ありふれない吸血鬼の王は異世界でも最強   作:fruit侍

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そういえばこんなのも書いてたなと思いながら仕上げました。

前話からかなり間が空いているため、書き方などが変わっています。

時系列的には音牙君がハジメ君と知り合う前の話になります。


新しい家族 前編

DV。

 

Domestic Violenceの略語であるその熟語は、一般的に家庭内暴力を意味する。その内容は酷く残酷で、決して許されるものではない。

 

少女中村恵里(なかむらえり)も、DVを受けていた者の一人である。しかも恵里に対してDVを行っているのは、実の母親である。それは何故か。少し彼女の過去について話そう。

 

 

彼女は、人間の父親とファンガイアの母親の間に産まれ、両親に愛されながら、彼女は不自由のない幸せな日々を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵里がまだ幼かった頃、父親が交通事故で死亡した。それは、車にはねられそうになっていた恵里を庇った結果だった。

 

そこから、彼女の幸せだった生活は一気に狂い始める。

 

まず母親が豹変した。恵里の母親は、ファンガイアの中でも少し有名な貴族の家に産まれており、お嬢様家庭で過ごしてきた。恵里の父親と出会った時、すぐに一目惚れし、自分の家族の反対も押しきって結婚したのだ。

 

しかし肝心の父親は、もうこの世にはいない。

 

当然、誰よりも父親を愛していた彼女は、誰よりも泣き、嘆いた。愛する人を失った悲しみは、数日間続いた。そしてその数日間で、彼女はある疑問に辿り着く。

 

『何故あの人が死んだ?』

 

それはあまりにも単純そうで、とても複雑な疑問だった。

 

最初は、父親を轢き殺した運転手が原因だと思っていた。がしかし、彼女はそれで納得できなかった。否、納得()()()()()()()()()

 

その理由は父親にあった。彼は、彼女も勿論愛していた。しかし恵里が生まれると、彼女よりも恵里を愛するようになった。それから、彼女は恵里に対して嫉妬を抱くようになった。

 

表ではその嫉妬を隠していたが、裏では今にも爆発しそうなほどに膨れ上がっており、『愛する彼の子供だから』という理由で無理矢理抑え込んでいた。

 

しかし父親が死んだことで、その嫉妬が爆発した。

 

先ずは恵里に対して暴力を振るった。気に入らない相手を身体的に痛め付けるのは、子供でも思い付く行為である。

 

続いて暴力を振るいながら、罵詈雑言を浴びせた。何故お前が死ななかった、お前のせいであの人が死んだ、など恵里からしてみれば理不尽極まりない内容だった。

 

そういった母親からのDVを毎日のように受け続けていた恵里は、抵抗などもせずにひたすら耐えた。抵抗しても無駄だと分かっていたというのもあるが、恵里は自分のせいで父親が死んだということに納得していたからだ。父親を殺した自分には当然の報いだと思っていたので、耐えることができた。

 

しかし小学校中学年くらいになってある日突然、母親から暴力や罵詈雑言を受けなくなった。

 

その理由はとある男だった。母親が、自分が壊れないようにするために、他の男と再婚したのだ。

 

だが、その男に以前の父親のような面は少しもなかった。

 

そして男が自分を見る目。それは以前の父親のような愛情に溢れた目ではなく、自分を性の対象として見ているような、欲にまみれた醜い目だった。

 

そして夜になれば毎日響く声と、何かを打ち付ける音。それだけで何が行われているのか、恵里が理解するのに時間はそこまでかからなかった。

 

それだけなら恵里はまだ耐えられたのだ。

 

しかしその後に、恵里の心が壊れるきっかけとなった事件は起こった。

 

ある日恵里が学校から帰ると、母親は留守だった。どうせまた遊びに出かけてるんだろう、恵里はそう結論付けて考えるのをやめた。父親が死んでから母親は、毎日のように遊びに行くようになったのだ。先程記述した男というのも、遊んでるうちに知り合った男だった。

 

しかし、恵里はもう一つのことに気づくべきだった。

 

男は母親だけでなく、自分のことも食い物にする気でいたということを。

 

幸い恵里が悲鳴をあげ、その悲鳴を聞いた近所の人が警察に通報し、恵里は純潔を守ることができたが、男の逮捕には至らなかった。恵里が恐怖で何も話せなかったこと、男が警察に『恵里が虫に驚いただけ』と供述したこと、母親からのDVによる恵里の傷は既に治っていたことから、証拠不十分とされたのだ。

 

この世界に自分の居場所なんてない。そう悟った恵里の心は、粉々に砕け散った。

 

その結果、自殺することを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

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翌日恵里は二人が起きてくる前に起き、何も持たずに家から抜け出した。

 

恵里が向かっているのは、とある橋。大きな川の上にあり、フェンスもあまり高くないため、夏には若者が飛び込みの場としている場所だ。

 

橋に着いた恵里は、周りを見渡す。時刻は早朝のため、誰も歩いていない。これなら止められる心配もない。恵里は橋のフェンスを上った。

 

だがあと一歩というところで前に進めない。決意はしたつもりだが、やはり未練は残っているのだ。

 

もっと生きてたかったと。

 

しかしその未練も振り払い、恵里は遂に自殺を実行する。

 

その時だった。

 

「そこで何をしている?」

 

後ろから一人の少年の声がした。先の件があったため、恵理は男に強い不信感を抱いていた。恵理は無視して飛び降りようとするが、

 

「答えろ。そこで何をしているのかと聞いている」

 

少年に腕を掴まれ、飛び降りることは叶わなかった。恵理は腕を振り払おうとするが、その少年の力は異様に強く、振り払うどころか動かすこともできなかった。

 

「……ただ座っているだけだよ」

 

「嘘だな」

 

話さなければ腕を離してもらえないことが分かって観念した恵理は、嘘をついて少年が去るのを待とうと考えた。しかし一瞬で見破られてしまう。

 

「ただ座っているだけなら、何故足を橋の内側にして座らない? 後ろから押されたら、川に真っ逆さまだ。そしてここは、丁度川の水深が一番深い場所の真上でもある。大方、入水自殺でもしようとしていたんだろう?」

 

完全に言い当てられた。少年は腕を掴んだままなので、自殺は不可能だ。

 

「何があったのかは知らんが、容易に自らの命を捨てるものではないぞ」

 

「え?」

 

そう言うと少年はあっさり手を離し、その場から去ろうとする。あっさり過ぎて、恵理は思わず聞いてしまった。

 

「止めないの……?」

 

その言葉に、少年は足を止めた。

 

「お前の人生を決めるのはお前自身。他人の人生がどうなろうと、俺には関係ないことだ」

 

だが、と少年は続ける。

 

「悩みがあるのなら、聞いてやらんこともない」

 

それだけ言ってしまうと、少年は本当に去ろうとする。言っていることは本当のことのようだ。

 

「待って!」

 

恵理は少年を呼び止める。もしかしたら、自分を助けてくれるかもしれない。恵里にとって彼は、文字通り最後の希望だった。

 

「……悩みならある。聞いてくれる?」

 

少年は少し黙って、すぐに口を開いた。

 

「お前の名は?」

 

「……恵里。中村恵里」

 

「なら恵里と呼ぼう。着いてこい。俺は紅音牙だ」

 

恵里は少年、音牙に着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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恵里と音牙が来た場所は、森の中にある湖だった。

 

「えっと……ここ何処?」

 

夢中で着いてきていた恵里はここが何処か分からず、音牙に聞く。

 

「いいから見ていろ」

 

音牙は恵里の質問に答えない。着いてくるのは間違いだったかと少し思いながらも、恵里は待ってみることにする。

 

すると、

 

 

ザパァ!!

 

 

「!?」

 

突如湖から城らしき建物が飛び出してくる。予想だにしない展開に、恵里は驚愕する。

 

「キャオオオオオオン!!!」

 

「!!!?」

 

そしてその城に竜の頸と翼が着いていることに、恵里は硬直する。

 

「ほら、行くぞ」

 

「え、いや、ちょっと、いろいろと突っ込みたいんだけど!?」

 

「安心しろ、食われることはない」

 

そうじゃないんだよ、と恵里は頭を抱える。

 

(はは、もうどうでもいいや)

 

考えることを諦めた恵里は、城のような竜の方へ歩いていく音牙に着いていく。




次話は今日の夜九時に投稿されます。

ハジメ君が仮面ライダーになるとしたら?(変身しないという選択肢はなし)

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