湊君を攻略したい!   作:Kスケ

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本当に遅くなりました!前回の続きです!
2週間ほど開けてしまって申し訳ありませんでした……!!!

ということで後編ですが、とりあえずいつもよりも分量が多くなりました。
ちゃんと気合い入れて書いたので、読んでいただけると幸いです!
では前書きはここまでにして……続きをどうぞ!


湊さえいればいい。(後)

 

 

 

――滂沱の涙を流しながら、湊さんは嗚咽混じりの声で、感情のままに泣き叫ぶ。

内に秘めた想いを吐露する彼女のその両の肩は、その傷の深さを表しているかのように小刻みに震えていた。

そんな彼女の姿を見つめながら……俺は一人、考えていた。

 

「慰めようと、思ったんだけどなぁ……」

 

泣いている湊さんを見て、いてもたってもいられず……つい、頭を撫でてしまった。

そして、安心するようにと、その濡れた頬に手を……。

 

「(…………)」

 

しかし、俺の手が湊さんの頬に触れた瞬間、湊さんは余計に泣き出してしまった。

……やはり、偽りの恋人であったとしても、気安く撫でるのはやめた方が良かったか。

そう思ったのだが――厳密には、少し違うのかもしれない。

 

「("優しくしないで"……か)」

 

湊さんの言葉を、頭の中で反芻する。

それは、俺を拒むというよりも……むしろ、己が身を守ろうと必死になっているように感じた。

 

「なんで……っ、今になって……っ!おばあちゃん……!お父さん……おかあさぁん……!」

 

恥も捨てて、家族のことを思い出しながら……湊さんはただ一心に、声を震わせ続ける。

湊さんの家族……か。

 

「……西園寺さんが、言ってたけど……確か、湊さんって……」

 

そう言いながら、数日前の西園寺さんとの会話を思い出す。

それは、湊さんとのデートした次の日の事だった――

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

西園寺さんに呼び出され、湊さんの誕生日をどうするかについての話をした日。

俺は、少し聞きたいことがあったため、話が終わった後に西園寺さんを寮の外へと呼び出していた。

 

「――あの……どうしたの……?私に話、って……?」

「いや……少し、聞きたいことがあってさ」

「何かしら……?」

 

そう言うと、西園寺さんは不思議そうにしなから、こちらを見つめてくる。

――果たして、これは尋ねてしまってもいいものなのか。

そんな罪悪感に似た感情が、胸の中を支配し続ける。

 

「(……でも、俺は決めたんだ)」

 

全てを知った上で、彼女を支えると。

そう……決心したんだ。

深呼吸しながら、腹のあたりにグッと力を込める。

そうして、揺らぐ気持ちを抑えながら、俺はゆっくりと口を開いた。

 

「正直、こういうこと聞くのは良くないって分かってるんだけどさ……」

「…………?」

「湊さんとのデートの時に……"西園寺さんに拾われた"って話を聞いて……」

「…………」

「ここに来る前は、祖母と二人暮らししてたって聞いたんだけど……湊さんの、両親って……」

「……そうよ」

 

俺が言い終わる前に西園寺さんはそう言うと、静かにゆっくりと……その言葉の続きを紡ぎ始めた。

 

「湊の両親は……何年も前に、湊を1人残して……事故で、亡くなってしまったわ」

「……っ」

 

告げられた事実に、体中の筋肉が強ばるのを感じる。

予想はできていたけど……実際に言われると、中々にきついものがある。

 

「そう、か……」

「……こっちも、少し聞いていいかしら?」

「……ああ」

「あなたはなぜ……このことを、聞こうと思ったの?」

「…………」

「理由が、あるのでしょう?」

 

全てを見透かすような瞳で、彼女はこちらの目をじっと見つめる。

この人の前では隠し事なんて無駄なのだと、身体中の感覚が訴える。

…………。

まあ、隠す理由もないし……ここは素直に言うことにするか。

 

「……もし、さ」

「…………」

「もし、湊さんの過去が、俺の考えてる通りだったら……俺にも、何かできないかなって何か、助けになれないかなって」

「…………」

 

嘘偽りのないありのままの気持ちを、西園寺さんにぶつける。

 

「俺が……湊さんの、心の支えにでもなれれば、って。そう思って――」

「大丈夫よ」

 

優しい声に言葉を遮られ、二の句が継げなくなる。

 

「あなたはもう十分、湊の心の支えになっているわ」

「……え?」

「前にも言ったけれど、あなたに会ってからの湊はかなり変わったのよ」

「…………」

 

そう言うと、彼女は目を細めながら、口元を綻ばせる。

確かに、以前にもその話をされたし、湊さんが変わったってことは俺も既に理解している。

でも、それだけじゃ……。

 

「だって、湊からはそんな雰囲気を感じられたかしら?天涯孤独で、自分にはもう誰もいなくて、ただただ寂しい……って。あなたと会っていた時に、そんな気持ちを抱いているように見えたのかしら?」

「それ、は……」

 

何も言えなくなって、言葉に詰まる。

確かに、俺といる時の湊さんは、俺にそんな姿を見せたことが無い。

それは、俺に秘めた想いを隠すためだったのか。

それとも、俺といる時は……その想いを忘れられていたのか。

本人じゃない以上、本当のことは俺には分からない。

けれど、それでも確かに言えることは……。

俺と一緒にいる時の湊さんは、これ以上ないくらい幸せそうだった、ということだけだ。

 

「だから……大丈夫」

「で、でも……」

「……なら、あなたに頼みがあるの」

 

そう言うと、西園寺さんはこちらに向かって2、3歩歩み寄ってきて――俺の目の前で立ち止まった。

 

「前にも、湊の友達でいて欲しいって頼んだばかりなのだけど……いいかしら?」

「別にいい……けど?」

「じゃあ……八坂さん」

「……ああ」

 

ゴクリ、と喉を鳴らしながら、次の言葉が紡がれるのを待つ。

 

「どんな事があっても、あなたは……"湊のそばにいて欲しい"の」

「……え?」

 

今更のような頼み事に困惑し、つい変な声が出てしまった。

これって、言葉通りの意味、なのか……?

それとも……。

 

「それって、どういう――」

「あなたにも……いつか、分かる時が来るわ」

 

彼女はどこか含みのある言葉を言い放つと、なぜか一瞬、申し訳なさそうに力なく笑った。

 

「だから……その時は、湊のことをよろしく、ね?」

「あ、ああ……」

 

――正直、今の俺には、西園寺さんの意図がまだよく分からない。

けれど、それでも……西園寺さんが、心から俺を頼ってくれているってことだけは伝わってきた。

それに、湊さんのそばにいて欲しいってことは……逆に言えば、これからも一緒にいていいってことだろ?

だったら、その答えなんて――最初から、決まってる。

 

「俺に、任せてください」

 

安心してもらえるように、俺の決意を表す。

 

「俺が湊さんから離れることなんて、絶対にありませんから」

「…………」

「……あ、俺が嫌われちゃったりしたら、話は別ですけどね!?」

「……ふふっ」

 

その言葉を聞くと、西園寺さんは安堵したように笑みを浮かべた。

 

「……あなたになら、安心して湊のことを任せられそうね」

「……え?」

 

意味ありげな言葉を呟くと、彼女はそっと顔を逸らす。

 

「今のは……」

「なんでもないわ。さ、湊たちも待っているだろうし、そろそろ戻りましょう」

「あ、ああ……そうだね」

「八坂さん」

 

寮の入口へと歩き始めた途端、後ろから呼び止められる。

 

「……湊をよろしく、ね」

 

そう言うと、彼女は優しく微笑むのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

――正直、あの言葉の真意は、未だによく分かっていない。

多分きっと、文字通りの意味では無いのだろうが……そのくらいのことしか、今の俺には分からない。

 

「(湊さんの、家族は……)」

 

改めて、彼女の置かれている状況の深刻さを理解する。

きっと、1年前のこの日には、彼女の祖母が祝ってくれていたのだろう。

けれど今は……もう、いない。

つまり、彼女にとって今日という日は――最後の家族を失ってからの、最初の誕生日なのだ。

 

「こんな、の……あんまり、です……っ、だめ……なのに……っ!」

 

そう言うと、湊さんの手が……何かを求めるかのように、俺の手の上に重なる。

 

「誰かぁ……っ、たすけてよぉ……っ!おばあ、ちゃん……っ!!!ひぐっ、あああああああぁぁぁぁぁ……!!!」

 

助けを、求めるように。

救いを、求めるように。

彼女は……何かに縋るように、声を上げて泣き叫ぶ。

しかしきっと、助けを求めているのは……その瞳の奥で見据えているのは……俺ではなく、亡くなった家族の姿なのだろう。

 

「……湊、さん……」

「悠……さん……えぐっ……あああぁぁ……!」

 

湊さんの両の瞳が、"俺の姿"を捉える。

"どんな事があっても……あなたは、湊のそばにいて欲しいの"

――突然、西園寺さんの言葉が、頭の中で反響する。

 

「(…………)」

 

――このままで、いいのか?

瞳を閉じ、内なる自分に問いかける。

泣いている友人に……彼女に、戸惑うだけで。

ただ見てることしか、出来ないなんて。

――本当に……そのままで、いいのか?

自分に語り掛ける声が、次第に大きくなっていく。

――こういう時……"やるべきこと"があるんじゃないのか?

――"やれること"があるんじゃないか?

頭の中で、意識が混ざり合っていく。

"友達として"

"恋人として"

"俺には……やるべきことがあるんじゃないか?"

……意識が、急速に覚醒へと向かっていく。

体の奥から何か熱いものが込み上げてきて、迸るように体中を駆け巡る。

 

「(俺は……俺は……っ)」

 

こんなことをしたら、湊さんに嫌われてしまうかもしれない。

いや、湊さんの事だから嫌われることはないだろうが……もしかしたら、引かれてしまうかもしれない。

――けれど、それでも。

 

「(それでも、俺は……っ!)」

 

真っ直ぐに、湊さんの瞳に意識を寄せる。

湊さんは次第に泣き疲れてきたようで、慟哭は霞となって消え入るように、その鳴りを潜めている。

――その焦点が、少しずつ合わなくなっていく。

そして、湊さんの体がふらりと揺れた――瞬間。

気が付けば……俺の体は、考えるよりも先に動いていた。

 

「……ぇ……?」

 

"俺の腕の中で"、湊さんの口から素っ頓狂な声が漏れる。

 

「ゆ……う、さん……?」

 

零さぬように、と。

離れぬように、と。

触れたら壊れてしまいそうなその華奢な体を、俺は強く抱き寄せていた。

 

「大丈夫……大丈夫、だからっ」

「……悠、さん……?」

「……泣かないでくれ、とは言わない」

「…………」

「湊さんの悲しみは……当事者じゃない以上、完全には分からないと思う。けれど、だからこそ……その悲しみや苦しみを、共に分かち合うことはできると思うんだ」

「……ぁ……」

 

再び、彼女の瞳が潤み始める。

呼吸も、次第に荒くなっていく。

 

「だから……だから……っ!」

「…………」

「どんな事があっても、俺が……俺が、湊さんのそばにいるからっ!」

「……っ……」

 

湊さんの体が、小刻みに震え始める。

その震えを少しでも和らげるように、そっと抱く力を強める。

 

「俺が……一緒に、泣いてやるからっ!一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に怒って、一緒に喜ぶからさ」

 

胸に抱く気持ちを、何一つ隠さずにぶつける。

そして、俺の番だと言わんばかりに、一気に畳み掛ける。

 

「だから俺に、頼ってくれよ……っ、俺に、その抱えているものを……一緒に、背負わせてくれよッ……!」

「――――」

 

俺がそう口にした瞬間。

湊さんの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。

そんな彼女の頭に片手を添えながら……それでも俺は、言葉を紡ぎ続ける。

 

「……俺じゃあ、湊さんの家族の代わりには、なれないのかもしれない」

「ぁ……ぁぁ……っ」

「でも、俺は……その穴を埋められるように、精一杯頑張るからさ」

「ゆう……さ……ん……」

 

今の彼女に、これ以上何を伝えればいいのだろう。

何を言えば……彼女を、安心させてあげられるのだろう。

高ぶった感情のまま、思考をフル回転させる。

…………。

 

「(……いや、こういう時だ。言葉を選ぶ必要なんてない)」

 

少し告白じみているようにも感じるけど……今は、この言葉を告げるべき時だ。

彼女の肩を優しく掴み、互いの顔が向かい合うように、俺の正面へと動かす。

早まる鼓動を抑えるように深呼吸をし、真剣に湊さんの目を見つめて……。

そして俺は、ゆっくりと口を開いた。

 

「もう二度と、湊さんが悲しまないように……俺が、ずっと一緒にいるよ」

「……ゆ、う……さん……っ!でも……でも……っ!」

「俺は、絶対にいなくならない」

「……っ……」

「湊さんの前からいなくなるなんて、俺にそんなつもりは無いよ……もし、湊さんに嫌われたら……その時は、仕方ないんだけどね」

「そんな……ことっ!」

「だから……」

 

自分の中に抱く気持ちを、精一杯に言語化する。

どうか、届いてくれ――

 

「俺を頼ってくれて、いいんだよ。俺は、湊さんの――"彼氏"なんだからさ」

「えぐっ……ああっ……」

 

大粒の涙を流しながらも、湊さんは崩れそうになるのを必死に堪える。

そんな彼女の肩をもう一度抱き寄せて、俺は安心させるようにそっと囁いた。

 

「今は……泣いていいんだよ。我慢しなくて、いいんだよ」

「ああっ……あああ……」

「俺が全部、受け止めるから」

「ゆぅ……さん……っ」

 

そう言うと、彼女は力を失ったように俺の胸へと倒れ込む。

そして、ゆっくりと2本の腕が、俺の背中へと伸びてきて……。

背中に伸ばされた手が、震えながらも、俺の体を包み込んだ。

 

「あ……ああっ……ああああああああぁぁぁぁぁ……っ!」

 

堰を切ったように、湊さんは感情を溢れされる。

その身で抱えてきたものを。

その身で堪えてきたものを。

全て、吐き出すように。

感情のままに……彼女は叫び続ける。

 

「(湊さん……)」

 

この小さい身体で、彼女はここまで耐え続けてきたんだ。

その精神力は、並大抵のものでは無いだろう。

頼るものが、己が身一つになった状態で。

それでも諦めずに、前を向き続けて。

周りにも、辛い部分を見せないで。

ただひたすら、自分すらも欺き続けて――

俺の胸で泣き続ける彼女を撫でながら、その姿をそっと見つめる。

 

「(…………)」

 

強い芯の通ったその姿が。

脆くて儚いその姿が。

そんな湊さんの姿が……俺にはとても、辛そうに見えて……。

さらに強く、俺は彼女を抱き締めた。

………………。

…………。

……。

――そうして。

湊さんは俺の腕の中で、その身が疲れ果てるまで泣き続けたのだった。

 

 

 




というわけで、個人的に書きたかったシーンがこれで完成しました……!
って、まあこの後もありますし、自分も書くつもりですけど……達成感が笑
さて、今回の悠くんと湊くんはいかがだったでしょうか?
自分は、湊くんがヒロイン化してて可愛いと思う感情と、湊の過去を考えながら辛くなってくる感情がぐちゃぐちゃになって、書きながら発狂してました笑
次は泣き止んだ後の会話から、誕生会する気満々のお嬢様たちのところまでやれ……るかわからないですが、頑張りたいと思います。
次回も読んでいただければ幸いです~!


追記
気になるシーンからだいぶ時間空けちゃったことは反省してます……
正直、現在色々と忙しくて、書きたいのに時間が取れなくてストレスが……ってなっているのですが、うまい具合に時間を見つけて書いていきたいと思います。
更新を待ってくださっている方、本当に申し訳ありません……
それでも、できる限り急いで書くようにしますので、ぜひ読んでいただけたらと思います。
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