目を覚ますと、夕立は鎮守府の病室のベッドで寝かされていた。
体が少し熱く、まるで熱でもあるかのような気分で、意識が今にもどこかへ飛んで行ってしまいそうな感じがした。
周りには誰もいないみたいだった、夕立は自分の真上にある天井のシミを見つめながら時間が経つのを待つ。
明石さんは不在なのだろうか、そうしたら誰か代わりの艦娘がいるはずなのだが、それらしき姿は見えない。
恐らく、しばらく席を外しているだけだろう。
時間が経てば戻ってくると考えた夕立は、そのまま待つことにした。
「……は、……はどうなった……?」
しばらく経ったあと、廊下から女性の声がした。
どこか聞き覚えのある声で、聞くと少しだけ安心できるような、懐かしい声だった。
ドアが開き、中に一人の女性と明石が入ってきた。
女性の顔はモヤのようなものがかかっていて、はっきりと視認することができない。
「大丈夫だった!?」
慌てた様子で女性が夕立の肩を掴む、夕立は声を出して「大丈夫」と伝えようとしたが、声が掠れて言葉に出来なかった。
喋ろうとしても喋り出せず、ただただフワフワと浮いている意識の中で、目の前の女性を見つめることしか出来なかった。
「良かった……本当に良かったよ……」
女性は肩を震わせながら、夕立を抱きしめる。
「ねぇ、君のあの姿は━━━━━━━」
女性がそこまで口にした瞬間、夕立の意識は途絶えてしまった。
「っ!」
目を覚ますと、夕立は病室のベッドに寝かされていて、夕立のベッドの隣には時雨が座っていた。
「目が覚めたかい?」
「あれ……夕立は……」
「君は浜辺で倒れていたんだよ、暴走した痕跡と共にね」
時雨はリンゴを剥きながら言った。
「近くには誰かいなかったっぽい?」
「いや、君一人だったよ」
(あれ……礼花さんはどこに行っちゃったんだろう……)
夕立は顎に手を当てて考える。その時、夕立の唇に冷たい感触がした。
時雨は無言でリンゴを差し出し、夕立に食べさせようとしていた。
「あ、ありがとっぽい」
「本当に、無茶はやめてくれないかな……これでも、同じ艦隊に所属する者として結構心配してたんだからね」
「ごめんなさいっぽい……」
夕立は罪悪感を感じたが、それと共に、時雨が自分を心配してくれたことで、少しだけ嬉しさを感じた。
「時雨って、もっとクールなイメージがあったっぽい」
「そうかな?確かに所属したての頃は慣れない環境だったから、少し口下手だったかもしれないけどね」
「結構威圧感が凄かったっぽい」
「まぁ、3ヶ月で少し変わったのかもね」
「そっか」
何気ない会話が、ゆったりとした時間が、夕立にはとても愛おしく感じた。
仲良くはしたかったが、あまり話す機会がなかった時雨と話す機会が出来たことが、夕立にとっては何よりも嬉しかった。
「夕立の力については……どう思う……?」
夕立は恐る恐る時雨に尋ねる。
「君の力は良い戦力として考えているよ、暴走の時は私達には危害を加えなかったからね」
「でも、まだ君の力について完全に警戒を解いたわけじゃないよ、僕らに危害を加える可能性だってあるからね」
「う……うん……」
(まぁ……そうだよね……普通は怖くて近寄れないっぽい……)
夕立は少しそれを聞いて悲しくなったが、仕方ないことだと割り切って、その後も時雨と会話を続けた。
しばらく時雨と話した後、部屋に明石が入ってきた。
「調子はどう?夕立ちゃん」
明石は前と同じように白衣を身にまとって、チェック表のようなものを手に持ちながら歩いていた。
「良いとは言えないけど、前よりは楽っぽい
「そっか」
夕立の返答に返事をしながら、明石は書類にメモをする。
「はい……とりあえずチェックする項目は終わったから、しばらくは安静にしててね?」
ある程度夕立の体を確認した後、明石はそう言った。
「ぽーい」
「そういえば、夕立ちゃん」
「ぽい?」
「なんであの時、砂浜で倒れていたの?」
明石が質問をすると、夕立は昨日の夜の砂浜での出来事を事細かに説明した。
不思議な女性がいたこと、重巡級に襲われたこと、暴走した時に何故か意識が少しだけあったこと、そして、その女性が謎の能力を持っていたことを全部話した。
その女性の話が出る度に、明石が神妙な顔をする。
「ねぇ、夕立ちゃん」
「ぽい?」
説明が終わった後、明石が夕立に質問をする。
「その女の人って、名前名乗ってた?」
いつになく真剣な眼差しに、夕立は少し驚きながら答える。
「えっと……礼花って言ってたっぽい」
「礼花……礼花……なるほどね、ありがとう」
「何かあったっぽい?」
「いや、何も無いよ!大丈夫」
明石がいつもの明るい顔を戻ったので、夕立は安心してベッドに横になった。
「じゃあ動けるようになったら私に言って、ある程度リハビリしたら安静期間を解くから」
「分かったっぽい」
「じゃあ、今は寝てなさいねー」
そう言って明石がドアを閉める。
閉まったドアを見つめながら、時雨が立ち上がった。
「そろそろ僕も行くね、ちょっとやる事があるから」
「分かったっぽい、ごめんね……すぐに戻るようにするっぽい」
「無理しないでゆっくりね、じゃあ」
そう言って時雨も部屋から出ていった。
広い空間に1人、残された夕立は天井を見上げる。
(……あれ?さっき見た時はシミがあったのに……?)
目を覚ます前、この部屋の天井にあるシミを確かに夕立は見ていた。
しかし、今の天井にはシミが綺麗さっぱり無くなっている。
(何だったんだろう……)
不思議な感覚に包まれた夕立は、頭が整理できないままでいた。
とりあえず難しいことを考えるのをやめる為に、一旦眠りにつくことにした。
医務室を出て廊下を歩いていた明石は、夕立の発言を頭で整理していた。
(前より楽になった……あまり考えにくいけど、夕立ちゃんがあの暴走に慣れてきている……?)
そう考えた後、明石はチェック表を見つめる。
(体の状態もかなり良い……前みたいな熱暴走も見られなかったみたいだし……)
(何より、艤装を消すことが出来る女……そんな芸当ができる人はこの世でたった1人しかいない……)
「須藤礼花、か……まさかね」
そう言った後、明石は執務室への歩みを速めた。
「お疲れ様です、司令官さん」
両隣に積み重なる書類を見て項垂れている提督に、五月雨がお茶を差し出す。
「あぁ、ありがとう」
「大丈夫ですか?最近お仕事の書類の量が多すぎるような気がするのですが……」
「あまり大丈夫ではない気がするな、ここ最近は深海棲艦の動きが異常に活発化しているからか、仕事の依頼が山ほど届いている」
提督は1枚1枚しっかりと読み通しながら、五月雨の質問に答える。
先程明石から夕立の現在の情報も追加されたため、どれだけ早く見積っても、今日中に終わる気配はない。
提督の机の横の机では、秘書艦の龍田が黙々と作業を進めていた。
「今日の秘書艦は龍田に頼んでいたのだが……すまないな、五月雨も手伝いに呼んでしまって……」
「ごめんなさいねー」
「い、いえ!元々私もお手伝いしに行こうと考えていたので……」
「本当に助かるよ、じゃあ少しだけ休憩を挟んだら仕事に戻ろうか」
提督の一声で龍田もペンを止め、五月雨が入れたお茶を持ってソファに向かう。
ソファの前の机に湯呑みを置き、めいいっぱいの背伸びをした。
その様子を見て提督も少し脱力し、お茶を少しだけ啜った。
「今日のお茶は……うん、少しだけ温かいな」
「あれっ!?結構熱々にした筈なんですけど……」
五月雨が提督の言葉に驚く、その様子を見て龍田が後ろで静かに笑った。
「それにしても、最近は忙しいですよね〜」
龍田が書類の束を見て言った。
「最近は深海棲艦の動きも活発になり、地元の住民だけでなく、大本営からの依頼もかなり増えてきているからな」
提督はそう言うと、棚から『艦隊のスケジュール』と書かれたファイルを取り出した。
それを見た龍田は提督の横に立ち、そこに書かれたスケジュールを見て驚く。
「これって……第一から第三艦隊の人達はここ1週間ほぼ休み無しで働いてるってことですよねぇ〜?」
「そういう事だ、本当は彼女たちにも休んで欲しいのだが、依頼は容赦なく舞い込んでくる……正直かなり厳しい状況だ」
「第一艦隊のメンバーは現在、各地でバラバラになって、最近の深海棲艦の活発化を調査をしてもらっているが……なかなか情報を掴めずにいる」
「疲労度もかなり溜まっているでしょうねぇ、遠征部隊もかなり疲れているって天龍ちゃんも言ってましたし」
提督は竜田の言葉を聞いた後、再び自分の椅子に座って背もたれに寄りかかって天井を見上げる。
「彼女達は喜んで引き受けてくれているが、どこまでが本当かわからない……なるべく早めに出撃可能艦隊を増やすしかないな」
「そうですかぁー」
龍田は少し伸びをした後、自分の席に戻って仕事を再開した。
「あっ!手伝います」
それを見た五月雨が龍田の横に座り、書類を半分取って龍田の手伝いを始める。
「じゃあ、仕事を再開するか」
提督が作業を再開しようと席に戻ろうとした時、執務室のドアが開いた。
「おっす!提督、仕事は進んでるか?」
「摩耶……お前はノックしろと何回言えばわかってくれるんだ?」
「いいじゃねぇかよ、あたしと提督の仲だろ?」
茶髪のショートヘア、荒々しい口調の重巡洋艦、高雄型四番艦の摩耶が執務室に入ってきた。
「あぁ!申し訳ございません、司令官さん……うちの摩耶が……」
摩耶の後ろから申し訳なさそうに歩いてきたのは、同じく高雄型重巡洋艦の鳥海だった。
「お前はいつも堅苦しすぎなんだよ、鳥海」
「貴方が荒々しすぎるのよ!もう少し落ち着きをもって行動して!」
「ちぇ、ったく……」
摩耶が面倒くさそうにソファに腰掛け、足を組んで提督の方を見る。
それを見た提督は、ファイルを手に持ったまま摩耶とは反対側に腰掛けた。
「あっ!お茶を用意しますね!」
「おっ、悪ぃ!サンキューな!」
五月雨が自分の席から立ち上がり、駆け足で給湯室に向かった。
提督はそれを見送った後、摩耶の方を真っ直ぐ見つめ、口を開いた。
「で?第四艦隊は今日の午後は出撃予定は無いはずだが……旗艦のお前がわざわざ執務室に出向いてくるとは……何かあったのか?」
その言葉を聞いて、摩耶は真剣な顔になり、ポケットからメモのような物を数枚取りだした。
「今日の午前の出撃で色々と見たからな、それを報告しに来たんだよ」
五月雨がお茶を摩耶に差し出すと、摩耶はそれを飲みながら話し始めた。
「あたし達が最近出撃してる西方海域ってあるだろ? 最近そこの敵が異様に多い気がしたんだよ」
「それは各地で起こっていることだな、何も西方海域だけの話じゃない」
提督の言葉に少し摩耶が顔を顰める。
「まぁ話は最後まで聞けって、それで今日の午前中の出撃でヤベぇもんを見ちまった」
「……何を見たんだ?」
「姫級の深海棲艦が西方海域に住み着いた、しかもかなり強大な艦隊を引き連れてる」
「何だと!? 」
摩耶の言葉に提督が驚く。
執務室には先程とは一風変わった重い空気が流れ、龍田と五月雨も作業を止めて摩耶の方を向いた。
「各地で目撃情報はちらほらあったが、まさかここで確実に西方海域を落としに来たか……」
提督と摩耶の様子を自分の席から見守っていた龍田が、ゆっくりと手を上げて質問をする。
「姫級って、一体で鎮守府一つを相手に取れるレベルとされている……危険度トップの深海棲艦の事ですよね?」
「そうだ、長らく深海棲艦と戦ってきたウチの第一艦隊のメンバーでさえ、丸一日かけて撃退で終わってしまった敵だ」
「あれと同じような姫級が西方海域に……提督、どうするんですか……?」
提督の言葉を聞き、五月雨が震えながら提督に質問をする。
提督はすぐさま席を立ち、ファイルを見てスケジュールを確認した後、執務室の電話から司令室に連絡をかける。
『はい、大淀です。提督、どうされましたか?』
司令室の電話口からは、落ち着いた大淀の声が聞こえてきた。
「至急だ、至急各地の第一艦隊のメンバーを執務室に集めてくれ」
提督がいつになく真剣な声で第一艦隊の招集を要請する。
その声は長く秘書艦をやっている五月雨ですら、中々聞くことの無い声だった。
『……!はい、了解いたしました。すぐに第一艦隊の皆さんに連絡をします!』
提督の声色から、何か異常な事が起きたと察した大淀は落ち着いた声から一転し、真剣な声で提督の指示を了承した。
「あぁ、助かる」
そう言って電話を切った後に提督は振り返り、龍田と五月雨の方を見る。
「今から第一艦隊のメンバーがここに集まってくる、龍田と五月雨は悪いがこの仕事を図書室で進めておいてくれ」
「分かったわぁ」
「了解です!」
提督の言葉を聞き、龍田と五月雨は自分の書類を持ち、席を立ち上がった。
「あっ、私も手伝いますよ」
摩耶の後ろに立っていた鳥海が、提督の机の上に乗っていた書類を持って五月雨と龍田の後ろについて行った。
「摩耶はここに残っていてくれ、恐らく直ぐに集まってくれるだろう」
「最初っからそのつもりだよ、集まってくるまで少しゆっくりさせてもらうからな」
摩耶の言葉を聞いた後、提督は第一艦隊のメンバー用の椅子を並べ始める。
(姫級、かつて第一艦隊を苦戦させ、最終的に討伐することが出来なかった存在……それが今になって現れたか……!)
「これは、嫌なことが起きそうな予感がするな……」
執務室には相変わらず重い空気が流れており、外の波の音ですら、緊張感を助長しているようだった。
だいぶ体の調子が整ってきた夕立は、鎮守府の外にある展望台で海を眺めていた。
水平線を見ると、夕日がゆっくりと沈もうとしている。
「もう、夕焼けっぽい」
展望台から見える浜辺に、見覚えのある場所があった。
昨日夕立が座っていた丸太は真っ二つに割れ、断面は黒く焦げている。
その場所を見つめながら、夕立は昨日の事を思い出していた。
『君に、ずっと会いたかった』
(本当に分からないっぽい……あの人の目的も、正体も……)
「礼花さん……か」
「そっ!あたしの名前は礼花、覚えててくれたんだね」
急に後ろから声が聞こえる、夕立は驚いてすぐ後ろを振り向いた。
「やぁ、昨日ぶり」
「ら……礼花さん!いつのまに後ろにいたっぽい!?」
「ん?えーっとね、「もう、夕焼けっぽい」って一人で言ってた時かな?」
「最初から!?」
礼花は昨日と同じく自然に夕立の隣に立ち、海の方を眺める。
夕立は色々と聞きたいことがあったのだが、話の切り出し方が分からずに、口を動かしては閉じるを繰り返していた。
「どうしたの?夕立ちゃん」
「えっ!えっと……その……」
「あぁ、まぁ大体聞きたいことは分かるよ。「あなたは何者なのか?」って聞きたいんでしょ?」
「ぽ、ぽい……」
「だよね?」
そう言うと、礼花は夕立の方を見て少し微笑んだ。
「悪いけど、今は言えない」
礼花のその言葉を聞いて、夕立は俯く。
その様子を見ていた礼花は、笑いながら夕立の頭に手を乗せた。
「でも、安心して。あたしは君の味方だよ」
ふわっとした彼女の笑顔、それを見て夕立は何故か懐かしい感覚を覚えた。
「ねね、夕立ちゃん。君は何で今戦ってるの?」
「どういうことっぽい?」
「いや、聞き方が悪かったかな。何のために戦ってるの?」
何のために、前にも時雨に聞かれたことがあった夕立は、その時のままの心情で答える。
「夕立は、戦うしか生きる道がないからっぽい」
「ほぉ……」
「夕立は、「化け物、化け物」って言われて来たから、多分普通には生きられないっぽい」
夕立は少し涙を目尻に溜めながら話を続ける。
「だから、ここで戦って生きるしかないっぽい」
夕立の話を聞いて、少し悲しげな顔になった礼花は、再び夕立の頭に手を乗せて夕立を撫で始めた。
「……そっか、変な事を聞いちゃったね。答えてくれてありがとう」
「……ぽい」
夕立の返事を聞くと、礼花は振り返って歩き始める。
「もう行っちゃうっぽい?」
「うん、私にもやるべき事があるからね。ばいばい」
そう言って礼花は立ち去って行く。
少し哀愁が漂うその後ろ姿を見て、夕立は叫んだ。
「礼花さん!また会えるっぽい?」
礼花はその声を聞くと、振り返って夕立の方を少し見つめた後、また歩き出す。
「会えるさ、絶対にね」
夕立はその言葉を聞いて安心し、また海の方を見たが、まだ別れの挨拶を言っていなかったことを思い出し、また振り返る。
しかしそこには礼花の姿はなく、あったのはただただ静寂だけだった。
夕日はほぼ水平線に隠れ、辺りはゆったりと暗くなっていき、今あった出来事を攫っていくような秋の風が吹いた。
夕日が沈み、辺りがすっかり暗くなってきた頃、時雨は鎮守府内の学校から鎮守府に向かって歩いていた。
(今日で僕は学校卒業か、あっという間だったな)
駆逐艦は、建造された当初は漢字や計算等の知識が皆無に等しい。
なので、7ヶ月から10ヶ月の間鎮守府内の学校に通い、基礎的な知識を身につける必要があるのだが、一定以上の水準に達した子はすぐに卒業できる。
時雨は元々人間として育てられてきたため、3ヶ月程度で卒業となった。
今日は学校で卒業手続きを済ませ、荷物を持ち帰る日だった。
(叢雲と不知火、春雨も真面目な子達だからすぐに卒業できるかな)
涼しい夜風に背中を押されながら、ゆっくりと鎮守府への足取りを速めた。
(……?あれって……)
時雨が海岸の方に目を向けると、鎮守府へ帰投している艦隊が見えた。
(艤装から見ると空母が旗艦の艦隊……第二艦隊の人達かな?)
第二艦隊は正規空母の飛龍を旗艦とした空母部隊となっている。
対空要員に駆逐艦が2人、砲撃用に一人重巡洋艦が編成されているが、基本は遠くから支援をする艦隊だ。
(空母か……ここの鎮守府は付近の鎮守府に比べてもかなり規模が大きい所だから、色々な艦種の人がいるね)
(もしかしたら僕が探している人も……いや、流石にそんなことは無いか)
時雨は少しだけ何かに期待したような顔をしたが、すぐに顔を戻して鎮守府へ再び歩き始める。
(艦娘……か)
時雨は自分が艦娘になった理由を今一度考え直してみる。
(僕が艦娘になった理由……僕が、ここにいる理由……それは……)
「姉に、会うため」
時雨は空を見上げ、遠い記憶から姉の面影を思い出す。
(そのために、これから頑張らないとだね)
波風が頬を優しく撫でる。
辺りはかなり暗くなり、前から歩いてくる人の顔が認識できないほど暗くなっていた。
時雨は早めに自分の部屋に戻ろうと、鎮守府へ歩くスピードを早めた。
道にある明かりの下で、前から歩いてきた人とすれ違う。
時雨は横目でその人の容姿を見ながら歩き去ろうとした。
(……!?)
時雨の目が大きく見開く、想像以上の出来事が目の前に広がっており、時雨の足はそこで止まってしまった。
すれ違った人物はそのまま歩き去ろうとする。
時雨は呼び止めようと声を出そうとしたが、中々声が出ない。
何とか声を絞り出し、目の前の人物に呼びかける。
「ね……姉さん!!!」
時雨の声が夜道に響く。
時雨の声を聞き、その人物は茶髪を揺らしながら振り向いた。
長い間お待たせ致しました、Part12です
正直すっごい考えるのが大変なPartでした。
みなさんはお正月はどのように過ごされましたか?
お正月に「一富士二鷹三茄子」の初夢を見たら縁起がいいとされておりますが、私の初夢は実家の犬が腹に乗っかって来て、ひたすら舐められるという夢でした、1ミリも掠ってないですね。
それで目が覚めたら本当に犬が腹の上にいて、下ろそうとしたところで部屋の匂いを嗅ぎ始めました、あまり私の部屋には入ってこない子なので慣れない環境に慣れようとしたのでしょうか。
その様子を見てほんわかしていると、犬が片足を上げ始めました。
今年は波乱な一年になりそうです。
次回、こたつ死す デュエルスタンバイ