて持てる筈が無い。自分で付いて来たけれども、俺を引き摺り込んだのは、あの男。
何を敬う所がある?
──俺はさ、本当にただの一般人だったんだ。
何の変哲も予兆も無かった、何も知らなかった平和を知る一般人。学しか取り柄の無かった一般人。
なのに、恐い。俺の知らないモノ全てが怖いんだ。
なんで人を殺す?なんで心を押し殺さないといけない?
どうして俺は、この世界に居るんだ?
何の為にこの世界に俺は生まれた?
…それだけが頭に巡り巡って、終わらない。
だから俺はこうするんだ。
「レヴィ〜!任務よぉ!」
「──分かった」
「シシッ、レヴィ〜、何してたんだ?」
「気にするな。ベルも行くのか」
「そうだぜ?オカマとレヴィと王子の三人」
「そうか。怪我をするなよ」
「シシッ!誰だと思ってんの?王子だっつーの、んな下手な真似するわけないっしょ」
「さっ、今日もサクッと終わらすわよぉ〜〜」
「5時間以内に帰らなかった奴は後始末なっ!」
「あっ、ちょっとぉ!もぉ、ベルってばせっかちねん。それじゃあレヴィ、アタシ達も行くわよ〜」
「ああ…」
いつも通りの任務をただこなす。それだけ。
人を殺す時に感情は要らない。邪魔なだけだ。
──問題ない。現実逃避は慣れてるからな。
俺はそうやって自己暗示を掛けてきた。
これが俺の日常。俺を、殺す日々。
「うふふ、イイ男が居るとイイんだけどっ」
「…」
ベルを追い掛けて行く脳裏で、ボスの含み笑いが浮かび上がり、知らずうちに拳を握り込んだ。
全てはザンザスに目をつけられたのが始まりでした。
哀れレヴィ。生きろよ。
こんな感じのレヴィですけど、如何ですか?
ほんとはもっと明るいんですよ。ボスが絡まなければ。
レヴィを殺さないように気をつけます。ではでは!