1話ごとは短いけど更新頻度は高めたい。
突然だが、俺の特技は家事全般である。
炊事洗濯、掃除とそつなくこなせるし、料理もそれなりに自信がある。
もちろん、プロレベルではないが他人よりは得意だと胸を張って言える。
こんなことを言うと、テンプレオリ主乙と思われるかもしれないが、俺の場合はかなり切実な理由があり、そのために必死に身に着けたのだ。その理由としては、やはりこの世界の異常性。つまり、女性が全員ヤンデレであるというのが理由だ。
要するに――
「チヒロ! 俺の洗濯物を漁るなと何度言えば分かるんだ!!」
「そんな! 今日は体育の授業があったから、イッテツ君の汗の匂いを堪能できると思ったのにー!!」
この馬鹿な幼馴染みが、俺の家に侵入してまで俺の洗濯物の臭いを嗅ごうとするからだ。
洗濯物を放置しようものなら、1日中嗅いでいかねないので必ず自分で洗濯するようにしている。
幼少の頃に、チヒロが洗濯物は任せてと言って、そのまま俺のパンツを盗んでいった衝撃は未だに忘れられない。
「あのなぁ……何度も言っているが、俺にも羞恥心ってものがあるんだ。女の子に匂いをかがれて、『くさッ!』とか言われたら、その日1日中は引き込もるぞ」
「大丈夫だよ! 汗が熟成されてちょっと臭くなったぐらいの匂いとか私の大好物だから!!」
「……やっぱり、臭いのか」
フンフンと鼻を鳴らし、嬉しそうに尻尾を振るチヒロをよそに俺は少しへこむ。
今度から制汗剤の量を増やすとしよう。
「あ、違うよ。臭いって言っても、『クサッ!?』って感じじゃなくて、『くっさ♡』って感じの思わず発情しちゃう匂いだから」
「そうか、何度も言うが俺の洗濯物に触れるなよ。というか、洗面所に踏み入れるな」
「ごめんなさい、土下座して靴舐めるから許して。いや、むしろ、舐めさせて!」
「そろそろ、晩飯が出来るから汚れるようなことはするなよ」
勝手に土下座し始めたチヒロを置いて、俺は台所に戻る。
こいつは犬娘のせいか、自分が主人と認めた相手の言うことはよく聞く。
いや、こいつのご主人様になんてなった気はないのだが。
「あ、料理なら私も手伝うよ」
「自分の血を料理に混ぜないならいいぞ」
「……なんで?」
「不衛生だからに決まっているだろう!」
そして、自分で料理が出来るようになった理由は、異物混入(血とか薬)を防ぐためである。
この世界の女に料理を任せようものなら、何が混入されるか分かったものじゃない。
いや、ある意味でそれが何かを予想できてしまうのが余計に辛いのだが。
「そんな料理の最高のスパイスは愛情だって、お義母さんも言っていたよ!」
「愛情という名の物理は要らん! 後、今のお母さんのニュアンスおかしくなかったか!?」
まるで、カレーに福神漬けをつけるのを異常だと言われたかのように、チヒロが抗議の声を上げるが、全面否定してやる。因みに、味が不味くなる的な否定方法はしてはいけない。普通に、血を入れても美味しくなるレシピを開発してくる。というか、こんな世界なので、ネットで検索すれば簡単に出てきてしまう。
なので、相手が食い下がった時には別の理由を使うようにしている。
「大体な、チヒロ。血を入れるってことは、お前自分で自分を傷つけるだろ?」
「大丈夫だよ。ちょっと切るぐらいなら、魔法ですぐに治せるし」
「そういう問題じゃないだろ。俺はお前が傷つくのを見るのが嫌いなんだよ」
「…! イッテツ君……」
お前のことを大切に想っている的なニュアンスで伝えると受け入れられやすい。
現に、チヒロも頬を赤らめて俺の方を見つめている。
これで、今日の所は大丈夫だろう。
自分を傷つけずに、血を流す方法なんてないのだから――
「あれ? でも、月1のあれなら傷つかずに――」
「チヒロ、ちょっと味見をしてくれないか!?」
何かヤバい方向に向かいかけていたチヒロの口を、唐揚げで塞ぐ。
あれの血が混ざった料理なんて、食欲が失せるなんてものじゃない。
知ったら、胃の中のものを全部吐き出す自信がある。
「んー! 美味しい! やっぱり、イッテツ君の料理はおいしいね」
「ありがとう。じゃあ、料理をよそうから皿の準備をしてくれ」
「はーい」
空腹なのに、ちょっと食欲が失せてきたが、そんなことを一々気にしていたらこの世界では生き残れないので、俺は心を無心にして料理を皿に盛り付けていくのだった。
美少女幼馴染みが毎朝、起こしに来てくれる。
言葉にすれば男の理想。嫉妬されても文句は言えない立場だ。
しかし、油断は出来ない。
この世界の女はヤンデレだ。
この世界がもしギャルゲーの世界なら、朝に俺を起こしに来て料理まで作ってくれることに、素直に嬉しさを感じていただろう。というか、多分惚れてた。だが、何度も言うがこの世界の女はヤンデレしかいない。
テンプレ属性にヤンデレを加えるとどうなるかというと。
「あ、おはよう、イッテツ君。今日も早いね」
「おはよう、チヒロ……で、如何にもピッキングが出来そうな、その手の道具はなんだ?」
日課の早朝ランニングに出るために、玄関の扉を開けたところでチヒロと目が合う。
その手には鍵屋が使うような、ガチ目な工具が握られていた。
「え? 安かったからアマゾンで買ったやつだよ?」
「それで何をしようとしたか聞いてるんだよ!?」
「鍵を開ける以外に何か使い方があるの?」
「普通にチャイムを押せ!!」
キョトンとした顔で首を捻るチヒロに思わず叫ぶ。
と、言っても、早朝なのでご近所に配慮して声は抑えめだが。
「チャイムを押したらイッテツ君が起きちゃうし。本当は、イッテツ君が寝ている間に朝ご飯を作って待ってるつもりだったんだけど」
「むしろ起こしてくれよ。知らない間に自分以外の人間が部屋にいるとか、恐怖でしかない」
昔は俺も油断していたのでよく侵入を許していた。
朝起きたら枕元に包丁を持った幼馴染みがいた時の衝撃は、今でも忘れられない。
思わず悲鳴を上げて、情けなく母親に助けを求めたのもしょうがないだろう。
「というか、無理に開けたら鍵が壊れるからやめてくれ」
「でも、イッテツ君に合鍵を取り上げられちゃったし……」
「いいか、チヒロ。合鍵っていうのは、家主から貰うものであって、間違っても自分で型を取って作るものじゃないんだ」
「ううぅ……未来の旦那様の防犯意識が高くて嬉しいやら、悲しいやら」
「防犯意識じゃなくて常識の話をしてるんだが?」
思わずビンタしたくなったが、喜ばれるだけなのでグッと堪える。
大体、ギャルゲーのヒロインだって合鍵は貰ってから家に入る。
間違っても家主の知らないうちに制作して、忍び込むために使うものじゃない。
「そもそも、イッテツ君はどうして幼馴染みの私が勝手に家に入るのが嫌なの?」
「お前が俺の部屋のゴミを漁ったり、俺のベッドの下に犬娘物のグラビア本を仕込んでくるからだよ」
俺が自分で掃除を行う一番の理由は、放置しておくとチヒロにゴミを漁られるからだ。
特にティッシュは要注意だ。
何を期待しているのか分かりたくもないが、高確率で持っていかれる。
「え? でも、イッテツ君って尻尾とか好きでしょ?」
「いや、嫌い――待て! 嘘だ! そんな思い詰めた目で尻尾に包丁を当てるな!! 正直に言って尻尾のある女性は好きだ!!」
イッテツ君に嫌われる尻尾なんて、とハイライトの消えた目で切り取ろうとするチヒロを慌てて止める。クソッ、何故チヒロは俺の性癖が尻尾のある女の子だと知っているんだ。おかげで、犬娘物のグラビア本(主演チヒロ)の特級呪物を見るはめになった。
一瞬でも性欲に負けて、こいつの用意したグラビア本を見た過去の自分をぶん殴ってやりたい。
「じゃあ、結婚しよ」
「お前はこの世界に、何人尻尾を持っている女性が居ると思うんだ?」
「……尻尾を刈り取るぐらいなら、別に殺すわけじゃないから許されないかな」
「それが許される世界なら滅んだ方がマシだ。というか、魔法ですぐに再生するだろ」
チヒロが他の女の尻尾を残らず刈り取ればとガチ目に呟くので、やむを得ずチョップを入れて俺の方に意識を集中させる。魔法でいくらでも再生できるとは言え、正当な理由なく他人を傷つけるのは犯罪になるからな。
女が男を包丁で刺すのは? ただの自由恋愛だとよ、こんちくしょうが!
「と、お前の相手をしてたらもうこんな時間か。チヒロ、俺はランニングに行ってくる」
「じゃあ、私は朝ご飯を作っておくね」
「待て、何食わぬ顔でピッキングを再開するんじゃない。大体、目の前に家主が居るんだからそっちに許可を取れ」
「イッテツ君。イッテツ君の家の鍵をピッキングで開けていい?」
「普通に家に入っていいか、聞けって言ってるんだよ」
何なの? お前のピッキングにかける異常な情熱は何なの?
将来はルパン三世にでもなるつもりなの?
「はぁ……チヒロ、散歩に行くぞ」
「散歩!」
このままここに放置しても碌なことにならないのは分かるので、一緒に連れて行くことにする。
散歩というワードに尻尾をブンブンと振っているのは、犬娘の面目躍如と言った所だろうか。
「うん! ご主人様と一緒に散歩に行く!」
「しれっと人を飼い主扱いするな。後、期待を込めた目で首輪とリードを自分に装着するな……だから、俺にリードを握らせようとするな!」
ハァハァとまるで本当の犬のように息を荒げて迫ってくるチヒロ。
ただ1つ犬と違うのは、こいつは発情して息を荒げているということだ。
このドM雌犬が。
「その罵倒おかわり! あ、雌犬の所を雌豚に変えてもいいよ」
「人の心を読むな!!」
そんな不毛な言い争いをしながら、俺の不幸な1日が今日も始まりを告げるのだった。
こんな感じで基本は短めにギャグをやってくつもりです。
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ヤンデレのどのタイプが好きかのアンケートがあります。
今後のヒロインに活かしますので、よければご回答お願いします。
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