「いっけなーいちこくちこくー」
「棒読みしながら俺にタックルしてくるんじゃねえよ、猫林ィイイッ!!」
ランニングも終わり、チヒロを何とかまいてから登校していた俺の腹部に、鈍く鋭い一撃が叩き込まれる。
下手人は猫林レオナの頭部。
獅子娘、つまりはライオンであるこいつの一撃はハッキリ言って強烈だ。
肋骨に何本か罅が入った音がしたのは、多分俺の気のせいじゃない。
「すいませんいそいでいたものでまえをみていませんでした」
「お前、俺を見つける前は普通に歩いてただろ? そもそも、朝礼まで後1時間もあるのに遅刻もくそもあるか」
「いえ、イッテツさんとのスキンシップに50分程使うので、実質的には10分で登校する必要がありますわ」
「もう少しマシな時間の使い方を覚えた方が良いぞ?」
俺をタックルでなぎ倒したまま、俺の喉元に甘噛みしてくる猫林を引き剥がそうとするが、腐ってもライオン。一応は伝説の存在であるフェニックスの俺でも引き剥がせない。
「大体、この手のテンプレはどっちかが転校生だろう。俺もお前も2年生だぞ」
「
「そうか、じゃあ俺が卒業しても永遠に1年生でいろ」
「その際は結婚して、永遠の新妻をやるのでご心配なく」
「心配しかねぇよ、主にお前の頭の中身が」
甘噛みにも満足したのか、優雅に立ち上がりスカートの裾を正す猫林。
この手のテンプレでは、パンツが見えるのがお約束なのだがガードは完璧だ。
「あら、
「いや、テンプレみたいにパンツは見えないんだなって」
「パ、パンツですか!?」
顔を赤くして、サッとスカートを抑える猫林。
そして、俺の方をできる限り見ないようにしながら、呟く。
「こ、このような往来でハレンチですわ!」
「え? 俺をタックルで押し倒して甘噛みするより恥ずかしいの?」
意味が分からない。羞恥心なんてものがあるのなら、先程の行動の時点で穴に入るどころか、ブラジルまで行っていなければおかしいだろう。
「も、もちろん、イッテツさんが望むのなら構いませんが……その、初めてはベッドの上で優しく」
「待って、確かに俺の失言だったけど、そこまで言ってないよね?」
「そんな! 乙女の純情を弄んだのですか!?」
「弄ばれたのは俺の喉元だよ」
如何にもショックという表情で立ち尽くす猫林を放置して、俺も立ち上がって制服についた土埃などを払う。もしも、相手が普通の女性なら謝り倒していただろうが、こいつら相手にはこの程度雑な対応の方がいい。
「たく、いくらフェニックスで体は怪我してもすぐ治るとはいえ、服は汚れるんだぞ。今日は月曜日なのに、いきなり汚れちまったじゃねえか」
「まあそれはたいへんですわね。さ、こちらに変えの服を用意していますので、着替えてくださいませ」
「今、どこから取り出したんだよ。というか、なんで俺の制服のサイズを知ってるんだ。後、下着まで当たり前のように出すんじゃねえよ。さっきまでの恥じらう乙女はどこに行った?」
俺の着た制服を手に入れるためか知らないが、手際よく取り出された替えの制服に頬を引きつらせる。
流石に女性に対してパンツって言ったのは、まずかったかなと思った俺の過去を返せ。
「大丈夫ですわ。先っぽだけですから、先っぽだけですから、制服を着替えて頂いて脱いだものは私の家宝に…コホン、私が洗って返しますので」
「いやだよ。大体、服の先っぽってなんだよ。靴下の事か?」
「ハ!? 靴下の替えを持ってくるのを忘れていましたわ……この猫林レオナ、一生の不覚」
「お前の一生って随分安っぽいんだな」
絶望した表情で愕然と膝をつく猫林に冷たく、言い放ちながら俺は学校に向けて歩き出す。
「あ、待ってくださいませ! せめて、パンツ! パンツだけでも替えて行ってくださいませ!」
「どういう状況ならこけて真っ先にパンツが汚れるんだ!? というか、何で俺に言われた時は恥ずかしがって、自分で言うときは真顔なんだよ」
「それは、その、殿方に見られると思うと羞恥心が……」
「せめて、往来でパンツと叫ぶことにも羞恥心を発揮してくれ」
なおも縋ってくる猫林だったが、俺は気にしない。
ここまで騒いでいれば、耳と鼻の良いあいつが気づいてこっちに向かってくる頃だ。
「ちょっと! そこの泥棒猫! イッテツ君のパンツは私の物だよ!!」
「また、犬コロ風情が邪魔を。犬は犬らしく、骨でもしゃぶっていなさい」
「それはイッテツ君が死ぬまで取っておいてるの!」
「イッテツさんの骨をしゃぶるですって…!? なんて、魅力的な! 許しませんわ!」
一応は今際を看取ってくれる宣言だと思って現実逃避しつつ、俺は言い争うチヒロと猫林を置いて学校に向かうのだった。
「イッテツさん、お弁当を作ってきたのですが食べて頂けませんか?」
「な!? 今日は私が作ってきたお弁当を食べてくれるよね!」
「すまん。弁当なら自分で作って来てるからいらん」
昼休み、学生達が授業から解放される待ちに待った時間。
その時間に俺はげんなりとした顔で、自分の弁当箱を掲げてみせる。
「そ、そんな、せっかくイッテツさんのために愛情を込めて作ってきましたのに……」
「そうだよ。女の子が作ったものを拒否するなんてダメなんだよ!」
しかしながら、それだけではチヒロと猫林を説得することは出来なかった。
いつもは犬猿の仲だというのに、こういう時だけは手を組んで来るので、性質が悪い。
「お前達が普通の料理を作って来てるなら、食ってもいいんだがな」
「問題ありませんわ。味見はしっかりとしましたので、それに
「うんうん。
「そうかそうか。で? その愛情の中身はなんだ? 媚薬とか惚れ薬じゃないなら食べてやる」
ジロリと睨むと揃って気まずそうに目を逸らすチヒロと猫林。
どうやら、俺の予想はピタリと的中していたようだ。
いや、当たってもまったく嬉しくはないんだが。
「はぁ……分かった、食べる」
「「イッテツ君(さん)!」」
「といっても、流石に1人で全部は食べきれないから少しだけな」
中身が分かっているとはいえ、女の子の手料理であることに変わりはない。
男として食べないという選択肢は取れなかった。
こんなことばかりしているから、いつまでも付きまとわれるのだと言われてしまえば、そうだとしか言えないが、俺にも男としての見栄がある。
「では、
「抜け駆けは許さないわよ! ほら、イッテツ君。あーん♡」
美少女2人からのアーン。
男冥利に尽きる光景だろう。
まあ、当の俺は薬という単語が気になってしょうがないのだが。
「「あーん」」
何故だろうか。
俺には2人の姿が、舌を引き抜こうとする閻魔大王にしか見えない。
というか、下手すると食べると同時に、本物の閻魔大王に会いそうで恐怖しかない。
「……いただきます」
かといって、逃げることも出来ないのでパクリと口にする。
うん。2人とも自信作というだけあって、味は普通に美味しい。
もっとも。
「………なあ、2人とも。なんか急に体が熱くなって動悸が激しくなってきたんだが」
「まあ、大変ですわ! 私が入れた媚薬がさっそく利いてきたのですね! すぐに共にベッドに…もとい、保健室へ向かいましょう!」
「はぁ? 何言ってるのよ。私が入れた惚れ薬の効果に決まってるでしょ? ほら、イッテツ君。いつもより、私が魅力的に見えるでしょ?」
「お前らには罪悪感というものが無いのか?」
明らかの体に変調をきたす何かが仕込まれていたのだが。
「もちろん、あります。罪を犯した責任は必ず取りますので、さあ共にベッドに向かいましょう」
「大丈夫だよ。イッテツ君と私はもともと相思相愛なんだから何も変わらないよ」
自分達は薬を飲んでいないのに、やたらと発情する2人。
いや、味見したとか言っていたから、もしかして自分達薬を摂取しているのか?
まあ、何はともかく。
『クリーン』
「「あ」」
毒を摂取したなら、すぐに解毒すればいい。
俺は自分と、ついでに2人に魔法をかけて惚れ薬やら媚薬を無効化する。
こういうことが出来るから、この世界は便利だ。
いや、魔法があるせいで、逆に女側のブレーキが無くなっているのかもしれないが。
「今度は何も入れずに作ってこい。そしたら、最後まで食べてやる」
「くっ……魔法の存在を忘れるなんて
「私だって、一口食べただけで永遠に虜になるような料理を作ってくるもん!」
「だから、普通に作ってこいって言ってるだろ!!」
要らない根性を発揮する2人にツッコミを入れながら、内心でため息をつく。
普通にしてくれたら、こっちから告白するのにと。
どのヤンデレが人気かアンケートしてます。
今後のヒロインの参考にしますので、よければお願いします。
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