息が詰まった主人公が癒される一夜の夢。

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お久しぶりです。今回はもしかしたらファンタジーかもしれないと冷や冷やしながら舞台を選び、日常かもしれないと思いながらジャンルを選びました。楽しんでいってください。
「小説家になろう」にリメイクしたものを投稿しました。


夢の川

 自分はどこに向かっているんだろう。そんなことを毎日の様に思う。

 これといったやりたいこともなく、ただただ流されるように過ぎる1日1日。家族

を安心させたいし、先生達に言えば必ず面倒なことになるから一応やりたい仕事はあると言っているもののそこまでその仕事に付いている自分を想像できないし、も

しかしたら接客業なんて向いていないんじゃなかろうかと思うことも多い。

きっとみんな思っているかもしれないけど、本当は楽に暮らしたい。そんなことを言

えば、誰からも小言が飛んでくるから言わないようにした。

 それに自分の精神はかなり脆いとも思う。

引きこもりのせいか、元々からそうだったのか分からないけど、少しのことでむかつ

いたり泣きたくなったりすることが最近は多い。そのせいで家族ともうまくいってい

ないと思っている。

全部隠して生きられれば良いのだけど、そんなことは出来ないだろうことも感じてい

る。言いたいことは違うのに、家族の押しに負けてつい本音じゃないことにうなずい

てしまう自分が悔しい。

 昔読んだ本に心の構え方と言うものが書いてあった。外もうちもしっかりした樹木

。外はしっかりしているけど、内が柔らかい卵。外も内も柔らかいプリン。自分は卵くらいであろうと思っていたけれど、もしかしたらプリンかもしれない。

 自分が甘やかされて育ったのかもしれないとも思っている。

確かに人より要領が悪いと思うが、色々な大人に聞いてみれば、それも出来るの?と思うようなことだってやっている人がいる。自分が自分の弱さに甘えているかもしれないと思って、でもそれを指摘されても嫌で、何が何だかわからない。

 今日も1日が終わる。何もせず、ただ生きていただけの1日が。

・・・・・

 夢だろうか。自分は気づいたら河原に立っていた。

後ろに何かしらの気があるのだろう。風が吹くとさわさわと梢が揺れ、葉が擦れて良

い音を奏でる。

太陽の光が燦燦と降り注ぎ、木々を鮮やかな緑に照らしている。

 よく見たら、自分の姿も変わっていた。髪が二つの三つ編みになっており、麦わら帽子を被っている。そして、白いワンピースを着て、白いサンダルを履いていた。

 自分はおかしなことに気づいた。こんなに良いところなのに、人がいない。鳥も虫

もいない。此処にいる生き物は自分だけなのだ。

そう思うと少し怖くなってきた。さっと周りを見てみると、ただ河原と木々が何処ま

でも続いているだけだっだ。

川は相当長いらしい。太陽の光を反射し澄んだ、水がキラキラと輝いている。まるで

鏡の様な川にはやはり魚1匹以内。ただただ太陽の光を反射し、空の青を映し、水の

流れる涼やかな音を奏で、緩やかに流れるだけだ。

とても綺麗だ。綺麗すぎて何かいたらこの川が汚れてしまうと思えてきた。

きっと冷たくて気持ち良いんだろうなあ。そう思うと、この川に入りたくなってきた

周りを見て誰もいないか確認し、自分は1歩足を踏み出した。

 川はやはり冷たく、とても気持ちがよかった。川遊びなど何年もしていなかったか

ら、ついはしゃいでしまうくらいだった。綺麗な川を自分だけが使うことに優越感を

感じた。自分が濡れるのも構いはしなかった、夢なのだから。

 それからどのくらい時間がたったのだろうか。自分が疲れて川から上がると、太陽

が傾き、黄金色の光を放っていた。自分の影が長くなっている。

自分は疲れて帽子を取り、三つ編みを解き、河原にダイノジになって目を閉じ、河原を

渡る風を感じた。葉の擦れる音、川のせせらぎが心地よく、つい微睡んでいた。

・・・・・

 誰かに呼ばれ、目を開けるとそこは瓦河原ったが、星が煌き、、月が昇っていた。

少し風は冷たくなっていた。

自分の横に誰かが腰を下ろしていた。月明かりに照らされたその顔はただ静かで、

温かさも冷たさも感じなかった。

その人は自分に何故此処に居るのかと尋ねた。自分が分からないと答えたら、その人は

おかしそうに笑い、そうなのねと言った。その声はただただ落ち着いていた。

 その人は川を見るように勧めてきた。自分が川を見てみると、月明かりが川に反射し、キラキラと輝いて、黒水晶の様だった。太陽が昇っていた時より冷たい光に見え、今だったら入る気がしないなと思った。

 その人は風に踊る長く黒い髪を白く細い、しなやかな手で押さえながら、そのまま川を見ている

ように自分に言った。川を見ている金色の目には何とも表せない光が浮かんでいた。

それは羨望でもあったし、嫉妬でもあった気がする。

 言われたとおりに川を見ていると、上流からリンリンと鈴が鳴るような音が聞こえて

きた。それとともに幾つもの船とそこに乗る人、その人達を導くように灯火の様な光が。

 自分が見ていると、船の集団は真っすぐに下流へ進んでいる。まるで迷いなく目的

地へ進んでいる様に。

そっと横目で隣の人を見てみると、その黒髪の人が泣いているのが分かった。涙の粒が月の

光に照らされ、真珠の様だった。

 自分はその人にどう声をかければよいか分からず、ただ川を下っていく灯火に導か

れた船と、そこに乗る人達を黙って見ていた。

船に乗る人の顔はあまりよく見ることが出来なかったが、それでも自分はその人達に

違和感を覚えた。何だか見たことがある気がするのだ。

確かに見たことのない顔もたくさんあったが、おそらく両親や先生、学校で将来につ

いて明確に語っていた同級生達に見える人がいた。

 横にいた人がすっと立ち上がり、手をさし伸ばしてきた。一緒に歩こうということ

らしい。

なんとなくこの人のお願いは聞いてあげたいなと思った自分はうなずいて、その人の

横に立った。

その人は自分の手を握ってきた。その手は見た目通りしなやかで、そしてとても冷た

かった。

自分は驚いたが、きっとその人は手を繋いで欲しいのだと思いその手を握り返した。

その人が少しでも温まる様に。

すると、その人は微笑んだ。まるで月の様に静かに包み込む様な微笑だった。

月が見守る自分とその人だけが歩く河原。船を漕ぐときの水音、川のせせらぎ、風で

葉が擦れる音、何故か聞こえる鈴の音、自分とその人が歩く足音しか聞こえなかった

 ただ静かに歩いているだけで自分は安らいだ気持ちになれた。

 隣を歩くその人がふと足を止め、こちらに顔を向けた。そして、自分の名前をふと

つぶやく様に言った。

自分は驚いて、その人から手を放し、1歩下がった。何故自分の名前を知っているの

だろう。でも、確かに自分の名前を呼んでいた覚えがある。

その人の表情が暗くなったので、慌てて自分はその人の手を握りなおした。

すると、その人の表情は元の静かな物に戻った。

 だいぶ長く歩いていたのか、中流のほうへ来ていた。川がもう一つ流れていて、そ

ちらからも船の集団がやってきた。

その集団は、ゆっくりとした速度で進んでいて、自分達より早く川を下ったさっきの

船の集団とは違い、のんびりとした雰囲気だ。上流より川の流れは速いがそれをもろ

ともしないようで、同じ速さでゆっくりゆっくり進んでいる。

少し物足りない気がしたが、それはすずの音が聞こえないからだと言うことに気付いた。

また、船に乗っている人の顔を見ていると、こちらの船の集団にも見知った人達が混じっていた。

驚いて自分は隣の人の顔を見た。すると、その人はまた微笑んでこう言った。

この川は夢の川と言う、人が人生をかけてわたる川で、人は皆船に乗って夢の

海まで行く。その最果てで人はあの世へ行き、また夢の川の上流へ戻って命を

やり直す。

早く進む船と遅く進む船の違いは、鈴の音で、早く進む船の人が乗る船は夢を見つけ

た船で、鈴はその夢の音で、逆に遅く進む船はまだ夢の鈴を見つけていないから見つ

けるためにゆっくり進むのだ、と。

 あの灯火は人の魂で、船は川を渡る手段。船に乗っている荷物はその人の経験だそ

うだ。

 それなら何故自分が此処にいるのかとその人に聞くと、その人は、自分が困ってい

るからだといった。その人の役目は、困っている人がいれば、その人を導くことだと

言った。

だから、誰ともずっと一緒にはいられないのだとも。

それならどうして泣いていたのか、つい自分は衝動に任せて聞いてしまった。

その人は、私は船から降りて此処に泊まって欲しいと天界から言われたからだと答え

てくれた。

自分は悲しくなったそして、誰もその人を覚えていないのかと突っ込んだことを聞い

てみた。

そうするとその人は、夢から覚めると私のことは忘れるから覚えていない。貴女だっ

てそうなるのだと目を細めて言った。

そして自分に、貴女はゆっくり進んで良いんだ。誰が言おうと貴女の命は貴女ののも

のだと言って、一つの船の前に自分を連れてきた。

その人は自分に、これからまた貴女は夢を探し、川を渡り、生きていくのだと語る。

大丈夫、貴女なら出来ると言ってくれた。

その船には雑多な荷物と灯火が灯っていた。

 もう空は白み始めていた。

 自分は嫌だといった。その人を置いてはいけないと。

その人は笑って、私が納得したことだから気にするなと言った。目が涙で揺れていた

が、しっかりとした声でそう言うと、1度自分と繋いでいた手を放し、自分を船に乗

せ、もう1度手を握った。

夢はゆっくり見つけて良い。最悪見つけなくとも良い。最果てまで貴女の力で漕いで

行きなさいと言い、自分の船を押した。

川に入ると、自分は急いで船をこぎだした。だんだんその人が遠くなっていく。そし

て、自分は・・・。

 

 目を覚ますと、涙が出てきた。何か大切なものを忘れてしまったような喪失感が胸

に広がっていた。

でも、昨日より何故か晴れやかな気分で目を覚ますことが出来た。

カーテンを開けると、抜けるような青空と船の様な白い雲、燦燦と輝く朝日があった

。風がこもっていた部屋の空気を清々しいものへ変えていく。さて、昨日より少し明

るい今日を始めよう。




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