気づいたら竜種に転生していた件   作:シュトレンベルク

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皆さま、新年あけましておめでとうございます。
これからも遅々とした形ではありますが、これからも更新は続けていくつもりですのでよろしくお願いいたします。


六星竜王

「主様、お久しぶりです。フウガ・ゼノ、お呼びに従い参上いたしました」

 

「この間ぶりだな、フウガ。ラミリスは壮健か?」

 

「ええ。リムルの旦那が用意してくれたベレッタのおかげで、俺も安心して離れられるってもんですわ」

 

「ほう?そんな事もしてくれていたのか」

 

「つっても、この間の魔導巨人――――聖霊の守護巨像(エレメンタル・コロッサス)の代理ですがね。そりゃもう、完膚なきまでに破壊されてましたよ」

 

「ふっ、余計な挑発でもしたか?あの年頃のラミリスは精霊たちの母というにはいささか浅慮で力も弱い。大方、相手の実力を測り損ねたんだろう」

 

「まっ、それはご想像にお任せしますよ。それより聞きましたよ、主様。あのラーマが暴走しかけて、そんなラーマを半殺しにしたとか?あいつが暴走しかけるのも信じがたいが、主様が半殺しというのも中々信じがたい。配下には甘いと言われても仕方ないほどのあなたが。――――何をされたんですか?」

 

「お前たちを招集させた理由だな、それは。お前たちに与える物を先んじて与え、その鍛錬をしようとしたら、といったところだな。あいつの勤勉さを甘く見すぎた結果だよ」

 

「しすぎた、と?」

 

「アイツが深淵を覗きすぎてな。まぁ、俺がやってみろと言った手前、偉そうな事は言えん。だが、やはりあいつは素晴らしい。俺の望んでいた以上の領域に足を踏み入れたんだからな」

 

「期待以上、でしたか」

 

「そうだな。というよりは、俺がラーマを甘く見すぎていたのかもしれん。あいつの謙遜を真に受けすぎていたというべきかもしれんがな」

 

 ヴェルディアスが望んでいた以上の成果を、ラーマは示してみせた。ラーマの才覚に関しては重々承知していたつもりだったが、その認識を改めるべきだと思わせられる時間だった。ヴェルディアスは精々、片端でも構わないから理解する事が出来れば十分だと思っていた。

 基軸世界と呼ばれるこの世界の法則とは全く異なる法則(ルール)。それがヴェルディアスの与えた力なのだ。そんな力の深淵を覗くほどの理解力、しかもヴェルディアスから何の説明も受けずにそこまでの領域に至る。その姿に、ヴェルディアスはラーマの才覚の一端を見た。ラーマは既に、竜種へ至るための階、その最終段一歩手前まで至っている事を理解せざるを得なかった。

 

「しかし、星の力、ですか……そんなものがあったんですね。知りませんでしたよ」

 

「当然だろう。ほぼ誰にも話したことはないからな」

 

「ほぼ、という事はどなたかには話されていたのですか?」

 

「精々、アリーシャぐらいのものだ。あとは、十二星神の『智慧神(アテナ)』か。他の者にはきちんとした説明をしたことはないよ。至れば分かる事だからな」

 

「それはそれは。なんともスパルタな事ですね」

 

「スパルタか。まぁ、そう言われても無理はないが。こればかりは説明されても理解できるとは限らんからな。結局はその領域に至ってみない事には理解などできないだろうさ」

 

「それは……主様の出身にも関わりがある話ですか?」

 

「……何のことだ?」

 

「またまた。そうやって御隠しにならずとも宜しいでしょうに。常々思っておりましたが、我らが主の思考は私どもとは違いすぎる。まるで違う世界から(・・・・・・・・・)来たかのように(・・・・・・・)

 

「……珍しい事もあるものだな。お前はそういう、余計な詮索はしないものと思っていたよ」

 

「まぁ、俺も普段ならこういう藪蛇はしたくないんですがね。ただ、聞かなければならない時は聞きますよ。この世界でも頂点に君臨していると言って遜色ないあなたが、こんなに急に戦力を増強している姿を見せられれば」

 

「なるほど。不安を感じさせてしまったという訳か」

 

 無理もない。ヴェルディアスは誕生して以降、率先して動くようなことはなかった。弟子たちを増やしたことも、様々な者たちを救ってきたことも、様々な存在を滅ぼしてきたことも、その多くが成り行きであることが大半だった。そんな事なかれ主義とでも言うべき存在が、ここまで急に事態を動かしている。その事に、不安を感じずにはいられないのは当然の事だ。

 ヴェルディアスもそう言われては、反論のしようもない。事実として、その通りだからだ。ヴェルディアスは急いで戦力を整えなければならない。そういう急務に追われているのは言い訳のしようのない事実なのだから。

 

「いずれ分かる、というのは逃げか。だが、お前だけに説明すると二度手間になってしまう。他の竜王が揃ってからでも構わないか?」

 

「もちろん。ご説明いただけるのなら、それに越したことはありません。それに、説明していただけないとしてもどうせやる事には変わりないのでしょう?」

 

「まぁな。その一件がなくとも、いずれは訪れていた可能性の高い事だからな」

 

「では、無理強いはしないでおきます。他の連中にバレても面倒にすぎますからね」

 

「お前らしいことだな。さて、そろそろ時間か」

 

 ヴェルディアスがそう呟くと、目の前に四つの魔法陣が現れた。そこには黒い装束を身に纏ったクロムとそれとは対照的に白い装束を身に纏った金髪の少女(ミツビ)。そして中華服を身に纏う赤髪の青年(ホムラ)と同じく中華服を身に纏う蒼髪の女性(ミズリ)が姿を現した。

 

「ヴェルディアス様におきましてはご機嫌麗しく。招集に応じ、クロム・ブルグ参上いたしました」

 

「同じくミツビ・ニュー参上いたしました。ご尊顔の拝謁を賜り、光栄の極みにございます」

 

「ホムラ・ローグ、ここにまかりこしましてございます。主上におかれましてはご健勝のこと、なによりでございます」

 

「主様、ミズリ・エルここに参りました。その威光、聊かもお変わりのないようでなによりでございます」

 

「ああ、皆変わりのないようで何よりだ。そこまで硬い対応を取らずともいい。まずは近況でも聞かせてくれ。特にホムラとミズリは顔を合わせるのも久しぶりだ。土産話でもあると嬉しいな」

 

 ヴェルディアスはにこやかに配下の到着を歓迎する。主であるヴェルディアスをして、六星竜王が一堂に会する場というのは中々に珍しい場面である。加護を与える事も大事ではあるが、こうして顔を合わせる機会が珍しい相手とは出来る限り会話を交わしたいと思っている。

 

「私どもの話がヴェルディアス様の無聊の慰めとなるならば、喜んで。しかし、ヴェルディアス様。何かご用向きがあったのではありませんか?先にそちらを済ませてからにいたしましょう。ヴェルディアス様も心配事を片付けてからの方がご安心いただけましょう」

 

 ミズリのその言葉に、久方ぶりに顔を合わせたクロムとミツビ、フウガは驚いていた。ミズリはかつてのクロムやフウガの言葉通り、阿婆擦れという評価を受けていた。それは魔物の身の上でありながら、自分よりも上位に位置するヴェルディアスの子を欲しがり、その上で同僚や部下である者たちに多大なる迷惑をかけてきた。

 魔物はその性質上、子供などを作ればその力が大きく削がれる。ヴェルディアスの配下でありながら、その主たる存在を貶めんとする。その思想そのものを六星竜王のほとんどの者が毛嫌いしていた。だからこそ、その変化は驚愕に値した。

 

 ヴェルディアスもまた驚いていたが、すぐに笑みを浮かべて手を差し伸べた――――と思いきや。デコピンの形に変えて、ミズリの額に当てた。それと共に、まるでガラスが砕け散ったかのような音がその場に響き渡った。その音に、ホムラは額を手で抑えていた。

 そして、ミズリは少し仰け反って顔を上空に向けた。そして、目を見開いた。偶々その場面を見ていたメイドの一人が、ミズリの変貌に悲鳴を上げていた。先ほどまでは静謐といっても差し支えなかったミズリのオーラが次の瞬間、荒々しい濁流の様なソレに変化したからだ。

 

「ああ、主様!愛のムチですか?愛のムチなのですね!?あのような姿を晒されるよりも、こちらの方が好ましいという事ですね!?流石は主様です!私のありのままを受け入れてくださる方はやはり御身を除いて、他にはいらっしゃいません!」

 

「暗示の類かな?何やら術式がかかっていたように見えたから破ったんだが、自分を抑え込んでいただけだったみたいだな。いや、何か洗脳でもされたのかと思ったぞ」

 

「素の私はどうも毛嫌いされているようでしたので、ちょこっと弄ってみましたの。いかがでしたか、主様?」

 

「悪くはなかったよ。でも、俺は今のお前を見て六星竜王に加えようと思ったんだ。お前の愛情の示し方を周りの者が嫌っているからと言って、別にそれに従う必要はないんだ。好きにするといい。俺はお前の在り方を否定はしないから」

 

「ああ、ありがとうございます主様!やはり私の愛を受け止められる方は御身だけです!どうか私と共に子を生してくださいませ!きっと素晴らしき子が産まれる事でしょう!」

 

「それとこれとは話が別。それに、今はしなければならない事があるからな。どちらにしてもその話は乗れないよ」

 

「そんな~……でも、諦めませんわ。いずれ!いずれ必ず主様の子供を産んでみせますわ!」

 

 あまりの豹変具合に他の三人は開いた口がふさがらなかった。残りの一人ことホムラは本格的に見ていられなくなったのか、右手で顔を覆って上を向いていた。一番に意識を取り戻し、ホムラに詰問したのがミツビだった。

 

「ホムラ君、これは一体どういう事でしょうか?一番新参者である君に任せる事を心配はしていましたが、余計に酷くなっていませんか?」

 

「ま、待ってくださいミツビ姐さん。俺もこの結果は予想外でして……」

 

「予想外?では、君の予想とは一体どういう物だったのですか?」

 

「ミズリの姐さんは皆さん知っての通り、我が強いだろ?特に主上にこだわっていらっしゃる。俺にはよく分からねぇけど、強い遺伝子を残したいと願う雌の本能?とか言ってたし。だけど、そのガツガツした姿勢が良くないんじゃないか、って言ったんだよ」

 

「それで?」

 

「だから、自制心を養ってその姿勢を抑え込めば喧嘩にはなりにくいんじゃないかって言ったんだよ。でも、『自制心を養うとか無理!』とか言われたから、じゃあ一先ず暗示を使ってみたら?って提案したんだよ」

 

「それで、その結果がアレですか?」

 

「……多分、予想だけど暗示で抑圧されてた分、爆発してるんじゃないかと」

 

「爆発、ね……あまり変わっていないのでは」

 

「それは……俺には何とも言えないです」

 

 ホムラは目の前で行われているやり取りから目をそらしてそう言った。自分から提案しておいてなんだが、こんな風になるとは全く予想だにしていなかったのだ。ホムラ自身はお世話(?)になっている恩人が同僚に毛嫌いされているのもなんだったので、もう少し良好な関係にしようと知恵を絞っただけなのだ。

 それが分かるからこそ、ミツビはホムラを責めずらかった。ホムラに迷惑をかける目的があった訳ではなく、彼は若輩者なりに先輩であり同僚でもある自分たちの仲を案じただけなのだ。だからこそ、ホムラを責めるのは筋違いだ。一番責められるべき存在がいるとすれば――――

 

「おい、いい加減にしろ阿婆擦れ。ヴェルディアス様に対して迷惑だろう。要件を優先させたのは貴様の癖に、自分の欲求を優先させるとは何を考えている」

 

「相変わらず、むさ苦しいわねクロム。昔はあんなに小さかったのにねぇ」

 

「昔の話など下らん話はしておらん。そもそも、強者としての誇りも持っておらん貴様に、昔の事など言われたくはない」

 

「強者としての誇り、ね。そんな物に何の意味があるというのかしら?この場にいる私たちの誰もが、偉大なる宗主であるヴェルディアス様には敵わない。どんぐりの背比べに一体、どれほどの価値があるの?」

 

「ヴェルディアス様に敵う者などいる訳がない。その意見には同意します。しかし、だからといって殿上人と評するべきヴェルディアス様を引きずり落とすような行為が許されるわけではない。大地に生きる多くの者からすれば、我々もまた強者。ならばそれに見合った振る舞いがあるべきでしょう?」

 

「あなたこそ女であるというのに分かってない。強者だからこそ、次代には最強を願う。そうでなくても、ヴェルディアス様をお慕いする者であれば、その子を我が身に宿したいと願うのはごく自然な事だと思うけれど……あなたは違うの?ミツビ」

 

「世迷言を……我々は大地竜の眷属であり、その御許にて侍る事を許された特別な存在。その行為に感謝の意を帯びて侍る事はあれど、欲情を抱くなど許される筈がない。そもそも、子供?我らは次代に任せなければならないほど弱くなどないし、願いを託すような事はしない」

 

「ああ~……お前ら、うるせぇよ。主様の話が始まらねぇだろうが。痴話喧嘩していたいんなら後でしろ。お前らの不満のぶつけ合いに俺を巻き込むんじゃねぇ」

 

 フウガは言葉と共に、諍いを続ける同胞を威圧する。その威圧は若干ではあるもののふざけていたミズリを始め、クロムとミツビ、ついでにホムラを圧迫する。面倒くさがりではあるが、フウガはこの場に集う六星竜王の中で最も強い。ラーマに次ぐ強者、それこそがフウガ・ゼノと名付けられた個体である。

 

「主様、喧しくて申し訳ありません」

 

「いや、構わんさ。お前たちのやり取りを見るのも久方ぶりだ。見ていて楽しいよ」

 

「それは何よりでございます。しかし、私としましては先に要件を済ませていただきたい。時間は、そう多く残されている訳ではないのでしょうし」

 

「それもそうだな。では、始めようか――――駆動せよ、我が星よ」

 

 ヴェルディアスの右手に光が集まり始めた。その光景に、四人は自然と膝をついた。その光から、莫大なまでの力を感じたからだ。膨大な力の奔流のようでありながら、それは完璧なまでに制御されている。そして、同時に理屈ではなく感覚で理解していたのだ。目の前にあるソレが、何かの切れ端でしかない事を。

 

 末恐ろしい。まさしく、その一言に尽きる。少しはこの手が届いていると思っていた。名を与えられ、繋がりを与えられ、力を与えられた。無論、それを己の物とするために努力もしてきた。しかし、これでは影を踏めているかすら怪しくなってくる。

 

「――――不安がるな。お前たちもまた、この力を、『星辰』を得るのだから」

 

 光はその輝きを増して四人の身体に浸透していく。本来、段階を踏んで解放されていく階をヴェルディアス自身の手によって昇らされていく。しかし、それによって暴走するなどという事はなく、それがどういう力なのかを各々に刻み込んでいく。その膨大という言葉では足りないほどの情報量に、険しい表情を浮かべる四人。

 

「さぁ、星をその身に宿し、その輝きの奔流へと昇り、その輝きを自らの物として受け入れよ。お前たちの輝きが如何なるものとなるのか、俺に見せてくれ」

 

 その言葉を最後に、四人は気絶した。ヴェルディアスとしても無茶な事をしたという自覚はある。しかし、懇切丁寧に階を登っていく時間を作る余裕はない。急がなければならない。その焦燥感を何とか抑えながら、四人が目覚めるのを待つのだった。

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