【艦これ】心を埋めるもの   作:さめやん

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【艦これ】心を埋めるもの Part6 「束の間の平和」

清々しい朝、鳥は鳴き、少し冷たい風が頬に当たっている。

 

そんな時、5人の駆逐艦は

 

「おそーい……」

 

旗艦の川内が到着するのを待っていた。

 

「はぁ……戦闘面では自分たちより遥かに上ですが、それ以外の面はだらしないですね」

 

不知火がため息をつきながら残念そうに呟く。

 

鎮守府の中庭に朝の7時に集合だったが、もう既に30分が過ぎていた。

 

ベンチに座る叢雲の顔が段々苛立っているのが目に見えてわかる。

 

時雨は涼しい顔で雲を見つめていた。

 

夕立は我慢の限界になり、川内を部屋まで呼びに行こうと立ち上がる。

 

その時、軽巡寮から川内が歩いてきた。

 

「いやー!清々しい朝だね!みんなおはよう!」

 

「「「おっそい!!!」」」

 

反省の色無しに歩いてきた川内に、叢雲と不知火、夕立は声を揃えて言った。

 

※※※※

 

「今日は何をするっぽい?」

 

夕立が前を歩く川内に聞いた。

 

「今日っていうか……今週はずっと雑用かな?迷い猫探しとか、喧嘩の仲裁とか……そんな感じ」

 

うげっ、と叢雲が嫌な顔をしながら言う。

 

「まぁーそんな嫌な顔しないで? 気持ちは分かるし、私もバンバン前線に出たいけど、最初の1週間は仲間内の雰囲気作りが大事って提督が言ってたからさ、今は我慢して欲しいかな」

 

川内の言葉を聞いて、少しだけ夕立は不安を感じる。

 

(正直不知火は苦手だし……時雨とも上手くやっていけるか不安っぽい……)

 

そんな夕立の横から、声がする。

 

「まぁ、雑用も貴重な経験です。 しっかりこなしていきましょう」

 

不知火が川内の少し後ろを歩きながら、真顔で淡々と言った。

 

「提督の言ってることもわかるしね、仕方ないよ、叢雲」

 

時雨もそれに続き、叢雲に対して優しく話しかけた。

 

「はぁ……まぁ、仕方ないわね……とりあえず1週間頑張らないと」

 

叢雲は嫌な顔をしながらも、時雨の言葉に納得した。

 

(あれ、意外と上手くやっていけそうっぽい……?)

 

3人の口から意外な言葉が出てきて、夕立が驚いていると、3人の後ろをトコトコとついて歩いていた春雨が夕立の隣まで近づいてくる。

 

「私、最初は不安だったんですが……でも、このメンバーだったらどうにかなりそうですね!夕立姉さん、これからよろしくお願いします!」

 

「うん、夕立も不安だったけど……多分このメンバーなら大丈夫っぽい、これからよろしくっぽい!」

 

まだ少し不安が残っていたが、ふんわりと柔らかい笑みを浮かべる彼女を見て、少し不安が消えた夕立だった。

 

 

※※※※

 

 

「時雨!横っ!」

 

叢雲が時雨に指示をする。

 

「うんっ!」

 

時雨がその声を聞いて体を動かす。

 

「ニャォ!!」

 

叢雲の指示通り、丁度いいタイミングで手を伸ばした時雨は、猫をしっかりと捕獲した。

 

「よしよし、良い子だからこの中に入ってね」

 

時雨はそのまま猫を優しくケージの中に入れ、落とさないように両手でケージを抱き抱える。

 

「おっ!捕獲できた?」

 

他の猫を捜索中の川内が時雨の方に話しかけてくる。

 

「はい、もうケージに入れてあります」

 

時雨がそう返事すると、川内はグッドサインを向けた。

 

「流石だね、あと依頼されてたのは……2匹だったかな?」

 

川内達は、街でいなくなった猫3匹を捕獲する依頼を受けていた。

 

うち1匹は時雨と叢雲が担当し、その他の2匹は残りの4人が分かれて捜索を行っている。

 

「川内さん、猫の目撃情報が入りました。 そこの公園の遊具の下に、依頼猫と似たような猫を見た事があると、近隣の住民が言っていたので、探してみましょう」

 

「いいねー、本当に優秀だよ! よし、じゃあ時雨、その猫ちゃんは依頼主のところに連れて行ってあげて」

 

「はい、分かりました」

 

そう言って、時雨と叢雲は依頼主の家に向かっていく。

 

「さて、夕立達は大丈夫かな?」

 

「うむ……恐らく大丈夫だと思いますが、少し心配ですね」

 

「まぁ、どうにかなるでしょ! 捜索捜索〜」

 

「は、はぁ……了解です」

 

 

 

「ちょっと!逃げ足速すぎるっぽい!」

 

「はわぁー!」

 

股の下を猫が猛スピードで通り過ぎ、春雨はびっくりして尻もちをついた。

 

「春雨、大丈夫!?」

 

「大丈夫です……」

 

春雨は服をはらいながら立ち上がり、猫が逃げていった方向を見つめる。

 

「中々捕まりませんね……夕立姉さん、餌で釣るのはどうでしょう……? 餌に気を取られている間にすぐに近づいて、ガシッと捕まえちゃいましょう……!」

 

「夕立たち艦娘の身体能力ならいけそうっぽい!」

 

「夕立姉さん……お願いできますか?」

 

「うん、買って来るっぽい!」

 

夕立はそう言って、街の方に走っていく。

 

「それまでに私が見つけておかないと……!」

 

そう決意し、春雨は猫が逃げていった方向に走っていった。

 

 

「買ってきたっぽい!」

 

「しっ!静かにしてください!」

 

「ぽいぃ……」

 

元気よく帰ってきた夕立に、春雨は少し厳しく注意する。

 

「今あの草むらの中にいます……なので、少し前のところに食べ物を置いて、出てくるのを待ちましょう」

 

「分かったっぽい……!」

 

コソコソ声で話したあと、忍び足で近づき、猫の少し前の岩のところに魚を置いて、近くの茂みに隠れた。

 

「後は……待つだけです……」

 

「ぽい……!」

 

少し経ったあと、猫が岩の上の魚に気づき、じっと見つめる。

 

その後、周りを警戒しながら草むらから出てくる。

 

「あっ……!出てきました……!」

 

「まだ……まだ待つっぽい……! 絶好のタイミングで……」

 

のそのそと岩の近くを歩いて索敵をし、何もいないと判断したのか、岩の上にジャンプする。

 

岩の上の魚の匂いを嗅いだ後、猫は魚にかぶりついた。

 

「今です!」

 

「ぽいっ!」

 

春雨の合図とともに、夕立が飛び出した。

 

「ニャァ!!」

 

猫は避けようとしたが、魚を咥えたまま逃げようとしたため、判断が遅れてしまい、夕立に捕まった。

 

「やったっぽい!」

 

「流石です!夕立姉さん!」

 

春雨はゲージを持ってきて、夕立がそれに近づき、中に入れようとする。

 

「痛っ!」

 

猫をケージの中に入れようとすると、猫が夕立の腕を引っ掻いてきた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

春雨は夕立の腕を掴み、傷を見る。

 

手首の下あたりから関節の部分まで、2本の線が入っていた。

 

所々から血が出ていて、それをハンカチで春雨は拭き取る。

 

「大丈夫っぽい……!とりあえず、捕獲完了っぽい!川内さんに報告するっぽい!」

 

夕立は元気に返事をし、依頼主の家の方へ歩き始める。

 

「はぁ……大丈夫なら良いのですが……」

 

そんな夕立を見て、傷の事を心配しながら春雨は後を付いて行った。

 

 

空が少しづつオレンジ色になっていき、日が沈んできた午後5時頃、夕立は依頼主の家に到着した。

 

「おっ!終わったみたいだね!」

 

川内が依頼主の家の前に立っていた。

 

「うん!多分この子っぽい?」

 

「うん、その子だね、ナイスだよ、夕立、春雨!」

 

「川内さん達は結構早く終わったっぽい?」

 

「いや、私達も今帰ってきたところだよ、この中で1番早く見つけたのは時雨と叢雲だね」

 

川内はそう言うと、夕立からケージを受け取り、依頼主に渡す。

 

「あぁ……!ありがとうございます!気づいたら家から出ていってしまってて……!」

 

「はーい、今度はしっかり見ていてあげてくださいね?」

 

「はい、本当にありがとうございます!」

 

依頼主は川内達に頭を下げ、感謝の言葉を言った。

 

第八艦隊最初の依頼は失敗することもなく、無事に終わらせることができた。

 

 

※※※※

 

 

依頼主と別れ、川内達は帰り道を歩いていた。

 

「いやー!お疲れ様!今日から1週間、こんな感じの任務が続くから、頑張っていこう!」

 

「はぁ……意外と疲れるのね、こういう仕事も」

 

少し気だるそうに叢雲が言った。

 

「でも、楽しかったですね! 夕立姉さんも流石でした!」

 

「えへへ、ありがとうっぽい!」

 

夕立が嬉しそうに返事をする、そんな夕立を見て、春雨はとある事を思い出した。

 

(そういえば、傷は大丈夫なのかな……?)

 

「そういえば夕立姉さ……」

 

途中まで言いかけたその時、夕立の腕を見て春雨は驚く。

 

(傷が、無い……?)

 

「ん?どうかしたっぽい?」

 

「あぁ……いえ、なんでも、ないです」

 

(あれ?確かに傷があったはず……)

 

春雨は目の前の光景が信じられず、さっき夕立が引っ掻かれたのは幻だったのかと疑い始める。

 

だが、春雨のハンカチには、拭き取った血のシミが確かに残っていた。

 

 

※※※※

 

 

翌日

 

夕立達は司令室に呼び出され、司令官を待っていた。

 

「話ってなんでしょう?」

 

「分からないっぽい……」

 

春雨が不安そうな声で夕立に話しかける。

 

誰も集められた理由を知らず、駆逐艦たちは困惑していた。

 

そんな時、司令室のドアが開く。

 

「すまない、待たせたな」

 

駆逐艦が一斉に提督を見る。

 

「提督さん、なんで私たちを集めたっぽい?」

 

夕立がすぐに問いかける。

 

「あぁ、少し話があってな……実は、鎮守府近海で深海棲艦の目撃情報が出たんだ、しかし、第七艦隊までの艦隊は別の任務で出撃していてな……」

 

提督がそこまで話すと、執務室のドアが開く。

 

「そこで、君たちに出撃してほしいってこと」

 

川内が部屋の中に入ってきた。

 

「えぇ!?私たちまだ結成して二日しか経ってないのに……」

 

春雨が怯えた声を出す。

 

「まぁ、そうよね……大丈夫なの?」

 

そんな春雨を見て、叢雲が提督に問いかける。

 

「正直、まだ海には出したくない……だが、この深海棲艦を野放しにしたら、街の人に被害が及ぶかもしれない。この艦隊には優秀な子も多く、旗艦を務めているのが川内だという事もあるから、頼みたいのだが……」

 

提督が少し暗い表情で夕立達を見つめる。

 

川内は駆逐艦たちの選択を待っているようだ、夕立は出撃するか迷う。

 

「頼めるか?」

 

提督が重い口調で問いかける。

 

執務室の中は緊張感が走り、微かな物音でも耳が反応してしまうくらい静かだった。

 

 

「僕はいいよ」

 

 

そんな中、時雨が口を開く。

 

「他の誰も出られない状態で、僕達が出なかったら、深海棲艦が攻めてくるかもしれない……そう考えたら、流石に断れないよ」

 

時雨は提督の目を見ながら答える。

 

「まぁ……そうよね、少し不安もあるけど」

 

叢雲も、時雨の言葉に続いて言った。

 

「2人は行くみたいだね、残りの3人は来る?」

 

川内が他の駆逐艦3人を見る、3人は顔を合わせた後、少し考えて、首を縦に振った。

 

「決まりだね」

 

「助かる、目撃情報があったのはこの辺りの海域だ」

 

提督は地図をファイルから出し、海の沖の方、鎮守府正面の方の海域を指さしながら言った。

 

「ここらの海域に出る深海棲艦は、比較的弱い種類ばかりだ、恐らく君たちだけでも倒せる」

 

深海棲艦は海域によって出現する種類が違い、沖の方に行けば行くほど、強力な力を持った深海棲艦が現れる。

 

それが陸に到達する前に、全て沈めるのが艦娘の仕事だ。

 

「出撃はいつっぽい?」

 

「出るならなるべく早い方がいい、30分後でも大丈夫か? 判断は旗艦の川内に任せる」

 

「大丈夫、30分もあれば、この子達も心の準備ができると思う」

 

川内が真面目な表情で、提督の問いに答えた。

 

「なら30分後に鎮守府正面に出撃だ、こんな突然な初陣になってしまってすまないが……頼んだぞ、第八のみんな」

 

「「了解!!」」

 

第八艦隊全員が、元気に答えた。

 

 

※※※※

 

 

夕立の自室にて

 

「はぁ……いきなり出撃……怖いっぽい……」

 

夕立はベットの上で寝転がりながら、独り言を呟く。

 

(でも……時雨はすぐに「行く」って答えたっぽい……強くなるために、夕立は時雨に勝たなくちゃいけないっぽい……そのためには、時雨と同じ位置に立ってなくちゃいけないっぽい!)

 

「迷ってる暇はないっぽい! 出撃、頑張るっぽい!」

 

夕立はベットから飛び起きて、出撃するための準備を始めた。

 




Part6、投稿しました!!

ゆっくり投稿していくので、これからもよろしくお願いします!
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