多分すごく気になる感じで前回終わらせてしまった気がするので、今回は切らずにちょうどいいとこまで書きました。
そのため、いつもよりほんの少しだけ長めになってます笑
とにかく自分が書きたかったことを全力で表現して書いてみたので、ぜひ読んでいただけたら幸いです!
「――ここが、俺の家……です」
「……お、お邪魔します……」
悠さんに案内され、僕たちは一棟のアパートに到着した。
そこは、新しくはないが決して古くもない……そんな、暮らしやすそうな建物であった。
「(悠さん、ここに1人で住んでるんだ……)」
建物を眺めながら、悠さんが暮らしている様子を想像する。
いつもここから、僕を迎えに来てくれてるんだろうなぁ……。
「(さっきは、何も言わずにあんなこと言っちゃったけど。普通に本当のこと話した方が良かったかも……)」
階段を昇りながら、ふと先程のことを後悔する。
普通、理由も言わずに突然家に行きたいなんて言ったら、大抵の人は嫌がるだろう。
実際、僕がその立場だったら、結構戸惑ってしまうかもしれない。
けれど、そんな事情を察してか否か……それでも悠さんは、文句の一つも言わずに僕を家まで連れてきてくれた。
理由を教えろと迫ってきてもいいくらいなのに……いくらなんでもお人好し過ぎるよ。
「(でも……)」
また悠さんに、甘えちゃったなぁ……。
そんな罪悪感が、僕の胸を締め付ける。
「(……というか、よくよく考えたら緊張してきたんだけど……)」
改めて状況を思い出し、心音が煩くなってくる。
友達の家に行くのなんて、何年ぶりかも覚えてない。
できる限り、粗相のないようにしないと……!
「(……………………)」
これから別れ話を切り出そうとしているのに、果たしてこんな気持ちで大丈夫なのか。
そんな考えが頭を過ぎり、自問自答しながら悠さんの後に着いていくと、2階の右奥の部屋の前に着いた。
中に通され、リビングにあるクッションの上に座るように促されると、悠さんは真剣な顔つきでゆっくりと口を開いた。
「――単刀直入に聞くけど、さ」
「……はい」
「……その荷物、これから旅行に行く……って訳でもないよね?」
「……そう、ですね」
「そっ、か……」
予想通りの質問に、感情を悟られないように注意しながら答える。
悠さんの方も、特に驚いた様子もないようだったが……どこか深刻そうな面持ちで下を向いていた。
「……………………」
「……………………」
2人の間に、重たい沈黙が流れる。
……………………。
――果たして、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
1分にも満たない、短い時間だったのかもしれない。
しかし、永遠にも似たような長い長い時間が、2人の間に流れていたような気さえしてくる。
だけど……。
いつしか僕は、その沈黙を破るように、そっと口を開いていた。
「……そ、そういえば、悠さんもボクに用があったんですよね?」
「……そう、だね」
「ゆ、悠さんの用事って、なんだったんですか……?」
「…………」
「悠、さん……?」
「……俺が先でも、いいのか?」
「……いいです、けど……?」
僕の返事を聞くと、悠さんは持ってきた荷物を漁り始める。
「…………」
そして、悠さんは荷物を取り出すと、少し改まってこちらに体を向けた。
その手に握られていたのは――丁寧に紫色のリボンでラッピングされた小さな小包であった。
「……悠さん、それは……?」
「……湊さん」
「はい……」
「湊さん……"誕生日、おめでとう"」
「え……?」
あまりに急な出来事に、思考が追いつかなくなる。
「え……え……?」
「おめでとう、湊さん」
「え……ど、どういうこと……ですか?」
「ん?どういうことも何も……今日は湊さんの誕生日だろ?」
「へ……?」
「まさか本当に忘れているとは……西園寺さんの言う通りだったな」
呆れたような目つきで、にやけながらそう話す悠さん。
……覚束無い手で、スマホの画面を確認する。
そこには5月22日――僕の誕生日の日付が書いてあった。
「あ、ああ……っ!」
この感じだと、悠さんや風莉さんだけじゃなくて、寮の皆さんも知っているんだろう。
ということは、今朝のあれは……。
「プレゼント何がいいか選ぶのが大変でさ。湊さんだと、どんなのがいいかなって……」
「…………」
悠さんが何か話してくれているが、もう僕の耳には届かない。
もう何も……考えられない。
お誕生日とか……こんなことを、されてしまったら……。
複雑な感情が絡み合って、頭の中がぐちゃぐちゃに掻き乱される。
「……ぁ……」
何か言おうとして、ゆっくりと口を開く。
――けれど。
「(あれ、おかしいな……?)」
声が……出てこない。
「え……み、湊さんっ!?」
そう言うと、悠さんは心配そうにしながら、こちらを覗き込んでくる。
"何を、慌てているんですか?"
そんな言葉が、空気となって口から零れ落ちる。
一体、悠さんはどうしてそんなに悲しそうな表情を――
「泣いて……いるのか?」
「……ぇ……?」
悠さん言われて、ようやく気がついた。
「あ……れ……?」
視界が滲んで、周りの景色が霞んでいく。
「な……んで……どうして、ボク……」
溜まった涙が、ゆっくりと流れ落ちていく。
胸の辺りが、次第に苦しくなっていく。
「嬉し泣き……じゃないよな……」
「ぅ……ぁ……おか、しい……なぁ……」
……どうして僕は、泣いているのだろう。
必死に考えようとするが、全くもって分からない。
というか、もはや考えることすらままならない。
「……誕生日、まずかったかな……?」
「……たんじょう、び……ボク、の……」
その言葉を言われた瞬間、ドクリと心臓が大きく脈打つ。
そしてその直後――突然、過去の光景が頭の中に蘇った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「“ハッピーバースデー、みーちゃん!”」
「“……おめでとう、湊”」
ずっと昔……まだ、お母さんとお父さんが生きていた頃。
2人はそう言って、僕の誕生日を祝ってくれた。
優しく頭を撫でながら、おもちゃのロボットを渡してくれたんだ。
今の、悠さんみたいに――
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ぁ……ぁ……」
……得体の知れない何かが。
心の内に蓋をして、ずっと見ないようにしてきた何かが。
少しずつ……僕の心の中から溢れ始める。
「(……お父さん……お母さん……っ!)」
――呼吸が出来ない。
――震えが止まらない。
駄目……無理……。
もうこれ以上、隠せない……溢れちゃう……っ!
「……っ、ぅ……っ」
「湊……さん……」
「だ……め……あふ……れ、ちゃ……う……っ」
「……っ!」
僕がそう言った瞬間、悠さんは驚いた表情を見せる。
しかしその後、何か意を決したように、僕の方へ手を伸ばしてきて……。
「……ぇ……?」
――頭の上に、何か温かいものが触れる。
……これ、は……。
「……“大丈夫だよ、湊さん”」
悠さんはそう言うと、その手を僕の頭の上でゆっくりと左右に動かす。
そして、その手は頭から少しずつ下がっていき――涙で濡れた僕の頬に触れた。
「――っ!」
――刹那
僕の頭の中に再び、過去の光景が走馬灯のように駆け巡った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「“大きくなったねぇ……おめでとう、湊”」
1年前のこの日、おばあちゃんは僕にそう言ってくれた。
2人だけで誕生会を開いて、僕の誕生日を祝ってくれた。
手作りのご馳走を、たくさん用意してくれて……。
――本当はもう、体を動かすのも辛いはずなのに。
それでも、僕を祝ってくれた。
両親の居ない僕の為に。
欠けてしまった心の穴を、そっと埋めるように……。
「“……大丈夫よ、湊”」
そう言って、皺だらけの細い手で、僕の顔に触れてきて――
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「――――」
おばあちゃんの手の感触が、はっきりと蘇る。
年老いて皺だらけだったけど、優しくて大好きだった手のぬくもりが――
「ぁ……ぅ、ぁ……」
……思い出して、しまった。
「こ……んな、の……こんな、の……ひどすぎ……ます……っ」
「ご、ごめんっ!軽々しくこんなことしちゃって……」
申し訳なさそうにする悠さんに対して、必死に首を横に振る。
悠さんは何も悪くない。悪いのは泣いている僕の方だ。
だけど、それでも……。
「おめでとう……なんて……そんな、こと……言わないで……ください……っ」
「…………」
「……えぐ……っ、ボクに……優しく……しないで……っ!」
「え……湊、さん……?」
「だって、嬉しいから……っ、色んなこと……思い出しちゃう、からぁ……っ!」
「……っ!」
――在りし日の、幸せな記憶を思い出して。
――そして同時に、それを失ったことまで思い出してしまって。
「……ご、ごめ……なさい……ボク……ボク、は……っ……ぁ……あああああああぁぁぁぁぁ……!!!」
――必死に我慢していたものが、堰を切って溢れ出す。
止めようとしても、目から溢れ出る熱い液体は、止まることを知らない。
もはや、自分ではどうにもならない程に流れ落ちる涙は、さらに僕の心の蓋をこじ開けていく。
「うあああぁぁ……っ、あぁ……あああぁ……っ!!!」
考えてみれば、おばあちゃんが死んでから初めてだった。
「なんで……っ、今になって……っ!おばあちゃん……!お父さん……おかあさぁん……!」
今まで、泣かずに我慢してきたのに。
どんなことがあっても、我慢できていたはずだったのに。
どうして、今になって……っ。
「……西園寺さんが、言ってたけど……確か、湊さんって……」
――僕は、一人ぼっちだ。
家族なんて、もう誰もいない。
いなくなって……しまったんだ。
だから僕は、1人きりで、強く生きなければならないのに。
「ぅぐ……ぁ……ああ……っ、なの、に……どうして……っ!」
――目の前に、与えられてしまった。
誕生日おめでとうって、嬉しそうに言ってくれて。
丁寧にラッピングされたプレゼントを渡してくれて。
頭を……頬を……そっと優しく撫でてくれて。
それはまるで、もうどこにもいない僕の家族のようで――
無くしたはずのものを。
僕が諦めていたものを。
僕は……見つけてしまって。
決して、気付いてはいけなかったものなのに……。
「こんな、の……あんまり、です……っだめ……なのに……っ!」
頬に添えられた手に、縋るように手を重ねる。
「誰かぁ……っ、たすけてよぉ……っ!おばあ、ちゃん……っ!!!ひぐっ、あああああああぁぁぁぁぁ……!!!」
子供みたいに泣きじゃくって。
誰かに……救いを求めて。
みっともないくらいに声を上げて、泣き叫ぶことしかできなくなる。
「……湊、さん……」
「悠……さん……えぐっ……あああぁぁ……!」
僕の名を呼ぶ声が聞こえる。
きっと、悠さんは戸惑ってしまっているに違いない。
それはそうだ。誕生日を祝っただけなのに、目の前で泣かれてしまったのだから。
――きっと、悠さんも呆れ果ててしまっているのだろう。
――僕のことを、嫌いになってしまっているのだろう。
そんな辛い想像が、頭の中を駆け巡る。
「(もう……ボク、は……っ)」
苦しくて苦しくて、辛くて辛くて。
感情がぐちゃぐちゃに掻き乱されて。
それでも、ただ泣くことしか出来なくて……。
そうして、糸が切れた人形のように崩れ落ちそうになった瞬間――
「……ぇ……?」
――突然、僕の体は“何か”によって包み込まれたのだった。
というわけで、いかがだったでしょうか?
……というか、また今回も気になるところで終わらせちゃった気もしますが、すみません!
今回はオトメドメイン本編でもあるシーンで、自分もこのシーンが好きなのですが、どうしても、「もっとこうしたい」と思う私の心が暴走して、結果的に本編の2倍くらいの分量になりました笑
次の話の悠の行動と、今回の“泣いている湊の頭を撫でる”という行為は、自分がオトメドメインをプレイしているときに「お嬢様方誰でもいいからやってくれよ、てか何でやらないの?慰めてあげてよ……」とガチで切実に思ったことでした。
そのため、今回“悠”という本編にいなかったイレギュラーな存在を使ってifの世界を表現できたことがめちゃくちゃ嬉しく、そして楽しかったです!
次の投稿はいつになるかわかりませんが、できる限り早めにできたらなと思います!
それではまた次の話も、ぜひ読んでいただけたらと思います~!
追記
いつも感想&評価ありがとうございます!
ほんとにめちゃくちゃ嬉しいです!!!
皆さんの気持ちに応えられるように、次も全力で頑張ります!