というわけで今回は、湊視点の話です~笑
前回の話からあまり進展はないですが、湊くんの心情とかいろいろ書いたので、ぜひ読んでいただければ幸いです!
追記
不定期に、本編の立ち絵モードで再現したやつのスクショをTwitterで上げるかもです笑
興味があったら見てみてください笑
「――悠さん、もう着いてるかなぁ……」
ぼそりとそう呟きながら、学園までの道を歩く。
今日は、悠さんとの約束の日――デートの日だ。
「(時間は……よし、大丈夫!)」
風莉さんに買ってもらったばかりのスマホで時間を確認する。
時刻は12:30を示していた。
今日の集合時間は13:00だったけれど、いつも悠さんは早く来るから、今日くらいは先に待ってようと30分前に寮を出たのだ。
「(もう着いてる……とかないよね?)」
もしものことを考えて、少し心配になる。
でもまあ、いつも悠さんは15分くらい待ってるらしいし、このままいけばそれより早く着くはず。
「(それにしても……)」
手に持ったスマホに視線を落とす。
「(まさかこのタイミングで買ってくれるとは……嬉しいけど、やっぱり申し訳ないなぁ……)」
スマートフォンを眺めながら、言葉にできないような申し訳なさを感じる。
それは数日前、風莉さんに相談しに行った時のことだった――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――八坂さんへの、罪悪感?」
「はい。悠さんに僕が本当は男だってことを言えてなくて……」
悠さんとデートの約束をした次の日、僕は風莉さんに少し相談をしていた。
理由はもちろん……あの時感じた悠さんへの罪悪感を何とかしたいと思ったからだ。
「そう……なら、正直に言ってしまうのはダメなのかしら?」
「そ、そんな……無理ですってば!」
「……?」
「だ、だって……悠さんにどう思われるか分かりませんし……」
「八坂さんなら、大丈夫だと思うわ。あの人は、湊のことをとても大切に思っているもの」
そう言うと、風莉さんは口を綻ばせてにっこりと微笑んだ。
どうやら、悠さんが寮に来てから、風莉さんは悠さんのことを信頼してくれているらしい。
悠さんがそういう人だって、僕だって分かってる……でも、でも……!
「でも、ボクの正体を知ったら……悠さん、ショック受けますし……もし、拒絶されちゃったら……」
――絶対に耐えられない。
そう……断言できる。
「(そっか……)」
風莉さんと話しながら、ようやく気がついた。
これほどまでに、僕の中での悠さんの存在は大きくなっていたんだ。
この学園に来てから初めてできた同性の友達。
そんな彼を失うことが、今の僕にとって何よりも怖いんだ。
「湊……」
「どうしよう……こんな気持ちで、悠さんとデートなんて行けないよぉ……」
「……デート?」
「……あ、いやっ、これは……」
「そう……」
そう呟くと、風莉さんは下を向いて、少し考えるような素振りを見せる。
嫌な予感がすると同時に、前回の光景がフラッシュバックする。
前はみんなで集まることになっちゃったけど……次こそは2人だけで行きたいから、申し訳ないけど風莉さんたちには付いて来られたくない。
「前は皆で集まることになったから、次は2人だけで出かけようって。デートしようって、言ってくれたんです。だから……」
「大丈夫よ。もう流石に、邪魔なんてしないわ」
「邪魔というわけじゃ……」
「湊」
「…………」
「本当に大切な人を見つけたのね」
「……はい」
穏やかな口調とは裏腹に、意志のこもった視線を向けられる。
その両の眼に、何もかも見透かされているかのようだった。
「たとえどんなことがあっても……彼ならきっと、受け入れてくれるはずよ」
「でも……それでも、僕は……!」
「なら……話す覚悟ができたら、話せばいいと思うわ」
「……っ……」
風莉さんの言葉に、心が大きく揺れ動く。
でも、それじゃデートが……。
「でも、こんな気持ちのままじゃ……ボク……」
「それに、なんだかんだ言って、湊も楽しみにしてるじゃない」
「え……?」
予想外の言葉に、目を丸くする。
「湊の抱えるその気持ちは、私には分からないわ。けれど……湊が心からデートを楽しみにしているのは分かるもの」
「風莉さん……」
「湊の中で、覚悟ができたらでいいの。そうやって考え抜いた末に伝えれば、八坂さんにも伝わるはずよ。もし、それでもダメだったら……その時は、私も一緒に謝るわ」
そう言うと、真剣な表情から一転して、まるで子供を見守る母親のような笑顔を浮かべる。
「だから今は、楽しんできなさい」
「風莉、さん……」
その言葉を聞いた瞬間、心がすーっと晴れ渡っていくような感覚を覚える。
おばあちゃんのおかげで、僕はこんなにいい人に出会えたんだと……改めてそう感じるのだった。
「ありがとう……ございます。少し、気が楽になりました」
「そう……私が役に立てたのなら、嬉しいわ」
頬を緩ませながら、風莉さんはそう言ってくれた。
……のだが。
「それじゃあ、湊――携帯を買うわよ」
「え、今の流れでですか!?」
「だって、違う学校なんだから、連絡をとる手段は必要でしょ?」
「それは……そうですけど……でも僕、お金が……」
「大丈夫よ。私が出すわ」
そう言うと、風莉さんは不意に黒いカードを取り出す。
「これで契約してきていいわ」
「だから、クレジットカードは他の人に渡しちゃだめなんです!」
「でも、湊のことは信用してるわ?」
「そういう問題じゃないんです……って、前もこの話しましたよね!?」
……ふと、少し前のことを思い出す。
確かこの学園に来た頃、私服を1着も持ってなかったから買いに行こうってなったんだっけ。
あの時も風莉さんはカードを渡そうとしてきたけど……今回もかぁ……。
「そう……じゃあ、一緒に行きましょう」
「でも、そんな……申し訳ないです」
「大丈夫よ。湊、行きましょう」
「……ん?」
「今行こうって話なのだけれど?」
「え……?今からですか!?」
「湊も、早い方が良いでしょう……?」
「それは……」
「皆見さんたちにも聞いてみようかしら。行くわよ、湊」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ〜!風莉さーん……!」
既に小さく見える風莉さんの姿を、足早に追いかける。
そしてこの日、僕は初めてスマートフォンというものを手にしたのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……やっぱり、風莉さんの行動力って凄いなぁ……」
スマートフォンを買ってもらった時のことを思い出しながら、しみじみとそう感じる。
「……"今は、楽しんできなさい"、か」
風莉さんの言葉を頭の中で反芻する。
正直、今も少し怖いし……罪悪感だって、消えたわけじゃない。
けれど……やっぱり、楽しみなんだ。
「悠さんも……楽しみにしてくれてるかな?」
いつも悠さんは僕の気持ちを優先してくれてるけど……本当は少し乗り気じゃなかったらどうしよう。
悠さんから誘ってきたから、それは無いってことはわかってはいるけど……それでも少し心配になる。
「(もし、男っぽいことしちゃったら……悠さん、嫌がるよね?)」
当惑しながら苦笑いをする悠さんの顔が、頭の中に浮かんでくる。
……やっぱり、女の子っぽくした方がいいのかな?
「それに、本当にこの服で……大丈夫かなぁ?」
自分の身につけている服に、視線を落とす。
あの後結局、風莉さん経由でデートに行くことがみんなにバレてしまい、デート用の服をチェックしてもらった……のだけど。
みんなに、"この服が似合いすぎるからこの服で行った方がいい"と言われ、僕の唯一持っている私服を着ていくことになったのだ。
前に見せたことがあるか覚えてないけど……もし前に着ていたらちょっと申し訳ないなぁ。
「悠さん、喜んでくれるかなぁ……」
悠さんの喜ぶ姿を思い浮かべる。
悠さん、喜んでくれたらいいな――
「(――って、何考えてるの!?)」
ふと我に返り、自分にツッコミを入れる。
まずい、考え方がほんとに男っぽく無くなってきてる。
でも、悠さんが喜んでくれるって考えたら……。
「(だめだめ!一応僕は男なんだから!)」
すんでのところで踏み止まって、自分に必死に言い聞かせる。
今のは、危なかった……。
危うく、男として超えちゃいけないラインを超えるところだった。
「(このままだと僕、どうなっちゃうんだろう……)」
今後のことが少し不安になりながらも、立ち止まらずに一歩一歩足を進める。
そうして、いつもの道を歩き続けていると……。
――視界の先に、見知った人の姿が見えた。
その姿が見えた瞬間、僕の心が安心感に包まれていくのを感じた。
そして、気づけば僕は、学園前で1人待つ彼の元へと走り出していた。
「遅くなりました〜!」
…………。
……僕の中に巣食う不安や悩み、罪悪感は、消えたわけじゃない。
けれど、この時だけは……男っぽいとか考えるのはやめよう。
悩みや罪悪感も、今だけはできる限り忘れられるように努力しよう。
今はただ……悠さんと過ごすこの時間を楽しまないと。
そうして気持ちを新たにした僕は、悠さんの元へと足を早めるのだった。
というわけで、湊くん視点の話(回想付き)でした~!
自分としては、まだ湊くんの好感度は50%くらいかなと思っているんですけど……少しやり過ぎたかもって思ってます笑
次は地雷臭たっぷりの映画の話ですが、果たしてまともなデートになるのか!?
次回もぜひ読んでもらえればと思います!
追記
感想が嬉しくてモチベが上がるのですが、毎回返信が遅くてすみません!
できる限り早く返せるようにします!