ということで、前々回の続きです!
本当はお嬢様たちのところを書こうとしたのですが、ここはぜひやっておかないとという部分を忘れていたので、今回そっちを書きました笑
悠君の鈍感ゆえの正統派主人公ムーブが今回も炸裂しているので、温かい目で見守っていただければと思います!
今回もぜひ読んでいただければ幸いです~!
窓から射す夕陽の明かりが、次第にその勢いを失っていく。
気がつけばもう……宵闇がすぐそこまでに迫っていた。
「――湊さんは……これから、どうするの?」
「え……?」
キッチンからお代わりのコーヒーを持ってきた悠さんに、突然そんな質問をされる。
いきなりで言葉に詰まっちゃったけど、この質問って……。
「そのキャリーバッグで旅行じゃない、ってことは……つまり、そういうことなんでしょ?」
「…………」
核心を突かれ、返答に困る。
やっぱり、気づかれちゃってたよね……。
「あ、あはは……流石に、気づかれちゃってましたよね?」
「まあ、ね……湊さんの用事も、そのことでしょ?」
「そう……ですね」
少し歯切れの悪い返事が、口から零れる。
僕って、誤魔化すの下手なのかな……。
「あ、あの……」
「うん?」
「深くは……尋ねないんですか?」
「…………」
追求されないことが気になって、ついこっちから聞いてしまった。
すると、悠さんは少し考えるような素振りを見せた後――
「まあ……湊さんが言い難いなら、聞かない方がいいかなって」
「…………」
そう言うと、悠さんは頬を掻きながら……どこか困ったように笑った。
「優しいんですね……やっぱり」
彼に対して抱いた本心を、包み隠さず口にする。
悠さんは、僕にはもったいないくらい優しくて、親切で……。
そんな彼になら……いや、彼にだけは……ちゃんと言わないといけない。
「今日、実はボク……」
「…………」
「悠さんに……お別れを、言いに……」
「…………」
そう言いかけて、言葉に詰まる。
今朝のお嬢様たちの対応は、おそらく僕の誕生日を祝うためのものだったのだろう。
だから……あれは、完全なる僕の早とちりだったんだ。
だとすれば、僕があの寮から出ていく必要はないのだろう。
――けれど。
それでも、僕は……本来あそこにいてはいけない存在なんだ。
女子校に男が混ざるなんて、あってはならない事なんだ。
「(もし、ボクの存在がバレてしまえば、風莉さんは……)」
考えうる限りの、最悪の事態を想像する。
そんなこと……絶対にあってはならない。
「(だったら、その前に……ボクは……)」
「どうして、なんだ?」
「それ、は……」
一瞬言いかけて……言葉が途切れる。
悠さんに、本当のことを言わないと……だけど。
「(言えるわけ……ない、よね)」
偽りだらけの自分の体を一瞥する。
僕は、偽り続けなければいけないんだ。
――学園の皆さんにも。
そして……。
――大好きな、悠さんにも。
「(でも、そんなの……いつか絶対、耐えられなくなる)」
そんな考えが、頭の中をよぎる。
だからやっぱり……僕は、ここで出ていくべきなんだ。
………………。
…………。
……。
――けれど。
いくら……そんなこと考えても。
仕方ないって……自分を納得させても。
それでも……やっぱり。
僕は……悠さんと――
「湊さん……?」
「でも……悠さんと……っ……離れたく……ない、なぁ……っ」
溢れる気持ちを堪えきれず、心の声が漏れ出す。
視界が少しずつ潤んで、悠さんの顔が滲んでいくのが分かる。
「湊、さん……」
「ごめんなさい……悠さん。困ります、よね……えへへ」
感情を押さえつけて、必死に笑顔を形作る。
ここでまた悠さんに、心配をかける訳にはいかない……!
「……へ、変なこと言って……すみません……こ、このことは……忘れてください……」
「……の、……カ……」
「……え?」
「湊さんの、バカ!」
「……え?ば、ばか……ですか?」
「そうだ馬鹿だ、大馬鹿だ!」
「そ、そんなこと……言わなくても……!」
必死に悠さんの言葉に反論する。
なにも、そんな酷いこと言わなくても……。
「湊さんが何か隠し事してるのは……俺にだって、分かってるよ!」
「……っ!?」
「ちょくちょく湊さんが思い詰めたような顔するから、それくらいは察してるさ。でも……俺には、それが何なのかまでは分からない」
「…………」
まさかの言葉に、一瞬本気で焦ってしまった。
しかし、どうやら完全に気づいているわけではないらしい。
「湊さんは、西園寺さんになにか負い目を感じてるんだろ?」
「…………」
「俺の知ってることから考えると、西園寺さんから衣食住を提供されてるから、負担をかけさせたくない……ってように見える」
「…………」
「けど、本当は……もっと別の理由があるのかもしれない。俺の知らない……全く別の理由が」
「……っ……」
推理小説のように、悠さんはゆっくりと、真実に近づいてくる。
「でも、どちらにせよ……西園寺さんはそんなこと望んでないはずだ。湊さんが、出ていくことなんて!」
「……ゆ、悠さんに……悠さんに、何がわかるんですかっ!」
「――分からねぇ!分からねぇんだよっ!分かってあげたいけど、その理由を知らないんだよ……っ!」
「……っ!?」
「背負いたいけど、まだ背負わせてもらってねぇよ……その背中の荷物を、預けてもらってねぇんだよ……」
絞り出すような声で、悠さんは悔しそうに想いを漏らす。
悠、さん……。
想いのこもった言葉で言い返されてしまい、もはや何も言えなくなる。
「でも、西園寺さんたちは……こんな別れ方、望んでないはずだ。それに……俺も……」
「でも……ボクは……あそこにいては……いけない人間で……」
ぽろぽろと、言葉が口から零れていく。
本当は僕だって、みんなと一緒にいたい。
悠さんと……一緒にいたい。
けれど――それじゃダメなんだ。
何か起きてからじゃ……ダメなんだ。
「じゃあ、西園寺さんたちに聞いてみよう?俺もそばにいるからさ」
「え……?」
「直接聞いちゃえばいいんだよ」
「でもっ、そんな……つ」
そんなこと、聞けるわけが無い。
だって、そんなこと言ったら、風莉さんは……。
「じゃあ、もしダメだったら……俺がいるからさ」
「…………」
「そ、その時は……俺と一緒に住もう」
「……え?」
一瞬何と言われたのか分からず、素っ頓狂な声が漏れる。
「(……"一緒に、住む"?)」
え、それって――
「え、えええええええ!?」
言葉の意味(そのまんま)を理解し、思わず叫んでしまった。
ゆ、悠さんは……何を考えてるの!?
「え、あの、そんな……っ、その、ええと……あぅ……」
僕が……悠さんと、2人で……。
2人で暮らす未来を、混乱した頭の中で思い浮かべる。
毎日一緒に料理を作ったり、互いに味比べしたり、一緒に買い物に行ったり……。
「(そ、そんなの……!)」
嬉しいに決まっている。
楽しいに決まっている。
けれど、そんな申し訳ないこと――って!
「(そもそも、風莉さんに聞けるわけないよぉ……!)」
目下最大の問題を思い出し、現実に引き戻される。
それに、もう一度みんなのいる第二寮になんて……行けるはずがない。
「……で、でもっ!ボクはもう……あそこには――っ」
そう言いかけた途端――
気がつけば……僕はまた、悠さんに抱き寄せられていた。
「ひゃあっ!?ゆ、ゆゆゆ悠さん!?」
「……勝手に行かないでくれよ」
「……っ……」
「俺が……湊さんの居場所になるからさ。どこにも行かないで、俺のそばにいてくれ」
そう言うと、悠さんの右手が僕の頭に添えられる。
――なでなで
「うにゃあっ!?」
突然のことに、思考回路がショートする。
や、やばい……このままじゃまずい……っ!
「ま、待ってくださいっ!こ、ここ心の準備が……っ!?」
「いいや、待たない」
「……にゃっ!?」
「湊さんが、出ていくって考えを変えない限り、俺は……湊さんを離さない」
「はうっ!?」
心臓が、大きく脈打つ。
なぜだか分からないが、鼓動が激しくなるのを感じる。
「(この気持ちは……一体……?)」
自分でも、今の自分が分からなくなる。
僕はなんで、こんなにも心が……?
自分の内から湧き上がった感情に、説明がつかなくなる。
一体僕は、どうしてしまったのだろう。
「(…………)」
……けれど。
同時に、分かったこともある。
「(悠さんは……ボクのために……)」
僕が出ていくことを、彼は必死に止めようとしてくれている。
触れ合う体を通して、その熱意がひしひしと伝わってくる。
……確かに、悠さんの言う通り、何も言わずに出ていくのは自分でもどうかと思う。
それこそ、受けた恩を仇で返すようなものだ。
「(やっぱり、ちゃんと別れを告げてからじゃないと……だよね)」
自分の決断を、改めて考え直す。
でも、そうなった場合……みんなに止められるのは必然だろう。
………………。
それならもう、いっその事……悠さんの言う通り、聞いてしまうしかないか。
僕の想いを……嘘偽りなく伝えるしか……。
「だ、大丈夫……ですからっ。か、考え……変えましたからっ」
「ほんとにっ!?」
「は、はいっ!で、ですから……その……っ!」
そう言って、悠さんの腕に目を向ける。
「(これ以上はもたないよぉ……)」
説明のつかない感情が、心の中で膨れ上がる。
このままじゃ……今にも爆発しそうだよ!
「……あっ!ご、ごめんっ!また……やっちゃったな」
「いえっ、怒ってるわけでは……!うぅ……」
否定されて、不思議そうな顔をする悠さん。
そういう事じゃないんだけどなぁ……。
「でも、考えを変えてくれたって本当か?」
「……はい。自分でも……少し、考えていたんです。何も告げずに出ていくのは、どうなのかなって」
「そっか……」
「……悠さん。ボク……風莉さんたちと、話してみようと思います」
「本当に?」
「だから……一緒に、ついて来てくれませんか?」
そう言って、悠さんの手を握る。
……彼ならきっと、承諾してくれるに違いない。
悠さんの性格上、そうなることは分かっているけど……なぜか自然と、僕の手は細かく震えていた。
「そ、そんなの、いいに決まってるだろ!それに……元はと言えば、俺が言い出したことだしな」
「悠さん……」
その返事が嬉しくて、握る手の力をぎゅっと強める。
すると、悠さんはもう片方の手で頬を掻きながら、僕からそっと目を逸らした。
顔も赤かったし、口調もどこか焦っているようなものだったけど……どうしたんだろう?
「そ、そうと決まれば……よし、行こうか」
「……え?今から……ですか!?」
あまりに急な提案に、自分の耳を疑う。
これって、こんなにトントン拍子で進むものなの!?
「ああ、そろそろ準備も終わるだろうし……今から行けば、ちょうどいい時間になると思う」
そう言いながら、悠さんは壁に掛かった時計に視線を移す。
“準備”……か。
今朝の対応から考えると、僕の誕生会を計画してくれていた……ということなのだろう。
そんな人たちに対して、何も言わずに出ていこうとしていたなんて……僕は……。
「……湊さん?」
「いえ、なんでもありません……ありがとうございます、悠さん」
「おう!それじゃあ……行こうか」
「……はいっ!」
互いに出かける準備をして――悠さんからのプレゼントを付け直して――玄関の扉をゆっくりと開く。
そして僕達は、そのままお嬢様たちの待つ第二寮へと向かうのだった。
――街灯の奥に佇む宵の空は、黄昏から群青へとその身を緩やかに染め上げていた。
というわけで、いかがだったでしょうか?
また撫でてるよこの人……と思うところもありましたが、これで当面の湊くんの懸念は消えましたね!笑
後は悠君に本当の性別を言えるかどうか……ですが、まあ、流石に時間はかかると思います笑
次はやっとパーティーということですけども、目の赤く腫れた湊君を見てお嬢様たちが何を想い何を勘違いするのか……!?
まあ大体予想はつきますが、楽しみにしていただければと思います!
ではでは、また次の話も読んでいただければ幸いです~!
追記
感想書いてくださった方、ありがとうございます!!!
もう嬉しくて嬉しくて、感謝するばかりです笑
バレンタイン過ぎたのにバレンタインの話を投稿するとかいうことをやらかしたのに、読んでくださった上に感想までいただけるなんて……ありがたや~笑
返事は遅いですが、感想とかいつも受け付けてますので、良かったら書いていただけると幸いです~笑
書いて下ったら滅茶苦茶喜びます!笑
というわけで、長くなりましたが、また次回をお楽しみに~!