今回の話は、オトメドメイン本編のあのシーンを自分なりに色々追加して改変したものになっています。
ですので、何でこんなことになってるの???となっている方は、前回のあらすじ部分を読んでいただければ、一応理解できるようにはなっています!
色々遅れてしまって申し訳ありませんが、今回もぜひ読んでいただければと思います!
「――よし、こんな感じかな」
掃除を終わらせ、雑巾を持ちながら一息つく。
たぶんこれで、当分の間は掃除しなくて大丈夫だろう。
じゃあ、片付けた後、このまま支度をして――
「――うわ!?めっちゃ綺麗になってる……年末の大掃除ですらここまでやらないぞ?」
「……七海先生、どうしてここに?」
「ああ、少し忘れ物をしてな。取りに戻ってきたんだ」
「なるほど」
「……ってか、どうしたんだ、飛鳥?急にこんなに掃除して。いつもはここまでやってないだろ?」
「それは……」
先生に聞かれ、どう答えるか逡巡する。
まあ、あまり悟られないように、ここは適当に答えておこう。
「風莉さんたちが出かけてしまったので、手持ち無沙汰で……いつもより気合が入ってしまいました」
「ふーん……でもまあ、お前は働き過ぎだから、日曜くらいだらけてろ」
「だらけてろって……でも、じっとしていると落ち着かないんですよね」
「だったら遊べよ。なんか趣味でもねぇのか?」
七海先生にそう言われ、自分の趣味について考えてみる。
趣味……僕の趣味……。
「趣味は……料理?掃除?」
「マジか……じゃあ暇なら、彼氏のところにでも行ってくればいいだろ?あいつなら、どうせ空いてるだろうし」
「悠さん……ですか?」
「ああ、あいつなら逆に喜ぶと思うぞ」
「確かに……」
偽りの恋人の姿を、頭の中に思い浮かべる。
確かに、僕が誘えばきっと悠さんは喜んで来てくれるに違いない。
こんな、大事なことを隠している僕なんかのために……。
「まあ、飛鳥が嫌ならいいけどさ。それより、他の連中はどうしたんだ?」
「皆さん、美結さんを連れて買い物だそうですよ」
「……ああ、例のアレか」
「なにかご存じなんですか?」
「さーなぁ?ただまあ、西園寺がなんか企んでるとだけ言っておく」
「……そう、ですか」
にやけ顔を浮かべる七海先生とは対照的に、自分の気持ちが沈んでいくのが分かる。
どうやら、僕は本当に……仲間はずれだったようだ。
……でも、正直それは仕方ないと思う。
風莉さんに何か考えがあるのなら……それはきっと、男である僕よりも女の子同士の方が良いだろう。
少し寂しいとは思うけれど……でも、これでいい。
だって、僕が今からやろうとしていることは――
「なあ、飛鳥」
「……は、はいっ」
考えている途中で名前を呼ばれ、少し慌てながら返事をする。
「なんつーかさ……ありがと、な」
「え?」
突然の予想外の言葉に、思考回路が停止する。
「どうしたんですか?熱でもあるんですか?」
「ちげーよ!……まあ、ガラじゃないってのは分かってるけどさ」
少し文句言うと、顔を赤らめながら僕の方からそっと逸らす。
七海先生が照れてるのなんて初めて見たかもしれない……。
「これ、なんのお礼なんですか?」
「なんかこう……色々? 西園寺のこととか、そこらへん」
「風莉さん……ですか?」
「あいつはさ、色々こじらせてただろ?なんというか……コミュ障?だったし」
「ま、まあ……」
ストレートに言っちゃったよ、この人。
でもまあ、2人の間柄ならいい、のか……?
「そんな奴が、友達と一緒に買い物に行けるくらいにはなったんだ。それも全部……飛鳥、お前のおかげだ」
「ボクは別にそんな……」
僕のしたことなんて、そんな大したことでは無い。
結局は風莉さんが自分の力で変わろうとして……頑張って、自分から話しかけられるようになったんだ。
だから僕は……別に褒められるようなことなんて、何もしていない。
「そんなこと言っても、あいつが前向きになったのは少なからずお前の影響だ。全部、お前が来てからなんだよ」
「…………」
「とにかく、お前がどう思っていようと、あたしは感謝してるんだよ」
そこまで言われるとは思わず、なんて返せばいいのか分からなくなる。
それに、七海先生がこんなに風莉さんについて話してくれることが、僕にとってはすごく珍しかった。
「あいつ、お前が来るまでもっと暗かったんだよ。それに、プライドの塊みたいなやつなのに、てんで中身が伴ってなくてさ」
「…………」
「人付き合いってのはさ。余計なプライドなんて捨てて、“自分”を見せることなんだよ」
「――――」
七海先生の言葉が、僕の心の内に突き刺さる。
でも、“自分”を見せるなんて……そんなこと、僕に出来るわけがない。
だって、そうしてしまったら……僕は……。
「そういう点では、お前も人付き合い下手だよな」
「……え?」
急に自分の話になり、一瞬戸惑う。
「表面上は無難にこなしてるけど。うーん……なんつーか、上っ面だけなんだよな」
「…………」
「壁、というか……誰に対しても、微妙に距離を置いてるだろ?それも、あの八坂に対してさえ、な」
「それ、は……」
核心に触れられ、言葉に詰まる。
どうやら、先生にも薄々気づかれていたようだ。
「何か、誰にも知られたくないことを必死に守ってる……って感じがするんだ。まあ、人に知られたくないなら仕方ないけど、さ」
「…………」
「周りの奴らに、もう少し、自分を見せたらどうだ?」
七海先生にそう言われ、一瞬心が揺らぐ。
でも、僕は……何があっても隠すしかないんだ……。
だからこそ僕は、この場所を――
「何も隠してないですよ、ボクは」
精一杯笑顔を作り、先生の言葉を否定する。
しかし、こうして話している間にも……僕の心は、終わることの無い痛みに苛まれ続けていた。
「……そう、か。まあ、好きにすればいいけどな。ただ――」
言葉を止めると、七海先生は僕の方を見て、軽く微笑みを浮かべる。
「あまり無理だけはするなよ。たまには優等生しなくてもいいからな」
そう言うと、先生は置いてある書類を持って学園へと行ってしまった。
…………。
「もう少し、自分を見せたら……か」
――そんなこと、出来るはずがない。
だって僕は……本来この学園にいてはいけない人なんだ。
だから、少しでもこのことを打ち明ける訳にはいかない。
この学園にいる限り、僕は友人にも、クラスメートにも、そして……悠さんにも、偽り続けるしかないのだ。
「だから、仕方がないんです……」
決意を固め、壁に掛かった時計に目を向ける。
「……そろそろ、支度しなくちゃ」
片付けをして、部屋に戻ろうと立ち上がる。
もう、このくらい掃除すれば……立つ鳥も跡を濁さない程度にはなっただろう。
「……あ、そういえば」
ふと、七海先生に言われたことを思い出す。
「……行く前に、悠さんに連絡しよう、かな」
そう考えると、僕はポケットからスマホを取り出す。
悠さんとは、この学園と悠さんの学園での噂をどうにかするために、"偽りの"恋人関係を築いていた。
ならば……この学園を出ていく僕には、もう悠さんと恋人同士でいる必要は無いのだ。
だからこれは――僕の恩人であり、大好きな悠さんへの……最後の挨拶なんだ。
lINGを開き、1番上にある人とのトーク画面を出す。
「会えたらいいけど、もし会えなかったら……」
文字を打ち始めていた指を止め、不測の事態を考える。
いつものように、文面だけを送ればいいのかもしれない。
しかし、もしも……断られるのだとしたら。
もう、会えないのだとしたら……。
「(……最後くらいは、あの優しい声が聞きたいな)」
そして、考えた末に文章を消して……僕は通話ボタンを押すことにした。
………………。
…………。
……。
長い呼出音の末に、その音がプツリと途切れる。
「“湊さん、どうしたの?”」
「……悠さん……今から会うことって――」
そうして僕は……悠さんと、話し始めた。
おそらくこれが、悠さんとの最後の電話になるだろう、と。
そう……心の中で思いながら――。
紅霞の合間から射す黄昏色の光は、何かの終わりを告げるかのように、耿々と部屋の中を照らし続けていた。
というわけで、お察しの方もいらっしゃると思いますが、次回から完全オリジナルの展開になります!
自分としてはここからの流れが何よりも書きたかったシーンなので、今まで以上に全力で行きたいと思います!笑
次は多分、七海先生視点と悠視点だと思います!
ぜひ次回も読んでいただければ幸いです~!
追記
今回も感想ありがとうございます!めっっっちゃくちゃ嬉しいです!
ほんとに毎回やる気の源になっているので、ありがたいです笑
というか、毎回どの感想に対しても返信の量が多くなってしまってほんとごめんなさい!反省はしています!!!
……男×男の娘のああいうシーンって、割と難しいですね(EXストーリー)