今回は七海先生・悠・湊くんの3つの視点での話で、それぞれの想いみたいなのが伝わってくれるかなと思います!
長くなってしまうので、前書きはここまでで――
今回も、ぜひ読んでいただけたら幸いです!
職員室への道を歩きながら、先程の飛鳥の様子を思い出す。
「はぁ〜……やっちまったなぁ」
つい……後悔の念が、口から零れる。
あの様子だと、飛鳥は決心を固めてしまっているに違いない。
こういう時、あたしが何か言ってやれれば良かったんだが……。
「そういうの、苦手なんだよなぁ」
そう言って、1人溜息をつく。
…………。
……自分でも、分かっている。
あたしに……そういう甲斐性が無いことくらい。
「(寮での仕事、全部飛鳥に押し付けてるしな)」
飛鳥と会ってからのことを思い出しながら、少し自嘲気味に笑う。
自分でも思うが、よくこれで教師になれたものだ。
「……あとは頼むぞ、八坂」
ここにはいない、自分より生徒を救える奴に……祈りに似た願いを込める。
「……って、教師のあたしが言うのもどうかと思うけどな」
生徒のことを他人に任せるしかないこの状況に……自分の不甲斐なさを感じる。
けれど、もう……飛鳥を止めるためには、あいつじゃなきゃダメなのかもしれない。
「……今日は、ケーキでも買って帰るか」
ぼそりとそう呟き、学園への道を1人歩く。
今のあたしにできることは……ただ、その成功を祈ることだけであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――湊さんお誕生日おめでとう!……うーん、違うなぁ」
湊さんへのプレゼントを手に、渡す時の練習を繰り返す。
自分でも馬鹿らしいとは思うけど……年に一度の事だし、こういうことは全力でやらないと。
「というか、プレゼントはこれで良かったのかな……?」
疑問に思いながら、紫色のリボンに包まれたプレゼントに目を向ける。
西園寺さんたちに言われてから何を買うかずっと迷ってて、昨日になってようやく買うことが出来たのだが……正直、あまり自信が無い。
化粧品とか服とかバッグとかもあったけど、どれも湊さんとは違う気がして、結局コレにすることにした。
「喜んでくれたらいいな」
湊さんの喜ぶ姿を思い浮かべ、自然と頬が緩む。
たぶん今、相当キモイ顔してるんだろうな……。
――そんなことを考えていると、不意に着信音が聞こえてくる。
「誰からだろ……って、湊さん?」
スマホの画面を見ると、そこには"飛鳥湊"の文字が表示されていた。
まさか湊さんの方からかけてくるとは……。
というか、何かあったのかな?
色々と推測しながらも、俺は画面にでてきた通話ボタンを押した。
「湊さん、どうしたの?」
「"……悠さん……今から会うことって、できますか?"」
いつもとは違う、真剣で――そして悲しそうな声に、一瞬身構えてしまう。
湊さん、何かあったのかな?
「ああ、大丈夫だよ。というか、俺もそれ聞こうと思ってたんだよね」
「"……そうだったんですか"」
「……湊さん、どうしたの?どこか具合でも悪いの?」
「"……っ、なんでも、ないです"」
いつもと違う様子に疑問を感じ、少し尋ねてみる。
しかし、その返事はなぜか歯切れの悪いものであった。
一体どうしたんだろうと考えるが……とにかく、湊さんが何か隠している事は明白だった。
「……わかった。詳しいことは会った時に聞くよ」
「"そんな、別に何も……"」
「じゃあ少ししたら、鈴女の前に集合で」
「"ちょ、ちょっと……!"」
「もうちょっと後にした方がいいか?」
「"それは……"」
「ごめんごめん、流石に急だったよね。だったら――」
「"悠さん、今すぐに会うことって出来ますか?"」
「……え?」
予想外の言葉で遮られ、つい聞き返してしまった。
今すぐに……?
「別に大丈夫だけど……?」
「"じゃあ、それでお願いできますか?"」
「ああ……いいよ」
「"では僕はこれから出るので、後ほど……"」
「ああ、また後で……」
ツーツー、と電話の終わりを告げる音が微かに聞こえてくる。
「(湊さん……なんか切羽詰まった感じだったけど、何があったんだろ?)」
湊さんに何かあったのではないかと思い、色んな可能性を考える。
辛そうだったし、俺に出来ることなら……助けになれるなら、できる限り力になりたい。
けれど……流石に情報がなさすぎて、分からないからなぁ。
「……って、そうだった!"今すぐ"ってことは、俺ももう行かないとか」
湊さんの言葉を思い出してから急いで髪型を整え、プレゼントを用意し……出かける準備を終わらせる。
「(…………)」
湊さんが今どうなってるのかなんて、俺には分からない。
でも、だからこそ俺は……今俺にできることをするだけだ。
「よし――絶対喜ばせるぞ!!!」
玄関前で気合を入れると、俺は1人鈴女へと歩き始めた。
――大切な人が、並々ならぬ苦悩の末に、1人で重大な決断をしていたとも知らずに……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
悠さんとの電話を終え、部屋に戻り、キャリーバッグに荷物を詰め始める。
"今すぐに"って言っちゃったし、早めに終わらせないと。
「……多分、気づかれちゃったよね」
荷物を詰めながら、先程の電話の中での悠さんの対応を思い出す。
悠さんは少し話しただけで、すぐに僕の様子がおかしいことに気がついていた。
正直、心配してくれたことは、心の底から嬉しかったんだけど……。
「悠さんに、なんて言おうかなぁ……」
申し訳なさと同時に、なんて言い訳しようかという悩みが、頭の中を駆け巡る。
……せっかくだから、悠さんには全て話そうかな……?
「(……って、いやいやいや!そんなことできるわけないよぉ!)」
首をぶんぶんと横に振り、変な考えを追い出そうとする。
今日の目的は、悠さんに最後の別れを告げることだ。
それ以上のことなんて、言う訳にはいかない。
……でも、隠し事をしても、悠さんにはバレちゃうだろうからなぁ。
「うーん……」
どうすればいいのか分からず、頭を悩ませる。
やっぱり、正直に話すべきなのかなぁ……、と。
そうこうしているうちに、ものの数分で荷造りは終わってしまった。
まあ、元々私物なんてほとんど持ってきていなかったから、すぐに終わるとは思ってたけど……。
「……お世話になりました」
誰もいない部屋を見回して、ぺこりと一礼する。
――風莉お嬢様はもう、僕がいなくても大丈夫だろう。
「おばあちゃん……約束、果たせたかな?」
おばあちゃんの最後の遺言。
きっと僕はそれを果たせたはずだ。
ならばもう……僕がこれ以上、この学園に通い続ける理由はない。
「でも、そんな話……できるわけないよね」
どう話せばいいかも分からない以上、黙って出て行くしかない。
我ながら、なんともおかしなことをしているように思えるが……僕にはもう、それしか浮かばないんだ。
使い慣れた木製の階段を、キャリーバッグで傷つけないように注意しながら、ゆっくりと降りていく。
……帰ってきたら、お嬢様たちはどう思うのだろう。
きっとみなさん……いや、気になるけれど、想像するのはやめておこう。
だって、都合の良すぎる想像が浮かんでしまったら……。
そうなってしまったら、僕は……。
「あはは……寂しいけど、しょうがないよね!」
無理矢理自分に言い聞かせ、必死に笑顔を作る。
本音とか……今は考えちゃいけない。
「……ペットボトル使うのは、なるべく抑えてくださいね」
ここにはいない相手に向かって、最後の言葉を言い残す。
「柚子さん、部屋をちゃんと片付けてくださいね。ひなたさん、中二病も程々にしてくださいね」
最後の言葉なのに説教じみてるなと思いながら、思い出の詰まった部屋を見回す。
「七海先生は……もう少し、面倒くさがるのをやめてくださいね。美結さんは、あまり人をからかわないでくださいね。あと、それから……」
――自分の中で、何かが危険を知らせる。
……駄目だ。
これ以上は、動けなくなってしまう。
「……ごめんなさい、みなさん」
このことは、後で手紙でも書いて謝ろうと思う。
だから、今はとにかく……少しでも、この決心が鈍らないうちに。
この両の眼に溜まったものが、雫となって零れ落ちないうちに。
この思い出の場所に、別れを告げなければならなかった。
「本当に、ありがとうございました……っ!」
最後に一礼すると、今はすっかり見慣れてしまった扉をそっと開ける。
そうして僕は――みんなと過ごしたこの寮を後にしたのだった。
ということで、いかがだったでしょうか?
自分としては、湊くんと悠のテンションの違いというか明暗というか、そういうのを意識してみました!
まあ、先生のとこに関しては、何で人任せやねん!って思うところもありましたけど笑
次の話が、多分自分の中で最も書きたかった部分になると思います!(予定)
なので、楽しみにしていてくれたらなと思います笑
果たして、悠は湊くんを繋ぎとめることは出来るのか?
湊君は、悠君に堕ちてしまうのか?
ではでは、次回も読んでいただけたらなと思います!