湊君を攻略したい!   作:Kスケ

23 / 76
今週は間に合いました!というわけで、後編です!
前回湊くんを撫でたいという願望が出ていた悠君ですが……
今回、少し予想外の結果になりました笑
ということで、今回もぜひ読んでいただければと思います!


ノークック・ノーライフ(後)

 

 

 

「――それで、柚子さんにあげたら……5分もしないうちに食べ終わっちゃったんですよ〜」

「マジで!?その量を!?」

「まあ、いつもお弁当箱として重箱を使ってるくらいなので……」

「それほんとに1人分!?」

 

湊さんと何気ない話をしながら、店内の商品を見て回る。

めぼしい商品を見つけたら立ち止まって見る、というのを店に入ってから繰り返しているのだが、あまりに会話が弾み過ぎて、もはや話すことが目的となっていた。

……まあ、楽しいからそれでいいんだけど。

 

「あ、これいいですね!」

「あー、ステンレス製のマッシャーか。マッシュポテトとかコロッケ作る時に楽だよね」

「いつも使ってるやつは少し小さめなので、このくらい大きい方が時短になるのかなぁ〜」

「まあでも、大きいから割と力入れないと難しいけどね」

「確かに……じゃあ、今のままの方がいいのかもしれませんね」

 

そう言うと、湊さんは手に取った商品を置いて、次のコーナーへと歩き出す。

湊さんの後を追いながら、ふと辺りを見回すと、既に店の半分くらい見て回っていることに気がついた。

 

「ところで……今のところ、ここの商品はどう?」

「うーん、そうですね〜……どれもいい商品ばかりですけど……思ったよりも高い〜……!」

「まあ、結構値段するからね。でも、湊さんなら割と買えるんじゃない?」

「いや……別にそういうことはないんですよね。ボク自身はお金持ちとかじゃないので」

「そっか、"拾われた"って言ってたもんね」

「まあ、この学園には、ほとんど着の身着のまま来たので」

「そっか、金銭面は西園寺さんが……って感じか」

「そうなんです……でも……」

 

湊さんは何か言おうとしていたが、下を向いて言い淀んでしまった。

 

「かといって、変に頼るのもちょっと……とか?」

「え?わかってくれるんですか……!」

「まあ、俺も同じ立場になったら、そう考えるだろうからね」

「やっぱりそうですよね!僕、それが申し訳なくて、できる限り自分のことは自分でやろうとしているんですけど……いつも、風莉さんがお金を出そうとしてくれるんです」

 

そう言うと、湊さんは不満そうに口を尖らせる。

確かに、お金持ちの家に拾われてもちゃんと自立しよう、という考えは凄いと思うし、普通じゃできないことだろう。

けれど、俺としては西園寺さんの考えもわからなくはない。

せっかくだから、少しは楽をしてみるのもいいのではないかと思ってしまう。

 

「(湊さん……真面目なんだな、やっぱり)」

 

自分に甘えず――されど、他人に優しく。

改めて、彼女の良さというものを再確認できたような気がした。

 

「それ自体はありがたいんですけど、ボクとしては申し訳なくて……でも、それで断ろうとすると、"これくらいなら普通に出すわ"と言って強引に持たせようとしてくるので……」

「なるほど……嬉しいことだけど、それは難しいな」

「今日も、デートだからって持たせようとしてくれたんです。“デートってこれくらいで足りるのかしら?”って」

「そうだったの?あー……もし良ければ、いくらか聞いてもいい?」

 

単純に興味が湧いたので、無理を承知で聞いてみる。

金持ちの人の考えってどんな感じなんだろ?

 

「……ひゃくまん、です」

「……え?」

 

驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「(今、100万って言わなかったか?)」

 

予想外の額でつい聞き返してしまったが……いや、そんなわけないはずだ。

いくら金持ちでも、流石にデートでそんな額は出してこないだろう。

ということはやはり、俺の耳がおかしかったのか……?

 

「100万円……です」

「……マジかよ」

 

……どうやら、100万円というのは俺の聞き間違いではなかったらしい。

金持ちの感覚は、どうにも俺の理解の範疇を超えているようだ。

 

「最初は“黒いカード”を持たせようとしてきたんです!」

「それダメなやつじゃないか!?」

「そうですよねっ!やっぱりそうなりますよねっ!」

「普通に規約とかヤバいやつだよね?」

「そうです!それなのに、風莉さんは……“湊のことは信頼してるから、大丈夫よ”とか言ってくるんです!」

「信頼してるってのは、前会った時に伝わってきたけど……これ、そういう話じゃないよな?」

「そうですよねっ!普通そうですよねっ!?」

 

うんうんと強く頷きながら、俺の話に耳を傾ける湊さん。

共感されたことをめちゃくちゃ喜んでるけど……湊さん、何があったんだろう。

てか、黒いカード渡すって……。

 

「金持ちの感覚……分からねぇ……」

「良かったぁ……やっと同じ考えの人に会えた……」

「え?周りにいないの?」

「そう……ですね」

「これ、鈴女の人達みんなこんな感じなの!?」

「まあ……あの寮に住んでる方々は、特にそうですね……」

「マジかぁ……」

 

湊さんに言われ、先日会ったお嬢様達の姿を思い浮かべる。

考え方や価値観の違うお嬢様達と一緒に暮らす……か。

 

「湊さん……色々と大変なんだね」

「うぅ……いつもは楽しいんですけどね。こういう時は辛いです……」

「まあ、俺で良ければそういう話はいつでも聞くからさ。気軽に相談してくれよ」

「でも、そんな申し訳ないです……」

「大丈夫だよ。いつでも頼ってくれ!……って、俺なんかがちゃんと力になれればいいんだけど」

「悠さん」

 

不意に、優しいながらも少し力の籠った声で、名前を呼ばれる。

 

「湊……さん?」

「そうやって自分を卑下するの、良くないですよ」

「あ……ごめん」

「もうっ!既に悠さんは十分力になってくれてますし。そんなに自分を過小評価する必要なんてないですから」

「湊さんごめん……俺――」

 

ぽんぽんっ。

 

「――っ!?」

 

頭のてっぺんから感じる謎の感覚に、思考が中断させられる。

一体、何が……?

 

なでなで。

 

「!?!?」

 

頭を伝う更なる感覚に驚きながらも、どうにか平常心を取り戻そうと目をつぶって深呼吸をする。

そうして、ゆっくりと両の目を開くと――湊さんが体をプルプルとさせながら、背伸びをして俺の頭を撫でていた。

もう一度言う。

湊さんが、俺の頭を、撫でていた。

……へ?

 

「み、湊さんっ……こ、これはっ!?」

「悠さん、落ち着いてください」

「流石に落ち着けないですよっ!?」

「もう……我慢してください」

「我慢なんて、そんな――」

「悠さんは、そのままでいいんですから」

「湊……さん……?」

「悠さんが頑張ってること、ボクはわかってますから」

 

湊さんはゆったりとした口調でそう囁くと、口元をほころばせた。

その優しい声が湊さんの手の温もりと相まって……俺は、全身で温かさを感じていた。

 

「…………湊さん……ありがとう」

「いえいえ、ちょっとやってみたかったので……つい」

「とても……とても……良きでした……」

「悠さん!?大丈夫ですか!?」

「……はっ!?危うく昇天するところだった……」

「そんな、大袈裟ですよ」

「いや、湊さんに頭撫でられたら……男女問わず昇天するね。これは断言出来る」

「そんなに……?」

「当たり前だよ。湊さ……いや。俺の……か、彼女は世界一可愛いからな」

「……っ!?」

 

俺の言葉を聞くと、湊さんは一瞬にして固まってしまった。

自分でも少し恥ずかしく思いながらも全力で褒めてみたけど……流石にこれは、やりすぎたか。

……てか、やっぱ恥ずいわ!

 

「ゆ、悠さん……」

「やべぇ……死ぬほど恥ずかしくなってきた……」

「し、死なないでくださいっ!?」

「だ、大丈夫……」

「そう、ですか……」

「あ、ああ……」

「……さ、さっきは普通に撫でちゃいましたけど……やっぱり……ちょ、ちょっと恥ずかしい……ですね」

「そ、そうか……」

「…………」

「…………」

 

会話が途切れ、互いに言葉が出なくなる。

こういう時、俺にもっと会話力やコミュ力みたいなものがあれば良かったのだが……生憎、俺はそんなものなど持ち合わせてはいなかった。

 

「その……ボクが、世界一……ですか?」

「あ、当たり前だよ!湊さんが1番だって俺は思ってるから」

「そう……ですか」

「そう、だよ」

「…………」

「…………」

 

俺たち2人の間に、再び沈黙が流れる。

西園寺さんには、俺が可愛いと言う分には大丈夫とは言われたけど、今回は流石に少し言い過ぎたような気がする。

正直、これは嫌われたかもなと思ったのだけれど……。

湊さんの顔が予想以上に赤くなっているのを見ると、もはや別の意味で焦りを感じることとなった。

まあでも、この状況を作ったのは俺だし……流石にここは、俺から切り出さないとな。

 

「ま、まだ時間あるし、次は掃除機の売り場にでも行ってみようか」

「そ、そうですね!行ってみましょう!」

「そ、掃除機は確か……」

「あ、あそこにありますよ!」

「あ、ありがとう湊さん!……み、湊さんは、その……普段掃除ってどのくらいかけてやってるの?」

「そ、そうですね……休みの日ではだいたい――」

 

そんな他愛のない話をしながら、肩を並べて歩き出す。

……けれど、こうやって話しながらも、先程感じた湊さんの手の温もりは、いつまでも俺の中に残っていた。

結局、俺達は日が完全に落ちるまで、話しながら商品を見ていたのだった。

 

 

 




ということで、まさかの湊くん“が”撫でるということになりましたけど、いかがだったでしょうか?
自分は、悠君そこ変われよって思いながら書いてました笑
次の話は多分デート編ラストだと思うのですが、私用で2週間ほど忙しい期間に突入してしまうので、次話orその次からは少しペースダウンさせていただきたいと思います。本当にすみません!
できる限り早く出したいとは思っていますので、その時は読んでいただけたら幸いです。

追記
感想ありがとうございます!嬉しいです!!!
まだ決まってないですけど、感想にあったようにEXストーリーとして“湊くんと悠君が結ばれた後の、今より少し先のお話(R18)”を書くことを割と前向きに検討しています!
そういう展開になるのが嫌だという人もいるかもしれないので、自分としては迷っているんですが……もし大丈夫なら書こうかなと考えています。
そういうの嫌だとか逆にありがたいとかあったらご意見をお聞かせください。お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。