湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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湊くん誕生日おめでとう!
ということで、本日5/22は飛鳥湊くんの誕生日です!みんな湊くんをすこれ!
…………
誕生日シナリオ書きたかったですが……今回は、話としては前回の続きです~。
本当はもっと長かったのですが、キリが悪いので途中で切りました。
……ぶつ切りになっちゃってるんで、そこは許してください笑
果たして悠は湊を助けられるのか?というか、しっかり者の湊くんが助けられたままでいるのか?
今回も読んでいただけたら嬉しいです!


(ナンパに)慣れない彼女の助けかた

 

声が――聞こえた。

恐怖に染まった暗闇の中で聞こえた声。

それはとても柔らかくて優しい……それでいて意志のこもった声だった。

 

「(一体、何が……?)」

 

おそるおそる両目を開く。

するとそこには……真剣な目をした1人の男の人が立っていた。

 

「──あの。その子、困ってますよね?」

「あ……」

 

気づけば、声は出るようになっていた。

けれど、今はそんなことよりも……この目の前にいる人に、僕の意識は吸い寄せられていた。

 

「(助けに……来てくれたんだ)」

 

人通りが少ない道で、3人の男に絡まれてる女子学生。

本来なら関わりたくないであろう状況なのに……それでも、この人は僕を助けようとしてくれている。

それが――今の僕には、すごく嬉しかったんだ。

 

「(おばあちゃん……世の中には、こんなに優しい人もいるんだね)」

 

今はもういない大切だった人へと思いを馳せる。

それと同時に、僕の脳裏に……ある女の子の姿が浮かんだ。

――僕を救ってくれた不器用なお嬢様の姿が。

 

「(あぁ……だから、か)」

 

この人からどことなく伝わってくる"温かさ"。

それはまるで、風莉さんに助けてもらった時のような――そんな感覚を。

この時、僕は感じたんだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「あの!その子、困ってますよね?」

「……あ?それがどうしたんだよ?」

 

男達に話しかけると、リーダー格の男が機嫌悪そうに答え、訝(いぶか)しむような目で俺を見てくる。

その喋り方から、事が穏便に進まないことを察しながらも……それでも俺は、話を続けることにした。

 

「困ってるなら、やめてあげなよ」

「あ?何様だテメェ?てか、誰だお前?」

「それは……」

 

予想通りの至極当然の質問をぶつけられて、返答に困る。

 

「(わかってはいたけど……なんて答えればいいんだ、これ!?)」

 

予想以上に頭が回らず、脳内がテンパり始める。

気が付けば、女の子を助けに来たはずなのに、もはや俺の方が助けを求めていた。

 

「(適当に友達だ、とか言ってみるか?)」

 

いや、でも制服が違うし、それに……俺はあの子の名前も知らない。

もし、それで変に勘繰られたらそれこそまずい。

 

「(でも……それしかないよな)」

 

多分、これが今できる最善の選択肢だろう。

そう考え、覚悟を決めると同時に、もしものことがあった時のために、軽く臨戦態勢をとる。

そうして、俺が話し始めようとした瞬間――

怯えるようにしていた女の子が、何か意を決したようにその重たい口を開いた。

 

「あ……お、遅いですよ!一緒に帰るって言ったのに!"彼女"を待たせるなんて、どういうつもりなんですか!」

 

――――。

一瞬、思考が停止した。

 

「(彼女……?……か、彼女!?)」

 

思いもよらない単語に、動揺を隠せなくなる。

 

「(ど、どどどどういうことだ!?)」

 

"彼女"という単語が、頭の中で反芻している。

で、でもそんなこと意味もなく言うはずがないし……って。

 

「(あっ――そういうことかっ!)」

 

少し遅れて、女の子の意図を理解する。

その時にはもう、俺の理性はすっかり落ち着きを取り戻していた。

 

「(それにしても、この子……頭の回転が凄いな)」

 

さっきまで怯えていたはずなのに、今はもう助かる方法を瞬時に考えている。

きっと、相当周りに気を配るような生活を送ってきたんだろう。

……っと、今はそんなこと考えてる場合じゃないよな。

さて、それじゃあ俺も――

 

「彼女?」

「ああ……ごめんね。辛い思い……させちゃったよね?」

「……いえいえ、大丈夫ですよ。絶対来てくれるって思ってましたから!」

 

そうして、女の子と初対面ながらも、頑張って恋人のふりをする。

正直、思ってた以上に恥ずかし過ぎるから、これのくらいで勘弁して欲しい。

頼むから、これで諦めてくれ……!

 

「おいおい彼氏持ちかよ……」

「つまんねえなぁ」

「…………」

 

俺達の演技が良かったのか、それとも単に運が良かったのか。

中心の1人だけはどこか様子がおかしかったが、残りの2人は諦めムードになっていた。

 

「(よしっ!このままいけば!)」

 

見えないように、片手で小さくガッツポーズを作る。

――しかし、そう思ったのも束の間。

男の1人がぶつぶつ何か呟きながら、女の子の方へ動き出した。

 

「チッ……クソが……!」

 

そう言うと、男は女の子を掴む力を強める。

 

「……ぅ……痛っ……!」

 

女の子が苦悶の声を上げる。

その声を聞いた瞬間――

 

「――――」

 

俺の体は、再び動き出していた。

 

「あーあ、あいつキレちゃったよ」

「お?彼氏君もキレちゃったか?」

 

――取り巻きの奴らから、見え透いた挑発を受けた。

だが、俺はその挑発を無視して、ただ真っ直ぐにあの子を掴む腕目掛けて加速する。

 

「……離せ」

「離せ?そんなこと言われて離すわけ――」

 

男が言い切る前に、腹に拳を入れ、女の子から腕を引き剥がす。

そして、その腕を掴んで、回して締め上げた。

 

「ぐあっ……!」

 

男から苦痛の声が漏れる。

その声聞くと同時に、俺は片手を離す。

そして、相手の襟を掴み――

 

「ふっ……!」

 

地面目がけて思い切り投げ飛ばした。

 

「がっ……くあッ!」

「俺の女に……手ぇ出すなッ……!」

 

足元から、苦しそうな呻き声が聞こえてくる。

男も流石に痛かったようで、その場でのたうち回っていた。

 

「す、凄い……」

 

女の子が、ぼそりと呟く。

しかし、怒りに駆られていたせいか……女の子が何と言ったのか、俺には聞こえなかった。

 

「女の子に手ぇ出すとか、何考えてんだコイツ?」

 

ふと、そんなことを考える。

そんなの、小学生でも知ってるっていうのに……。

地面に叩きつけられた男を見て、少し悲しく思うのだった。

………………。

 

「加減……ミスちまったな」

 

そう言って、他の男達を一瞥する。

 

「だ、だったら最初から言えよクソが」

「こんなやつと関わらねぇ方がいい」

「……クッ……う……」

「とりあえずコイツ連れて戻るぞ……!」

 

そう言い残すと、男達はどこかへ行ってしまった。

……やっぱやり過ぎたかな、これ。

少し反省しながら、男たちの去っていった方へ視線を移す。

 

「――――」

 

男達の逃げた方から、ふと視線を感じる。

 

「(今一瞬、人影が見えたような……)」

 

少し気になって、目を凝らしてみる。

けれど、先程見えた人影は……気が付けば、既に見えなくなってしまっていた。

 

「(何だったんだ……今の?)」

 

元からいたのか、それともさっきのを見て駆けつけたのか。

まあどちらにしろ、あいつらはどこかへ行ったし……たぶんきっと、大丈夫だろう。

 

「ふぅ……どうにかなったな……」

「よ、よかったぁ……」

 

一件落着し、ため息と共に安堵の声を漏らす。

隣を見ると、女の子の方もほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「ところで、君は大丈夫だった?どこか怪我してな――」

 

そう言いながら、女の子の顔を覗き込んだ瞬間。

――時が……止まったような気がした。

紫がかった艶やかな髪。

真紅に染まったつぶらな瞳。

触れたら壊れてしまいそうな華奢な体。

見た目から所作まで“大和撫子”という言葉を彷彿とさせるその姿は、お嬢様学校の生徒と呼ぶにふさわしいものであった。

しかし、見ただけでその上品な雰囲気が伝わってくるのに……それでいて彼女は、同時に可愛らしさのようなものも兼ね備えていた。

 

「(ど……ど……どタイプなんですけど――!!!)」

 

彼女の全てが、思いっきり心にぶっ刺さる。

それはまるで、ストライクゾーンのど真ん中をぶち抜かれたような……そんな感覚だった。

さっきまでは真剣だったし、暗闇だったからよく見えてなかったけど……この子、マジで超絶美少女だ。

 

「ボクは、大丈夫ですけど……その……。あなたこそ、大丈夫でしたか……?」

「あ……だっ、大丈夫!です!」

 

「(ぼ……ぼぼぼボクっ娘……だとっ!?)」

 

更に追加された属性が、俺の心にまたもやぶっ刺さる。

正直、知り合いにボクっ娘がいないから、どんなもんかと思ってたけど……。

やばい……ボクっ娘がこんなに似合う子いるのかよ……。

どうしよう。なんか一気に緊張してきた。

 

「(学校の女子じゃ、ここまで緊張したことないのに……)」

 

ふと、学校の女子たちを思い出す。

まあ、それもそれであいつらには失礼だが……今はそれどころではない。

 

「(もしかして、これが運命の相手……ってやつなのか?)」

 

ついつい、そんな馬鹿馬鹿しいことを考えてしまう。

しかし、自分でも……今までに無いくらい“異性”に惹かれているのが分かる。

一目惚れなんて、相手のことを知らずに好きになることだから、俺は絶対しないって思ってたのに……。

 

「(マジで俺……この子のことが好きなんだな……)」

 

自分の気持ちを、完璧に自覚する。

しかし、自覚すると……緊張感が更に高まってしまった。

……いやマジで死ぬって。

 

「あの……さっきは、ありがとうございました!」

「いやいや、君が機転利かせてくれたから逆に助かったよ」

「いえいえっ!あなたが助けに来てくれなかったら、これは出来なかったですし……それに、その……」

 

話の途中で、女の子が言い淀む。

 

「(あ、ああ……)」

 

さっきまでのことを思い返す。

この子が苦しんでるのを見たからではあるけど、ついカッとなって手が出てしまった。

お嬢様学校の子に喧嘩とか、やっぱ悪いイメージ持たれちゃった……よなぁ。

それこそもしかしたら……さっきの彼らに対する様に、怖がられてしまったかもしれない。

 

「(これは……俺の恋、終わったなぁ……)」

 

はぁとため息をつきながら、春の夜空を見上げる。

なんとも短い恋物語であった。

 

「見苦しい姿、見せちゃった……よね?」

「そ、そんなことないですっ!その……凄かった、ですし……」

 

女の子は何か言い淀むと、少し考える仕草を見せる。

そして、意気消沈している俺に真剣な眼差しを向けると、ゆっくりと口を開いた。

 

「そ、その……かっこよかった……です」

 

………………。

…………。

……。

あまりに予想外の答えに、言葉が出なくなる。

 

「(か……か、かっこ……いい?)」

 

確かに今、“かっこいい”って言ったよな!?

一瞬、自分の耳が信じられなくなる。

でも、この子も心なしか顔が赤いし……。

……ってことはこれ、ワンチャンあるんじゃね……!?

 

「あ、あの……その……。か、勝手に彼女のふりとかしてしまって、ごめんなさい……!」

「いやいやいやいや!」

 

彼女の口から放たれたまさかの謝罪の言葉に、思わず早口で答える。

 

「てか、俺なんかが彼氏のふりなんてしちゃって、逆に申し訳ない!……って、あっ」

 

話している途中に、つい、さっきの光景が脳裏に浮かぶ。

“俺の女に……手ぇ出すなッ……!”

 

「くっ、ああああああああああああ」

「ど、どうしたんですかっ!?」

 

何が起きたのだと言いたげな彼女の目の前で、大声でのたうち回る。

なんだよそのセリフ……痛すぎてやばいだろ……。

あまりの恥ずかしさに理性が吹っ飛び、顔が次第に熱くなってくる。

誰か……誰か、俺を殺してくれぇぇぇ……。

 

「ご、ごめんっ……!ほんと彼氏の振りするにしてもやり過ぎだったよね……」

「そんなことないですよ……あ」

 

そう言いかけて、彼女は顔を林檎のように紅潮させる。

 

「ほんとにごめんなさいっ!」

「……あなたは……優しい人、なんですね」

「え……?」

 

何を言われたのかわからず、思わず素っ頓狂な声が漏れる。

 

「普通、他人の事でも自分の事のように怒れませんよ?でも、それが出来るってことは、あなたは相手を思いやることができる人なんですよ」

「…………」

「それって……誇れる事じゃないですか?」

 

――初めて、そんなことを言われた。

 

「(誇れる……か)」

 

本当は、"彼氏の振りにしてもやり過ぎだ"とか、"流石に引いた"とか言われると思っていた。

けれど、この子はそんなことを一切言わなくて……。

逆に、思いやりができるのだから誇っていい、とさえ言ってくれた。

 

「(……優しいんだな)」

 

これは、お嬢様学校特有のものなのか、それともこの子が元々持っているものなのか。

そんなこと、俺には分からない。

……けれど。

この子から感じられた優しさは……相手を包み込んでくれるような、そんな慈愛に満ちたものであった。

 

「……ありがと、な」

「いえいえ、あなたは僕のことを助けてくれたんですから!ボクの方こそ、ありがとうございます」

 

天使のような微笑みで、彼女はそう告げる。

 

「……ところで、その……お名前を聞いても……?」

「あ、ああ!確かに……ずっと"君"って呼ぶのも変だよな」

 

今更そんなことすらしていなかったことに気付かされ、少し反省する。

名前も言わずにこんなに話していたのか……なんか、失礼なことしちゃったな。

 

「俺は、八坂悠っていうんだ!よろしく」

「八坂さん、ですね。ボクは、飛鳥湊です。よろしくお願いします!」

 

そう言うと、彼女は恭しく頭を下げる。

飛鳥湊……なんだろう、名前からしてもう可愛い。

 

「飛鳥さん、ね。あー……そういや呼びにくいだろうし、俺のことは悠でいいよ」

「そう、ですか……?じゃ、じゃあお言葉に甘えて……悠さん」

 

――グサッ!

あまりの衝撃に、魂が抜けそうになる。

 

「(や、やべぇ……こんなに可愛い子から名前呼ばれちゃったよ……)」

 

いつもの癖で、下の名前で呼ばせちゃったけど……俺グッジョブ!

 

「そしたら、ボクのことも湊でいいですよ?」

「え!?あ、それじゃあ……湊、さん」

「はいっ!よろしくお願いしますね」

 

そう言うと、湊さんは満面の笑みを浮かべる。

それはまるで、夜の闇の中で煌めく月のような……そんな美しさがあった。

 

「……あっ!みんなを待たせてるんでした!そろそろ戻らないと……」

「そうだったのか……じゃあ、早く帰らないとだね」

「あの……今日は本当に、ありがとうございました……!」

 

改めてそう言うと、彼女は礼儀正しく深々と頭を下げる。

 

「いいっていいって、困った時はお互い様だろ?」

「あなたが来てくれた瞬間……とても嬉しかったんです」

「そっ、か。君が無事に笑ってくれるなら、それだけで助けてよかったって思えるよ」

 

湊さんは顔をほころばせると、俺の方を向き直す。

そして――

 

「では、またどこかで会えたら……その時は、よろしくお願いしますね

「あ、ああ……」

 

そう言って、彼女は街灯に照らされた夜道の中を歩き出した。

少しずつ、少しずつ……彼女の背中が遠のいていく。

………………。

 

「(……これで、良かったのかな……?)」

 

彼女を見送りながら、不意にそんなことを考える。

心にぽっかりと穴が空いたような、そんな感覚があった。

俺は彼女を助けた。そして、彼女は感謝して帰った。

それで良いじゃないか?

なのに何故……俺は……。

 

「(そっか……これが最後かもしれないのか)」

 

そっと浮かんできた理由に、自然と納得する。

――もしかしたら、もう2度と会えないかもしれない。

根拠はないが、なぜかそんな気がしてならなかった。

………………。

……もし。

もし、俺がこの気持ちを伝えずに終わったら……。

俺はきっと、後悔することになるだろう。

そんなの――

 

「(そんなの……嫌に決まってんだろっ!)」

 

自分の気持ちに気づいた瞬間、溢れる想いが抑えきれなくなる。

そして俺は、一心に彼女の方へと駆け出した――

 

 

 




やはり湊くんは機転が利く子ですね~。可愛い。マジで。
ということで、悠君が一目惚れしてしまいましたが、果たして結果はどうなるのか?笑
ではでは、次も読んでくださったら嬉しいです!
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